部屋に差し込む月明かりは、純白の衣に隠された成熟した体を、まるで影絵のように  
透かし出してしまう。  
深い谷間を形作る見事な乳房はたわわに揺れ、それに合わせて揺れる先端の僅かな  
膨らみは、見る者にそこが乳首である事を意識させずにはいられない。  
パンティーの縫い目まで透けて見えるほど薄い生地は、むっちりとまろみを帯びた  
美尻を、裸よりもむしろエロティックにアピールしてしまっている。  
 
これほどまでに肉感的な肢体でありながら、少しもそれが下品でないのは、その整い  
過ぎているほどの美貌の所為だろうか。  
髪を下ろせば素晴らしく豪奢であろう豊かな金髪は、禁欲的なまでの簡素さで後ろに  
束ねられ。  
上質な白磁のような肌に、唇だけが燃えるように赤い。  
男の目を惹きつけずにはいない魅力と、下卑た視線を向けてしまう己を恥じさせて  
しまう圧倒的な品格。  
 
それが。  
魔王軍に対する反抗作戦の事実上の長、カール王国フローラ女王、その人であった。  
 
(眠れそうにないわ・・・・)  
 
軍装を解き、破邪の洞窟に挑んだ時と同じ薄手の法衣を寝巻き代わりに身に纏っている  
フローラの顔には、皆には決して見せた事の無い、疲れの表情が浮かんでいた。  
これまでの疲労と明日に迫った決戦の緊張の為、神経が張りつめきってしまっている。  
独りの部屋の静寂すら、却って痛いと感じてしまうほどに。  
 
(寂しい・・・)  
 
感傷に浸っている暇など、彼女には無い。  
明日には軍を率いて、魔王軍を討たねばならない身なのだ。  
けれども。  
 
(今だけ、今だけは、いいでしょう?アバン・・・)  
 
今や、彼女の心の中でだけ生きる恋人に、そう問い掛けて。  
フローラはゆっくりと、衣服をほどいてゆく。  
見事すぎるほど豊かな双丘を両手に抱えるようにして、フローラはため息をついた。  
乳房が、熱い。  
緊張と疲労で昂ぶった心に、開発され尽くされた肉体の疼きが、余りに酷だった  
 
(・・・アバン・・・)  
 
彼女の、たった一人の男。  
彼女を愛し、抱き、女としての全てを目覚めさせ、そして去り、死んでしまった男。  
愛しいその姿を思い浮かべた時、フローラの両手に力がこもった。  
 
「・・・は・・・・・・」  
 
湿った吐息が、紅い唇から漏れた。  
じわりと力を込めた手で握りつぶし、ひしゃげさせてゆく乳房が、心地良く痛い。  
捏ねるようにして揉むごとに、処女のように清らかな乳首が、薄く汗ばみかけた  
乳房の上で勃起してゆく。  
 
「ああ・・・・・・」  
 
ベッドに倒れ込み、清潔なシーツを乱しながら悶える。  
左手は尚も乳房を変形するほどに強く揉みながら、右手はパンティーの上から、  
指先で秘所をなぞる。  
爪を立てるようにして弄っているその布切れごしに、発達したクリトリスが固く  
なってゆくのが分かる。  
出来るだけ声を立てないよう、それでも時折堪えきれない小さな喘ぎを漏らし、  
フローラは滅多にする事の無い自慰行為に没頭してゆく。  
 
もどかしげにパンティーを脱ぎ捨て、足を曲げたまま股を開く。  
それは、男性自身を受け入れる姿勢だ。  
左の手指で陰唇を広げたまま、フローラはねっとりと右手の人差し指と中指を舐る。  
可憐なまでに細い指先が、唾液と欲情にまみれて糸を引いた。  
目をつぶり、懐かしい男根を想像しているフローラのその秘所に、ぬらぬらと光った  
二本の指が、ずぶずぶと沈んでゆく。  
 
「っ・・・はあっ・・・・・・」  
 
膣内が満たされた感触に、思わず声を立ててしまう。  
たっぷりと愛液に満たされたその部分で、音を立てて指が泳いだ。  
 
「・・・いや・・・いや・・・・・・」  
 
淫らな水音に自らを恥じつつ、それでもフローラの指は止まらない。  
奥へ。もっと奥へ。  
シーツを汚すほど溢れてくる淫水に指をふやけさせながら、わざと時間をかけつつ  
フローラは自らを慰める。  
容易く達しそうになってはわざと指を止め、幾度と無くそれを繰り返して、性感を  
蓄積させてゆく。  
 
何もかも、忘れるほど。  
今、この時だけは、何もかも。  
女神のような端正な顔に、女そのものの表情を浮かべ、雌犬のようにフローラは喘ぐ。  
己の肉体を狂喜と共に燃え上がらせてくれた、自分を支配出来るたった一人の男を  
思い浮かべながら。  
 
「壊して・・・アバン、壊して下さい・・・・・・」  
 
懺悔するような小さな呟き。  
その言葉が合図であるかのように、いきなり指の動きが激しくなった。  
乱暴すぎるほどに、自らの胎内を犯す。  
めくれ上がった陰唇から、高貴な風貌には余りにも似つかわしくない、動物的な匂いを  
持ったしぶきが飛んだ。  
 
「あ!・・・あ!・・・あ!・・・あ!・・・・・・」  
 
指先が、固い子宮口を突き上げる。  
こんな激しさで、何度も自分を慰めてくれた、愛しい男の顔が、浮かぶ。  
物欲しげにヴァギナをわななかせながら、淫らに腰をくねらせる自分を見たら、彼は何と  
言うだろうか。  
その答えを聞く機会は、永久に失われてしまった。  
切なさが、フローラを哀しい絶頂に押し上げてゆく。  
 
「ああ・・・イキます・・・イキますっ!アバンっ!!!」  
 
フローラの足の指が、きゅうと曲がったまま広がる。  
 
「・・・っ!あぁっ!・・・あ・・・・・・ぁ・・・・・・」  
 
孤独なオーガズムに、29歳の熟れきった体が痙攣する。  
二本の指を吐き出し、閉じきらずに開いたままの膣口が、途方も無く卑猥だった。  
 
笛の音が、聞こえる。  
どこからだろうか。  
遠くから聞こえるようでもあり、すぐそばで奏でられているようでもあるその音色は、  
美しく哀切でありながら堪らなく不快だった。  
たとえて言うなら、不協和音だけを組み合わせて作った楽曲のような。  
呪いの言葉を耳元で囁かれているような不気味さに、思わず耳を塞ごうとして、気づく。  
 
(か・・・体が?)  
 
「動かないでしょう?」  
 
ぞっと総毛立った。  
まだ一糸まとわぬ姿のまま、秘所から名残惜しげに愛液すら滴らせている。  
その恥かしい姿を隠したくとも、フローラの身体はぴくりとも動いてくれない。  
 
「だ・・・・・・誰?」  
 
わずかに首から上だけは動く。必死になって声の主を探すその視線が、壁にかけられた面  
で止まった。  
あんな所に、面などかかっていたろうか。  
漆黒のピエロのようなその面の、目の周りだけが下品な金色でくまどられている。  
その目が。  
音も無く、開いた。  
 
「っ!!」  
「はじめまして。フローラ女王様。素晴らしい艶姿、たっぷりと堪能させて頂きましたよ」  
 
あくまで慇懃なその声音に、悪意が満ちている。  
 
「申し遅れました。私、キルバーンと申します。以後、お見知りおきを」  
 
裂けたような口は、笑みの形だけをとったまま、邪悪な言葉を紡ぎだす。  
 
「まあ、短いお付き合いだとは、思うけどね」  
 
壁から染み出すようにキルバーンの全身が現れて来る。  
その手にした処刑鎌を一振りすると、風切り音と共に、フローラの鼓膜に不可解な耳鳴り  
が響いた。  
ひゅんひゅんと重なる風切り音が聞こえる度、フローラの身体の自由が奪われてゆく。  
 
(だ、誰か!)  
 
助けを呼びたくとも声が出ず、舌を噛み切って自害したくとも顎を動かす事も出来ない。  
視界までもが闇に閉ざされてゆく。  
わずかに残されたフローラの聴覚が、絶望的に不吉な言葉を捉えた。  
 
「殺るのが簡単すぎて気の進まない仕事だったけど・・・クク・・・思わぬ楽しみが出来たよ」  
 
いきなり、何か生暖かく湿った、とてつもなく長いものが陰部に張り付いた。  
抵抗すら出来ないフローラの肌だけが拒絶を示し、粟立つ。  
 
(な・・・何?!)  
 
慄くフローラの耳に、べじょり、べじょりと、唾液と愛液を啜る音が響く。  
 
「うっわあ!コイツのマンコ、すっごい濃い味がするよ!」  
「おやおや、ピロロ。いけませんよ。女王様に悪戯をしては」  
 
ピロロと呼ばれた一つ目ピエロは、人では決してありえない長さの舌を伸ばし、  
フローラの蜜を啜り続ける。  
既に自慰によって火のついた身体は、フローラの意思とは無関係に愛液を分泌  
させてしまう。  
 
(こ・・・こんな、魔物ごときにっ!)  
 
そうは思うのだが、驚愕に揺れた精神を立て直す間も無く加えられた愛撫に、動揺を  
隠せない。  
息が荒くなる。  
魔族の舌に感じてしまう自分を必死に叱咤すればするほど、倒錯した快感は増すばかりだ。  
 
「ねー女王様ー。女王様のオマンコ、涎まみれでドロドロだよー?充血して真っ赤  
だし、クリトリスだって勃起しちゃってるし。おまけにこの匂い!すっごく臭いよ!  
上品な顔して、ケダモノみたいにメス臭いマンコだねー」  
 
視覚を奪われ、聴覚と触覚だけが際立ってしまっている今、投げつけられる野卑な  
言葉が胸に刺さり、加えられる淫猥な愛撫が理性を砕く。  
ピロロの愛撫は執拗で巧みだった。  
目の見えないフローラの心理を利用し、執拗に一点を愛撫してはいきなり他の場所を責め、  
驚愕で思わずゆるむフローラの心のガードをすり抜け、女の本能を揺り動かす。  
桜色の乳首が、天をつくように固くしこっている。  
薄紅の花弁を濡らしているのは、唾液だけでは決して無い。  
声を出せないのが幸いした。既に何度か、絶頂寸前に追い込まれている。  
魔の快楽に喘ぐ己の声を聞いてしまったら、最後に残されたプライドまで粉々になって  
しまいそうだった。  
 
「ねえ!こいつ殺すんでしょ?じゃあその前に犯しても、いいよね!」  
 
(お・・・犯される・・・!)  
 
女王である、この自分が。  
今まで、愛する人以外に身を任せた事のない、この自分が。  
そんなフローラの心を裏切って、雌芯は男根を求めてひくついている。  
 
(い・・・いや!助けて!助けてアバン!!)  
 
「ぶち込んであげるよ!女王様!!」  
 
叫びと共に、子供のような体に不似合いなほど巨大なピロロの肉茎が、濡れそぼった  
フローラの肉壷を押し割るようにして入ってくる。  
 
(いやあああああ!!!!)  
 
心だけで、フローラは絶叫した。  
 
 
(ククク・・・他愛も無い・・・)  
 
己の愛撫に、声を出せないながらも確実に体を火照らせてゆくフローラを見て、ピロロは  
・・・いや、キルバーンは満足げにほくそえんだ。  
それでも必死にイカないように耐えてみせてはいるものの、もはやフローラの理性が  
陥落するのは時間の問題に思われた。  
 
(ふふ・・・こいつをぶち込まれれば、人間の女なんてひとたまりもないさ)  
 
巨大で、所々に不気味な節とイボのある男根を誇らしげにつかみ、キルバーンはフローラの  
膣口に狙いを定める。  
 
「ぶち込んであげるよ!女王様!!」  
 
叫んだ声は勝利宣言に等しい。  
自分のペニスに狂乱する姿を想像し、邪悪な笑みを浮かべてキルバーンはフローラを貫いた。  
だが。  
 
「う・・・うあっ??」  
 
中が、ぞわりと蠢く。  
 
(な、なな、なんだ!これはっ!!)  
 
まるで無数の微細な触手が蠢いてでもいるかのような生暖かい膣内が、ぞわりとキルバーンの  
肉棒を締め上げた。  
 
「う・・・あああ!!」  
 
腰が、まるでデタラメに激しく動く。  
感じた事の無い快楽に、凌辱に慣れきっているはずのキルバーンが翻弄されていた。  
止まらない。腰が止まらない!  
童貞のように無様に快感を求め、フローラの中にペニスを打ち込むのを止められない!  
 
「あーあーあー!ああああ!!!!」  
 
狂ったような動きが、出し抜けに止まる。  
悲鳴のような雄たけびをあげ、キルバーンはフローラの最も奥に、人間の数倍の量の精を  
放ってしまっていた。  
 
(こ・・・・・・こんなバカな!こ、この僕が・・・)  
 
髄液まで射精してしまったようなきつい快楽に、呆然とする。  
そのキルバーンの視野の隅で、操っていた人形・・・死神キルバーンと呼ばれる彼の操り人形  
が、ぐらりと傾いだ。  
この数百年というもの、ただの一度も操りに失敗した事など無い。  
自分自身でも、どちらが本体か分からなくなるほどに習熟を極め尽くしたはずだった。  
それなのに。  
 
(こ・・・・・・このアマっ!!!)  
 
膣内で再び肉棒が硬度を増してゆく。魔族の回復力は、人間のそれとは比較にならないほど強い。  
 
(犯してやる!絶対にイカせてやる!)  
 
策士は、己のプライドが傷つく事を、病的に恐れる。  
人間の女ごときに無様にイカされた屈辱に燃え、キルバーンは猛然とフローラを犯し始めた。  
 
 
東の空を上りかけていた月が、中天に差し掛かろうとしている。  
あらゆる手を尽くし、限りない技巧を凝らしているにも関わらず、フローラはイカない。  
それどころか。  
 
「うっ!くっううう!!」  
 
既に数えるのを止めてしまったほどに、キルバーンは一方的に絶頂を極めさせられている。  
放った精液はピストンの度に泡をたてて胎外に排出され、シーツに白い水溜りを作るほどだ。  
 
(こ、こんなバカな・・・)  
 
屈辱に震えるキルバーンの下で、フローラは徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。  
不意を突かれ、淫らに燃え上がってしまった肉体であったが、己が極める前に放出されて  
しまった精を感じた時、拍子抜けすると同時に余裕が出てきた。  
生まれ持った素質に加え、アバンの技巧に磨き抜かれたその名器は、魔性の快楽を男に与える。  
手足の自由を奪われた今、膣壁を蠢かせ、相手を翻弄する事だけが、フローラに出来る反逆だった。  
 
ぞわり。  
魔族を圧倒する貪欲さで、肉の壁がキルバーンのペニスを弄る。  
もはや犯しているのか、犯されているのかキルバーンにも分からなくなってくる。  
はっきりしているのは、主導権は完全にフローラにあり、そしてフローラ自身は少しもこの凌辱に  
痛痒を覚えていない、と言うことだった。  
 
(な、なんて女だ・・・・・・)  
 
キルバーンは歯噛みした。  
嫌がる女の理性を突き崩し、快感に喘がせ、そのプライドを叩き壊して、凌辱の快楽を思うままに  
してきた自分が、まるで手も無くイカされ続けている。  
身動きの取らないフローラではあるが、その表情にははっきりと余裕と侮蔑が浮かんでいた。  
許せない。許せるわけが無い。  
今更殺した所で、この敗北感は埋められるはずは無かった。  
 
(何としても、何としてもイカせてやるっ!!)  
 
人形を操り、死神の笛を再び吹かせる。  
聴覚から浸入し、人に幻覚すら見せるその音無き音は、ゆっくりと、だが気づかぬうちに人の心  
を蝕んでゆく。  
 
(必ず、この僕のペニスでイカせてやる!無様なイキ顔を見届けた上で殺してやる!!)  
 
情欲と悪意を込めて、無音の旋律を奏で続ける。  
フローラの顔から、徐々に毅然とした強い物が失われてゆく様を見て、キルバーンの怒張は再び  
固さを増していった。  
 
 
(姫・・・・・・姫・・・・・・)  
 
女王となった今、自分を姫と呼ぶ男は、一人しかいない。  
称号というより、もはや愛称となったそれを、優しく囁きかけてくれる愛しい、声。  
 
(ア・・・アバン?・・・)  
(どうしたんです?又、感じすぎて失神してしまったのでしょう?)  
 
悪戯っぽい、懐かしい声。  
懐かしい?どうして?  
今、こうしていつものように、アバンに抱かれているというのに。  
 
(恐い夢を、見たの。なんだかとても哀しくて、恐い夢)  
 
甘えるようにアバンの首にすがりつく。  
いくら髪を優しく撫でられても、少しも心が落ち着かない。  
 
(お願いです、アバン。いっぱい、いっぱいして下さい。何もかも、忘れるくらいに)  
 
すうっ、とフローラが全身に薄汗をかく。  
冷めかけた肌が、一気に火照りを取り戻すのを見て、キルバーンは口を歪めて嘲笑った。  
 
「クク・・・いい夢を見ているようだね。さあ、もっと夢見心地にしてやろう!」  
 
きつい快楽に慣らされ、やや感覚の鈍くなったペニスを、猛然と突きこむ。  
フローラの体が反り、白い喉がごくりと唾を飲むのが見えた。  
 
(ああ!アバン!もっと・・・もっと!!)  
「ヒヒヒ!どうだ!どうだっ!!僕の、僕のものでよがり狂え!!」  
(ああ、アバン!気持ちいいっ!もっと、もっと!もっと狂わせて!!)  
「どうだ!どうだ!このアマ!所詮はただのメス豚だっ!!!」  
 
フローラの肉裂から、大量に注がれた精液と、それを押し流そうとするかのような愛液が  
滝のように流れている。  
ぎゅう。  
膣口が、これまでにないほどにきつく締まる。  
中が、まるで精液を搾り取る為の魔物のように蠕動する。  
 
「こ、こいつ!こいつ!イケ!イケ!う、う、うわああああ!!!!」  
(あ、あ、アバン!イってもいいですか?も、もうだめです!い、イキますっ!)  
「う、わああ!!だ、ダメだ!も、もうっ!」  
(イク!イクっ!!ああああっ!イクぅっ!!!!)  
 
どくっ。どくっ。  
もはや、人間並みに量の少なくなった精液をキルバーンが放つと同時に、フローラは達した。  
細い顎を宙に向け、のけぞったまま失神する。  
完全に制御を離れた人形は朽木のように倒れ、キルバーンは一つ目をむいて痙攣していた。  
 
 
ようやく我に返り,人形を操って立ち上がらせるキルバーンに、全てを吸い取られたような  
重だるい疲労感がのしかかっていた。  
このちっぽけな使い魔こそ死神キルバーンの本体だと知れてしまえば、身の破滅である。  
このような無様な操り損ないなど、命取り以外の何物でも無かった。  
 
(それもこれも、こいつのせいだ)  
 
屈辱に震えるままキルバーンは人形を操り、ゆっくりと鎌を振上げさせた。  
殺そう。復讐は成った。  
こいつは無様にイった。そのはずだ。  
豚のような無様なイキ顔を嘲笑いつつ、殺してやろう。  
 
 
せせら笑おうとしたキルバーンの顔が、凍りついた。  
 
 
愛する人の幻影に抱かれ、絶頂して気を失った、フローラ。  
その表情は、まるで女神のように、穏やかで、美しかった。  
 
イカせてなど、いない。  
フローラをイカせたのは、彼女の心の中に住むアバンだ。  
自分はまるでコソ泥のように、主のいない肉体から快楽を掠め取ったに過ぎないのだ。  
 
「くっそおおおお!!!!」  
 
振り下ろされた鎌はフローラの脇にあった枕を切り裂き、白い羽をただ舞わせた。  
そのまま、振り返りもせず壁へ歩む。  
 
「覚えているがいい」  
 
屈辱に汚れた声が、惨めにキルバーン自身の鼓膜を震わす。  
 
「お前らはどうせ全滅だ。全ての希望を失ったその時!再び犯してやる!」  
 
股間に、再びあの底無しの快楽が蘇り、死神は戦慄した。  
 
「そうさ。もう一度。今度は、あらゆる仕掛けをして、お前を狂わせてやる・・・・・・」  
 
半ば独白のような捨て台詞と共に、キルバーンの姿は壁の中へ溶け。  
月光は、精液に汚され尽くしたフローラの白い肢体を、冷たく照らす。  
未だ意識を取り戻さぬフローラの頬に、星のような涙が流れて落ちた。  
 
「アバ・・・ン・・・」  
 
静寂と性臭の漂う部屋に。  
愛する人を求める、小さな呟きが吸い込まれて、消えた。  
 
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル