ウリエルを天上の迷宮へと送り返したその日、拓たちは疲労のためか、皐月の用意してくれた年越し蕎麦を  
食べると会話もそこそこに、そのまま床につくことになった。  
 拓は布団の中でうとうととしながら、ようやく安心して冬休みを過ごせるな…とか意識を曖昧にさせて眠りに  
ついた。  
 
 ううんと寝返りを打って、拓は突如閉じられた瞼に明るい光が注がれるのを感じた。  
「もう、夕方……か…って、夕方!?」  
 拓が感じ取ったのは真昼の太陽の日差しではなく、夕焼けの光だった。長いこと他人の家でぐーすかと眠っ  
 
ていた自分を恥じながら、いそいそと着替えを始める。と、下着姿になったところで気がつく。  
(ううっ……)  
 彼はじっと自分の股間に目を落として、顔を赤らめる。そこには彼の分身がトランクスにテントを形作って  
 
いた。もしこんなところを見られでもしたら恥ずかしい。  
(……僕、欲求不満なのかな)  
 そんなことを意識しながら自分のズボンに足を通そうとする拓。  
 
 
 しかしどうしたものか、タイミングはいつも良く行くとは限らない。  
 
 
「羽崎くん、起きた?」  
「さ、皐月さんッ!? い、今……!」  
 その声で誰か分かった時には既に遅く、「着替えてるんです」という間もなく廊下と部屋を隔てるものは開かれていた。皐月はまあと両手で口を押さえたがそのまま突っ立っており、その目線が自分の股間に注がれているのを拓は察知した。  
「さ、皐月さん、ちょ、恥ずかしいですから!」  
 なんて無様な格好を曝け出しているんだ。拓はもっと早く起きてればよかったと後悔しながら、その姿のままで皐月の背中を押しやる。  
 もともと姉の関係(はっきり言うとシスコン)からか彼は「おねえさん」な皐月に憧憬に似た感情を感じていた。  
 だからそんな彼女にこんな姿を見られては、恥ずかしさはますますこみ上げてくる。  
 しかしその彼女はどこか楽しそうに笑うと、ぎゅっと拓の両手を握りしめた。  
「ふふっ、良かった。やっぱり男の子なのね、羽崎くんも。あまりにも女の子っぽいから、  
 本当は女の子なんじゃないかって心配してたのよ」  
「そんな…」  
 たしかに以前この里に訪れた時、指先がきれいで女の子みたいだと言われたことがある。  
 そのときは喜んでいいものか悩んだ。  
 確かに、女である凛よりも身長が低いし、カッコイイというよりは可愛いという顔立ちだ。  
 そういうのはちょっと年頃の男の子としては複雑なものである。  
 だからといって、こんな状況で男の子だと言われても余計に恥ずかしくなるだけである。  
 今はただ可及的速やかに皐月に部屋から出て行ってもらいたい。  
 しかし彼女はそんな彼に構わず、すっと拓に近寄ると女性らしい長く細い指先でさわさわとテントを  
 張っている欲望を軽く触った。  
 この突然の行為に拓は目を白黒させるしかない。  
 なされるがままにされていると、皐月の行動は大胆になり拓のトランクスのなかにまで手を忍ばせてきた。  
 さすがにこの行動には拓も我に返り、慌てて皐月の手をとってぬいた。  
 
「ちょ、ちょっと皐月さん、何やってるんですか!?」  
「…そんなに大声を出していいの? いくらこの屋敷が広いとはいえ…誰が聞いてるのか分からないわよ?」  
 目を細めてどこか艶かしい表情で微笑む皐月に拓は思わず押し黙ってしまう。  
 誰から見ても今の状況は自分が皐月を襲っているようにしか見えない。  
 けれどここで抵抗をやめてしまえば、大事になってしまうのは目に見えている。  
 目を合わせるとこのまま流されるような気がしたので、拓は彼女の顔から視線を外し  
 顔を赤らめながら彼女の手を拒もうとする。  
 それを見て、皐月は顎を拓の肩に乗せて耳元で甘くささやいた。  
 拓の鼻腔に、彼女がいつも愛用しているシャンプーの匂いが吸い込まれる。  
「羽崎くん、おねえさんの言うことは…きくものよ?」  
「………」  
 その言葉を聞いてびくりと拓の動きは止まり、それを見止めた皐月はさらに追い討ちをかけるように  
 ささやき続ける。  
「…このことは凛ちゃんには言わないから、ね? それに……出したいんでしょう?  
 私はそのお手伝いをするだけだから」  
 そこで何故「みんな」でなく凛の名前が出てくるのか分からなかった鈍感な拓だったが、  
 ただでさえ滅多に自慰をしない彼にとって皐月の指先の感触はそれだけで刺激あるものだったし、  
 皐月にしてもらっているという状況が彼のなかの興奮を呼び覚まし、徐々に理性を奪っていた。  
 だから、彼は思わず頷いてしまった。  
 
「……はい」  
 
「それじゃあ早速…」  
「って、何で服を脱いでるんですか!」  
 流石に拓もこれにはツッコミを外すことができない。  
 こういう性についての知識に疎い拓にとっては「手伝う」ということを「手淫」とイコールで繋がっていた。  
 だから服を脱ぐ必要なんてないはずである。……あくまでも、拓にとっての性の常識のなかでは、だが。  
 当の本人はただ笑って、ハイネックの服もブラも脱ぎ捨て、  
 均整取れた大きめな胸が束縛されていた衣服から解放されて、ぷるんと露わになる。  
 胸の頂は小さくキレイな桜色をしており、彼女の白い肌がさらにそれを強調しているかのように思える。  
 ただそれだけのことなのに、うぶな拓は興奮してしまい彼の分身もさらに大きく硬くなってしまった。  
「ふふっ、それじゃあ羽崎くん、そこに寝て?」  
 皐月は先ほどまで拓が寝ていた布団を指し、彼は素直に従い仰向けに寝転んだ。  
 今までしたことがないようなことに拓は恥ずかしさで一杯だったが、  
 一度認めてしまったからには逆らうこともできず、ただ無抵抗のままになる。  
 そしてそんな彼に対して皐月は、上半身を拓の下半身に寄せていく。  
 そしてトランクスをずらして猛々しく勃起している剛直を外気に触れさせた。  
「スゴイわ…羽崎くん……」  
 皐月はガラス細工に触れるかのように彼の剛直に手を触れさせると、  
 うっとりと恍惚した表情を浮かべそれにほお擦りをした。  
 彼女の柔らかな頬の感触が膨張して敏感になっている拓のモノを通じて彼に快感を与える。  
(う、うわわっ!? )  
 思わず拓は身をよじろうとするが、皐月はしっかりと彼の身体を押さえており逃れることはできない。  
 頷いてしまったものの、いざこうされてしまってはどうしたら良いのか頭が回らない。  
 
 しかしそんな拓に構わず、皐月は顔を近づけてぺロリとその頂点を舐める。  
 それはほんの一瞬だけだったが、なんとも言い難い快感が拓の身体を走りぬけ、びくりと震えた。  
「き、汚いですよっ、皐月さん!」  
「…あら、そんな細かいこと気にしちゃダメよ? それに羽崎くんも気持ちいいんじゃない?」  
 うふふと笑いながらさらりと拓の抗議も受け流して、彼女はその豊満な乳房で拓の欲望をしっかりと挟み込む。  
 線の細い感のある拓だが、そこは健全な男子。顔に似合わないような少し大きめのそれは皐月の乳房でも  
 覆いつくすことはできず、彼の剛直の先端が僅かに顔を出していた。  
「あむっ…んちゅ…ちゅ…」  
「あっ…さ、さつき、さん…!」  
 皐月は胸で彼の剛直を挟みこんだまま、それに唇を寄せ吸い付く。  
 かと思えば舌でつついてみたり、鈴口を舐めてみたりと多様な彼女の技に、拓は女の子のように喘いでしまう。  
 彼は恥ずかしいと思いながらもこの快楽に流されてしまい、彼の剛直からは先走り汁が吐きだされ皐月の白い肌へと付着する。  
 
「ん…はっ…ふふ、随分気持ち良さそうね、羽崎くん?」  
「う、はぁっ…! そ、そんな……」  
 皐月の言葉に羞恥心がさらに増すがそんな拓に構わず、彼女は両手で双乳を動かし挟んだ剛直をしごく。  
 与えられる羞恥と快楽で拓の意識はどうにかなってしまいそうだった。  
 しかし頭と下半身は関係なく、彼の欲望はさらに掻き立てられ皐月の胸の中でびくびくと震え  
 
 そして――――  
 
「さ、さつ、きさん…ぼ、ぼく! もう、で、射精そうですッッ!!」  
 拓は耐え切れないかのように喉をのけぞらさせ、少しでもその快楽を得れる時間を継続しようと  
 歯を食いしばり瞼をきつくつぶる。  
 皐月はそんな拓を可愛いと思いながら、あむっと彼の欲望をその口で包み込んだ。  
「――――!?」  
 それを止めようと拓は思ったものの、既に快楽の波で限界を超えており、  
 逆にそれがきっかけで彼の剛直からは精液が皐月の口内へと撃ちつけられた。  
 けれど彼女は少しだけ眉をひそめただけで、長く続く精液の発射を受け止めて、  
 それをごくごくと喉を鳴らして飲んでしまった。  
「あ、は…はぁ…、皐月さ、ん……」  
 射精しきった拓は陶然とした表情を浮かべたままぼうっと皐月の顔を見やる。  
 精液を飲み干し彼から口を離すと、彼女は軽く息を吐きにこりと笑った。  
「はぁ……どうだった、羽崎くん? 気持ちよかったでしょ?」  
 あまりに邪気のない笑顔に拓は、快楽とは違う原因で顔を赤らめてしまう。  
 皐月はそれを察したのかそうでないのか、部屋にあったティッシュ箱を取って後始末をしはじめた。  
 
「……でも、どうしてこんなことを?  
 その、してから言うのも変ですけど、こういうのは好きな人とするのが普通なんじゃ…ないんでしょうか?」  
 拓はようやく着替えを済ませ縁側に腰をかけて、隣で正座をしている皐月に訊ねた。  
 すると彼女はしばらく考え込んでいたがイタズラを思いついたような子供の笑顔を浮かべると、  
 唐突に拓の唇に自分のそれを寄せた。  
 皐月の不意打ちにどう反応したらいいのか困惑し、  
 拓は頬を上気させたまま呆然と唇に手を当てて彼女の答えを待った。  
 
「それが答え…どのように受け取ってもいいわ。ただ、弥生や凛ちゃんには悪いことしたかもね」  
 
 彼女は嬉しそうに少女のような微笑を浮かべると、立ち上がって颯爽と廊下を歩きはじめる。  
「さっ行きましょう、拓くん。もう夕飯の時間だから」  
「は、はいっ!」  
 拓は自分が下の名前で呼ばれたことに気付かずに元気よく頷くと、既に皐月の意図を読み取ることを  
 忘れ彼女の後を追っていった。  
 
続く? 終わり?  

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