星史と螢
たった二人しかいない孤独の夜、二人は初めて体を重ね合わせ、
それぞれの想いを確かめた……はずだった。
「星ちゃん、ビックリするんじゃないかしら」
「まさか、我々が突然、家に帰ってくるとは気づくまい。
たまには、親子3人でスキンシップでも図ろうかと思ったが……まぁ良い」
先程まで星史と螢がいたリビングで、光一郎と美鈴はコーヒーを飲んでいた。
2階から、星史と螢が互いを求め合う声が聞こえてくるが、
両親は全く動ずる様子を見せない。大人の度量と言うやつなのだろうか。それとも……
いずれにせよ、螢が家の中にいる事を、光一郎と美鈴は、帰宅した時に既に気付いていた。
しかし、当の星史は、まさか両親が今、帰ってきているとは思ってもいない。
「星史のやつめ…まだまだ子供だとばかり思ってたが…
…母さん……孫の顔を見るのも、そう遠く無さそうだな」
「いやですわ。あなたも冗談が上手いのね」
コーヒーを飲み終えて、全く表情を崩す事の無い光一郎の言葉に、
美鈴は顔を赤らめて応えた。
顔を赤くしつつも、美鈴は光一郎の傍に寄ると、その頬にキスをした。
愛妻のキスを受け止めつつ、光一郎はさりげなくVサインをする。
「私たちも負けてはいられませんわね」
「うむ。親としての示しを付けねばならんからな」
そう言うと、二人はリビングを出て、自分たちの寝室へと向かった。