(俺ら、一体何をやってんだろう)
目の前に見えるのは、俯いたまま俺と同じように正座しているマァムの姿。
この状態のまま30分が過ぎただろうか……。付き合ってから初めて二人で過ごす夜。
旅の最中でも無いきちんとした『恋人』としての夜。いつもの野宿とは違う
きちんとした宿屋に一つのベッド。そのベッドの真ん中で正座しながらお互いに動けない。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
空気が固まった部屋の中で、溢れてくる不安や動揺を押さえつけ、俺はぎゅうっと拳を握った。
ベッドの真ん中で正座したまま動けない状況を打破しようと、なけなしの勇気を振り絞って
目の前にある細い肩を引き寄せぎゅうっと腕を回す。
ビクンと固まる俺よりずっと小さい体を壊さないようにと、心の中で何度も言い聞かせて
鼻先で揺れる薄桃色の髪にそっと指を入れた。
髪を撫でるたびに怯えたように跳ねる体が何だか申し訳無くて、俺は理性を総動員させて
独り言のような小さい声でマァムに呟く。
「………あ、の………な。無理しなくて……いいぞ」
もっと冷静に格好よく言うつもりだったセリフは、変に裏返った声のせいで酷く間抜けに聞こえた。
(こんな声出して俺もビビってんのバレバレじゃねぇか……)
情けなく聞こえるセリフに焦っていると、俺の言葉に反応したマァムが恐る恐る顔を上げて来た。
少し目を潤ませちゃって『誰?』って聞きたいくらい可愛い顔で困ったように俺を見つめる。
普段ならトキメクその表情なのに、何だか苛めているような罪悪感が先立って焦って言葉を続けた。
「や、やっぱり……止めるか!?……なんか、変な感じだしな。お前も怖いだろ、やっぱり」
「――――――っあ、あの!違う、の。怖いけどっ、大丈夫だから」
離れようとする俺の腕を慌てて掴んで、マァムは俺の方にもたれかかってきた。
俯いてても分かるくらい顔を真っ赤にしながら、俺と同じ裏返った声で必死に話してくる。
何度も首を振りながら俺の服を掴んでいる手はよく見ると震えていて、その姿にきゅうっと
胸が締め付けられる音がした。
あんまりに可愛いもんだから、そのままベッドに押し倒そうと少し強い力でマァムを抱きしめた。
俺の意図をあまり分かっていないマァムは、力を込めてもたれかかってくる俺を支えるように
手に力を込めて、倒れないように踏ん張っている。
ビクリとも動かない体に、さすが武道家なんて脳みその片隅で感心しながら赤い顔に手を置く。
自分でも恥ずかしいくらい緊張で硬くなった手を精一杯動かして、マァムの頬を撫でた。
お互いに顔を真っ赤にして、困ったようにお互いを見つめている。ゆるゆると動く掌の意味を
分かっているマァムが、意を決したようにきゅっと硬く目を瞑った。
それを合図にして、俺は掌の動きを止めてガチガチに固まった口でマァムにキスをする。
キスは何度かした事があるのに、場所がベッドってだけで情けないくらい緊張で震えていた。
同じくらいガチガチに固まっているマァムの口の感触を感じながら、一旦離してもう一度
キスをする。
「――――んっ、っ」
離れて、触れて、離れて、触れて。それを何度か繰り返していく内に、緊張は次第にほぐれて
口から漏れる甘い声と、柔らかくなっていく唇の味に次第に夢中になっていった。
柔らかくて甘い口がもっと欲しくて、口全体で感じるように舌でペロリと舐めてみる。
次第に開いてくる唇に吸い付いて、ぬるっとした舌に自分の舌を絡めると口の中から
湿った水音が脳に届く。
「んっ、んん……ぁ、ん………」
舌が絡むたびに漏れる声。ぬるぬるとした柔らかい口内に、不思議と甘い味のする唾液。
緊張なんてぶっ飛ぶほどのその刺激に、抱きしめた腕に力を込めてもう一度このままベッドに
押し倒そうと力を込める。
かなり本気の力を出してもたれかかっているのに、やっぱりマァムの体は動かない。
支えている腕を掴んでみても、緊張したように力が入るだけで解く事は出来なかった。
もっと手馴れた男(例えばあの野郎)なら、もっとスマートに事を進めることが出来るんだろうなと
お門違いの劣等感を感じながら、キスしていた口を離して情けない声でマァムに呟いた。
「あ、の……な?手、ちょっとだけ力抜いてもらって良いか?このまま座ってすんのも何だし」
「えっ、あ、ぁ。……ごめんなさい」
俺の意図をやっと気づいたマァムが、恥ずかしそうな顔で手の力を抜くのと同時、我慢できずに
力を入れてそのままベッドに押し倒した。ボフリと音を立てて二人でベッドに寝転がる。
白いシーツに広がる桃色の髪に、緊張したように伏せ目俺を見つめるマァムの瞳。
初めて上から見つめるマァムがものすごく可愛くて、俺は無言でその体を抱きしめながら
余裕の無い動きで柔らかい口にキスをした。
上唇を何度も舐めて、ゆっくりと柔らかい口の中に舌を差し込んでいく。
くちゅくちゅと口の中で唾液の音が立つたびに『ん、ん』と短いくぐもった声が漏れてくる。
初めて感じる女の子の温もりに、体中の血が沸騰しそうになった。
髪を撫でていた手を解いて、恐々とした動きでそっとくびれた腰に手を置いてみる。
重ねた口から微かに声が漏れて、ピクリと体が跳ねただけで嫌がられている様子は感じ無い。
服の上から感じる柔らかい肌を感じながら、ゆっくりとお腹の周辺を撫でていく。
しばらくさわさわと触れた後、徐々に手を上にあげて大きく膨らむ胸に手を置いた。
(う、わ………)
手を置いた途端、フワリとした柔らかい感触が掌全体に広がる。
自分の手には収まらない大きな胸………。大きいくせに指を動かすたびに
くにゃりと形を変えていく柔らかいソレを恐々と揉みしだいていた。
「ん、んんっっ!!」
「――――あ、ごめん。痛かったか??」
「うっ、ううん……大丈夫。恥ずかしいだけだから」
顔を真っ赤にして呟く否定じゃない言葉にほっとして、止めていた指を再び動かし始める。
最初はゆっくりと動かしていた手は、その柔らかさに夢中になるにつれて、強く激しく
両方の手を使って、夢中になってその膨らみに触れた。
指が深く埋まる度に大きくなる声を聞きながら、次第に硬くなっていく胸の突起を指で挟み
くりっと指を動かすと頭の上から今までで一番大きな声が漏れる。
「っぁ!んっ。ぁん!……あ、っん……っっ!」
「気持ちいい?」
「も、っ………や、聞かないでっっ………んっ、んん!!!」
怒っているのにどこか心地よく耳に届くその声を聞いて、自然と顔に笑みが浮かぶ。
笑っている俺と目が合ったマァムは、ぷぅっと頬を膨らませて逃げようと身を捩り始めた。
「やっ!!な、に………っ笑ってんのよ………」
「だって。可愛いから」
「〜〜〜〜〜っっ!!!バカ言わないで、んっ、ぁ!!」
拗ねるマァムを宥めるように優しいキスを意識して唇に触れる。
非難めいた声が甘い色に変わる頃、胸を弄っていた手をおろして、胸の上まで一気に上着を捲り上げた。
予想していなかった行動に、合わせた唇からマァムの驚いた声が漏れる。体が跳ねる度に
プルンと白い肌が震えて揺れる。覗きでも何でもない、正々堂々と初めて見る女の子の柔らかい肌。
女の子らしい柔らかさと、その下にある武道で鍛えたしなやかな筋肉の感触が心地よくって
掌全部でマァムの腹部を撫でながら、白い首筋に舌を這わしていく。
「―――っ!ん!!ぁ、ん」
首まで隠れている法衣の布を下げて首を吸っても、布に隠れて触れる場所が限られている。
チロチロと首を舐める動きを一旦止めて、硬くシーツを握っているマァムを抱き起こした。
「あ………。服、脱がしていい??」
「……………」
服を捲くる前に言いなさいよ。と、少し不満そうな目で俺に告げながら、マァムはコクリと頷いた。
緊張する慣れない手つきで、子供にするみたいにゆっくりと服を脱がしていく。
服を全部脱がして、白い下着を隠すように体を丸めているマァムの姿にゴクリと息を飲んで
たわわな胸を隠しているブラジャーに手を置こうとした時、バチン!っと顔を叩かれた。
「やっ!やっぱりダメ!!〜〜〜〜〜そこっ、は自分で脱ぐから、ポップも脱いで!!!」
顔の正面を張り手で叩かれジンジンと鼻を痛めている俺に、マァムは上ずったデカイ声で
そうまくし立てた後、逃げるようにシーツの中に潜り込んだ。
シーツの中で下着を脱いでいるだろうモゾモゾと動くマァムを見ていると、ジロリと睨まれる。
真っ赤な顔で睨んでくるその視線に気圧されて、諦めた俺は素直に後ろを向いて服を脱ぎ始めた。
上着を脱いで、ズボンも脱いだ後、最後のパンツをどうしようかと悩んだ時、視線を感じた。
シーツの中から顔だけ覗かせてじっと見つめているマァムを、今度は俺が睨みつける。
「…………見んなよ。人に見んなって言っといて何でそんなに見てんだよ」
「あ……ごめん、なさい……だって、何だか緊張して、どこ見て良いのか分からなくて」
顔を真っ赤にして不満そうに呟く俺に、これまた顔を赤くしたマァムがしゅんと項垂れる。
マァムが俺から目を逸らした瞬間、ババッと下着を脱いで、俺もシーツの中に潜り込んだ。
きゃっ。と短い悲鳴を上げて、逃げようとするマァムの体をぎゅっと抱きしめる。
お互い裸で抱き合うと、改めて自分とはまったく違う肌の柔らかさに驚く。
柔らかいのは胸だけだと思ってたのに、体全部が出来立てのマシュマロみたいな感触だった。
ドクドクお互いの胸で鳴っている心臓の音が体で響くのを感じていると、マァムが小さく呟いた。
「男の人の肌って……全然違うのね」
「―― 俺も、丁度同じこと考えてた。お前って柔らかくてすげぇ気持ち良い」
「バカ………んっ」
憎まれ口を叩こうとする言葉を口で塞いで、我慢できなくなった手を動かしていく。
口に吸い付きながら掌に収まらない大きくて柔らかい胸を、グニグニと指で捏ねて感触を楽しんだ。
普段のじゃれあいで触ることがあった大きな胸。大きく指を動かして揉んでいると
次第にマァムの瞳が戸惑いから気持ちよさそうな色に変わっていく。
それが嬉しくて口から耳朶、首筋から鎖骨と徐々に舌で舐めていき赤く染まった胸の上にある
グミみたいな突起に吸い付いた。
「ひゃっ!!あ、ぁぁ……やだ……そん、な所」
触っているときとは明らかに違う嬌声を上げて、マァムは震える腕で俺の頭をグッと掴んだ。
舌を絡めたまま目線だけ上を向くと、潤んだ目で俺を見つめる表情にぶつかる。
悲しいとは違う蕩けるような熱い涙を零しながら、マァムは縋るように俺を見つめていた。
見た事の無い可愛い顔―――。ニタリと口の端を持ち上げて、目線を合わせながら
更に激しい動きでジュルジュルと乳首に吸い付いた。
「ぁん!あ、ああ!!ぅ………ん、んっんん!!」
「………乳首。すげぇ硬くなってる」
「やだっ!なんで、そんな事………んぁ!あ、ひゃ!!」
どこかで聞きかじった言葉で苛めてみると、マァムの体は面白いほど反応した。
指と口で触れている乳首が声に反応してツンッと上を向く。大きく膨らむ乳首を楽しげに
見つめながら、空いたほうの手で硬く足を閉じている下半身の茂みに手を伸ばした。
ゆるゆると茂みを撫でて足を開く事を催促しても、緊張した足はガチガチに固まって動かない。
胸とソコを同時に弄ろうと考えていた俺は頑なに閉じている足に諦めて、一旦胸から顔を離した。
ポロポロと頬を零れる涙をチュッと舌で梳くって、優しく足を撫でてやる。
緊張でガチガチだった思考より本能が先に動いていた。どうすれば良いのか体が勝手に動く。
「……足、開いてもらっていいか?開かないと出来ねぇ………」
「う、ん……。分かってる、分かってるんだけど……」
「うん。ゆっくりでいいからな。ちょっとだけ俺に見せて?」
子供に言い聞かせるようにゆっくりと落ち着いて囁きながら、マァムの足をそっと撫でていく。
徐々に抜けていく太ももを触りながら、閉じることが無いように体を割り込ませた。