翌日、フランソワーズが自室で着替えていると、ユウジがふらりと入ってきた。  
 黒いシャツにジャケットを羽織り、ズボンも履いている。そのまま出かけていける服装だった。  
「ユウジ・・・」  
 胸のリボンを結んでいるところだというのに、不躾な態度をとがめないところが、彼女の優しさだ。  
「・・・よかった。もう・・・平気なのね!?」  
 近づいたフランソワーズの表情がこわばった。  
 男の右手に、巨大なハンティングナイフが握られていたからだ。  
「それは・・・」  
「後ろを向けよ。・・・フランソワーズ」  
 ユウジが暗い声で命令した。  
 フランソワーズだって戦士だ。かつてライフルをもった暴漢が研究所を襲った時には、少しもひるまずに相手を投げ飛ばした。  
 だからナイフで脅されたくらいで、怖がるはずがないのだが、今はなぜか子供のように体ががくがくと震えた。  
 たぶん、ユウジの暗示が始まっているのだろう。フランソワーズは、懸命に心を奮い立たせた。  
「ユウジ・・・、そんなことしても、なんにもならないのよ」  
「インディアンのチンポはしゃぶれても、ボクの相手は出来ないのか」  
「え・・・?」  
「ゆうべは、全部聞かせてももらったよ・・・。最後は、ドアを開けても、気づかないくらいに燃えてたね」  
「・・・」  
「お尻の穴まで、おっぴろげてさ。大男のうえで、よがっていたじゃないか」  
「やめて!」  
 あまりにも迂闊だった。フランソワーズは、恥ずかしさのあまり、上半身がかぁっと熱くなった。  
 それとともに、心のバリアも崩壊した。ユウジにおどされているという恐怖感にすっかりとらわれてしまった。  
 
「ばらされたくなかったら、ボクの言うことに従うんだ・・・。叫んでもムダだ。大男は今、じいさんのお供ででかけている」  
 フランソワーズは、コクリとのどを鳴らした。  
「どうすれば・・・?」  
「言ったろ? 後ろ向くんだ」  
 言われるままに、ユウジに背を向けた。  
 敵に対して尻を向けるのは、一種の敗北だ。しかし今の彼女は、ひとりの女学生に戻ったようにおびえきっていた。  
 真後ろに迫ったユウジが、ナイフの切っ先を背中に突き立てる。  
「少しでも抵抗したら、ぶすっと行くぞ」  
 言葉でおどしながら、もう片方の手で腰の革ベルトを外す。  
 もともとアクセサリーの要素が強いベルトだが、外されれば、やはり腰のあたりがひどく無防備になった気がする。  
「両手を後ろにまわせ」  
「・・・それは」  
「言うとおりにしないと、きれいな肌にキズがつくよ・・・」  
 ナイフをわずかに押す。  
 切れ味がよいらしく、ブラウス越しにもチクッとした痛みが伝わった。服地にもわずかに穴が開いたようだ。  
 フランソワーズは、吐息をつきながら、左右の手首を腰の上で交差させた。ユウジは、取り上げたばかりの革ベルトで両方の手首を縛り上げる。  
 きつく結ばれたので、早くもベルトの下の白い肌に赤みがさしていた。  
 
「縛られたキミは、ますますきれいだ・・・」  
 熱病にうかされたような口調で言いながら、ユウジは続いて胸のリボンを外してしまう。襟の下からリボンを引き抜く衣ずれの音が秘めやかに響いた。  
「こいつを口にくわえてもらおうか」  
 ユウジは正面に回り、胸から外したばかりの細長い布をフランソワーズの目の前にさしだした。  
「・・・何のために」  
 彼女の瞳が揺れる。  
「もちろん、猿ぐつわだよ」  
「研究所には、他に誰もいないわ・・・。声をたてたって・・・」  
「ちがう」ユウジは、途中で遮った。「ボクは芸術家だよ。キミが猿ぐつわしている姿を眺めたいんだ。これは美の創造なんだ」  
 フランソワーズは、ぞっとしてユウジの顔を見つめた。  
 彼の瞳には狂気が宿っていた。ある意味、ただのレイプ魔よりも恐ろしかった。  
 セックスの妄想なら、対処のしようもある。しかし、狂気にとりつかれている男の行動は予想しがたい。  
 フランソワーズが、わずかに口を開けると、白い歯の間にリボンが押しこまれた。すかさずユウジは、後頭部で結びつける。  
「髪の毛は自由にしとかないとね」  
 などと言いながら、わざわざセミロングの髪の下に結び目をつくった。  
 ユウジは、満足げに笑うと、後ろからフランソワーズを抱きしめた。  
「美しい女性が苦痛にあうぐ姿は、この世でいちばんすばらしい」  
 右手のナイフを首筋にあてながら、左手でブラウス越しにバストを揉む。  
 顔をフランソワーズの髪にうずめ、股間を尻に押しつけた。  
 彼女の脚が長いため、ヒップはちょうど男の下腹部と同じ高さにあった。スカートを通してユウジの怒張がはっきりと感じられる。  
「・・・んぐぐ」  
 フランソワーズの喉元で、しぼりだすような声が漏れた。  
 
「今日は、どんな色の下着をつけているのかな・・・?」  
 耳元で囁きながら、ナイフを襟元に入れる。  
 ボタンを止めている糸を、順に切っていった。プツン、プツン、とボタンが弾けるごとに、張りつめた乳房に押されて、胸元が勝手に開いていく。  
 もっともボタンは途中までしかない。今日のブラウスは、ポロシャツなどと同じように、頭からかぶって着るタイプだった。  
 ユウジは躊躇することなく、布地をヘソのあたりまで一直線に切りさいた。  
「んっっく・・・」  
 猿ぐつわをかまされたフランソワーズは、ただ唸るしかない。  
「花柄の白レースか・・・」  
 ユウジは、肩越しにバストを覗きこむ。  
 白いレースに包まれた重たげな乳房が、荒い呼吸のために、上下に大きく動いている。  
 右のカップの下に手をすべりこませ、吸いつくような肌の感触を楽しんだ。指の先で、柔らかな乳首を挟むと、右に、左にひねる。  
「ウウンっ」  
 フランソワーズは、眉をひそめた。男の指に、昨日のような繊細さはなかった。  
 ただ乳首をつまんで、こねくり回している。愛撫とはほど遠い。女の体をモノとしか見ていないのは明らかだった。  
「片乳だけ出すのも、かえってエロいかな・・・」  
 ユウジは、カップを強引に押し下げ、右の乳房を引き出した。  
 豊満な丘が、ぶるんと弾けて揺れた。いじり回された乳首が、フランソワーズの意志とは関係なく、プクンと上を向いている。  
 破れたブラウスの間から、片乳だけ覗かせている様子は、このうえなく淫靡だった。両乳をだすよりも、かえってそそる眺めかもしれない。  
 
「たまんないな」  
 むき出しになった乳房が、もう一度揉み回される。  
 どんなに、めちゃくちゃに握りしめられても、瑞々しい乳房は男の手を跳ねかえす。かたくなり始めた乳首が、手のひらの真ん中にツン、ツンあたる。  
 バストをなぶりつづけながら、ユウジはフランソワーズの形のいい耳たぶを口に含んだ。  
「んぁ・・・」  
 弱い部分だけに、猿ぐつわの間からうめき声がこぼれた。  
 男の口は、こりこりとした感触を確かめるように耳たぶを甘く咬む。耳の後ろ側や縁をしゃぶり、さらには耳の穴の中へと舌を伸した。  
 執拗な舌使いに、耳全体が唾液に濡れそぼる。  
「昔いたよね・・・、フランス女を食べた日本人が」  
 ユウジはそう囁いてから、耳たぶに歯をたてた。  
 フランソワーズは、ビクンとして大きな瞳を見開いた。男の言葉は、狂気の宣告とも受けとれた。  
「ちょっと前屈みになってもらおうかな」軽い口調で言いながら、ユウジはフランソワーズの耳を引っ張る。「あ、でも。足を曲げちゃだめだよ」  
 仕方なく、上体だけを前に倒した。そのまま額をベッドに押しつけられてしまう。  
 自然と尻を高々と突き出す格好になった。ふたつの球体が、スカートの生地を押し広げ、パンティラインがうっすらと透けた。  
「やっぱり、エッチな体だな・・・」  
 ユウジは真後ろに立って、彼女のヒップをさすり始めた。  
 フランソワーズの背中では、ベルトに縛られた両手の指が、わなわなと動く。白い指がいっせいに屈辱のうめきをあげているように見えた。  
 
 ユウジは、ナイフの先をつかって、スカートの裾を腰までたくしあげた。  
 完璧な太ももに支えられた双尻が、あらわになる。三角形を描いて尻を包む白いパンティの線が、ふたつの丘の丸みを強調していた。  
 脚の間では、やわらかい布が媚肉の形にふくらんでいる。パンティの縁が、その両脇に食い込んでいた。  
 男の人差し指が、ふくらみの中心を、くにゅん、と押す。  
「・・・ン」  
 フランソワーズは、反射的に腰を引いた。  
「動いちゃダメだ」  
 ユウジが低い声で命じる。  
 ナイフの峰の部分を、尻に這わせた。刃とは反対側だから、切れるわけないのだが、精巧な鋼鉄は、白い肌に赤い筋をつくる。  
 鉄の冷たさが、フランソワーズを緊張させた。  
「美しい女が逃げてはいけないよ。どんな屈辱とも戦わなきゃ。尻を突き出すんだ」  
 何を言っているのかと思う。  
 しかし男の思いこみの激しさが、怖かった。言うとおりにしないとキレてしまい、ところかまわずナイフを振り回しそうだ。  
 フランソワーズは腰に力をこめ、尻をもちあげた。  
 ユウジは、ナイフの峰を股間の真ん中にあてがった。秘裂に沿って、鋼の一部が下着の中にめりこむ。  
 同時に肛門と女性器の間のごく狭い部分を、人差し指でコリコリと押し回した。  
 股間の要ともいえるその場所は、多くの筋肉が集まっており、指の動きを強靱に跳ね返した。  
 指は、いつまでも、その一点から動こうとしない。病的と思えるほど、同じ場所をさすり続ける。  
 いつしかパンティの薄布が、尻の深い谷間にキュッとはまりこんでいた。  
 執拗な責めに、フランソワーズは焦り始める。  
 指に押されている部分が、徐々に熱くなってきたのだ。体が勝手に反応してしまう。  
 ナイフをあてがわれて緊張しているだけに、感覚が余計に鋭敏になっていた。  
 股間の熱気が、神経に乗って四肢の先まで伝わっていく。心を埋め尽くしていた恐怖感が薄れ、そのかわりに体を麻痺させるような陶酔感が忍び寄る。  
「ふ・・・、んむ」  
 フランソワーズは、気を入れ直そうとした。が、猿ぐつわの端から洩れたのは、かぎりなくあえぎ声に近い吐息だった。  
 
「感じやすいんだね。エッチなことが好きなの?」  
 ユウジの言葉に、フランソワーズは激しく首を振った。  
「こんな淫らなかっこうして、嘘はだめだよ」  
「んぐ、んん・・・」  
 口がきけるなら、抗議したかった。それは、あなたが無理矢理にやらせているだけだと。  
 喋れないことが、くやしくてたまらない。  
 ユウジが、手とナイフを股間から離す。  
 太ももの付け根では、クレバスの縦じわがくっきりと浮かび上がっている。男の視線がそこに注がれているのを十二分に意識した。  
 ユウジは、パンティに手をかけ、そろそろとおろし始める。全部は脱がさない。両尻がぶりんと姿を現したところで手をとめた。  
 決して焦ることのないじっとりとした動きに、男の執念を感じる。いかにも生殺しにするのを楽しんでいるようだ。  
 ユウジの手は、白い尻面を撫で回す。これほどの目にあっていても、鳥肌ひとつたてず、なめらかな触り心地だった。  
 しばらくして、尻の谷間が左右に開かれた。  
「・・・後ろの穴も、可愛いね」  
「ぅぁ、ぅ・・・」  
 フランソワーズは、身もだえる。なすすべもなく、後ろのすぼまりを観察されるのは、どうしようもなく恥ずかしい。  
 ユウジの言葉に嘘はなかった。きれいな肌の女性でも、肛門の周囲が変に黒ずんでいることがある。  
 しかし、フランソワーズのそこは、他の肌と変わらぬ透き通るような白さのままで、中心の皺が寄っているところだけ、ややピンク色に染まっている。  
 その中心部に、冷たいものが押し当てられた。  
 最初はナイフの柄を突きつけられたのかと、ひやっとした。が、すぐに、その固いものが、ぶ〜ん、と振動し始めた。  
「ンンア!」  
 フランソワーズは、思わず顔をあげた。小型のローターを肛門に押しつけられたのだ。  
 
初めて体験する、人工的な振動だった。  
 (この時はまだ、のちのち和泉ジュンの手下たちによって、尽きることのないバイブ責めにあうなど思っていない)。  
 それを知覚の鋭敏な器官にあてられたのだから、たまらない。フランソワーズは、青い瞳を見開いて、体をひくひくとふるわした。  
 はじめは表面を撫でるように動いていたが、やがてユウジは肛門に器具を強く押しつけられる。  
「ぁぐ・・・ンオ!」  
 わずかな振動なのに、体中の神経が、後ろの器官と通じているのかと思うほど、全身が共鳴する。乳首が、ビンビンと痛いほどにそそり立った。  
 未知の感覚が掘り起こされていく気分だった。  
「おや・・・、感じないんじゃなかったの?」ユウジが、意地の悪いことを言う。「どうやら、ローターは気に入ったようだね」  
 フランソワーズは、髪を振り乱しながら、首を強く振った。体の反応がどうあれ、ユウジの言葉にうなづくわけにはいかない。  
「知ってるよ。フランソワーズが首を振るのは、イエスだということを」  
 ユウジは、肛門のまわりをもみほぐすと、そのままローターを後ろの穴に沈みこませた。  
「・・・んぁ・・・・ォアア!」  
 猿ぐつわがなければ、叫んでいただろう。口の端から、涎があふれ出てしまった。  
 まさに体をえぐるような強烈な感覚だった。  
 もはやナイフで脅されようと、じっとしてられない。フランソワーズは尻を中心に全身をくねられる。  
 ユウジは、ローターを突っ込ませたまま、パンティから手を離した。  
「ふ、オウ・・・」  
 たまらずに膝をがくっと落としそうになった。しかし、尻たぶにあてられたナイフの冷たさが、それを許さない。  
 太ももをおののかせながら、両脚を突っ張らせた。  
 
 
 
 

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