放課後の練習室で、香穂子は隣で眠る年下の恋人の寝顔を見つめていた。  
 
「しょうがないなあ・・・」  
 
参考のためと設備のオーディオで有名な弦楽四重をいくつか聴いていて、  
彼の解説を聞いているところだったのだが、あまりに旋律が美しかったせいか、  
前日夜遅くまでチェロを弾いていたせいか、それとも恋人の横で気を許したのか・・・  
開始15分ほどでしゃべりながら眠ってしまった。  
 
色素の薄い柔らかな癖毛。大きな瞳に長い睫毛。  
きめのととのった薔薇色の頬、それに見合うような愛らしい唇。  
大柄ではないけれど均整の取れた体。  
周りの人はよく「天使のよう」と彼を形容するけれど、本当にいくら見ても見飽きない美少年だ。  
 
「肌なんか私なんかより綺麗だもんなあ」  
 
なめらかな色白の肌はピンク色に上気して、すっかり体温が高くなっている。  
つないでいる手が熱い。熟睡しているんだ。  
香穂子は頬を指でつついたが、まったく起きる気配がない。  
 
「おーい。起きないと練習終わっちゃうよ?」  
 
反応なし。  
 
「あと5秒で起きないと、襲っちゃうよ?」  
 
・・・反応なし。  
 
仕方がないな、と残り時間を気にすると、つないだ手がピクリと動いた。  
 
「襲う、ってどうするんですか?」  
 
驚いて見ると、まだ半分眠ったような表情で宙を見ている。  
 
「起きたの?」  
「・・・襲わないんですか?」  
 
色素の薄い瞳がこちらを見つめている。本当に綺麗な子だ。  
香穂子は彼の柔らかい髪に触れ、そのまま頬をなでる。繊細な絹のような感触。  
耳のあたりを支えて、小さな唇にキスを落とした。  
まだ少年の甘さが残る身体は、どこもかしこも丁寧に作られすぎていて、触れることもためらわれる。  
 
「もっと襲っても、いいですよ」  
 
彼は香穂子の手を自分のタイに導く。  
導かれるままピンを外し、上着のボタンをはずし、シャツを脱がせる。  
 
―本当に、本当に綺麗な子だ。  
 
華奢だけど筋肉はしっかりついている。色素の薄い肌も、顔や首と同じような滑らかさだ。  
若干右腕が太いのはチェロを弾いているからだろうか。  
 
「先輩のは、僕が脱がせても、いいでしょうか?」  
 
恥ずかしいことを臆面もなく聞いてくる。香穂子は耳まで赤くなった。  
 
「この襟はどうなってるんですか?・・・ああ、ホックで止まっているんですね。  
僕、先輩の制服がこうなってるの、知りませんでした」  
 
普通科の制服を珍しそうに眺めながら、一枚一枚脱がせていく。  
 
「これも、僕がとってしまってもいいでしょうか?先輩、すごくドキドキしてるから、  
大丈夫なのかなと思って」  
 
ラジャーの紐に指をかけながら言う。香穂子は恥ずかしさで何もいえないまま頷いた。  
彼は香穂子を前から抱きかかえるようにして、背中に手を回す。  
当然のことだが扱いなれてはいないようで、かなり苦戦している。  
香穂子は肩甲骨をそっとすぼめて、ホックを緩めた。  
 
「・・・」  
 
今、香穂子の上半身はまったく何も身に着けていない。思わず胸を隠そうとすると、  
手首をそっと掴まれて身体を開かされる。  
 
「すごく、綺麗です。もっと、見せてください」  
 
彼は香穂子の腰を抱いて、スカートのホックに手をかけ、ショーツと一緒にスルリと下ろしてしまった。  
下着は大切なところを守るには、あまりに頼りないものだ。  
 
着ている物を脱いだのだから肌寒いくらいのはずなのに、今は全身が早鐘のように脈打ち、  
恥ずかしさのせいで体中が熱くなる。―私はどうしたらいい?年上なのに。  
香穂子は今にも泣き出しそうな顔をしている。  
 
「先輩。僕も苦しいです」  
 
彼はまた私の手を自分のズボンに導いた。香穂子がおそるおそるベルトを解き、ファスナーをおろすと、  
チェック柄のトランクスごしにもカチカチになっているのがわかるほどペニスが主張していた。  
 
「・・・出してください」  
 
トランクスはよく見ると前のあわせがすでに濡れている。もう彼も、限界まで我慢しているのだ。  
香穂子は目をそらしながらズボンと下着を足首まで下ろす。視界の隅に、  
何かが反動で下から上へ弾むのが見えた。  
 
「・・・先輩・・・僕の上着の内ポケットにあるの、出してください」  
 
彼に言われるがまま、香穂子は上着のポケットをさぐり、小さな包み・・・コンドームを取り出した。  
 
「こんなの持ってたの?」  
「同じクラスの西君がくれたんです。彼女がいるなら、このくらい持っているべきだって。  
・・・先輩、つけるところ見ていてくれませんか?ちゃんとできるか不安で」  
 
香穂子は背けた目をおそるおそる正面に戻す。華奢な腰の真ん中に、パンパンに張り詰めた彼自身が  
可愛らしい顔からはまったく想像もつかないくらいグロテスクに存在していた。  
彼は黙々とパウチから中身を出し、そのままペニスに被せようとする。  
 
「違うよ。ここの出っ張り、こうやってしっかり持って。空気が入らないように」  
「・・・先輩、使ったことあるんですか?」  
「保健体育の授業で習っただけ。知らない」  
 
香穂子は精液溜めをつまみ、ゆっくりとゴムを彼に装着していく。本当にもう、この子は―。  
何だかすごくいけない事をしているみたいだ。  
 
「ありがとうございます、先輩」  
 
彼はにっこり微笑むと、そのまま香穂子の背中を抱いて、首に、肩に、胸にキスの雨をふらせた。  
 
「胸、柔らかいですね。食べられそうなくらい。このまま、先輩ごと食べてしまえたらいいのに」  
「ふふ。くすぐったい。小鳥に食べられてるみたい」  
「・・・もう一口、ください」  
 
そういうと彼は、胸を甘がみするようにきつく吸った。思わず声が漏れる。  
香穂子の腰を支えていた右手が、内腿へと移動する。  
 
「女の人って、いつもこんなに湿ってるものなんでしょうか」  
「馬鹿」  
「すみません」  
 
香穂子のすっかり濡れてしまった性器のぬめりを確かめるように、  
彼は何往復もその周辺に指を滑らせた。陰核を刺激されて身をよじらせると、  
そこが性感帯だと悟ったのか、執拗にあらゆる角度から責めたてる。  
親指で上から下に擦り上げながら、膣に中指を挿入して、中の広さを確かめる。  
 
「すごくあったかいです。僕のを入れてしまっても、いいですか?」  
 
彼は涙目で頷く香穂子の腰を押さえながら、自分のものを挿入するべく体重をかけた。  
 
「痛い!」  
 
練習室の床が硬いせいもあり、身体が上にすべってしまってうまく入らない。  
数回チャレンジした後、彼は思いついたように言った。  
 
「先輩、こちらを向いて僕の膝の上に座ってください。上から入れるほうが、うまくいくかもしれません」」  
 
こんな格好で大きく脚を開くのは抵抗がある。けれど彼の期待に応えたい。  
香穂子は恥ずかしさに震えながら、彼の上に跨り、ゆっくりと彼自身をくわえ込むように座った。  
 
「・・・んっ・・・」  
「辛いですか?」  
「平気・・・」  
「・・・チェロみたいで落ち着きます。この腰のくびれも、やわらかく響く、優しい声も」  
 
そのまま香穂子を支えながら床に下ろし、彼は弓を引くように丁寧に腰を動かし始めた。  
次第にリズムが早くなっていく。  
 
「先輩。先輩、・・・香穂先輩!」  
 
そしてニ・三度身体を反らして痙攣し、ぐったりとしてそのまま果ててしまった。  
 
 
 
「痛がらせてしまって、ごめんなさい」  
 
床の血を拭きながら彼が言った。  
 
「僕は何もかも先輩が初めてです。こんな気持ちになったのも、こういうことをしたのも。  
だから思うようにできなかったけど・・・次も一生懸命頑張ります。だから教えて下さい。  
どうしたらいいのか、先輩が、何をしてほしいのか」  
「私が・・・教える側?」  
「はい。僕、何もわからなくて。練習するわけにもいかないし」  
 
香穂子は「練習」が妙におかしくて笑いながら言う。  
 
「私もよくわからないんだ。・・・先輩なのにね」  
「じゃあ僕と同じですね。これから一緒に頑張りましょう」  
 
大きな瞳が嬉しそうにキラキラと輝く。  
 
「僕・・・大きくなりたいです」  
「どうして?今のままでいいのに」  
「先輩を抱えるのが、もっと楽になります」  
 
香穂子は彼の頭を軽く小突いた。  
可愛くてたまらない、年下の恋人。  
 

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