あっという間だった。
気がついたら、フランソワーズは、ダブルベッドに縛りつけられてしまっていた。
手首には、電磁ロックがはめられている。「新・黒い幽霊団」の北極基地で使われていたのと同じものだ。
しかも、その電磁ロックはリモコンのオンオフによって、電流を流す。これにやられてしまった。
リモコンを手にして、ベッドのわきに澄ました顔で立っているのは、和泉ジュン。世界的なテニス・プレイヤーで、フランソワーズの友だちだ。いや、友だちのはずだった。
「目が覚めた?」
ジュンが聞いた。
フランソワーズは、手足をがたがたと動かした。しかし、もちろん自由にならない。
顔をあげて、あたりを見まわすと、四肢の先の革ベルトが目に入った。電磁ロックはベッドの頭上の柵に、両の足首はベッドの脚に、つながれている。
おのずと2本の脚は、V字形に開かれる。
「ジュン、いったい何を・・・」
「言ったでしょ?」ジュンは、ベッドの端に腰をかけた。「・・・あなたにお礼をしたいの、って」
そう言うと、フランソワーズのすんなりとした脚を撫で上げた。手がスカートの裾にかかると、そのまま、まくり上げる。
「いい服着ているわね。・・・バレリーナって、もうかるの?」
ジュンの手の動きにあわせて、優美な太ももがあらわになった。
フランソワーズが高価な服が着られるのは、イワンやギルモア博士が、数え切れないほどの特許をとっているためだった。
ギルモア博士の研究所は、いつも最新の設備を整えられるし、ジョーはスポーツカーを次々に買いかえる(もっともレーサーである彼の場合、スポンサーから提供されることもあった)。
しかし今はむろん、そんなことを説明するつもりはない。
内ももを撫で回すジュンの指先に、異様な執着心が感じられた。フランソワーズは、鳥肌のたつ思いがした。
「ねえ、ジュン・・・。なにかの冗談よね?」
「あら」ジュンは語調がきつくなった。「あたしはマジよ」
服地が破れそうな勢いで、一気にスカートをめくりあげる。
シンプルなカットの白のパンティが、やわらかな曲線を描いて姿をあらわす。飾りけのないデザインが、かえってフランソワーズの女としての魅力を引き立てていた。
「まあ、下着も贅沢・・・。エレスでしょ?」
ジュンが、嘆声をあげた。
30度ほど開かれた両脚の付け根では、白くてつややかな布がムンとせりだしている。薄い布は肌にぴったりと張りつき、股間のやわらかなふくらみを浮き彫りにしていた。
「おいしそう・・・」
ジュンの指が、フロントの中心部を撫でおりる。中指が、むにゅっとめりこんだ。
「・・・む、ふん」
フランソワーズは、思わず鼻奥から息をもらした。
ジュンは、同性愛者? あたしを犯そうとしている?
思わぬなりゆきに、頭が混乱した。
ジュンは、先日のウィンブルドン大会では、ベスト8まで勝ち抜いた。
今夜は、そのお祝いをふたりだけでしようというジュンの誘いに応じ、彼女が宿泊するホテルまで訪ねてきたのだ。
部屋は、彼女の名声にふさわしく最上階のスイート・ルーム。豪華なソファやテーブルセット、サイドボードなどが並ぶリビング風の部屋と、広々としたベッドルームがつながっている。
大きく開いた窓からは、東京の夜景が見わたせた。
そんな豪華な場所で、ジュンはフランソワーズをだました。「プレゼントがあるから目を閉じて」と言って、手に電磁ロックをかけたのだ。
しかも、電気ショックのおまけつき。すぐに気が遠くなった。0010、プラスとマイナスの兄弟に襲われたときの記憶がよみがえり、背筋が寒くなった。
そして気がついたら、このざまだ。
お祝いの席だったので、フランソワーズは、エミリオ・プッチの派手なシャツに、オフホワイトのひざ丈スカート、素足にパールホワイトのサンダルという、カジュアルななかにも、華やかさのある服を身につけてきた。
そんな恰好に、野暮な電磁ロックは、あまりにも似合わない。
「ジュン・・・。とにかく、説明して・・・。何をしようというの?」
ジュンは、すぐにこたえず、フランソワーズの股間をさすり続ける。
フランソワーズも、自由になる範囲で膝を曲げたり、腰を左右にふったりして抵抗するが、どうにも逃れきれない。
ジュンの指は、クリトリスのあたりをさぐりあて、下着の上から、ぐりぐりと押し回した。
「う、くっ。・・・もう、いい加減に」
フランソワーズは、眉をひそめて、身もだえた。頑丈なベッドが、ギシギシときしんだ。
「ほんときれい・・・。復讐しがいのある体だわ」
その言葉に、ハッとした。
「今、なんて言ったの?」
ジュンは、冷たい視線で見かえす。
「わからない人ね・・・。あたしが受けた屈辱を、これからたっぷり返してやるってことよ!」
その言葉が終わらないうちに、ジュンの指がパンティのふくらみを思いきりつねあげた。
「っあぐッ・・・」
あまりの激痛に、フランソワーズは顎をのけぞらす。敏感な部位だけに、神経を直接つつかれたような痛みが走った。
ジュンは、「ふん」と言って立ち上がると、ベッドわきの籐椅子に深々と腰かけた。
「前奏曲は、ここまで。これからが本番よ」
「本番?」
フランソワーズは、横目でジュンの顔を見た。
「そのとおり」ジュンは笑ってから、隣の部屋へ向かって声をかけた。「準備はできたわ! おいで!」
ドアが開き、ハゲ頭の小柄な中年男が入ってきた。なぜか白衣姿で、目が見えないのか、真っ黒いサングラスをつけている。
「さ、あこがれのサイボーグ003を自由にしていいわよ」
中年男は、ぐへへ、とよだれを垂らした。
フランソワーズは、初めて恐怖を覚えた。
小男の欲情はたしかに不快だった。が、それ以上に、ジュンが自分をサイボーグと知っていることのほうがショックだった。
小男は、無言でフランソワーズの体の上に這いあがってきた。
本能的に身をよじるが、どうにもならない。男は彼女の腰を押さえつけ、すでにテントの張っている股間を、純白のパンティの頂にすりつけた。
女らしさをたたえたふくらみが、黒いズボンの生地に押されて、歪んだ。
あまりの屈辱にフランソワーズの手足がぶるぶると震える。サンダルのヒールが、革ベルトにあたってカタカタと鳴った。
男はさらに両手を伸ばし、服の上から胸を揉みはじめた。
「フッム・・・」
フランソワーズは、息を呑んで、小男の顔をにらみつけた。エミリオ・プッチの幾何学模様がねじれるほど、胸を強くつかまれている。
小娘のように、きゃあきゃあ騒ぐつもりはない。何とかして、男のたくらみを阻止したい。その方法を思いつくまでは、とにかく耐えるしかない。
「へっへ。いい匂いだ・・・」
小男が声をだした。胸の隆起に顔を近づけて、くんくんと鼻を鳴らす。マタタビを与えられた猫のように、陶然とした表情をしている。
両手は、ゆっくりと、フランソワーズの胸を味わうように、揉みつづけている。
「フランちゃんのオッパイ、大きいわね」ジュンが言った。「90は超えている?」
フランソワーズは、無視した。すると、ジュンがリモコンを振り回して、
「電流を流すわよ!」
と叱責した。そして実際に、ぴりっと、弱電流を流した。
「ひ・・・」
フランソワーズの両腕がおののいた。上に乗っている小男も、「うげげ」とうめいた。
冷静に考えれば、小男がまとわりついている以上、強い電気を流すわけがない。しかし、フランソワーズを脅えさせるには十分だった。
「ねえ、こいつなんか、どうだっていいの。答えないと、もっと強い電流を流すわよ。90超えている?」
「・・・ちゃんと測ったことないの。たぶん・・・90はないわ」
「じゃあ、88くらい?」
「・・・そうね」
フランソワーズは消え入るような声でうなづいた。
「まあ、大きい。あたし、嫉妬しちゃうなあ」
ジュンが楽しげに笑う。
中年男は、ふぐぐ、と喉をならした。胸を揉む手の動きが、いっそう粘っこくなった。指の一本一本に念を入れるように、丹念にもみあげる。
やわらかな膨らみが、むにゅん、むにゅん、と上下左右に自由に動いた。
男の手が、貪婪に移動し始める。服の上から、フランソワーズの体の線を確かめるように、胸、腰、そして下腹部へと這い回った。
背後に手をまわし、腰から尻にかけて、手のひらでさする。曲線美を確かめるように、上下に何度も往復する。
そうしながら、股間のふくらみに頬ずりする。パンティの悩ましい丸みを、皺まじりの頬骨でぷにゅぷにゅと押し回す。
「んっく・・・」
フランソワーズの全身に悪寒がはしる。青い瞳が怒りと恥辱に燃えた。
ジュンは、退屈しきった顔で、ベッドの脇に戻ってきた。
「ね・・・。こいつが誰だか、知ってる?」
「・・・知るわけないでしょ」
「暗殺者のレントゲンだよ。ほら、昔、あんたたちを殺そうとした・・・。0013とかと一緒に」
古い話だった。しかし、昔のことだから、覚えていないのではない。フランソワーズは、この盲目の男とまみえたことはないのだ。
だから彼女にとっては、貧相なめくらのエロじじいだ。
そのエロじじいが、フランソワーズの股間にしゃぶりついた。
「はんっ・・・」
ジュンの話に気をとられていたフランソワーズは、思わず荒い息をもらした。
「・・・気持ちよくなった?」
「そんなこと」
フランソワーズは、ぶるぶると首を振った。それは、否定の意味をこめてというより、男の動きに耐えるためであった。
レントゲンは、パンティの中心に刻まれた縦長の線に、鼻をうずめて、思いっきりす〜は〜っと匂いをかいだ。
女の匂いが、凝集していた。股間の奥底から湧き出る芳香は、脳髄にまで達するようだった。
うっけっけ、と、盲目の小男は、フランソワーズの股の間でわめく。
舌と唇を、狂ったようにパンティの上で動かした。唾液がいくらでもわいてきた。
白い布が、水分を含み、徐々に透けてくる。
フロントでは、ヘアーの広がりが確認できた。クロッチ部分も濡れに濡れ、媚肉の形のままに、複雑によれていた。
「フランちゃん、いいこと教えてあげようか」
「・・・なに?」
男の動きに抵抗しながら、フランソワーズは聞いた。
「あたしを一流のテニス・プレイヤーにしてくれたのは、『新・黒い幽霊団』なのよ」
「なんてこと・・・」
確かに、彼女のトレーニングにつきあった時は、つらくあたった。何度か殴ったし、食事の邪魔もした。しかし、それは彼女の反射神経を、そして何よりも精神をきたえるためだった。
その証拠に、日本オープンでは、パッシング・ショットが見事に決まったではないか。
なのに、彼女はそれ以上の栄光を求めて、悪魔に魂をわたした・・・?
「なんか勘違いしてるでしょう? あたしは、もともと『新・黒い幽霊団』の人間なんだよ」
「え」
「フランちゃんに近づいたのも、サイボーグの弱点を探るため」
目の前が真っ暗になった。
が、いつまでもショックを受けている余裕はない。レントゲンが、体の上を這い上がりはじめていた。
フランソワーズは、次の動きにそなえて、身構えた。ぐっしょりと濡れた股間が、あまりにも気色悪かった。
小男は、唾でぬれた唇を、フランソワーズの顔に近づける。
「んむう・・・」
キスはされたくないので、顔をそむける。
はぁ、はぁ、と、くさい息が、鼻の近くにまで寄ってきた。
「ダメよ、フランちゃん。愛の挨拶は、ちゃんとうけないと」
ジュンが、フランソワーズの頭部を両手でつかむ。トップ・アスリートだけに、握力は強く、簡単に自由をうばわれてしまった。
ジュンの右手が、フランソワーズの両頬をはさみつけ、むりやり口をこじ開けた。可憐な唇が上下に割れる。
その上で、レントゲンは、うが〜と口を開けた。
たまりにたまった唾液が、まっすぐに垂れ、フランソワーズの口の中へと流れこんだ。
「えうっ・・・」
フランソワーズは、強烈な吐き気に襲われた。中年男のねっとりとした唾が、のどにたまり、窒息するかと思った。
肺の近くにある水中活動用の酸素ボンベが緊急発動したくらいだ。
レントゲンが唾を流しおえると、ジュンは、フランソワーズの口をふさぎ、鼻もつまんだ。
「さ、唾をのみこみなさい」
「んぐ・・・、んぐぐぐ」
フランソワーズは、涙目になりながら、生臭い液体をのみこんだ。
「へへへ」
レントゲンは勝ち誇ったような声をあげると、シャツの襟に指をかけた。
「・・・やっ」
フランソワーズは、身をよじった。無駄だと分かっていても、抵抗しないわけにはいかない。
レントゲンの手先は、襟元でとまどっていた。比翼仕立てで、ボタンが隠れているので、野暮な中年男にはどうしたらいいかわからなかった。
「くそっ」
短く毒づくと、服地を握りしめ、左右に荒々しく開いた。ボタンが弾け飛び、胸から腹部までが一気にさらけだされた。
乳房を包んでいる白いブラジャーの生地は薄く、乳首が薄桃色にすけている。豊かな隆起が、フランソワーズの呼吸にあわせて、上下に浮き沈みしていた。
レントゲンは、ぐるるる、と喉を慣らしながら、ブラジャーのカップを押し上げる。下部のワイヤーが胸のふくらみに引っかかったが、力づくで上にはずす。
「・・・うあっ」
フランソワーズは、小さな悲鳴をあげた。
ふたつの乳房がプルンとむき出しになった。
仰向けに寝ていても、豊満な乳房は崩れない。先端では、ピンク色の乳首がピンと突きだしていた。
「あら、フランちゃ〜ん」ジュンは目ざとかった。「乳首が立ってますよ・・・。感じているの?」
「それは」
電流のショックのためだと言おうとした。しかし、説明するだけ虚しくなりそうなので、あとに続く言葉を飲み込んだ。
レントゲンは、フランソワーズの乳房を下から包むようにこね上げると、乳首を口に含んだ。
「フッムん」
フランソワーズは、腹筋に力を入れて耐える。痛みをこらえるようなものだ。頭のなかで山中の清流を思いえがき、自分が受けている仕打ちを意識しないようにした。
レントゲンの舌と唇は、相変わらず、ねっとりとした唾液にまみれていた。
右の乳首を味わうと、左の乳首にうつる。なめらなか乳輪に唇を押しつけ、チュブーッと音を立てながら、乳首を強く吸い上げた。
「・・・イッ、つっ」
乳首が引きちぎられるような痛みに、フランソワーズは顔をしかめる。男の強烈な攻めを受け、乳房の先が、ズキンズキンと熱くなった。
不意にジュンが、レントゲンの襟首をつかみ、フランソワーズの胸元から体を離した。
「フランちゃんに夢中になるのはわかるけど、仕事はしっかりしてネ」
「け。・・・わかってるよ」
レントゲンは、名残惜しそうにフランソワーズの乳房を睨んでから、黒いサングラスをとった。
「あ」
フランソワーズは、思わず声をだして驚いた。
人の目があるべきところに、デジカメのレンズのようなものが埋め込まれている。いや、それがレントゲンにとっての人工の眼なのだろう。
かつては双眼鏡型だったスーパーレンズ眼も、コンパクトに進化したのだ。
「さあ、フランちゃんの撮影会が始まりますよ・・・」
「え・・・」
狼狽する間もなく、レントゲンのレンズが、フイーンと音を立てながら飛び出てきた。
ズームになっているらしい。レンズの先にあるのは、もちろんフランソワーズの体・・・。
部屋には壁掛けタイプの大型モニターがあった。
そのスイッチを、ジュンが入れる。画面に、ベッドに縛りつけられているフランソワーズの姿が、大写しになった。
「さすがフランちゃん。縛られてても、気品があるね」
フランソワーズは、頭がくらくらした。
乳房を思いっきりさらし、股間では白いパンティがぐっしょりと濡れ、ハニーブラウンの茂みが透けている。モニターに写った自分の姿は、あまりにも淫らだった。
「『新・黒い幽霊団』が、電波ジャックなんて、簡単にできることは知ってるわね?」
「・・・」
「フランちゃんが、あんまり抵抗すると、この映像を世界中に流すわよ。こんなふうに」
そのとき、新宿東口のアルタ前で信号待ちしていた人々は、ビルの壁面モニターに映し出された光景を見て、どよめいた。
美しいプロポーションをした白人女性の半裸姿が、とつぜん映し出されたのだ。
膝から首までの映像なので、縛られていることはわからない。
だが、男たちは、乳首を立てた見事な乳房、白いパンティごしに見えるハート形の茂みを確認した。
女優かスーパーモデルだろうか?
なんだか、一緒に歩いている恋人や妻の体が、ひどく貧相に思えてしまった。
その様子は、ホテルの寝室のモニターにも映し出されていた。
「やめてェッ!」
フランソワーズは、絶叫した。
ジュンが、スイッチを切る。
アルタ前のモニターは、某テレビ局のイベントの宣伝に変わった。
「わかった? フランちゃんを、一瞬にして、世界中の男のオナペットにできるのよ」
「・・・」
答えようがなかった。唇をかみしめて、ジュンの顔をにらみつけた。
「だから、あたしが訓練中に我慢したみたいに、これからは、何をされても我慢しつづけるのよ」
「・・・ねえ、ジュン。あのとき、つらくあたったのは、あやまるわ。だけど、あたしだって、つらかったのよ・・・」
「あんな馬鹿げた訓練が本当に役にたつと思う?」
ジュンの言葉は冷ややかだった。「フランちゃんは、あたしを調教しようとしたのよ。・・・だから、あたしもお返しに、調教してあげるの」
「そんな・・・」
フランソワーズが絶望的な思いにとらわれた瞬間、レントゲンの指が白いパンティにかかった。
一気に、膝上まで下げられた。
小さな布が、両脚の間でピンと張り、乳白色の肌に食い込む。陰毛は濡れそぼり、先端が筆のようにとがっていた。
「ああ・・・」
フランソワーズの口から、諦めに近いため息がもれた。
レントゲンのレンズ眼は、むき出しになったフランソワーズの女陰をとらえる。
落ち着いた色合いの陰毛は上品に生えそろい、縦長の割れ目は優美な曲線を描いて息づく。裂け目からは、瑞々しい花弁がもれている。
花弁の色は、コーラル・ピンクから鮮紅色まで、複雑なグラデーションを描く。色のくすんだところはなく、剥きたての果実のようにつややかだった。
フランソワーズは、歯を食いしばったまま、視姦に耐えた。腰を動かすまいとして、太ももがピクピクと緊張した。
男の手と舌の動きから、飢えていたことはわかっていた。それにもかかわらず、自制心を発揮して、冷静に撮影していることが不気味だった。
レントゲンの指が、女陰を左右に大きく割った。小さくすぼんだ肛門まで、レンズの前にさらされる。開ききった媚肉が、照明を浴びて鮮やかに輝く。
やがてレンズを眼孔にもどすと、再び股間に顔を埋めて、舌を伸ばす。
肛門のすぐ近くに舌先を置き、まずはくすぐるようにチロチロと舐める。それから、ゆっくりと、クリトリスまで舐めあげた。
「・・・ンンっく」
フランソワーズは苦悶の表情を浮かべ、両手を強く握りしめた。
男の舌は、何度も股間を往復した。その生ぬるい感覚にぞっとした。
「どう? フランちゃん、感じてきた?」
ジュンがフランソワーズの顔を覗きこんだ。フランソワーズは、顔をしかめながら首を振った。
「あら。レントゲンじじいが下手なのね」
「・・・?!」
「じゃ、こうしよう」
ジュンが靴を脱ぐ。ベッドの上に乗ると、フランソワーズの胴体を足で挟む形で仁王立ちになった。
赤いワンピースの裾から、ワインレッドの下着が丸見えになったが気にする様子もない。
「どうすれば感じるのか、フランちゃんに教えてもらおう」
そう言いながらも、右足でフランソワーズのバストを踏みつけた。
「うっ」
あまりの痛さに、フランソワーズは絶句する。
ジュンは、構わずに力をこめて、ぐにゅぐにゅと胸のふくらみを踏み回した。
フランソワーズの上半身が、マットレスに深く沈んだ。左の乳房に飽きると、右にうつる。
「こんな憎らしいオッパイをして、男嫌いのはずないもんね」
「そんな」
「おっきなオッパイで、たくさんの男をたぶらかしてきたんだろ・・・」
「うう・・・。してないわ」
「あんたは、女の敵よ」
ジュンは、足の指を器用に使って、乳首をねじ上げる。
「おおっ・・・。おね、・・・お願い。・・・やめて」
「だったら、女の喜ばせ方を、この爺に教えてよ」
フランソワーズは、激しく首を振った。それどころではない。すぐに足をはなして欲しかった。
「ンもう・・・。正直じゃないんだから」
ジュンは、乳房から足をはずすと、素速くしゃがみ込む。フランソワーズの頭を両手ではさみ、無理矢理うなづかせた。
「やっぱ、フランちゃんは優しい」背後のレントゲンを振り返った。「感じるポイントを、教えてくれるって」
ジュンは、自分のパンティを脱ぐと、ワンピースの裾をたくしあげ、おしっこをするようなポーズで、フランソワーズの顔の上にまたがった。
「な・・・」
予想外の行動に動揺した。
筋肉質の尻が接近したときは、思わず顔をそむけた。しかし、やはりジュンの腕力によって正面を向かされてしまった。
「さ、フランちゃん、お手本を見せて」
ジュンの股間は、毛深かった。黒々とした剛毛が、肛門のあたりまで続いている。わずかに開いたクレバスからは、赤紫色の花弁が物欲しげに顔をだしていた。
割れ目の上端が鼻先をかすめたかと思うと、そのまま女陰が、フランソワーズの鼻と口をみっしりとふさいだ。
「ンンンーーーーーー」
うめき声をあげて、抗議した。太い毛が、鼻の穴にまで入ってきた。
「素敵」ジュンが、とろっとした声をあげる。「天然のバイブレーターだわ。レントゲンも真似するのよ」
フランソワーズは、自分の股間が、男の生あたかい口に覆われるのを感じた。
レントゲンは不器用に、ブブブブと口先で振るわし、花弁を刺激した。馬鹿馬鹿しくはあったが、敏感な部分が振動したはずみで、腰を浮かしかけた。
「あら、感じている」その動きをジュンは見ていた。「・・・次はどうする?」
ジュンは、おねだりするように、股間を前後に揺らした。すでに染みだしていた愛液が、フランソワーズの鼻先から顎を容赦なく濡らす。
酸っぱい匂いに、顔中がつつまれた。
「ねえ・・・」
女陰をぐいぐいと顔に押しつける。フランソワーズは、目を閉じて、嵐が過ぎるのを、ひたすら待った。
「ねえ!」ジュンの声が強くなる。「あたしのオマンコを舐めないと、フランちゃんのヘアヌードが全国放送よ」
「・・・んんん」
股間の下で、フランソワーズは小刻みに首を振る。
「じゃ、舐めな。舌と唇で、あたしをいかせるんだ」
フランソワーズは、おずおずと舌をさしだし、愛液まみれの媚肉を舐め上げた。
ひらひらした花弁を唇ではさみ、チュチュっと吸い上げる。
「あ・・・」ジュンがのけぞった。「いい・・・。まずは、ビラビラを吸うのね」
その言葉に反応して、フランソワーズの股間では、レントゲンが同じことをする。
ふたりの性器が生み出す、ヂュル、ヂュル、というシズル感のある音が、ベッドの上で共鳴した。
さらにフランソワーズは、両サイドの花弁に舌を這わせ、表裏のすみずみまで舐めまわす。
「あああん・・・、やっぱ上手。・・・ビラビラを隅々まで味わって」
レントゲンは、ピンク色の花弁をむさぼる。
「舐めて、舐めて、舐めまわすの」
叫びながら、ジュンは股間の位置を微妙にずらした。
フランソワーズの舌先は、おのずと花弁をかき分け、クリトリスの尖端に達した。唇を使って包皮をめくり、クリトリスを舌で転がした。
「アッ・・・、ウッ・・・、ひいい」ジュンの声は歯止めがきかなかった。「次はクリトリス攻めよ」
男の舌先も、フランソワーズの小陰唇を開き、真珠のようにつややかな花芽をつつき回す。まるでパソコンのトラックボールを動かすように、くりくりといじくった。
「吸って・・・」ジュンが絶叫する。「強く吸って・・・」
フランソワーズは、ジュンのクリトリスをチュチュっと吸う。同時に、自分の花芽もレントゲンによって吸い上げられる。
だんだん混乱してきた。
ジュンがいちいち叫ぶので、まるで自分が指示しているような錯覚におちいった。
彼女のあられもない声が、自分の感覚を代弁している気がしてきた。
知らないうちに、腰をくねらせていた。
「舌と口を、動かして」いつの間にかジュンが命令している。「おおお・・・。クリトリスを、しゃぶりつくすの」
本当はどうすればいいのか、フランソワーズには、わからない。クンニをされた経験はあるけど、するのは初めてだ。
とにかく、クリトリスに舌と唇を這わせて、早口言葉を喋るように細かく動かした。
「いい・・・。いい・・・」ジュンは、腰をふるわせた。「すごいわ」
同時にフランソワーズのクリトリスも、しゃぶりつくされていた。男の口が、もの凄い勢いで小さな真珠をなぶり、吸いつき、なめあげた。
「ンンン!」
フランソワーズの心のすきを突くように、鮮烈な感覚が打ち響いてきた。
自分の体が信じられない。気が狂いそうなほど異様な状況が、汚辱感や怒りをどこかへ追いやりかけていた。
ジュンが、すっと腰を浮かした。
「・・・はああンッ!」
フランソワーズの口から甘いあえぎが漏れた。
レントゲンが、左足首のベルトを外した。
腰にまとわりついていたスカートを、パンティとともに剥ぎとり、ベッドにつながれたままの右足のベルトにかける。
フランソワーズの下半身に残っているのは、足にはいたサンダルだけになった。ぷりんとした尻が、ベッドに美しい凹みをつくっていた。
小男は、自由になった左脚を肩に担ぐようにして折り曲げる。
ズボンから男根を取り出すと、迷うことなく、ぬぷり、と、フランソワーズの蜜壺に挿入した。
「はうっ・・・ン!」
苦悩の表情を浮かべながら、ひと声あげてしまった。あわてて、唇をぐっと噛みしめる。
ジュンは、ニヤリと笑って、床へ下りた。
「もっと正直になりな・・・。感じてるんだろ?」
フランソワーズは、セミロングの髪を振り乱して、ジュンの言葉を否定した。
股間を貫かれて、全身の血流が逆巻くのは感じる。だが、それは快感とは違うもののはずだ。できれば、すぐにでも男のモノを、体外へ吐き出してしまいたかった。
そんな嫌悪感とは裏腹に、蜜壺は中年男の男根をしなやかに包みこむ。
自分の体の構造がうらめしかった。ずっぽりと根元まで嵌められた逸物に、肉襞が勝手に吸いつく。汚らわしい男に、喜びを与えてしまう。
レントゲンは、ぐへへと、表情を崩し、彼女の胸の谷間によだれを垂らした。
あと少しの辛抱だ・・・、と、フランソワーズは、自分に言い聞かす。もう心のすきはつくらない。息を詰めるようにして、肉体を襲う衝撃に耐えた。
中年男は、グラインドを開始した。ゆっくりと逸物を抜き取ると、スピードをつけて膣に打ち込む。
「ん・・・、ふんむ・・・、んん・・・、ぁむ・・・」
いくら口を閉じていても、喉の奥からすすり泣くような声がもれる。
動きは、滑らかだった。長く愛撫されたために、フランソワーズの思いとは関係なく、媚肉は蜜液にあふれていた。
男根を打ちつけるたびに、媚肉がピチッ、ピチッ、と弾けた音をたてる。胸ではふたつの乳房が、プルプルッと柔らかに震えつづけた。
レントゲンとしては、女が声をださないのが不満だったが、豊かに弾ける肉体を組みしいているのだから、贅沢はいえない。
溌剌とした乳房、くびれた腰、豊かな腰まわり、どこをとっても最高の官能性にあふれていた。
蜜壺も最上級の締めつけ具合で、複雑に入り組んだ肉襞が、男根を奥へ奥へと巻き取るように導く。
「ぬおおおおっ」
中年の小男は知らずのうちに、咆哮をはなっていた。長年生きてきて、初めて味わう極上の女体だった。
そんな二人の様子を、ジュンはベッド脇に立って見守っている。
瞳が怒りに燃えていた。
レントゲンの、にやけた顔が許せなかった。
こんな時でも、男の心をとろかしてしまうフランソワーズの肉体は、それ以上に許せなかった。
オニのような顔で立ち上がると、電磁ロックのリモコンを押した。
「んあああああっ!」
喉から絞り出すような声を、フランソワーズは放った。
微電流ではあったが、稲妻が脊髄を駆け抜けたように感じた。
反応は劇的だった。一瞬にして、全身の性感が増幅された。
体を抑制していた理性が吹き飛ばされて、自分が自分でなくなる。
地獄のごとき官能が、肉体を襲ってきた。
「やあぁぁぁぁっん。・・・やめて!」
フランソワーズは、ジュンに哀願した。四肢を突っ張らせて、顔をのけぞらせた。体が、ばらばらになるかと思った。
ジュンは、逆に電流を強めた。
「ひいいいい・・・」
心と体のバランスが完全に失われた。耐えに耐えてきたもののすべて、矜持も誇りも平常心も、何もかもが激流にのみこまれていく。
「うおおおおお。なんだ、こりゃ」
衝撃は、女の体を通して、レントゲンにも伝わった。
ただでさえ、ねっちりと男根を締め上げる女陰が、ぴくぴくぴくぴく・・・と細かく痙攣する。精気のすべてを吸い取られてしまいそうなほど、快美な感触だった。
フランソワーズは、激しく身をくねらせる。腰が勝手に浮き上がり、恥丘を男のしげみにこすりつける。
「ああん・・・。いやいやいやいや・・・」
泣きじゃくるような声をあげて、乳房を、ぶるぶるぶる、と打ち振るわせた。その尖端では、ピンク色の乳首が、恥ずかしいくらいに、そそり立っていた。
目を閉じれば、極彩色の螺旋模様が、とぎれることなく渦巻いた。トリップしているのと同じだった。
蜜壺は、失禁してしまったかと思うほどに、熱い果汁を垂れ流した。
ジュンが、リモコンのスイッチを切った。
それでも、一度始まった崩壊はとまらない。
脳の一部が痺れたまま、原始的な欲求だけが、たくましく生き残っていた。
「んんん・・・ハアアアッ!」
体の奥底から湧いてくる歓喜に、フランソワーズは甘美な嗚咽をはなった。
もう自制はきかない。どうにもならない。
自由になる左脚を、レントゲンの腰にからませ、白くなめらかな下腹部を、中年のしなびた皮膚に押しつけた。
ヌプン・・・、ヌプン・・・と、男は腰を大きく動かし、フランソワーズの股間に男根を打ちこみつづける。
「ひぅ・・・、はんっ・・・、ああんッ!」
亀頭が膣の奥壁にぶつかるたびに、愉悦の声をあげた。頭が真っ白になっていた。
プルプルプルとふるえる乳房に、男がかじりつく。ふくらみを揉みしだきながら、ビンビンに立った両の乳首を交互にしゃぶった。
「オオオン!・・・もうっ・・・だめ、だめ・・・、いやああああん」
フランソワーズは、豊かな髪を振り乱しながら、悲鳴をあげていた。
レントゲンも、限界に達していた。
次々と浴びせられる蜜液と、絡みつく粘膜に、男根は熱くとろけそうになっていた。
くねり続ける腰を押しいだき、猛然と最後のストロークを叩きつけた。
「ひあああああっ!・・・いっ・・・やん・・・ああん・・・いっ・・・っく・・・」
太ももが硬直し、胸が苦しげに波打った。放心したように開いた唇からは、涎が垂れていた。
ジュンは、蒼白な顔でその姿を見下ろした。
「チクショウ! そのまま逝っちまえ!」
かなり強い電流を流した。
「んきゃああああ!」
フランソワーズは、一瞬の絶頂感を味わった直後、レントゲンとともに失神した。
歓喜の表情を浮かべたまま、意識をなくした。
その横顔に、ジュンは話しかけた。
「フランちゃん・・・。ホントのお楽しみは、これからだからね」