「ヒュンケルさ〜ん、これ、もらってください」
今日は妙な日だ。朝から女供が俺にチョコレートを渡しにやってくる。直接だけではない。
俺の机の上にも、ロッカーの中にも、友人を通しても女達は俺にチョコレートを渡したがっているようだ。
「おらよ、○○がおめーにだとよ」
すごい剣幕でポップが俺のところにチョコレートを持ってきた。
○○とは誰だか知らんが、名前からして女のようだ。
「…お前…その紙袋の山は…嫌味かよ……」
「何で嫌味なんだ」
「まあいい…で、お前………あいつからはもらったのか…?」
「…あいつ…?」
「……あいつって…あいつだ!!……もういい」
ポップは走り去った。何なんだ? ―すると
ん…?殺気
「誰だ!!」
俺はさっと後ろを振り向いた
「ヒュンケル〜おモテになるわね…」
敵ではなくエイミだった。
「はい。チョコレート。それとこれは私が食べますから」
エイミが微笑み、俺にチョコレートをくれた。そして紙袋にあったチョコレートを全部持っていった。
「あいつ…そんなにチョコレートが好きだったんだな」
夕方、レオナ姫と出くわした。
「はあ〜?今日が何の日ですってえ?チョコあげる日よ」
ひどく機嫌が悪い。これ以上聞くのはやめた。
「はい、ポップ・マァム。チョコレート」
広間にダイ達三人がいた。
「ふふふ、ありがとうダイ」
「…まあもらっとくけどよう。お前、後でバレンタインデーの意味ちゃんと教えてやるからな。
…ところでマァムちゃん、何か忘れてない?」
「ポップ、はい、チョコレート。いつもありがとう。ところで忘れてるって何?」
ポップがずっこける。
「あ、ヒュンケル」
ダイが俺に気付く。
「ヒュンケル、俺からのチョコレート。マァムに教えてもらったんだ」
「はい、私も。いつもありがとう」
よくわからんが、この二人から手作りの物をもらえるなんて、嬉しいものだ。マァムが俺に渡すとき、ポップが引きつってたが。
「ありがとう……なあ、お前達に聞きたい。今日は何の日なんだ?俺はなぜ朝からチョコレートを貰わねばならんのだ?」
ポップがまたずっこけた。
「う〜んとね、今日はバレンタインデーって言ってね、お世話になった人にチョコレートあげる日なのよ」
マァムが教えてくれた。ポップが何か突っ込みたそうな顔をしていた。
「……わかった、俺はチョコレートなんて作れはしないから、買ってくる」
「へっ?」
俺は大急ぎで街に出ようとした。すると
「俺が街まで送ってやるよ。ちょっと離れてるだろ」
ポップがニヤニヤして言ってくる。
「遠慮すんなよ、俺たち親友だろ」
「わかった。頼む」
「行ってらっしゃ〜い」
ダイとマァムが見送ってくれた。
「ボソ…好きな娘と親友が天然だと怖いよな…」
呪文をかける前にポップが何か呟いた気がした。
ポップのルーラで街の菓子屋に着いた。
「どうした、入らんのか?」
「いや、俺は外で待ってるからよ、買ってこいよ」
「…そうか」
ポップにかまわず、俺は店に入った。
…なぜだ…視線がすごい。よく見ると店の中は女ばかりだ。
店の外でポップが大笑いしているのが見えた。
「言っとくが、俺はてめーになんぞ、お返しはしねえからな」
とりあえずポップに買ったチョコを渡したが、こんな言葉が返ってきた。
「ダイとマァムにはチョコを渡してないのか?あいつらにはお前は渡す必要があると思うぞ」
「だあ!!俺はホワイトデーにあいつらに返すんだよ!!」
ほわいとでえ?また新しい言葉が出てきた。
「ダイ様!!ありがとうございます!!」
城に帰ると、ダイからチョコレートを貰い、大泣きしているラーハルトを見た。
「ラーハルト、俺からのチョコレートだ」
「…………………?………お前…いじめか?」
「………?」
おしまい