「気高い女が、こんなことでへこたれちゃダメじゃないか」  
 ユウジは、フランソワーズの左足をとり、室内履きを脱がせた。  
 右足とベッドにすりつけた額のみで体を支える彼女は、ふりむくことができない。されるがままだった。  
 裸足の裏に、ぬむっと生暖かいものがあたった。  
 勃起したペニスをなすりつけられたのだ。いつの間にか、ユウジはズボンを下ろし、下半身をむき出しにしていた。  
「キミの足で、ボクのものをしごけるかい・・・」  
 言葉は優しいが、ナイフの峰はアキレス腱をとんとんと叩いていた。逆らうことの許されない命令だ。  
 フランソワーズは、足の親指と第二指でペニスの根元をはさみ、上下に動かした。海中でナマコを踏んだような、ぬめっとした感触が伝わる。  
 体勢が安定してないし、足で男性のシンボルをしごくのも初めてだから、力のいれぐあいがわからない。  
 だが触覚に敏感な足の裏で男性を感じると、こんなにも固く熱いのか、と驚きがあった。  
 肛門をさいなむローターの振動と相まって、その熱いモノに貫かれる瞬間をつい想像してしまう。  
 花唇が、じ〜んと、ほてってきた。  
「さすがバレリーナ、足の使い方も上手だ・・・」  
 ユウジは足首を手にとり、さらに上に持ち上げる。  
「んん・・ァアン」  
 フランソワーズはうめく。  
 片足だけを後ろに高々と差しだしたことで、両尻の肉がすりあわさる。ローターが新たな刺激を呼び、ヒップ全体が絶え間ない波動にさらされた。  
 
 ユウジは、フランソワーズの片足を顔のすぐそばまで持ち上げ、指をなめはじめた。  
 一本一本丹念に吸い上げた。  
 足の指まで美しかった。五本それぞれが繊細で、真珠のように輝いている。  
 いくら舐めても飽きることがない。  
 指の間は、特に丁寧にしゃぶった。ほのかな汗の匂いまで、たまらずに官能的だった。この匂いにおぼれてしまいたかった。  
 しかも、視線をおろせば、ふくらはぎ、太もも、尻と続く、美しい曲線を思うがままに眺められる。  
「・・・っくぅ、・・・っはう」  
 フランソワーズは、せつなげに眉をひそめる。  
 異常な姿勢と、異常な責めに、神経がまいってしまいそうだ。  
「そのまま上半身を持ち上げて、バレエのポーズをとってごらん。アラベスクだっけ? 片足を後ろに伸ばして立つやつ」  
(無理よ・・・)  
 肛門から打ち響く振動が、上半身の力をうばっていた。それに、ユウジの命令は、彼女が信奉する芸術を冒涜しているとしか思えない。  
(そんなの絶対にダメ・・・)  
 だが、彼女の耳に信じがたい音声が響いてくる。  
『ジェロニモ・・・、あたしを・・・慰めて・・・』  
 音質が歪んでいるけど、フランソワーズ自身の声だった。ゆうべ、ジェロニモの部屋を訪れたときに思わず発した弱々しい訴えだ。  
 驚いてふりかえると、ユウジが小型のボイスレコーダーをもっている。録音されていたのだ。  
 投身自殺しかけた男が、いつのまにそんなものを・・・、などと考える余裕はなかった。  
「言うことをきけないのなら、たとえ美神といえども、罰を与えるよ。この音声ファイルをキミの仲間全員に配る・・・」  
 ユウジは、機械のスイッチを押し、同じ言葉を何度もリピートさせた。  
『あたしを・・・慰めて・・・』  
『あたしを・・・慰めて・・・』  
『あたしを・・・慰めて・・・』  
『あたしを・・・』  
「・・・ンングゥ!」  
 うなり声を発しながら、フランソワーズは視線で抗議する。  
「ボクだって、そんなことしたくない。・・・約束する。ボクの願いを聞いてくれれば、この音声は消去するよ」  
 何の保証もないのに、犯すものと犯されるもの間には、不思議な契約関係が成立してしまう。  
「・・・ん、フウウ」  
 フランソワーズ諦めの吐息をもらすと、背筋と腹筋、そして太ももに力をこめて上体を起こし始めた。  
 
 トウシューズは履いてないし、両腕も使えないので、バランスはとりにくいが、懸命に右足の先で全身を支えた。  
 ユウジは、目を見開いて女の姿態を眺めた。  
 あの姿勢から起きあがれるだけで、並の鍛え方でないのがわかる。しなやかな筋肉が、柔らかい体の下には隠されているのだ。  
 フランソワーズの左脚と胴体が、美しいアーチを描く。横から眺めると、ワイングラスのように見えるポーズだった。  
 ただし、片乳は重たげにはみ出ているし、パンティもずり落ちて、ぷりぷりとした臀部が丸見えになっている。  
 淫らなバレリーナ、娼婦役のプリマドンナだ。  
 その間も、ローターの唸りは収まらない。  
 全身を駆け抜ける妖しい奔流と戦っている体は、しっとりと汗ばんでいる。乳暈がふっくらと厚みを増し、乳首はいかにも吸ってほしげに、反りかえっていた。  
 もう十分でしょ・・・と、フランソワーズは青い瞳で訴えた。  
 右脚が、わなわなと震えてきた。限界も近い。  
 だが、ユウジは許さない。いつまでも彼女の体を眺めていたった。その姿を目にやきつけようと、ぐるぐると周りを歩き、あらゆる角度から眺めた。  
 太ももの付け根に貼りついているパンティは、さんざ押し回されたために、女陰の形がほとんど明らかになっている。  
 目を凝らすと、薄布の縁からは、髪の毛と同じ色の陰毛が、ちりちりとこぼれていた。その先が細かく揺れている。  
 ローターの振動が伝わっているのだ。  
 その様子に驚喜したユウジは、ポケットの中のリモコンのスイッチを押す。ローターの振動を「強」にした。  
「・・・っぐ、んっふぁあああ!」  
 苛烈なまでの衝撃に全身が呑みこまれた。  
 フランソワーズは、たまらずに膝から崩れ落ちた。  
「約束・・・、守れなかったね」  
 ユウジが、暗い声で告げた。  
 
「美の追求をあきらめたキミは、・・・ただの雌犬だ」  
 体をふるわせて横たわるフランソワーズに向かって、ユウジは冷たく言い放った。  
 足で肩をこづき、ごろんと仰向けにする。  
 フランソワーズは抵抗する気力を失ってしまっている。あまりにも馬鹿馬鹿しくなってしまった。  
 脅しに屈し、味わった今では、矜持のもちようがなかった。雌犬と見られたほうが、よほどマシだと思ってしまう。  
 仰向けにされた拍子にはしたなく開いた両脚を閉じることも忘れている。  
 肛門に深々と打ち込まれたローターの振動にも、慣れてきた。  
 感じなくなったというわけではない。体の奥底から吹き出る熱い感覚に身を任せよう、という一種の諦めだった。  
 それでも物憂げに体を投げ出している姿は美しかった。汗ばみ、ぬめ光っている全身は、悩殺美だけを振りまいていた。  
 ユウジは、もう一度、ボイスレコーダーのスイッチを押した。  
『あたしを・・・慰めて・・・』  
 機械のなかの女が嘆願する。  
「キミの願いをかなえてあげるよ・・・」  
 フランソワーズは、ため息をつきながら、目を閉じる。  
 混乱と疲弊から、一瞬、ほんとうに目の前の男におねだりしたかのように錯覚した。  
 ユウジは、彼女の左足首をもちあげ、自分の右足は悩ましげな股間に置いた。ずり落ちて、太ももの付け根をかろうじて隠している薄布の上を、ぐりぐりと押し回す。  
 いわゆる”電気あんま”責めだ。  
「んぉ・・・、あぅっ・・・」  
 フランソワーズが、新たな苦悶の声をあげる。どこまで貶められるのか。下半身が痺れていく。  
 縛られた手首が、背中と床の間でつぶされて、きしんだ。  
 
 さんざ股間を踏みしだいてから、ユウジは、彼女の両脚の間に座りこみ、股間を凝視した。  
「パンティが、すっかり湿ってるよ・・・」  
「・・・うう」  
 ようやくローターのスイッチが切られた。  
 だが、そのことが、よけいにフランソワーズを苦しめる。  
 尻からの振動はなくなったかわりに、官能の種火だけが残された。ほてりきった体が、うずいてしかたない。  
 ユウジは、左ももにナイフを這わせる。美しく張った腰まで切っ先を滑らすと、パンティの下へともぐりこませた  
 鋭敏な刃は、触れただけでセミレースの生地を切りさく。反対側のサイドも、簡単に切られた。  
 伸びきっていた布は、一瞬で縮みあがる。薄布のフロント部分が、股間をつたって、するりと下に落ちた。  
 きれいに生えそろった陰毛が、揺れた。  
「フランス革命の頃は、陰毛のある女は、淫乱と言われたんだってね・・・。キミも、きっとそうなんだろ?」  
「・・・ウウ」  
 ムダだとわかっても、抗議のうなりをあげる。  
 だが、その声は弱々しかった。まともな論理の通じる相手ではないことは、十二分に思い知らされている。  
 ユウジは、二本の太ももをかつぐように持ち上げると、むき出しになった媚肉にかぶりついた。  
「ンンアッ」  
 フランソワーズの腰がはずんだ。クレバスの間で舌先が躍るたびに、体中がおののいた。  
 汗と体臭と蜜液の匂いが混じり合って、ユウジの鼻奥を打つ。  
 舌と唇が、粘度の高い愛液にまみれた。それは、男をとろかすエキスだけを純粋に抽出したかのように甘美だった。  
 左右に並んだ襞肉を入念になめあげる。  
「ううう・・・。はん!」  
 フランソワーズが、たまらずに甘い声をあげる。のどの奥深くから漏れた響きは、猿ぐつわをしていても、意外なほど澄んでいた。  
 いや、猿ぐつわをしてるからこそ、漏れ出るあえぎをとめられないのだった。  
 
 ユウジは、クレバスを舌でなぞりながら、ローターのスイッチを入れたり、切ったりする。  
「んぉ・・・、ぁ・・・、んは・・・、むっふ・・・」  
 すでに自制しようがなくなっていた。フランソワーズは、オンオフが繰り返されるたびに、体をそらせ、腰をくねらせる。  
「キミほど、感度のいい女はいないよ」  
 ユウジの体がのしかかってきた。  
 一気に蜜壺をつらぬく。  
「ぁっう・・・んふ」  
 溢れ出るほどの愉悦に、全身が燃えさかった。  
 思ったよりも、ユウジの侵入は早かった。もう少し、じりじりと責められてから、挿入されるのだと思っていた。  
 それだけに、一瞬の隙をつかれた肉体は、被虐の喜びにそめあげられた。  
 ユウジのシンボルは、フランソワーズの胎内にとっぷりとつかる。  
 ねっとりとまとわりつく粘膜が、ローターの振動を伝える。あまりの快楽に、ユウジの頭はさらにぶっ飛ぶ。  
 腰を動かすことも忘れ、膣襞の滑らかと瑞々しさを味わった。  
「フランソワーズ、キミも気持ちいいんだろ」  
「んんんん・・・」  
 返事などできない。歯を食いしばって、肉体の崩落に耐えていた。  
 ユウジのナイフが、ブラジャーに伸びる。左右のカップを結ぶ部分が、あっけなく切られてしまう。  
 充実しきった乳房が、ぷるるん、と誇らしげに姿を現した。いくら肉体を苛まれても、ピンク色の乳頭は健康美に満ちていた。  
 ユウジの手が、ふたつの丘を左右交互に揉み上げる。ぎゅ、ぎゅ、と音がでそうなほど、力強くこねくり回した。  
「おおっ・・・、んは・・・、んんあ・・・」  
 フランソワーズの口の端からは、よだれがとめどなく流れた。  
 痛いほど揉み上げられているのに、なぜか快感に変わってしまう。  
 底なしの坩堝に、身も心も落ちていった。  
 
「そろそろフィニッシュだ」  
 ユウジが、右手のナイフを持ちかえた。  
 鋼の不吉な光が、フランソワーズの視界でひらめいた。  
「・・・ぅ。あ」  
 恐ろしい予兆に、全身がぶるるっとふるえる。まさか・・・。  
「パリ時代の恋人も、これでいっちゃった・・・」  
 ユウジがぶつぶつとつぶやく。まさに狂人のひとりごとだった。  
「でも、すごく気持ちいいからね。・・・キミも喜びを、自由に表現していいよ」  
 猿ぐつわがナイフで切られた。頬にかすかにキズがついたが、それに気づかないほど、フランソワーズは緊張していた。  
「・・・お願い。・・・バカは、やめて」  
「フランスでは、肉体のエクスタシーを、『小さな死』っていうよね。・・・うまいこというよな」  
「・・・ユウジ。・・・聞こえてる?」  
「ほら! 雌犬に最高のごほうびだ」  
 ユウジは、狂ったように腰を動かしはじめた。  
「あん・・・、ハアン!」  
 再び燃えさかった愉悦が、フランソワーズの恐れを消してしまいそうだった。  
 しかし、相変わらずナイフは体の上にかざされている。  
 フランソワーズは、懸命に両脚と腰をくねらせ、男の責めから逃れようとした。しかし、その動きが、むなしくも男に新たな喜びをもたらしてしまう。  
「すごいぞ、フランソワーズ・・・。一緒に天国に行こう・・・」  
 ユウジが、ナイフを頭上に振り上げた。  
 女を殺しながら、絶頂を迎えようとしている。ユウジは、最低の悪癖の持ち主だった。  
「いや・・・、いやン・・・」フランソワーズは、ユウジの昔の恋人のほんとうの死因をさとった。「やめてぇええええ!」  
 胸にドンと衝撃が走る。心臓を殴られたかのような痛みに、全身が凍りついた。  
「あ・・・。あぁ・・・、ぁぁ・・・」  
 意識が急速に遠のく。現実世界にシャッターが下ろされていった。  
 薄れゆく視界に、よだれを垂らしながら、悦楽にふけっているユウジの顔が見えた。  
 ぴくぴくと痙攣する膣に、ペニスがもの凄い勢いで出入りする。  
 女の脅えた顔が、彼の征服欲を満足させた。人形のように表情が失っていくのを見ると、興奮は最高潮に達した。  
 子宮に向かって、どびゅどびゅっと精液の雨をふらせた時、もうフランソワーズの感覚はなくなっていた。  
 
「ユ・・・ウジ!?」  
「ゆ・・・る・・・してく・・・れ フ・・・ランソワーズ・・・!!」  
 最後にこんな会話をかわしたような気がする。  
 あの直後に、ジェロニモが帰って介抱してくれなければ、手遅れになっていたかもしれない。  
 その夜なぜか戦闘服を着て戻ってきたジョーは、よくよく事情も確かめもせずに、ユウジたちをぼこぼこにしてしまった。  
 おかげで、フランソワーズ、ユウジ、ジェロニモの間に何が起こったのか知られずにすんだ。  
   
 それから一年近くたった今、和泉ジュンの登場によって、再び過去の封印が解かれようとしている。  
 副都心の公園。ホームレスたちのねぐらの近くで、犬のポーズをとらされているフランソワーズは、すっかり意気消沈していた。  
 カカシとセムシは、うなだれているフランソワーズを芝生の上まで連れていき、ふたりがかりで責める。  
 電車のなかの痴漢行為で一度気をやった肉体は、されるがままだった。突きつけられたカカシのペニスをしゃぶり、セムシに股間をまさぐられた。  
 尻好きのセムシ男は、垢まみれの陰茎を、アナルにつきつける。  
「・・・はんっ」  
 フランソワーズは、みずから腰をふるわせた。もはやただの雌と化していた。  
 亀頭が、肛門を押し開く。  
「おおんっ!」  
 思わず、目の前のカカシのペニスを握りしめた。  
 若々しいアナルは、侵入しかけた硬直を、一度ぷにゅん、と弾きかえした。その弾力が、男にはうれしかった。  
 再び、ペニスが押し入ってきた。フランソワーズは、下腹を波打たせて、迎え入れる。  
 ズキン、ズキン、という男の鼓動が、腹の底に響いた。  
「あううっ・・・、や・・・、っああっん」  
 後ろの穴が、灼熱した棒で貫かれたようだった。尻が焼けつくように熱くなる。足の真ん中から体が裂けるかと思った。  
 
 最初の衝撃が収まると、妖しいざわめきが体の奥底からわきあがる。排泄時のせつなさに似た感覚が、何百倍にも増して襲ってきた。  
 深く、鮮烈なうねりに、体中が痺れた。  
 叫びだしたくても声にならない。口を大きく開けて、無言の悲鳴を放っていた。  
 まるまると盛り上がる尻の中心に、ペニスが深々と打ち込まれている。フランソワーズのしなやかな肉体は、獰猛な侵入者をしっかりと受け止めた。  
 彼女の意志がどうあれ、セックスするには完璧なボディの持ち主であることが、またもや証明された。  
 セムシが尻の両脇をがっちりとつかみ、ストロークを開始した。  
「ひぃ、っうああああっ」  
 あっという間に絶頂に達しそうだった。直腸をかきむしられるほどに、峻烈な喜悦に見まわれた。  
 無我夢中で、目の前のカカシのペニスを口に含む。  
 尻を出入りする剛直のペースに合わせて、顔を前後に振った。  
 今、彼女の体は、あらゆる制約から解き放たれた。女としての人格も、戦士としてのプライドも、すべて性の喜びのために動員されていた。  
 二本のペニスに串刺しにされたまま、フランソワーズはすすり泣く。性の奴隷となってなお、肉体は美しく高貴に輝いた。  
 尻の奥深くと口の中に、男たちの劣情の証が放たれたとき、フランソワーズは確信した。  
 あたしは、セックスをするために生まれてきたのだ・・・。  
 肉体への苛烈な責めと、精神的な攻撃、そしてマッド・マシンの作用によって彼女はすっかり洗脳されてしまった。  
 色情狂の愛玩用サイボーグが誕生した。  
 

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