クリスタル・ドラゴン あしべゆうほ 作
グリフィス×アリアン。10巻あたりの設定です。
知らない人のために……
魔法使いのアリアンロッドは邪眼のバラーに一族を皆殺しにされ、復讐のためバラーの元へと乗り込むが、現時点で打ち倒すのは不可能と知り、助け手を探しに旅に出る。
一方バラーはアリアンロッドを気に入り、腹心グリフィスに捕まえて帰るよう命じる。しかしバラーの姉エラータには殺して帰るよう命じられ、バラーに絶対の忠誠を誓うグリフィスはアリアンロッドを追いながら、連れ帰るべきか殺すべきか悩むのだった。
それから旅の先々で借りを作ったり貸しを作ったり助け合ったりしたアリアンロッドとグリフィスが、やっと貸し借りなしになった……のが10巻あたりです。
アリアンロッドは黒髪緑目。旅先で戦士としての訓練を受けたこともありました。
文中の「誓い」は「アリアンロッドの所用が終わるまで一時休戦」という誓いです。
誓いは果たされた。
あとは決めるだけだ。
殺すか――。
連れ戻るか――。
隣のベッドから長い髪がのぞく。漆黒の巻き毛。
グリフィスはやおら立ち上がり、一筋手にとって指を絡ませた。
長い間追ってきた。時間はたくさんあったはずだが、心はいまだ決まっていない。
「バラー様……俺は」
「ちょっと、人の髪いじりながら誰の名前呼んでんのよ」
手の内の黒髪がするりと逃げていった。
「……起きていたのか」
「……起きてたわよ。ついでに思い出した。誓いは果たされていたのよね」
剣を構えるアリアンに、グリフィスも無言で剣を抜いた。
寝込みを襲うつもりではなかったが、決着をつけることに否やはない。
激しい音が夜に響く。
だが長くは続かない。
グリフィスはあっという間にアリアンを追いつめた。
背後には壁。左の逃げ場を腕でふさぎ、細い首に剣を押し当てる。対する武器はすでに床だ。
アリアンは白くなるほど唇を噛みしめた。新緑の瞳で射抜くように見つめる。
グリフィスは目を細めた。
「おまえのために死んだ男を知っている。俺にあの男の気持ちはわからぬ」
「……わからなくていいわよ」
「バラー様のお気持ちも」
「グリフィス?」
グリフィスはアリアンの唇を奪った。
バラー様がこの娘に執着する理由は恋か?力を求めるがゆえか?
後者ならば理解できる。前者は――、前者ならば――。
「ちょっ……やめてよ!やめてっ!」
抵抗を押さえつけ、角度を変えて繰り返し嬲る。
「んん……っ、嫌っ!やめてってば!気でも違ったんじゃないのっ?」
重ねた唇に噛みつかれて、無理矢理ベッドに押し倒した。
抱いてどうする。生娘であるかどうかなど気にされる方ではあるまい。
俺はバラー様の忠実な部下。
強姦など……。
「ちょっと!何があったのよ!言いなさいよ!何か理由があるんでしょ!殺そうとするならともかく、こんな……っ。本当にどうかしちゃったの?言わないと……ぶっ飛ばすわよ!」
「精霊は呼ばせぬ」
グリフィスはアリアンの口に布を押し込み、ベルトで腕を縛った。がむしゃらに暴れる足はムチで締め付ける。視線でしかあがけなくなったアリアンに指で触れた。
組み敷いた体は震えていた。戦士として鍛えられた硬い体が、なすすべもなく。
服の下に手を這わせ、胸のふくらみをそっと包むと、過剰なほど反応した。
恐怖にか、快感にか、まぶたはきつく閉じられている。
初めて見る表情だった。
いつのまにやら指が止まらずにいた。
「……力を抜け。女を抱いたことなどない。……痛むぞ」
グリフィスはふくらみの頂を親指でなでつけた。
徐々に先端が勃ち上がる。少しつねればそれだけでアリアンの体がはねる。
背けられた顔は真っ赤で、嗚咽混じりの吐息は荒く、さらけ出された秘所はすでに湿り気を帯びていた。
なぜか、体が熱い。
グリフィスは人差し指と中指を一気にアリアンの中に突き立てた。
「んんんっ」
何度も素早く抜き差しする。
「んっんぅっ、んっ、んー!」
くぐもった悲鳴も、暴れる体も、蠢く襞も、何もかもが体の熱を引き上げていく。
ゆっくりと引き抜いた指には何本もの銀糸がまとわりついていた。
「……気持ちが良いのか」
「んぅ……っ」
答がない代わりにシーツが濡れる。
肉芽にもたっぷりと蜜を塗り込めてやると、アリアンは震えながら一筋の涙を流した。
「こういったことは……似合わん、な。俺と、おまえには。……泣くな。今さら泣いても――」
グリフィスはかすれた声でつぶやいてから指を戻し、さらにもう一本の指を加えて内壁をかき回した。
「んっ、んっ、んん……っ」
アリアンの腰が淫らに揺れる。まるで催促しているようにも見える。
「……止まらない」
親指と親指で膣を押し広げ、ゆっくりと腰を進めていった。
「……っ」
声にならない悲鳴が上がる。つながっている部分から痛いほど伝わってくる。
グリフィスは一気に貫いた。
「んぅーーーーーーーーーーーっ!」
血のにおいがする。
「……やはり、これが似合い、……かっ」
泣き叫ぶ体を激しく突いて、微塵の容赦もなく抱きつぶした。
腕の中を黒髪が泳ぐ。
腫れ上がったまぶたが力無く閉じているのを見ながら、グリフィスはアリアンの頬に手を這わせた。
唇と唇を触れ合わせる。
そっと離し、また重ねる。
どこもかしこも硬く筋張っているアリアンの体で、唇だけは柔らかかった。
幾度も戯れたあと、巻き毛を一房とって口付ける。
……今だけだ。今だけしかできない。
……おまえをこの腕に捕らえたとき――、答が出る。
……そう思っていた頃もあったというのに。
グリフィスはアリアンをにらみつけ、苦々しい笑みを浮かべた。
「俺はバラー様の忠実な部下。蒼天我が上に落ち来たらぬ限り、変わることがない」
殺しておくのがバラー様のためか、
生かして連れ帰るのがバラー様のためなのか。
揺らぎない忠誠ゆえに、帰ることができない。
「だが……」
もう一つ――
信じがたいことだが、この娘に執着しているのはバラー様だけではなかったらしい。
無理矢理に犯した俺が許されることはなかろう。
……それでいい。
俺はまだ死ぬわけにはいかんが、いつかおまえがバラー様を討つなら先に俺を倒すことになろう。
そのとき命をくれてやる。
旅は続く。
俺はどこまでもバラー様の部下。
どこまでも、敵と、敵――。