隊長の朝は遅い。鳥が鳴き、日が登り、世間がにわかに活動を初めても、星史はまだまだ起きない。
隊長の朝は遅い。星史曰く「毎朝が『めざまし』と『ちこく』との戦い」らしいのだが、小学生の朝という物は存外殺伐としているようだ。
隊長の朝は遅い。そもそも夜が遅いから朝も遅いのだが、星史にも地球を守る隊長としていろいろとやることがあるらしいというのが我々の結論だ。
それが我々に手伝える事ならば(命令があれば)手伝うのだが、人間の仕事という物は我々の手には負えない物も多い。そんな仕事を補佐してくれているのが
「あ〜んもう!星史君ちに宿題やりに行ったら毎回遅刻!」
「今日はお前だって寝坊したじゃんか!」
「ヤるのが宿題だけなら寝坊なんてしないわよ!」
この香坂ひかる嬢だ。私には出来なかった星史の大敵らしい『しゅくだい』という物を手伝ってくれている彼女も地球を守る勇者の一人と言っても過言ではあるまい。
星史の精神面の支えでもある彼女は最近では星史のヤル気の向上にも貢献してくれているようで、以前あれほど嫌っていた「べんきょう」にも星史は積極的にひかる嬢を家に誘ってやっている。
「はぁ・・・最近は事件が多くて報告書も多いなぁ・・・」
私の朝の最初の仕事は根元巡査を乗せてのパトロールだ。今日はそれに加えて本庁への出向もあるらしい。
私は元々パトカーなので根元巡査を乗せて走る事は意外と多い。それ自体は私の義務なのだから構わないのだが、最近は増えてきた愚痴に、正直・・・辟易している・・・・・
「最近は全然休めないし、星史君はからかい甲斐がなくなってきたし、ひかるちゃんに至っては顔を赤くして照れてるし。本官もそろそろ縁談でも紹介してもらう時期なのかも知れんなぁ・・・二人に窓くらい閉めるよう言うのも本官の義務なのだろうか・・・はぁ」
こんな感じで延々と愚痴を聞かされ続けるのだ。根元巡査は独り言のつもりなのだろうが、私としては非常に心苦しい。今は根元巡査を下ろして駐車場で待機中なのだがどこかへ走り去りたい衝動が湧いて・・・いかん。職務を全うせねば。
『こちらシャトルセイバー。ロッキー山脈上空に奴らのメカを発見!』
む、丁度いい・・・ではなくて
「了解した。星史、アメリカ東部に奴らが出たとセイバーズから連絡があった。至急命令を」
『えぇっ!?まだ授業が・・・あぁもう!!セイバーズ、ランダースは出動!ダ・ガーンは俺を迎えにくるんだ!』
『『「了解!!!」』』