薄暗い部屋の中で響くのは、衣擦れと苦しそうに吐く息の音。
獣が発情したような荒い息を出しながら、一人用のベットの上で二つの影が動いていた。
乱れた衣服を体に纏わり付かせて、彼女は許しを乞うように声を出す。
「―――い、や……ぁっ。や、め………っぅ」
否定しようとした口を彼に塞がれ、彼女は苦しげに眉を顰めた。
さっきから発する言葉は全て彼の唇に遮られ途切れる……知識として知っていた口付けは
もっと甘くて優しいものだったのに、今自分がされているソレは痛さを感じるほど激しくて
苦しいものだった。
逃げ出したいと思っても、抱きしめられた体や重ねている唇から香ってくるアルコールに
目眩がして上手く体が動かない。
ベチャベチャと生々しい音を立てて絡み付いてくる大きな舌を、舌で押し出そうと足掻いても
結局は恋人同士のように絡めあうように形になってしまう。
まるで舌の動きを教え込むように、優しく絡めてくる彼の口付けに彼女の体は震えていた。
彼に対する恐怖でも、犯される恐怖でも無く、彼女は初めて感じるこの快楽が怖かった。
「ヒュン………ケルッ……っあ、ん、ん!」
名を呼んでも応える声も静かに笑ういつもの穏やかな表情も無い。
ただ愛しげに彼女の肌を撫でている手が、更に激しく優しく動くだけだ。
自分が余り触らない場所を彼に触れられている羞恥心で白い肌が紅い朱の色に染まっていく。
その色をたまらない気持ちで眺めながら、彼は豊かに膨らんだ彼女の胸に吸い付いた。
柔かい乳房に指を沈めて、少しだけ硬くしこり始めた小さな乳輪の形をなぞるように舐める。
「ひゃっ……!?ぁっ、イ、ヤ……だっっ」
奇妙な声を上げて悶える彼女に軽く笑って、悪戯のように震える突起に軽く歯を立てた。
自分の動きに合わせて、ビクンビクンと震える体をたまらない気持ちで抱きしめて
彼はずっと望んでいたその肌を堪能する。
まるで弱い兎のように怯える彼女の乱れた髪を優しく撫で、彼は言い聞かせるように口付ける。
元気な彼女に合わせて明るく揺れている桃色の髪は、まるで別の髪のようにしっとりと広がり
彼の手の動きに合わせてサラリと流れた。
その髪を一房掴みながら慈しむように口を付ける。耳から首筋、細い腕から柔かい腰と
体の線をなぞるように舌を這わして、硬く閉ざされた両足を大きく開く。
「っ………やっ、だ!!みな………いで」
誰にも、自分でさえも良く分からない場所をマジマジと見られて彼女は初めて恐怖に震える。
それを目ざとく感じ取りながら、彼はわざと優しい声で彼女の名を呼びその茂みに顔を埋めた。
知識としては理解していても、ぴちゃぴちゃと音を立てて自分の汚い所を舐めている彼の行動に
驚いてぎゅうっと目を瞑り、体中を回る強い痺れに必死に耐える。
唾液と愛液が混ざり合う音と、濡れた喘ぎ声が静かな部屋にいやらしく響く。
自分が作り出していく彼女の汚れた部分に満足しながら、彼は誰も触れたことの無い
硬く閉ざされた割れ目を舌で押し広げていく。
「ぅっ……んっ。あ、ぁん………っ!っ……!」
泣くような声を上げているくせに、鼻の先でツンと香る女の匂いに身を振るわせた。
我慢する事が出来ずに彼はズボンを下ろし、いきり立った肉棒を外に出す。
微かに、でも確かに滴る彼女の蜜に誘われるまま、彼は狭い中に半ば強引にソレを押し入れた。
「いっ――――!!!」
今まで感じた事の無いその痛みから逃げるように、彼女は腰をくねらしてもがいた。
彼は久しぶりに感じる女の温もりに身を震わせながら、細い腰に指を食い込ませ更に奥に入っていく。
ズルズルと膣肉を広げていく痛みが余計に彼の支配欲と優越感を高める。
労わるのではなく嬲る気持ちでゆっくりと時間をかけて彼女の中を自分の形に埋めていく。
体を貫く痛みに耐えている彼女は、ぼんやりと彼を見つめた後、そっと彼の頬に手を伸ばした。
その予想外の行動に彼は驚き目を見開く。気遣う事の無い欲望を優先した挿入できっと彼女は
泣き叫び、自分を嫌いになると思っていたから……。優しく頬を撫でる手を見つめて
彼は部屋に入って初めて彼女に語りかけた。
「何故……涙を零さない。犯されているのに俺が怖くは無いのか?」
――――嫌いにはならないのか?と、言いかけた言葉を彼は寸前の所で喉の奥で閉じ込める。
こんな風にずるく卑怯な事をしていても、彼女の口からその言葉を聞くのはとても怖い気がした。
まるで彼の弱い部分を知ってそれでも全てを許すように、柔かい手が彼の頬にそっと触れる。
初めて他人を体に受け入れる苦痛に息を吐きながら、それでも彼女は優しく微笑んだ。
「んっ……私は、自分の意思で、あなたを受け入れたいと思ったの……好き、だから…
だから、犯されてもいないし……怖くもないの……」
まっすぐな口調で彼に告げた後、彼女は繋がったまま体を起こしてぎゅうっと背中を抱きしめる。
驚く彼と徐々に薄れてくる痛みに軽く笑って、慣れない仕草で弱々しく腰を動かし始めた。
「っ………マァ…ム!?」
「――っ、んぁ!ごめん、なさい……良くわからないから……ぁん。気持ちよく、っん、
無いかもしれないけど……でも、もっとあなたと一緒にいたい………」
驚きの声を咎める声と勘違いした彼女は、たどたどしい口調でそう言いながら彼に奉仕しようと
幼い動きで懸命に腰をくねらした。
その初々しい動きが逆に彼の中の熱を高めていくとは気付かずに、彼女は何度も小さく謝って
健気に尽くそうと必死に大きな背中にしがみ付いて浅い動きを繰り返す。
まるでワザとじらしているような動きに耐え切れずに、彼は彼女の体を抱きしめて
そのままベットに押し倒した。
驚いて開いた口に吸い付いて、彼は貪るように彼女の体にある最奥をグリグリと擦り上げていく。
「んぅ……ぁ、ああ!!っん!まっ……って、ぁ、ヒュン…っ!!!」
紅く零れる証を潤滑油にして、自分の匂いを付けるように彼女の体を弄りながら激しく腰を動かす。
パンパンと鈍く鳴る肉の音を聞きながら、彼女が与えてくれる溶けるような快楽に溺れていた。
ぐちゃりと濡れる音が大きくなる度に、彼女も次第に快楽に身をゆだねる方法を覚えていく。
小さな動物が鳴くような甘えた声を出して、彼女は溺れるように彼の体に助けを求めた。
「ぁっ、んん……!!あっ……す、き……よ。ぁん!…好きに、なれて良かった………」
うわ言のように繰り返す彼女の声を聞きながら、たまらない気持ちで抱きしめた。
抱きしめる腕を喜ぶように、彼女の中がきゅうっと柔かく締まっていく。
その生々しい女の部分を感じて、彼も自分に限界が近い事を知る。
「マァ………ム!!」
「あっああ!!っっぁぁぁ!!!」
確かめるように名前を呼びながら、彼は壊しそうな勢いで激しく腰を動かす。
快楽で溶けそうになる意識の中で彼女の体を強く抱きしめながら、熱く濡れる中に精液を吐き出した。
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行為が終わった後、お互いに何も語らずにベットの中でまどろんでいた。
生まれて初めて感じるその穏やかな空気に身を委ねながら、彼は優しく彼女の頬を撫でる。
自分にもっと勇気があれば、酒の勢いではなくきちんと彼女を抱いてやれたのに……。
そう考えた時まるでその心を読んだかのように、優しくキスをして彼女は清らかな表情でフワリと笑う。
「私が望んだの……こうやってあなたに抱かれる事を」
―――― 好きよ。と小さく呟いた後、彼女は喜びの涙を零した。
その愛しいものを抱きしめながら、今まで閉じ込めていた本当の感情を彼女の耳元で甘く囁いた。
【終】