「親愛なる義従兄弟、冥加へ  
  今夜、かなでは如月律に抱かれるぞ。  
  かなでの処女は、奴のものだ。  
  おまえはこのままで終わるのか?  支倉ニア」  
 
 季節は春。卒業式が近い。  
 俺は今、星奏学院の学生寮へと急いでいる。  
 少し考えれば、こうなることは、分かっていたはずた。  
 なのに、なぜもっと早く阻止できなかったのか。  
 
 己の不甲斐なさに歯軋りする。そして何より、貴様の尻の軽さにだ。  
 思い返せばこの類の苛立ちは、夏のあのファイナルの日から、常に  
俺に付きまとっていた。  
 
 あの日俺は貴様に破れ、終了後のステージの上に立ち尽くしていた。  
 そして俺は、貴様が現れる奇跡を、神に祈っていた。  
 奇跡は起こった。貴様は、俺を選んだのだ。  
 
 愛の挨拶を演奏した後、貴様は言った。  
 「私にとっても、あなたは運命の人、オムファタールだ」と。  
 そして、  
 「いままで色々あったけど、冥加とは、普通の恋愛がしたい。  
  付き合ってください。」と。  
 俺は何に対して感謝すればいいのだ。  
 こうして、俺と貴様の交際は始まった。  
 
 しかし、その交際は長くは続かなかった。  
 会話が、もたなかったのだ。  
 当然だ。俺と貴様は、生い立ちが違いすぎる。  
 唯一の共通項はバイオリンだが、会話がもたなければ、お互いを  
高めあう関係など、築けよう筈が無い。  
 
 貴様は言った。  
 「二人称が「貴様」なんてだめ。私は最後まで、玲士に名前で呼  
  ばれる枝織さんが羨ましかった。」と。  
 俺は言った。  
 「俺はまだ、貴様のことは貴様としか呼べん。  
  宿敵に戻るというのなら、それもよかろう。  
  しかし時の女神が解決してくれる問題なら、  
  俺は貴様を、未来永劫待ち続ける。」と。  
 
 そして貴様は、俺の元を去っていった。  
 
 その後俺は、貴様にコンクールで出会った日には、決して負けな  
いよう、バイオリンの腕を磨く日々を送っていた。また、貴様の動  
向が気になったから、星奏学院に密偵を用意した。  
 支倉ニアもその一人だ。俺に同情しているのが癪に障るが、寮内  
の事情に詳しく良く働くから、まあ良しとしよう。  
 しかし、今から思えば、密偵など送らなければ良かった。なぜな  
ら、密偵どもの報告に、俺は日々、胸を焦がすような苦しみを味わ  
ったからだ。  
 
 如月律。貴様と生い立ちを同じくする、幼馴染み。  
 自然に囲まれたのどかな田舎町で、貴様らは長い穏やかな時を共  
有してきた。俺のとは対照的な、穏やかな時を。  
 冬には、すでに交際を始めていたそうだな。  
 貴様がだれと交際しようが、貴様の勝手だ。なのに、なぜこの胸  
は、かくも締め付けられるような痛みを覚えるのだ。  
 しかし、俺にはどうすることも出来なかった。  
 
 そして、卒業間近のこの時期に、如月律は海外留学が決まったと  
の情報が入った。バイオリン職人の修行をしつつ、演奏の修行もす  
るという、困難な道を選んだという。  
 これで、おれの苦悩は幾分か和らぐ、そう思っていた。  
 
 だが、それは大きな誤解だった。  
 なんと本日、星奏学院の学生寮では、貴様と如月律が初めて結ば  
れる夜をセッティングしようという動きがある、というではないか。  
 男と女が離れ離れになろうというとき、堅く結ばれようとするの  
は自然の成り行き。理屈では分かっていたはずのことだ。しかし、  
貴様と如月律が結ばれようなどとは、想像だにしていなかった。  
 
 俺はまだ、男女の機敏について全く理解しておらず、その点子供  
ということなのだろう。しかし、そのような自省はともかくとして、  
貴様と奴とが結ばれようとする時は、刻々と近づいている。  
 
 星奏学院の学生寮に着くと、支倉ニアが門の前で待っていた。  
 「幸い、如月兄は恩師への報告があるらしく、まだ寮には帰って  
  いない。さあ、小日向の部屋へ案内しよう。もっとも、小日向  
  が今度もお前を選ぶかは、小日向次第だな。」  
 
 支倉ニアは、寮の庭の中、こっそりと俺を案内し、小日向の部屋  
の窓の前まできた。そして、「幸運を祈る。」と言い残し、すばし  
っこく去っていった。  
   
 窓は開いていた。部屋の中には、シンプルな白のブラウスを着て、  
鏡台に向かって唇に紅を差す、貴様の姿がある。  
 「玲士・・・。どうしてここに?」  
 動揺するでもなく、貴様は静かに俺に問いかける。  
 「今日のことは聞いている。貴様を、奪いに来た。」  
 重い沈黙が続く。  
 「運命が玲士と私を結びつけ、玲士が私から離れられないように、  
  私は玲士から離れることはできない・・・・・・。  
  わかった。今日は玲士についていく。」  
 そう決断すると、貴様は如月律に、今日は急用ができたと電話連  
絡し、外出の身支度を整えた。  
 
 
 天音学園の学生寮(高層マンション)までは、少し距離がある。  
 春の夕暮れ、貴様と俺は、久しぶりに並んで歩いた。  
 貴様と俺との会話が続かないのは、付き合っていたころと同じだ。  
 だが、今日は違うことが一つだけある。  
 貴様と俺が、これから何をするのかについての、共通認識がある。  
 貴様は、俺の白ランの袖を引っ張る。  
 これは手を握れという合図か、やっとわかった。  
 初めて貴様の手を握る。  
 その手は、小さく、やわらかく、儚げだ。  
 
 マンションの自室に着く。  
 部屋に入るなり、俺は貴様の唇に口付けた。口付けるだけで、気  
が遠くなりそうな快楽の波が俺を襲う。しかし、この波をどう扱え  
ばいいのか分からない。なぜなら、俺にとって、初めてのキスだか  
らだ。  
 抱きしめて、唇を重ねるだけの俺を、貴様は舌で誘う。俺はそれ  
に応える。そしてキスの仕方を知る。快楽の波の中で、俺は思う。  
俺と付き合っていたころの貴様が、こうだったとは思えない。如月  
律に、教えられたのか。  
 快楽ゆえ、腰が抜けそうになる。みっともない姿をさらしたくな  
いから、俺は貴様をゆっくりと引き離す。  
 
「ちょっと休ませてくれ。・・・・・・そうだ、コーヒーでも淹れよう。  
 この部屋は海が見えて眺めがいい。  
 ソファに腰掛けて、待っていろ。」  
 
 コーヒーを二人で飲む。やはり、会話は続かない。  
 飲み終えようとするころ、貴様はおもむろに会話を切り出した。  
 
 「玲士と付き合っていたころ、私はとても辛かった。あなたの  
  ことが好きだから、会話が続かないのが辛かった。」  
 「・・・・・・すまない。」  
 「最初から、こうしていれば、よかったのよ。」  
 「?」   
 「言葉で語れないのなら、他にも語る術はある。そうすること  
  で、打開できるのかもしれない。律と付き合って、そんな単  
  純なことが分かった。」  
 
 そういうと、貴様は長いソファに俺を招き寄せ、隣に腰掛け、  
俺の傍に寄り添う。  
 「今日してしまうと、玲士とはやり直せるのかもしれないし、  
  体の関係だけに終わるのかもしれない。試してみたいと思  
  ったの。玲士は?」  
 「俺は貴様を、如月律に汚されたくないだけだ。俺の体で、  
  あんな駄犬のことなど、忘れさせてやる。」  
 「よく言うわ。キスの仕方も知らなかったくせに。」  
 俺の頭に、一気に血が上る。   
 
 「キャッ、何するのよ!!」  
 貴様のブラウスを引き裂いた。  
 白い胸元が、まばゆいばかりにきれいだ。  
 もっと見たくなって、水色のブラジャーを引き摺り下ろす。  
 可憐な胸、薄紅色の乳首が現れる。  
 ブラジャーの紐とブラウスのせいで、貴様の上半身の自由  
は利かない。さらに下半身の自由を封じ込めるため、貴様の  
腰の辺りに、馬乗りになる。  
 
 「こんなに身を固くして、哀れなことだ。性を知らないのは  
  貴様も同じだろう。」  
 「貴方に答える義務なんて無い。」  
 貴様の目元にうっすらと浮かんだ涙を、俺の指で拭った。  
 貴様は、違う、と懸命に首を横に振った。  
 
 「これでも違うといえるのか。」  
 きっと、この可憐な胸は、繊細な楽器のように扱えばよいの  
だろう。弄ぶようにまさぐると、貴様は涙を流しながら、必死  
で口をつぐんだ。声が出そうだが、出したくないのか?  
 悪戯心から、不意に貴様の脇腹をなで上げる。  
 「あぁぁ・・・、やめてっ・・・・・・」  
 「喘ぎたいのであれば、素直に喘げばよいものを。」  
 
 胸を弄びながら、既に隆起している俺の固いものを、貴様の  
下腹部に押し付けてみる。貴様は、無意識に、腰を振って返し  
てくる。初めてだろうに、本当に貴様は、淫乱な女だ。  
 
 そんな貴様の淫乱な姿をもっと目に焼き付けようと、俺は貴  
様を全裸にすることにした。ブラウスやスカートを脱がせるこ  
とは容易だったが、ブラジャーの脱がせ方は、「後ろにホック  
が。」といわれるまで分からなかった。  
 
 ショーツを脱がせるのに難儀した。構造的には、脱がせるの  
は簡単だ。しかし、貴様は最後まで「まだ早い」と抵抗を示し  
た。  
 性的興奮がまだ無いから、駄目ということか?「それもある  
」と貴様はいった。だったら、その湿り何なのだ。湿りを見せ  
たくないだけではないのか。  
 「玲士が脱がないとダメ」とも言った。しかし、今日俺は服  
を脱ぐつもりはない。なぜかって?貴様には幼少のころから、  
散々屈辱感を味わされてきた。服を着たままの性行為は、貴様  
へのささやかな復讐だ。  
 結局、ショーツは嫌がる貴様を無理やりねじ伏せ、力任せに  
引き剥がした。少し破れたし、液で滴っている。あとで新品を  
付け届けしておこう。  
 
 今日の貴様はよく泣く。その涙の半分は、屈辱感からのもの  
だ。そう思うと、俺の復讐心は満たされる。  
 
 さて、ここからどうやって、貴様を犯そうか。  
 胸を愛撫しただけでは性交にはまだ早く、女性器をも愛撫す  
る必要がある。それぐらい知っている。しかし、俺は、胸につ  
いても愛し方を良く知らない。ましてや、女性器など。  
   
 とりあえず、良く観察してやさしく扱えば、間違いは無いは  
ずだ。先ほどの抵抗で疲れ果てた貴様をベッドに運んで仰向け  
にし、腰の下に枕を挟み、足を大きく広げさせた。まだ残って  
いる力で抵抗しようとするから、貴様の右手首と右足首とを紐  
で結び固定する。そして、電気スタンドの光をあて、その部分  
がよく見えるようにした。  
 「信じられない!  
  なんでいきなりお医者さんごっこ始めるのよ!!」  
 貴様が、何を言っているのか、意味不明だ。  
 
 その部分は、とても複雑な構造になっている。  
 穴が二つあり、どちらのほうの穴が入れるほうなのか聞いた  
ところ、上のほうの穴だという。横に広げてみたところ、うっ  
すらと膜が見えた。これが、ひょっとすると・・・?  
 やさしく指を入れて、その膜を破るように、ゆっくりと指を  
回してみる。そうすると、膜は破れ、血が流れた。  
 
 「フンッ。貴様、処女だったのか。」   
 「だったら何だって言うのよ。」  
 ほら、また泣く。  
 しかし貴様、処女を捧げる相手に俺を選んだということか。  
 なぜか急に、復讐心とは真逆の愛おしさがこみ上げ、貴様を  
強く抱きしめる。  
 
 
 それからしばらく、貴様のその部分を良く観察し、愛撫を試  
みた。男の陰茎や亀頭に該当すると思しき器官を、蜜をつけ捏  
ね繰り回すと、貴様は小鳥のように喘いで、蜜を垂れ流した。  
 
 これで性交可能な筈だ。俺はベッドから、抵抗が出来なくな  
った貴様を、大窓の近くへ連れて行く。  
 「ここで、するの?」怯えた貴様は聞く。  
 「そうだ。だが安心しろ。外からは見えない。」  
 俺は上着は着たまま、下だけを脱いで、貴様の背後から、貴  
様の両足を持ち、抱え上げる。貴様の体は軽い。  
 宙に浮き、足を開いた貴様の姿が窓に映る。  
この体勢での性交を俺が望んだのは、貴様にとって最も屈辱的な  
やり方だろうからだ。  
 
 「律・・・?」窓の外に、姿を見つけたのか。貴様の視線のさき  
に目をやると、地上に小さく如月律の姿が見えた。  
 「もう一人の、オム・ファタールの登場か。  
  フフッ、フハハハッ!!面白い。  
  役者は揃った。貴様に屈辱感を与えるのに、これ以上のシチ  
  ュエーションは無い。入れるぞ。」  
 「やだ、玲士。ちょっとまって。・・・・・・あああっ!!」  
 
 貴様は痛がりながらも、初めて入るそれをすんなりと受け入れ  
た。続けていくうち、貴様は小さく喘ぎはじめる。その声は、小  
さく「律、律・・・」といっているように聞こえる。それに答える  
かのように、如月律はこちらをじっと見続ける。姿も見えず、声  
も届かぬはずなのに。  
 
 貴様は近日中に奴と結ばれるだろう。俺は、あえて黙っていて  
やろう。なにも知らない、哀れな如月律。  
 
 
 事を終えた後、復讐心は満足されたはずなのに、空しいばかり  
だ。なぜなら、貴様を俺だけのものにすることは、現状では不可  
能ということを、より強く思い知らされたからだ。  
 時の女神が、俺に微笑みかけることは、あるのだろうか。  
 
-- 終わり --  

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル