あの日、ジョーはギルモア研究所を留守にしていた。そもそも、それがいけなかったのだ。  
 ジョーは、張々湖と西伊豆に出かけると言っていた。嘘ではなかった。父を宇宙人にさらわれた少年を救っていたらしい。  
 ただ、張々湖のほうが、ひと足先に帰っていた・・・。  
 彼の経営する中華飯店は営業を再開したのに、ジョーは戻ってこなかった。  
「別に学者の娘さんと旅行しているわけではないアルよ」  
 聞いてもないのに、張々湖は勝手に口を滑らせた。それでフランソワーズは確信したのだ。ジョーは、あたしに秘密で小松玲子と会っていると。  
 彼が、ミステリアスな日本人女性に特別な感情を抱いているとまでは思わなかった。それでも、内緒にされたのは面白くない。  
 元来やきもち焼きのフランソワーズは、口には出さないけど、ジョーに腹をたてた。  
 そんな時、研究所に残っていたフランソワーズとジェロニモは、近くの海に身投げした青年を救った。  
 名前はユウジ。画家志望でパリに留学した経験もある。しかし、恋人をなくし、将来にも悲観して、自らの命を絶とうとした。  
 彼には、人の心を読み解く力があった。  
 特殊な能力の持ち主ゆえに疎外感を強いようだ。  
 ユウジを絶望の淵から救おうと、フランソワーズは献身的に介抱した。やさしく慰めた。弱い者には、無上の慈しみを与える性格なのだ。  
 
「キミの心の中は、ただやさしさだけでいっぱいだ!」  
 散歩に出た近くの松林で、ユウジは熱っぽく語った。フランソワーズの肩を抱き寄せて、そっと口づけした。  
 ユウジの唇を受け止めながら、これは感謝の印なのだろう、と思った。パリで暮らしていた彼が、親しみの情をキスで表すのは不思議ではない。  
 しかし唇の動きは、徐々に激しさを増した。フランソワーズの上下の唇をなぞり、吸い上げようとする。  
「んん!」  
 フランソワーズは思わず目を見開いた。  
 ユウジの手が、いつの間にか胸にかかっていた。ブラウス越しに、乳房の大きさを確かめている。  
 指先が、セミレースのブラジャーの繊細な模様をなぞる。胸のふくらみを男の手に押し上げられて、乳首がすれた。  
「・・・いけない、ユウジ。だめよ!!」  
 フランソワーズは、あわてて体を引き離した。  
 ユウジが熱い瞳で、見つめる。ふたりの間に、思春期の少年少女のような、甘酸っぱい空気が流れた。  
「キ・・・キミには、ジョーという恋人が・・・いるんだね!!」  
 ユウジが悲しい目つきで言った。  
 
 その夜、ユウジがうなされた。  
 なにかあった時のためにと、聴覚の感度をあげていたフランソワーズは、おかしな気配に気づき、ネグリジェ姿のまま、ゲストルームへ駆けつけた。  
 ユウジは錯乱していた。死んだ恋人が自分を呼んでいるという。  
「いっちゃいけないわ!!」フランソワーズは、ユウジの両腕をつかんで説得した。「幽霊なんて・・・いないのよ」  
 ユウジはフランソワーズの腰に抱きついた。  
「ボクは、気がへんになってしまったんだ。助けてくれ!・・・助けて」  
「ユウジ・・・」  
 フランソワーズは、彼の肩をさすってなだめすかした。  
 やがて、ユウジの体のふるえが収まる。精神的にも安定したようだ。  
 危機が去ると、薄いナイトウエアのまま抱き合っていることが、いやでも意識された。  
 メインの照明が点いてないからいいようなものの、明るいライトに照らされれば、彼女のボディラインは完全に透けて見える。  
 ユウジのパジャマからも、男くささが、ぷんぷんと立ち上ってくる。  
 そろそろ体を離そうかと考えたとき、フランソワーズは、ハッとした。  
 ユウジの右手が、ヒップをさすっている。最初は無意識の行動かと思った。しかし、手のひら全体で、くりんとした曲線を確かめるように、執拗に撫でていた。  
 
 手の上下動に、尻肉をこね上げるような回転運動が加わったときに、彼女は確信した。  
「ダメよ・・・」  
 腰に手を回して、ユウジの手首を押さえた。  
 彼は潤んだ瞳で見上げる。  
「お願いだ。亡霊に打ちかつために、ほんものの女性の素晴らしさを、ぼくに教えてくれ」  
 無茶苦茶な理屈だと思う。だけど、今、彼を冷たく突き放すことは、フランソワーズの優しさが許さない。  
「あたしは・・・あなたの恋人にはなれないの」  
「つきあってくれとは言わないよ・・・。もうしばらくだけ、こうしてキミの体に触っていたい」  
 返事を待たずに、ユウジはフランソワーズの腰を抱きついた。  
 ひざまづいたまま、みぞおちのあたりに額をなすりつける。  
 彼女の甘い体臭を味わうように深呼吸している。  
 ユウジの頭が乳房の下端を押した。ブラジャーをつけていないから、そのたびにふくらみ全体が、揺れ動いた。  
「ぁ・・・ん、ユウジ・・・、いけないわ・・・」  
 思がけず官能的な声だった。  
 これ以上、許してはいけない。ここで拒絶しなければ、彼を勢いづけてしまう。  
 そう思った矢先、ユウジが体を抱き寄せたまま、彼女を押し倒した。  
「あっ・・・ダメ!!」  
 
 ユウジがフランソワーズの上にのしかかる。  
 股間では、硬直した男性がパジャマの薄い生地を押し上げていた。  
 無視することはできない。フランソワーズの呼吸は早まり、胸が大きく波立った。  
「ボクがキミの恋人だったら・・・、キミひとりを家に残して、旅に出たりしないよ」  
「あたしは・・・」  
 返事をしてはいけないと思った。  
 しかし、ユウジの情熱が、彼女の心に小さな火種をともしていた。  
 他の女性と会っているジョーへの苛立ち、ユウジを慈しむ気持ち、落ち葉の匂いのするパリへのノスタルジー、失われた青春への惜別・・・。  
 さまざまな感情が混じり合い、奔流となって、フランソワーズを押し流す。  
「あたしがあなたの恋人だったら・・・」コクリと喉を鳴らした。「あなたをおいて、自殺したりしないわ」  
「ありがとう・・・」  
 唇が押し重ねられた。  
「ン・・・」  
 フランソワーズは、青い眼を見開く。あっさりとユウジの情愛を受け止める自分に驚いた。  
 
 ユウジが、いったん唇を放し、微笑みながら言った。  
「パリ以来だね・・・」  
 何のことだろう、と思う。  
 だが、次の瞬間、フランソワーズの脳裏に、ひとつの風景が浮かんできた。  
 パリのアパルトマンの小さなアトリエ。油絵の具の匂いに満ちているなか、肩を寄せ合う恋人たち。  
 そのロマンチックな風景にフランソワーズは酔う。  
 そういえば、かつてあたしたちは、恋人どうしだったような気がする・・・。  
 ユウジが、もう一度唇を求めてきた。  
 今度は彼女の唇も積極的にこたえた。なぜかわからないけど、せつないほどに情欲が高まっていた。  
 互いの唇が、相手の動きに感応しあう。舌の先でつつきあい、やがて舌全体をねじ曲げて絡みあわせる。  
 彼の唾液が流れこんでくると、自分の舌を相手の口中に送り込んで返す。男の口の中に  
入った舌が思いっきり吸われる。  
「んふ・・・むうっん」  
 唇をふさがれたまま、フランソワーズの鼻奥から甘えたような息がもれた。裸足の指が、ひくひくと動いた。  
 ネグリジェ越しに乳房が柔らかく揉みたてられる。恥丘には男性がこすりつけられた。  
 体をふるわせながら、彼の背中に腕を回した。  
 
 バレリーナでもある彼女は、もともと芸術家肌の男に弱いところがあった。  
 町中でファッション・カメラマンに声をかけらると、ついスタジオまで遊びに行ってしまったりする。  
 その癖が抜け切れていないのか、すっかり相手のペースにはまってしまった。  
 ユウジの手が、ネグリジェの胸の紐をほどきはじめる。  
「ぃ、ゃ・・・」  
 そう言いつつも、フランソワーズは、身を任せたように目を閉じた。  
 胸元が大きく開かれた。感情の奔流に巻き込まれたまま、もう戻れないところまで来てしまっている。  
 こぼれ出たふたつのふくらみは、なんのてらいもなく、ブルンと揺れた。  
 ピンク色の乳首が、ぷくりと突き出ている。ベッドのフットライトの弱々しい光にも、滑らかな乳暈が照り輝いた。  
「素敵だ」  
 ユウジは、乳頭を指先でやさしく撫でる。鳥の羽根でくすぐられるような微妙な感覚に、乳首がビクンと反りあがる。  
 フランソワーズは、心地よさげに瞳を閉じている。小さく開いた唇の間で、舌先が何度も往復する。  
 男の手が乳房全体が押し上げ、その先端を口に含んだ。  
「ぁぁっ・・・ぁ・・・」  
 フランソワーズは、喉を喘がせて、男の背中をさする。舌で転がされるたびに、乳首が固くなった。  
 左右の乳房を交互に何度も吸われた。  
 フランソワーズは、顔をのけぞらせて、甘いため息を吐き続ける。美しい鎖骨が苦悶するように上下に動いた。  
 
 ユウジの手は、腰のラインをなで、太ももから膝のあたりまで降りていった。  
 ネグリジェの下に指をすべりこますと、今度は、裾をまくりあげながら脚の付け根までのぼっていく。  
 淡い水色のパンティが姿をあらわす。三角形の頂点では、秘やかな丘がふっくりと盛り上がっている。  
 指がその頂に重ねられた。媚肉の弾力を確かめるように、ぷにぷにと押しなでる。  
「んうッン」  
 蜜壺の奥の方が、ジュクンと反応した。パンティの裏生地が、熱く湿ってくる。  
 男の手は、中指と人差し指を重ねて、クレバスを二度、三度となぞり返す。それから、手全体をするりと下着のなかに滑りこませた。  
「はうッ!」  
 思っていたよりも早かった。フランソワーズは、甘美なさざ波におののきながら、股をゆるく開いた。  
 柔らかな茂みを、指がかき分ける。  
 ユウジは感動せずにはいられない。こんなに美しい女性のヘアーをじかにさわり、撫で回すことができるのだから。  
 そのさらさとした感触まで、高貴なものに思えた。  
 指をさらに下ろし、みっしりと閉じているクレバスに埋め込む。熟れはじめの果実のような、瑞々しい感触に迎えられた。  
「ううッ・・・、はむむ」  
 フランソワーズは、手の甲を口に押し当てた。  
 思えば、この家にはジェロニモやギルモア博士も寝ているのだ。大きな声をあげるわけにはいかない。  
 ユウジの指は、しっとりと濡れた熱い肉襞を、何度もさすりあげる。その動きは、やはり芸術家らしく繊細だった。  
 アスリート系しか知らないフランソワーズには、新鮮な体験だった。  
 
 やがて、指が上端の真珠をさぐりあてる。  
 クリクリっと押し回しただけで、フランソワーズはあられもなく太ももをふるわせ、腰を浮かした。  
 熱い狭間は、すっかり濡れきっていた。  
 ユウジも気が狂いそうになった。  
 矢もたてもたまらずに、パンティを両側の足首から抜きさった。  
 くしゃっと小さくなった布を一瞬、鼻にあてる。  
 クロッチ部分に染みついた生暖かい香りに、鼻の奥がくらくらした。一瞬、死ねると思った。  
 もちろん死にはしないで、ネグリジェの裾を乱暴にまくりあげ、太ももを開く。自分のパジャマも下着ごと膝まで下ろす。  
 火のようになった男性をフランソワーズの股間に押し当てた。  
 もう我慢が出来なかった。このまま女体を責めていると、それだけでイってしまいそうだ。  
 激情に揺さぶられるまま、亀頭を蜜壺に沈めた。  
「あっ、おっ・・・っンン」  
 フランソワーズは、ユウジの顔を見つめ直した。ここまで来てもなお、取り返しのつかないことをしてしまっているという思いがよぎる。  
 その迷いを、ユウジの満足そうな顔が、吹っ切った。  
 前戯の足りない膣内は、まだきつく狭い。ユウジは、亀頭でこじ開けながら、ペニスを打ち沈めていく。  
 少し引いては、また入れる。しばらくペニスにまとわりつく肉襞を味わってから、腰を突き出す。  
 やがて、フランソワーズの股間は、ユウジのものを根元まで呑み込んだ。  
 
 フランソワーズは、体を貫く男性を深く味わうように、目を閉じた。  
 不思議なことに、ある光景が、はっきりと見えてきた。  
 パリの寒いアトリエ。簡素なベッドの上で、たしかにフランソワーズとユウジは交わっていた。  
 若いふたりは、時には1日6度も交わり、ユウジは「生卵がなくなっちゃうよ」と冗談を言った。  
 貧しいなか、互いの体だけが、信頼できるぬくもりだった。  
「ああん、ユウジ」フランソワーズは、ユウジの頭をかき抱き、耳元に囁きかけた。「好きよ、好き好き・・・」  
 そのまま舌を耳たぶに這わせ、ちろちろと舐めあげる。  
 乳房を男の胸に押しあてた。腰を前後にふって、ユウジを求めた。  
 ユウジも、女の要求に応え、くびれた腰を抱いて、ペニスを何度も突き刺した。  
 ぬぷん、ぬぷん、と、ふたりの器官が馴染み始めた音がする。  
 ユウジの額から汗が飛び散る。もともと強い方ではないようだ。  
「だめだ・・・、いっちゃうよ」  
 フランソワーズは、こくりと頷いた。  
「いいわ・・・、来て」  
 ユウジが最後の連打を、しゅぼしゅぼっと音をたてながら打ち込む。  
 フランソワーズの膣が、きゅっとすぼまり、亀頭をはさみこむ。蜜壺の奥の方では、ふわりと暖かな空間が広がる。  
「ううっ」  
 と声を放ったのはユウジだ。全身を硬直させ、フランソワーズの中に、ドビュッ、ドビュッと生命の液を放出した。  
 その瞬間、彼女も小さな絶頂に達した。  
 
 
(なんてことをしてしまったんだろう・・・)  
 ユウジの部屋を出てから、フランソワーズは頭をかかえて立ちつくした。  
 彼の超能力は、人の心を読むばかりではない。「書きこみ」もできるようだ。  
 今夜あたしは、ユウジと恋人どうしだという偽の記憶を植えつけられ、すっかりその気になってしまった。  
 でも体も与えたのは、あたしにもスキがあったからだ。心の奥底で、ちらっと、芸術家との恋もステキかもしれない、と考えた。  
 そこを狙われた・・・。  
 ギルモア博士とジェロニモが心配そうにやってきた。  
「・・・なんじゃ、どうした!?」  
 フランソワーズは、はっと顔をあげる。  
「・・・ユウジがヘンなの、ギルモア博士!」  
 なんとかごまかした・・・つもりだった。しかしジェロニモの瞳は、すべてを見すかすように、キラリと光っていた。  
 
   * * *  
 
 ギルモア博士が再び寝ついた頃を見計らって、フランソワーズはジェロニモの部屋のドアをノックする。  
「・・・?」  
 ジェロニモもまだ眠ってなかったようだ。  
 はだけた上半身からは、野生の雄の香りが漂っている。ユウジに心を乱された彼女にとって、これほど頼もしいものはなかった。  
「あたし・・・、どうしたらいいのかわからなくって・・・」  
「優しすぎるからだ。・・・深入りしていけない。優しい人間ばかりが傷つく」  
「ジェロニモ・・・」フランソワーズは、大男の胸に顔をうずめた。目からは涙がこぼれていた。「あたしを・・・慰めて・・・」  
 かつて怪物を呼ばれた男は、しばらく黙っていた。やがて、彼女の肩に太い腕を回し、部屋の中へと導いた。  
 
 ふたりは立った姿勢のまま、抱き合った。  
 ジェロニモの肌に耳をつけて鼓動を聞いていると、心が安らいだ。大自然のなかの精霊とひとつになって、山や谷のうえを飛び回っている心地がした。  
 ただ穏やかな気持ちになるだけではない。自分が生まれ変わっていくような新鮮が高ぶりが、体の奥からこんこんとわきあがってきた。  
「ジェロニモ・・・今夜、なにがあったかお見通しよね」  
 うなづく気配が伝わってきた。  
「あなたに、浄めてほしいの・・・」  
 そう言って、褐色の肌に唇をつけた。  
 フランソワーズには、確信があった。  
 大地の生命と交わることのできるジェロニモなら、汚れた体を救ってくれる。彼と関係をもつのは、ちょうど深い森の奥のきれいな泉で体を浄めるようなものだ。  
 ジェロニモは、少し首をかしげた。  
「フランソワーズ、愛情いっぱい。それがチームワークを乱すこともある・・・」  
「わかるわ。・・・でも、今夜だけ」  
 大男の腰にきつく手を回して、かじりついた。  
 すでにジェロニモの心臓の音が、胎内の深いとこまで響いていた。  
 全身の血が熱く騒ぎ、指の先からつま先まで、じんじんと痺れている。体が真の解放を求めていた。  
 ジェロニモも彼女の肩に手を置く。  
「おれの体でよければ、使ってくれ」  
「・・・うん」  
 フランソワーズは、左手を男の股間においた。  
 華奢な手に余るほど、ずっしりと重い。心をふるわせながら、綿のパンツの上から、ふくらみを軽くまさぐった。  
 
 フランソワーズの手の中で、ジェロニモの男性が育つ。  
 はじめは渾然一体とした塊だったものが、今では幹状の部分がはっきるとわかるようになった。股間に張った尾根を上下にさすった。  
 潤んだ瞳で男の顔を見上げ、笑った。  
「あたし・・・、いつもはこんなふうじゃないのよ。・・・自分から求めることは、あまりないんだから」  
 言いながら、恥ずかしさに体中が熱くなった。まるでジョーとのセックスライフを告白してるような気がした。  
「これは、普通の行為ではない。一種のセラピーだ。本能のままに動けばいい」  
 一種のセラピー・・・。大義名分を与えられたことで、フランソワーズの心を縛っていたたががはずされた。  
 いくらでも大胆になれそうだった。  
 唇をこまかく動しながら、たくましい肌に這わせる。  
 股間をさする動きをはやめると、柔らかな布地を通して、男性の太さと固さが十分に伝わってきた。  
 ネグリジェの下では乳房が張りつめたように重くなり、乳首がうずいて反りかえる。  
 ユウジとの中途半端な交わりでは燃え切れなかった欲情に、再び火がついたようだ。  
 膝のあたりががくがくとわななき、立っていられなくなった。  
「ん・・・、だめ」  
 しゃがみこんだフランソワーズの目の前に、ジェロニモの股間があった。  
 
 迷うことなく、パンツの腰を結んでいる紐をゆるめ、膝まで引き下ろした。下着はつけてなかった。  
 なかばまで育ったシンボルが、顔めがけて突き出てきた。  
 握りしめる。手のひらがすぐに熱くなった。ドク、ドク、と鼓動と同じリズムを感じると、切ないまでに気持ちが高まってくる。  
 同じ黄色人種系でも、ジョーのものとはかなり色が違うようだ。  
 ジョーの男性は、先端がピンク色がかっていて、大きくなるとつやつやと光り、いかにも若々しかった。  
 それに比べると、ジェロニモのものは、歴戦の勇者という感じがする。  
 全体が赤銅色で、太い幹には刺青をほったように血管が浮き出ていた。エラが見事に張っている先端は、ごろんと転がっている岩のようだった。  
「・・・すごい」  
 思わずそう口走ってから、亀頭に唇を押しあてた。  
 長いまつ毛を伏せると、舌を裏筋に這わせながら、一気に喉もとまで含む。  
「ふむん」  
 甘い吐息が鼻奥から洩れる。  
 上顎の裏にあたる亀頭の生々しい感触が、フランソワーズをおかしいほどに興奮させた。  
 裏側の結び目を、チュ、チュと音をたてて吸いたてから、幹を舐め下ろし、根元の袋に唇をつける。  
 親指を亀頭の裏にあてて、男の一番感じやすい部分をこすりながら、袋を口の中にほおばった。  
 手のなかでふくれあがる幹が、口の中で転がる睾丸が、得も言われぬ快感をもたらした。  
 おびただしい唾液を流しながら、男性の根元から先端まで、舌と唇でねぶり回した。  
 
 ペニスの向こうに、目を閉じているジェロニモの顔が見えた。  
 修行僧のような険しい表情を見て、フランソワーズは不安になった。  
「ごめんなさい・・・、なんだか、あたしばかり楽しんでるみたい・・・」  
「それは、ちがう・・・」  
 ジェロニモは、女を安心させるように大きな手で頭を撫でた。  
 実際、彼は楽しんでいた。いや、それどころじゃない。  
 薄桃色の唇が、なんのためらないもなく自分のものを含んだときから、至福の境地に達していた。  
 フランソワーズの口の中は、暖かく、やわらかく、ペニスが溶けてしまいそうだった。  
 技巧だけとれば、若い頃知った商売女に、もっとうまい者がいたかもしれない。  
 しかし、フランソワーズの唇と舌の動きは、技巧より大切な、優美さと上品さに満ちていた。  
 そのうえ、下を向けば、大きくくつろいだネグリジェの襟元から、乳房の深い谷間を見ることができた。  
 彼女が顔を動かすたびに、乳白色のふくらみが、ふるふると揺れる。ときには、サーモンピンクに染まった乳暈まで顔をのぞかせた。  
 見ているだけで、イってしまいそうだった。  
 だから、思わず目を閉じて、厳しい表情をしてしまったのだ。  
「心配させて、すまない・・・」  
 ジェロニモは、フランソワーズを軽々と横抱きにして、ベッドまで運んだ。  
 
 フランソワーズをベッドの上に置くと、ナイトウェアをすっぽりと脱がせた。  
「むう・・・」  
 パンティをつけただけでの姿で横たわる彼女を見て、ジェロニモは感嘆した。  
 乳房の張りのよさは、仰向けになっても変わらない。鎖骨のすぐ下から、マルッと真球に近い形でせり出している。  
 胸のふくらみの下から下腹部にかけては、ほんのりと脂ののったなだらかな稜線が続く。  
 腰骨の両脇から太ももの付け根に向かっては、三角形を描くような線があり、胴全体がやわらかな矢印をつくっているようにも見える。  
 股間を覆うパンティは、飾り気のないシンプルな白。太ももの合わせ目の頂点では、媚肉が布地をU字形に盛り上げていた。  
 そしてきれいな曲線を描きながら、美脚が伸びている。  
 フランソワーズの脚は長いけれど、ただほっそりしているだけではない。バレリーナとして鍛えられた太ももは、引き締まりつつも、十二分な量感をたたえていた。  
 ジェロニモは、彼女の足下にまたがる。綿のパンツは器用に床に脱ぎ捨ててあるから、大男はすでに完全な裸体だ。  
 太ももの両サイドを撫で上げた。  
「はっ・・・ンン」  
 それだけで、下半身からざわざわと心地よい波が走り、フランソワーズの口から媚声がもれる。  
 ジェロニモの手のひらは、小器用ではないが、優しげに動く。パンティをさすりまわり、股間のふくらみを、一瞬、むにっと押し上げる。  
 フランソワーズが吐息をついた時には、手は腰のくびれをのぼり、胸の頂に達していた。  
 ジェロニモは、ボーリングの球でさえ握りつぶすことのできる握力の持ち主だ。まさに腫れ物に触るように、そっと両手でふたつの乳房を包み込む。  
 巨大な手のひらのなかに、双丘はすっぽりとおさまる。ジェロニモが、ほんの少し手を動かすだけで、乳房全体にずーん、ずーん、と甘美な感覚が響きわたった。  
 大排気量の高級車に乗ると、さほど加速感を覚えることなく、時速100kmを超えることがある。  
 ジェロニモの愛撫はそれに似ていた。肌の表面を滑るように動くだけで、体の奥深いところまで快感がしみいった。  
 
 ジェロニモの愛撫は、フランソワーズの心を、どこか遠い楽園にまで運んだ。  
 陶然として目を閉じれば、光り輝く草原が見える。多くの生命が目覚めようとする、春の野原。  
 そして彼女の胎内でも、なにかがうごめきはじめていた。動物的な血潮が、うずうずと体のすみずみまで熱くした。  
 ジェロニモもまた感動していた。  
 黒い幽霊団の秘密基地のあるX島で003と会ってから、どのくらいの月日がたったろうか。  
 初めのころの彼女は、腕や脚にまだ少女らしい固さを残していた。体の線も、どことなく直線的だった。  
 それが今では、すっかり女らしい体つきになっている。胸や尻も、ひとまわり豊かになったようだ。  
 いつからフランソワーズの女を意識するようになったかは定かでない。  
 地下帝国ヨミで、崩れ落ちる岩から彼女を守ったときは、危険な状況にもかかわらず、興奮しかけた。  
 柔らかな体が、自分の肉体に密着し、戦闘服の襟の間から女らしい匂いが、ふわっと漂ってきた。彼女を傷つけるわけにはいかない、と強く思った。  
 以来、ジョーほど露骨ではないけれど、ジェロニモはさりげなくフランソワーズを守ってきた。  
 さしたる理由もなく、ギルモア研究所で過ごすことが多いのも、彼女がいるからだ。  
 その優しさは、もちろんフランソワーズにも通じている。  
 
 乳房をもまれるたびに、フランソワーズが豊かな髪を振り乱しながら顔を揺する。それ以上大きな声をあげないように、指を軽く咬んでいた。  
 ジェロニモは、顔をフランソワーズの肩口まで寄せてから、ふと、ためらった。  
 どんなに悶えていても、フランソワーズの裸体は気品にあふれていた。  
 これほど美しくて可愛い女性に、じかに唇をつけて本当にいいのだろうか。  
 彼にとって、003は今も侵しがたい存在だった。あまりにも幸運すぎて、天罰がくだりはしないか、と、おかしな不安がよぎる。  
 そうした心の機微を、フランソワーズも悟った。  
 ジェロニモの迷いを打ち消すように、彼の顔を両手で挟んで引き寄せる。自分の顔をわずかに傾けて、唇を重ねあわせた。  
 ・・・彼は、あたしの心を解放してくれた。今度は、あたしがお返しする番だ。  
 ピンク色の唇を大きく開き、音をたててジェロニモの口を吸う。唇がめくれあがるほど、大胆なキスだった。  
 そしてモヒカンの頭をかき抱くと、  
「好きにしていいの」  
 と、耳元でささやいた。今宵だけは、ジェロニモの恋人になろうと決めた。  
「ウオオオ・・・!」  
 ジェロニモの体の中で、一気にエネルギーが充満した。  
 
 ジェロニモは、フランソワーズの腰を両手で抱くと、思いっきり高く持ち上げた。  
「きゃ・・・」  
 急に天地がひっくり返ったようで、フランソワーズは小さな悲鳴をあげる。  
 ジェロニモ自身は、膝立ちの姿勢になった。ふたりの体格差が大きいので、まるで大人が幼女を高く持ち上げて、あやしているようにも見える。  
 フランソワーズの股間を、顔のすぐ前まで引き寄せた。パンティの中心の小高い丘は、むんと甘美な香りを放っていた。  
 間近で見ると、陰毛もうっすら透けて見える。  
 その翳りの中心に、ムニッと鼻と口を押しつけた。  
「はん・・・」  
 苦しげな息をもらして、フランソワーズは太ももをふるわせた。たまらずに、長い両脚をジェロニモの首に巻きつける。  
 ちょうど肩車と反対向きに、大きな男の上に乗った格好になる。股間から太ももにかけては、彼の顔に完全に密着した。  
 男の唇が、下着越しに割れ目をなぞる。鼻先は、ちょうどクリトリスのあたりを押し回していている。媚肉が左右に開き、男の口をぬっぷと包みこんだ。  
 パンティの薄い生地は、ジェロニモの唾液と、フランソワーズのもらした愛液で、あっという間に透けてきた。  
「ふうん・・・、フンッ」  
 すすり泣くような呼吸をしながら、彼女はジェロニモの頭にかじりついた。  
 
 ジェロニモは、左手でフランソワーズの腰を押さえながら、右手でクリンとした尻を撫で上げた。  
 太い指が、サイドからパンティにすべりこむ。  
「ひ・・・んんン・・・!」  
 フランソワーズの腰は、期待にわななく。  
 尻たぶを、ぎゅむぎゅむと揉まれてから、深い谷間をいじくられる。  
 突然、彼女の背後で、チーッと布の裂ける音がして、尻の表面を涼しい風が吹き抜ける。  
「あっ・・・ああ」  
 フランソワーズは、小さく驚きの声をあげる。  
 振り返るまでもなかった。ジェロニモが指だけで、パンティを破ってしまったのだ。  
 彼が顔を股間から離すと、小さな生地は勝手に下に落ちていった。  
 マジックのようだった。あっという間に、優美に生えそろった陰毛が、男の鼻先にさらけだされた。  
 ジェロニモは、くっ、と短い声を発すると、亜麻色の草むらにむしゃぶりついた。  
 豊饒な香りが、鼻の奥を打った。フランソワーズのエキスがつまっていた。  
 一本一本の根元まで味わいつくすように、唇と舌を這わせる。なめて、ねぶって、しゃぶり回した。  
 そして長い舌を伸ばし、くにゅん、と、ピンク色の肉裂を舐めあげる。  
「くうっ・・・ンぁん!」  
 頭の上で、フランソワーズが上体をのけぞらした。ふたつの乳房が、ふるふると揺れている。  
 男の舌先が、内側の花弁を、ぴらぴらとめくりあげるようになぞる。さらに割れ目の上方にある肉芽を転がした。  
 たまらなかった。白い下腹部全体が、ビク、ビク、と波打った。  
 ジェロニモの顔を締めつける太ももの力が、ますます強まった。  
 
 ジェロニモが、上半身を大きくそらす。  
 大男の広々とした胸が、フランソワーズにとってすべり台のようになる。  
 不安定な姿勢になっても、腰を支えられているので、恐怖感はいだかなかい。しかし、体勢をいつまでも維持していられなかった。  
 フランソワーズは、ジェロニモの体の上を、ゆっくりとすべり落ちていく。  
 美脚を大股開きにして、股間を男の筋肉にすりつけている。胸の真ん中に愛液のあとがひと筋ついた。  
 尻がジェロニモのおなかのあたりまで降りてきたとき、股間に異物があたった。熱く濡れた媚肉を、硬直の先端が迎えたのだ。  
 ジェロニモが、シンボルの位置を微妙に整える。  
「ア・・・、っだめ・・・」フランソワーズは混乱していた。「いえ・・・いいの」  
 青い瞳を熱っぽく潤ませて、男の目を見つめる。  
 こんな風に男性を迎え入れるのは初めてで、少し不安だった。が、彼女の蜜壺は迷うことなく、ジェロニモの亀頭をヌプリと呑み込んだ。  
「っん・・・ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・」  
 か細い悲鳴が、長くつづく。  
 体が沈むにつれ、ジェロニモの長大なものが、肉襞を押し分ける。  
 彼女の股間は、貪欲なまでに赤銅色の肉棒をくわえこんでいく。媚肉は、すっかり開ききっていた。  
 やがて蜜壺の奥深くまでみっしりと太い物に埋めつくされた。男に串刺しにされた心地だった。  
「はっぁ・・・はっぁン・・・」  
 フランソワーズの熱い吐息が、ジェロニモの首筋にかかる。乳房を無我夢中で、厚い胸板に押しつけていた。  
 彼のがっしりした腰が、わずかに動いただけで、狂おしいほどの感覚が背筋を走り抜けた。  
 
 ジェロニモが、ベッドの上で位置を変え、仰向けに寝そべった。自然と、フランソワーズは、騎乗位で跨った格好になる。  
「うぅんっ・・・はっん・・・」  
 彼女自身の重みで、結合がますます深まった。  
 本能的に、ピチピチした太ももで、ジェロニモの体を挟み、腰を前後に揺すぶった。濡れ輝く亜麻色のヘアーを、男の黒い陰毛にこすりつける。  
 ギシギシギシと、ベッドがきしんだ。  
 ジェロニモが、遊んでいる彼女の両手をとる。  
 どうするのかと思った矢先、彼が腰を思いっきり突き上げた。  
「アン!」  
 ひときわ高い声を放ってしまった。  
 ジェロニモの力で腰を動かされると、フランソワーズの体は、一瞬、宙に浮いてしまう。  
 硬直した男性も、半分以上、外に引き抜かれた。  
 その直後、重力の法則に従って、豊かな尻全体が、ジェロニモの股間の中心へと落ちていく。  
 媚肉が彼の太ももの付け根にあたって、びしゃっ、と音をたてた。  
 ジェロニモは、この力強い責めを繰り返した。  
「・・・っう・・・、ぁは・・・、っんは・・・、AH・・・」  
 息が止まるかと思った。  
 体が落ちるたびに、子宮の入口まで、亀頭にえぐられる。  
 電撃のような快美感が、全身をかけめぐった。揺れ続ける乳房の先端では、ピンク色の乳首が痛いほどに反りかえった。  
 髪の毛は振り乱したままだ。カチューシャもずれてしまい、顔の横に伸びるほつれ毛が、つややかな唇に貼りついた。  
 頭が真っ白になった。  
 
「もうダメ!」  
 感きわまったフランソワーズは、ジェロニモの手をふりほどいて、その胸板に突っ伏す。両手で肩にしがみつき、乳房を男の体になすりつけた。  
 とろんとした瞳が、切ないまでの性感の高まりを表していた。  
 ジェロニモの動きをとめない。  
 フランソワーズの尻をつかむと、こねるように撫で回す。  
 自身の体は、腰をそらして、ややブリッジに近い形をとる。冷静なほどリズミカルに、シンボルを打ち込みつづけた。  
 彼女の白い尻は、歓喜に打ちふるえる。深い谷間の奥では「人」の字の形に股間が割れ、その中心に太い幹がズボ、ズボ、と出入りした。  
 突かれ、そして引き抜かれるたびに、腰から下がどろどろと溶けていくようだった。  
「くぅ・・・ん、・・・ふぅぅん」  
 フランソワーズは、小犬のみたいなよがり声をあげつづけるしかなかった。  
 股間から聞こえる恥ずかしい音が、より淫らな刺激となり、骨の髄まで官能を浸みわたらさせた。  
 ジェロニモは尻から両手を放し、ふたりの体の間に差しいれる。そして下から、ふわりとフランソワーズの両乳を包んだ。  
「目を閉じるのだ」  
 彼が呻くような声で命令した。  
 考える余裕などなかった。言われるままに目を閉じる。みずから視覚をさえぎった分、肉体の反応がより鋭敏になった。  
 突然、ジェロニモが腰の動きのピッチを速める。  
 フランソワーズの泣き声も高く、短くなった。  
 まるで体が空を飛んでいるようだった。  
 いや比喩ではなかった。ジェロニモが腰をますますそらしたので、彼女の体は、股間を貫くペニスと乳房を握る両手によって、ほとんど宙に浮く格好になっていたのだ。  
 ふたりの体格差と、ジェロニモの怪力がなせる業で、もちろん、こんな体験は初めてだった。  
 すごすぎる・・・、と思ったのが、最後の人間らしい感想。あとは、どこまでも絶頂へと駆け上っていった。  
「;lkhjfg!!」  
 喉からほとばしる悲鳴は、もう声にならない。  
 エクスタシーまで達したはずなのに、官能の奔流は、彼女をさらに果てしない高みへともっていく。  
 体をなかば硬直させながら、その絶頂感にいつまでもわなないていた。  
 
 数十分後、フランソワーズは汗だくになって、ジェロニモの隣に横たわった。  
 股を閉じるのも忘れ、ペニスが抜かれたばかりの膣口からは、まだ湯気がたっているようだった。  
 体はくたくたに疲れているはずなのに、身も心もシャキッとして、肌のツヤも増していた。  
 生命のシャワーを浴びたみたいに、生き返ったのを感じる。ストレスもすっかり、洗い流された。  
 やはりジェロニモとの交わりは、特別だった。思いきって、彼の胸に飛びこんでよかった。  
「ありがとう・・・、ジェロニモ」  
 フランソワーズは、ようやく上体を起こして、仰向けになったままのジェロニモを見下ろした。  
 と、その視界にまだ屹立したままのシンボルが目に入った。  
「まだイってなかったのね・・・」  
 片手を伸ばして、幹を優しげに撫でた。  
「む・・・。イくわけにはいかない。おれたち人間・・・」  
 言いたいことはわかった。フランソワーズの中で果てるわけにはいかないので、彼は自制したのだ。  
 その気持ちがうれしかった。フランソワーズは、彼の下半身の上で四つん這いになると、亀頭にチュッと口づけした。  
「これだったら、イっても大丈夫だから・・・」  
 そう言うと、シンボルを口に頬張った。  
「ムムゥ・・・」  
 ジェロニモは、驚きと悦びを短い声で表すと、彼女の舌と口がもたらす快感に身をゆだねた。  
 
 ジェロニモのシンボルは酸っぱいような渋いような味がした。それが、自らの愛液の味だとわかると、フランソワーズはちょっと恥ずかしかった。  
 しかし、シュボ、シュボ、と唾液をたっぷりもらしながらしゃぶっているうちに、その味は消えていった。  
 手で袋を揉みながら、顔を上下に動かし続ける。時おり、ペニスの裏筋や袋の裏側を舐めまわす。  
 それでも、蜜壺の締めつけに耐えたペニスは簡単に果てそうにもない。  
 フランソワーズは、硬直をほおばりなおすと、喉をリラックスさせながら、奥へ奥へと導いていく。  
 こんなことが出来てしまうなんて、あたしはやはり愛玩用のサイボーグとして開発されたんじゃないかしら。  
 そんなことを、ちらりと心の隅で思いながら、喉の入口に達した亀頭をさらに呑み込んでいった。  
 シンボルの先端が、舌の付け根の狭い部分を押し分ける。えづきそうになるのを、ゆったりとした呼吸で封じながら、ペニスをのどの奥深くへと迎え入れた。  
「うむむ・・・」  
 ジェロニモが満足げに呻いた。亀頭が、ずぼっと狭い入口を通ったかと思うと、突然、ざらざらとした粘膜が密着する。  
 見下ろせば、フランソワーズの口は、ペニスのほぼ根元まで呑み込んでいた。可憐な唇から想像がつかないくらい、淫らな光景だった。  
 
「んふ・・・、はふん・・・」  
 のどを男性自身で埋め尽くされたフランソワーズは、鼻で息を吸いながら、口から吐き出す。  
 唇を0の字に丸めると、頭を上下に動かし始めた。ぬぽ、ぬぽ、とペニスがのど元を出入りした。  
 彼女もまた、長大な男性に奉仕する喜びを覚えている。亀頭にのどを突かれるたびに、鮮烈な快感が体内に走った。  
 このまま胃の奥まで、ペニスを呑み込んでしまいたい。そんな妄想にふけりながら、豊かな髪をふり乱し、顔を揺さぶり続ける。  
「オオオ・・・」  
 ジェロニモが、喜びの声をあげる。  
 両手をフランソワーズの髪にすべりこませて撫で回すと、爆発しそうな男性を突き立てた。  
「ふうううん・・・」  
 フランソワーズは小鼻をふくらませて、ペニスを食道の入口付近まで含む。そのまま顔をプルプルと振って、最後の仕上げを加える。  
「うおおお!」  
「っんんん!」  
 亀頭がいちだんとふくれあがったかと思うと、樹液が弾丸のように飛び出した。  
 長らく我慢を重ねていたぶん、濃厚な液体が大量に、のどから口の中へと溢れ出る。  
 フランソワーズは、唇をしっかりとペニスにまとわりつかせ、熱い液を一滴も漏らさずに飲みこんだ。  
 どろっとした精液が胃の中に沈みこむと、彼女自身の充足感もより深まった。  
 そして余韻を味わうように、唇と舌をねっとりと絡ませながら、ペニスから口を引き上げた。  
 ジェロニモは、まだ感動に目を閉じたままだった。フランソワーズにここまで奉仕させたことは、ある意味、通常の性交よりも強烈な体験だった。  
 結局その夜、ふたりは、あと2回交わった。ジェロニモは、2度目はフランソワーズの下腹部に樹液を散らし、3度目は極上のディープスロートをもう一度味わった。  
 しかし、ふたりは無防備すぎた。ドア一枚隔てた廊下で、ずっと聞き耳をたてている男がいることに、まったく気づいてなかった。  
 

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