彼女と付き合うようになったのは、元はというと今は自称守護霊としてくっついている行方不明扱いの幼なじみと声が少しだけ似てるなんていう理由だった。  
 もちろん、そんな事を言った事は無いが。流石に気が引けてしまう。  
 高校に入ってからハチャメチャな日々を送っていたせいか、彼女と会う時間が減ってしまったが彼女も高校入学と同時に新しい友達が出来て楽しい日々を過ごしていると聞き、それもまた良い傾向なのだろうと思った。  
 何せ一人で放って置けるような子じゃないからだ。それでも可愛い事に変わりは無いし、はちゃめちゃな生活を送る僕の中でオアシスとも言うべき存在だと思う。  
   
 今日はそんな彼女と久々に一緒に帰る事にした。  
 もっとも、二人共学校は違うし家の場所だって大分違う。ついでに僕は彼女と付き合っている事は他の誰にも秘密にしているので僕の家の近所では会えない。  
 つまり、会う場所は大抵彼女の家の地元辺りになってしまう訳だ。  
   
 高校入学時に倉庫から引っ張り出したオンボロ自転車を走らせて数十分、待ちあわせの駅に着くと、既に彼女は待っていた。  
「こんにちは、夏目くん」  
「ごめん、如月。待たせた」  
 彼女は―――――如月は僕と久々に会うのが嬉しいのか、顔を綻ばせて近づいてくる。  
 相も変わらず凄い荷物である。  
「何か、課題でも出たの?」  
「ええ。まぁ……でも、大体学校でやってきたので」  
 如月は高校の美術科に通っていて、時折家に持ち帰って課題をこなしている。宿題ですらまともにやる事をままならない僕に比べれば、本当に凄い事だと思う。一途で努力家な如月は本当に凄い。  
「そっか。今日は、どうする?」  
「えーと、そうですね」  
 如月は少しだけ考え込む。ヤバい、最高に可愛い。  
『エロトモ』  
「うるさい黙れ!」  
「!?」  
「あ、ごめん如月。気にしないでくれ。うるさい守護霊のせいだ」  
「あはは……そう言えば夏目くんは幽霊さんが見えるんでしたよね」  
 如月は納得したようにポンと手を叩く。操緒の事はうるさい守護霊として抽象的に話した事があるが、その時の如月の顔もまた面白かった。結構載せられやすいのである。  
「あ、なら……映画でも見ませんか?」  
「ん、いいね。何か見たいのでもあるの?」  
「あ、いえ、そうじゃなくて………レンタルで何か見ようかなって。夏目くんの好きな映画とか見てみたいですし」  
「ああ……」  
 そう言えば最近映画を見る余裕も無かったなと思った。  
 一順目の世界だの嵩月の非在化の始まりだのと色々あって忙しく、正直休める暇も無かった。  
 夏休みだって如月と遊びに行く事もあまり無くて、寂しい思いをさせてしまったとも思っていたし。  
「そうだなぁ………昔見た映画で『オロチのそっくりさん』ってのが面白かったな」  
「オロチさんって誰ですか」  
「オロチという魔王がいるんだがたまたま通りがかったオロチのそっくりさんが部下達にオロチと勘違いされて魔王に祭上げられる話だ」  
「凄くスケール大きいですね!」  
「ちなみに最終的に古今東西様々な英雄に魔王オロチと間違えられて退治されるという結末なんだけど」  
「間違えられたままですか!?」  
「ついでに『オロチのそっくりさん魔王再臨』っていう続編があるんだけど」  
「続編まで!?」  
「こっちは間違えられたまま復活させられてまた間違えられたまま退治されるんだけど」  
「え、その時何があったんですか?」  
 
「退治しにきた古今東西の英雄の中に本物の魔王オロチがさりげなく混じってて」  
「混じってたんですか!?」  
「魔王本人は古今東西の英雄と仲良くなって楽しく宴会やってスタッフロールなんだ」  
「そっくりさんはいつも退治されるんですね……」  
「たまたま通りがかったそっくりさんだからね。しょうがないんじゃない?」  
 人違いなんてよくある勘違いの一つだしな。  
「まぁ、他には『黒猫物語』とかね」  
「それはどんな映画なんですか?」  
「皆の嫌われ者の黒猫が自分を愛してくれる人を探して旅を続けるんだけど」  
「それは凄いお話ですね」  
「森で行き倒れた時に子ぎつねとおおかみの子が黒猫を助けるシーンが印象的だったね。最終的に猟犬に追われたキツネの親子とおおかみ達を助ける為に一人で猟犬に挑むんだよ」  
「そんな無茶な!? で、どうなったんですか?」  
「猟犬達を撃退して傷ついた黒猫は川に流されて溺れ死んでしまうんだけれども、それを見つけた女の子が手厚く葬ってくれるっていう話なんだ」  
「凄くいいお話ですねぇ……」  
「ちなみに上映時間が4時間44分もある壮大な映画だ」  
「凄く長いですねそれ!?」  
 如月の驚きっぷりも凄いけれど、と僕はあえて言わない。  
 まぁ、確かにそう考えてみればレンタルもいいのかも知れない。  
 
 
 レンタルショップで考えること三十分。結局選んだのは最近の話題作でも無く、何年か前に流行ったコメディ映画に落ち着いた。  
 ホラー映画は僕も如月も苦手だし、最近話題の感動ものを見るのも気分が乗らない。かと言ってアニメに走るのもアレだ。  
 最終的な決定打は友人の評価である。  
 樋口がそこそこ面白いと言っていたし、如月も友達が見たと言っていたのが決め手だった。  
「まぁ、部屋で見るにはちょうどいいよな」  
「そうですね……あ、そうだ」  
 レンタルショップを出た時、如月が思い出したように口を開く。  
「どしたの?」  
「あの、今日はお父さんもお母さんも仕事で出掛けてまして……それで、晩ご飯は外で食べてくるかもしくは作りなさいって……」  
 そこまで言って如月は顔を伏せる。如月は料理が苦手だ。  
 一度彼女作のカレーうどんを食べた事があるが料理界の立体派とはよく言ったものである。何せ見掛けの時点で既にピカソだ。  
「あー……なるほどね」  
 何を食べるか少し悩む。まぁ、折角だから彼女に料理を振る舞うのも悪くない。  
「何か食べたいものある? 折角だから、僕が作るよ」  
「え? いいんですか?」  
 如月は少し驚いた顔をすると「夏目くんの料理……楽しみです」と言葉を続ける。  
「んー、何にするかな……カレーとか、あとは麺か……」  
 どちらにしろ無難な選択だ。失敗しても食べられるものであれば。  
「あ、ならその……二人だけというのも何ですけど、お鍋なんてどうでしょう?」  
「鍋?」  
「はい」  
 鍋か。少しまだ時期が早いかも知れないが、鍋というのも悪くない。  
 闇鍋でなけりゃ基本的に美味しいものなのでそれもいい考えだ。  
「よし、鍋ね。じゃあ、買い物してくか」  
「……はい!」  
 オンボロ自転車のペダルを漕ぐ。大きな荷物の如月が僕の背中にしがみつき、その体温がしっかりと伝わってくる。  
 平穏な日常の象徴。いつまでも、いつまでも、こんな日常だけが続けばいいのに。  
 
 ただの願望でしか無いけれど。  
 
 小さな部屋のこれまた小さなテーブルの上にコンロと鍋、小型テレビにはDVDプレイヤーを接続して、上映も食事も準備OKである。  
 そのテーブルを囲むのは二人だけだけれども、それでもこれが、僕らにとって大切な時間である事に変わりはない。  
「すき焼きというのも悪くないですね」  
「まぁね。残っても美味しく食べられるのがいいしね。まぁ、肉だけじゃなくて他のも食べてね」  
「はぁい……あ、ふふふ、夏目君、今の見ました?」  
「見た見た。今のは無いだろ流石に……てか、これは無い! これは無いよな……あはははは!」  
「えー? でも、これは有り得ますよ。だってこの前トモカネさんがって……あはははは……ごほっ、ごほっ……」  
「あ、如月大丈夫か?」  
 食べながら笑ってむせてしまったのか、胸をとんとんと叩く如月に慌てて水を渡す。  
「大丈夫……だめ、やっぱ消しましょう……ご飯食べるのが危険です……」  
「そ、そうだね。あとで見るか」  
 うん、とてもじゃないが食事時に見る映画じゃないな。コメディなんて。抱腹絶倒すぎて食べられない。  
 テレビを消して、静かになる。  
「あ、それ煮えてきてるよ」  
「はい」  
 如月が箸を伸ばし、食べてから少し微笑む。  
 可愛いと思うだけじゃない。  
 
 会える回数も減ってきているけど、それでも僕は彼女が好きだと解る。  
 だけれども、彼女に大切な事を伝えてない。この世界が滅びるかも知れないという事。一度リセットされたあとに始まった二週目の世界で。  
 滅びの運命を回避出来るかどうかは、これからの僕達次第。  
 だけど、如月は何も知らない世界で生きている。明日が来て、明後日が来て……一年後、十年後も当たり前に来ると思って、夢を描いてる。  
 それが本当に来るか解らないなんて知っているのは、僕達だけ。  
 
 でもそれでも。  
 如月の笑顔一つ、描く夢一つ、そして何よりも、如月を守りたいから。  
 例えどれだけ傷ついたとしても、僕は諦めずに戦い続けるのだろう。  
 例え命を落としてしまったとしても。それは悲しいけれど、如月を守れるなら。僕は……。  
 
「夏目くん?」  
 そう呼びかけられ、思わず我に返った。  
「ごめん、なんだっけ?」  
「………夏目くんって、時々、私の知らない世界を見ている気がしませんか?」  
「ん?」  
「その時だけ、どっか遠い存在になっちゃうような気がして、ちょっと怖いです」  
 思わずぎくりとした。そう言えば時々、そう思う事がある。  
 戦っているうちとか、洛校にいる間はそんな風に思ってはいないけれど。それでも、彼女の前だけは、そんな事を考えてしまう。  
「…………なぁ、如月」  
「はい?」  
「如月は、頑張ってるよな、凄く」  
「え? い、いえそんな……」  
「如月がずっと頑張れるようにさ。僕も、頑張るから」  
 その理由は知らなくてもいい。未来が来ないかも知れないなんて、そんな事は知らなくていい。  
 如月はずっと、明日とか未来とかを見ていればいいんだ。  
 その未来を、僕が連れてきて見せるから。例え誰もその事を知らなくても。  
「頑張ってね」  
「……はい!」  
 如月は、嬉しそうに答えると、僕の横までそそくさと移動してくる。  
 そのまま僕の肩にこてんと頭を載せてきた。  
「あれ、まだ残ってるよ?」  
「えへへ、それは明日のお楽しみです」  
 
 鍋に蓋をして、火を止める。待て、僕の分は?  
「それに……お腹空いてる分は、ちゃんと埋めますよ。夏目くんで」  
 如月は首だけを器用に逸らして、僕を見上げる。  
 こうやって、身体を預けて見上げている時は。そう、アレだ。  
「………しょうがないな、如月は」  
 片手で、如月の眼鏡を優しく外す。  
 以前、眼鏡を付けたままだった時に口淫をやらせかけた時は流石の如月も強烈な拒否反応を示したのでそれ以来、ちゃんと外すようにしている。  
 同時に如月の手が僕の胸元に伸び、制服のネクタイをするりと外した。  
 僕も如月の胸元にある制服のリボンを外す。  
 黒いネクタイと深緑のリボンが床に落ちる。シャツのボタンをひとつひとつ外していくと同時に、僕は如月の唇をゆっくりと塞いだ。  
「……ん」  
「ぁ……ん……」  
 唇の間から舌を突っ込み、口の中をかき回すように深い接吻をする。  
 キスをしながら、ボタンが開いたシャツの隙間に手を突っ込み、控えめな乳房を揉む。  
 僕の周りにしても胸が小さいという事を気にしているが女性の魅力は胸じゃない。  
 如月みたいな可愛さが一番だ。  
 だいいち、僕は彼女のその控えめな胸が好きなのだから。  
 体重をかけて、如月を冷たい床に押し倒し、シャツのボタンと、その下にあるブラを外した。  
「本当に、いつ見てもカワイイ大きさだよね」  
「……いつも、恥ずかしいと思うんですけどね……」  
 如月が頬を染めながらそう答える。  
「今日はいつもと違うことやろう」  
「え……?」  
「伸び切ったラーメンを使うってのがあるんだって」  
 今日、同じクラスの男子どもがそんな話をしていたのを小耳に挟んだだけだけど。  
「でも、今ラーメンは……」  
「うん。ラーメンは無いね。けど、似たようなのがあるよ」  
 僕は鍋を指さす。つい先ほどまですき焼きを食べていた。  
「……しらたきですか?」  
「うん、しらたき」  
 僕が頷くと、如月は何故か恥ずかしそうな顔で呟く。  
「しらたきがもったいないですよ……」  
「えー……」  
「そんな顔しても駄目です」  
 如月は頬を膨らませてそっぽを剥いてしまった。  
「じゃあ……そうだな……」  
 買い物袋に視線を向ける。鍋の材料以外にも、何か買った筈。  
 
「じゃあ、これにするか」  
 
 僕は買い物袋から目的のものを取りだすと、蓋を開ける。  
 蜂蜜の瓶の蓋を。  
 
「え? 夏目くん、その蜂蜜を使って何を……」  
 如月が驚いた顔をした時はもう遅い。  
 僕は如月のスカートを外し、パンツも膝まで一気に下ろす。慌てて足を閉じようとする如月を止め、蓋を開けた蜂蜜の瓶を近づける。  
 
「ほら、まだ僕はお腹一杯食べて無いからさ。如月を食べようと思って」  
「もう……何で蜂蜜なんですか……べたつきそうですね」  
「気にしない気にしない」  
 少し開いた如月の花弁に、蜂蜜を垂らしていく。  
 どろりとした蜂蜜がかかる度に如月が面白い声をあげるが、そのまま花弁から上へと動かし、乳房や首筋にも落としていく。  
 琥珀色の液体が、如月の肢体にかかって美しい。  
「ふふっ……凄く甘そうだね、如月」  
「えっちです……」  
 如月がそう言うと同時に、僕は既に彼女の肢体にむしゃぶりついていた。  
 蜂蜜ごとぺろりと身体を執拗に舐めていく。首筋だろうと乳房だろうと花弁だろうと容赦しない。甘い蜜は食べさせてもらう。  
 花弁を舐めていた時、蜂蜜に混じって何か出ている事に気付いた。  
「………なるほど。如月の蜜、か」  
「ちょっと……さっきからくすぐったいんですよ……何をひゃぁっ!?」  
「いただきます」  
 花弁を舐めていき、濡れていくそこを少しだけ撫でる。生温い。  
「………今日は……大丈夫だよな」  
「……何がですか?」  
「あれ。コンドーム、置いてきちゃってさ」  
 僕の問いに、如月は顔を真っ赤にした。  
 
「ばかぁーッ!」  
 
 思いっきりぶっ叩かれた。  
 流石に高校一年生なら避妊はちゃんとしないといけないよな、うん。  
 樋口の野郎がいつぞやくれたコンドームはとっくに無くなってるし。かと言って一人で買い物に出る機会があまり無いから買いに行けないのが悲しい所。  
 しかし頬が痛い。  
 
 着衣を殆ど脱いだまま不貞寝してしまった如月を横に、僕は水を1口飲む。  
 とりあえず風邪を引かないように僕のブレザーをかけておく。まぁ、1晩ぐらい床でも平気だろう。  
「やれやれ……」  
 まぁ、今回は忘れてしまった僕が悪い。次回にお預けである。  
『トモは肝心な所でヘタレだねー』  
「やかましい」  
 ふわりと舞い出て来た操緒にそう答える。  
 毎度毎度ヘタレ童貞言われてるけど一応僕は童貞じゃない。まぁ、操緒はそれを見ているにも関わらずヘタレ童貞扱いしてくるが。  
『如月ちゃん、今日は寂しかったのかもね。お父さんお母さんがいない夜は珍しいし』  
「まぁね……僕みたいな家庭の方が珍しいよ」  
 父親は顔も覚えてないし母親は仕事でずっと遅かったし、今はもう再婚相手と生活中だし。  
『でもトモ、今日は何か考えてたみたいだけど』  
「ん? ああ。これからの事さ」  
『これからの事?』  
「ああ……操緒にも、負担かけまくるだろうけどな。でも」  
 だけど、僕には守らなきゃいけないものがある。  
「如月を守るためにはね。みっともなかろうが、諦める訳には行かないさ」  
『そういう所だけ真面目だねぇ、トモは』  
「いいだろ別に」  
 いつもの事さ。ふん。  
 さて、寝るか。  
 
 うっかり寝過ぎてしまった朝は怖い。  
 昨日あのまま眠ってしまい、夏目くんのブレザーを被って寝ていた私は跳ね起きて夏目くんを叩き起こし、そのまま学校へと飛びだした。  
 駅まで夏目くんの自転車に乗っけてもらった。本当はシャワーを浴びたかったけれども時間がないのでしょうがない。  
 夏目くんだってそのまんまだったから。  
 
 どうにか学校まで着いたのが始業直前。幼なじみの先輩には先に行かれてしまったのであとで謝っておかなくちゃ。  
「おはようございます、皆さん」  
「おー、キサラギ遅…」  
 教室に入るなり、トモカネさんの視線が固まる。  
「どうしました?」  
「おはよう、キサラギちゃ…」  
 ノダちゃんもフリーズし、ナミコさんにいたっては口をあんぐり開けたままだ。  
「あの、皆さん……?」  
「………キサラギ殿。非常に言いにくいのだが……うちの制服はネクタイでは無くてリボンだし、何より上着が……」  
「え?」  
 その時。私は始めて気付いた。  
 スカートとシャツまではいつもの制服。だけどいつもの深緑のリボンじゃなくて夏目くんの黒いネクタイをしていて、ついでに羽織っていたのも夏目くんのブレザーだった。  
 おまけにブレザーの隙間から見えるシャツはまだ少し濡れているし、乾きかけた蜂蜜であちこちがべたついている。  
「ああーッ! そうだ、これ夏目くんの!」  
 と、いう事はまさか夏目くんは私の制服を着ているのだろうか。  
 何という事。  
「うう、昨日ひっぱたいちゃったからってこんな悪戯するなんて……」  
「……ともかく聞くが如月、昨日何があった」  
「夏目くんがしらたきを使うなんて言いだしたから嫌だって言ったら蜂蜜を使ってきてそれでコンドームを忘れたなんて……」  
 その時、私は自分が言っている言葉の意味に気付いて頬が真っ赤になるのを感じた。  
「…………キサラギ殿。その……なんというか、キサラギ殿の殿方についてとやかく言うつもりは無いが、蜂蜜をかけられたとは」  
「ああ、キョージュさん忘れて下さいお願いします」  
「てか、キサラギに彼氏がいたとは……信じられねぇ。てか、しらたき使うってしらたきプレイなんてあるのか……」  
「ナミコさんまで……」  
「これはびっくりニュース。キサラギちゃんがそんな関係まで発展してるなんて」  
「ああ。驚きだぜ……そうか、キサラギが一番だったか。今度紹介してくれ」  
 ノダちゃんやトモカネさんが騒ぎだした時、携帯電話が震えた。  
「あ、電話……」  
『もしもし? ごめん、如月。僕制服とネクタイ間違えた……』  
「気付くのが遅いですよ! もう!」  
『そんな怒らないでくれごめん許して、こら佐伯、ジャマするな! 嵩月、お前何する気だ邪魔だぞ炎出すな! ごめん、本当に今後は気を付けるから』  
「もー……」  
 まったく、本当に困るけれども。  
 まぁ、今後はしないというのだから許しておくことにしておこう。  
 
 
 

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