勝手知ったる要領で練習室の扉を開けると、穏やかなヴァイオリンの音が流れてくる。香穂子は邪魔にならないよう  
配慮しながら、部屋の今の主―月森の奏でる音を聴いていた。バッハのコラール「目覚めよ、と呼ぶ声が聞こえ」だ。  
室内楽用の楽譜だろうか、楽譜を覗き込むと何段かに分かれている。  
 やがて音が途切れると、  
「ブラボー」  
 香穂子は小さく拍手した。  
   
「・・・で、今日は何の楽譜を持ってきたんだ?」  
 月森が楽譜を仕舞うのと同時に、香穂子が鞄を開けて楽譜を取り出す。  
「えーと、これ」  
 同じくバッハのコラール、「Jusu,joy of man's desireing(主よ、人の望みの喜びよ)」である。あらゆる教会  
カンタータの中で一番有名な曲で、月森も当然空で弾ける。  
「君にしては随分簡単すぎないか?」  
「真奈美ちゃんがこの曲好きなんだって。合わせたいって言われたの」  
 お姫様にそう言われては、月森は従うほかない。  
 
 構成は単純だが、複声あってこそ映える曲であることを香穂子はすぐに思い知った。支える低音部と内声を月森が  
ピアノでフォローする。横で香穂子はピアノの譜面台に置かれた楽譜を熱心に覗き込み、一音一音確認しながら追ってゆく。  
多少覚束ない弓使いに月森は内心苦笑しながら、それ以上のことは言わない。むしろこの音を一番傍で聞けるのだから、  
たまには森真奈美の我侭も有難いものだ。  
 何とはなしに香穂子をちらりと横目で見やり、そして月森は不意に息を止めた。  
「蓮くん?」  
 止めていたのは、数秒だったろうか。  
「あ、ああ」  
 香穂子の言葉に、跳ね返ったように月森は我に返り、香穂子は彼らしくないとぼんやりと思いつつも、それ以上の  
追求は止めにしたのだった。  
(一体、今のは・・・)  
   
 次の日も同じ様に香穂子は月森の師事を仰ぐ。曲の構成を捉え、一音一音を丁寧に紡ぎ、内声の変化をきちんと  
把握する。次第に細かくなる指示を一つ一つ書き込み、確認してゆく姿はヴァイオリニストとして申し分のないものだ。  
彼女がヴァイオリンを始める切っ掛けとなったコンクールからもうすぐ一年、何もかもが大きく変化した。自分の音も、  
彼女の音楽に対する姿勢も、自分たちの関係も、それは紆余曲折を経てはいるけれど、最終的には全ていい方向へと  
持っていけた、と月森は思う。コンクールがもたらしてくれたものは決して小さくない―そう思った、途端。  
「、たっ」  
 横で楽譜をめくろうとした香穂子が、小さな悲鳴を上げた。思わず指先を口に含み、楽器を置く。  
「大丈夫か?」  
 切ったのは、右手の人差し指らしい。弓を持ったまま楽譜をめくろうとして、まだ新しいそれの縁ですぱりとやったと  
いうことか。  
「うん。鞄の中に絆創膏入ってるから、大丈夫」  
 鞄のどのあたりか―と訊こうとして香穂子を見やる。唇に挟まれた指先が濡れ、僅かに潤っている。その唇の  
艶やかさに、一瞬、全身の血が騒いだ。指先で触れた感触を無意識のうちに思い出し、そのときの状況を芋蔓式に  
引っ張り出してしまう。確か、そうだ、あれは一週間前に―。  
「見つかった?」  
 再び、意識が飛んでいたらしい。香穂子が指先を押さえたまま覗き込み、そこで視界の焦点が合った。  
「あ、いや、鞄のどこに」  
「確かお財布とかと一緒にしておいたはずなんだけど」  
 その後の会話、果たしてろくに成立していたかどうか、月森は記憶にない。ありがたいことに下校を知らせるチャイムが  
タイミングよく鳴り、それを幸いとばかりに練習は終えられた。  
 
 公園のベンチに並んで座る。そろそろ桜の蕾が綻びかける頃だろうか。風はまだ冷たいが、あと半月もすれば冬物の  
コートは必要なくなるだろう。  
「相談があるんだ」  
「なあに?」  
 またヴァイオリンのことだろうかと香穂子は思った。大抵二人の会話の八割はそれに関することだ。だが予想とは全く  
反する言葉が、月森の口から出された。  
「暫く、一人で練習したい」  
「え・・・?」  
 香穂子がたじろぐ。月森はばつが悪そうに俯きながら、それでも言葉を止めない。  
「深い理由はないんだ。暫くの間、一人で集中して練習したい。それだけだ」  
「私に、練習室に来るな、ってこと?」  
「・・・ああ」  
 きり、と香穂子は唇を噛んだ。わけが分からない、声音も瞳もそう言っている。  
「・・・なんで?今まで、一度だってそんなこと」  
「すまない」  
 話が理由に及ぶ前に、月森は踵を返してしまう。  
「蓮くん」  
 一瞬ちらりと香穂子の泣きそうな顔が見えた気がした。  
 
 ひとり残された香穂子は、ため息とも涙とも分からぬ吐息をつく。今までに喧嘩したことがないわけではない。  
付き合う前はヴァイオリンに関してかなり厳しいことを言われ続けたし、その後も香穂子が断った音楽科への編入の件や  
場合によってはアンサンブルの不和(特に普通科男子二人)で喧嘩にもなった。ちょっとしたデートでの些事が  
喧嘩に発展したこともある。それでもそれなりに乗り越えてきた、とは思っている。  
 それ以上に、今までの喧嘩には全て原因が伴っていた。起承転結も因果関係もはっきりしていた。今回のように  
理由が曖昧にされたままの、それも一方的な不和は初めてだった。  
「何か、悪いこと言っちゃったのかなあ・・・」  
 
 香穂子の泣き顔もご尤もながら、言ったほうの月森もまた頭を抱えていた。というのも、このところ―特にここ  
数日、身体が思うようにならなくて仕方がない。それも香穂子と一緒に居るなら、なおさらである。本人としては  
とても情けない―そして傍から見れば馬鹿馬鹿しいことこの上ない―、つまり、アレだ。  
 二ヶ月ほど前、ちょうど年が明けて雪が降る頃に、香穂子は月森に初めて身体をゆるした。それから何度か―  
月森の名誉を守るために注意しておくが決して本能の求めるままに引っ張り込んでいたのではない!―事に及び、  
そして今に至る。至るのだが、その経験は当然記憶として残り、このところふとした瞬間に、特に二人っきりでいる  
空間や時間に突然浮上しては月森の本能を刺激していくのである。自他共に認める音楽馬鹿であった月森に当然  
自らの性を顧みるだけの経験と余裕は皆無といっていい。18年分のそれが今になって押し寄せている、今更ながら  
自分の生物学的性と性自認が牡であることを急速に自覚させられるのだ。  
 勿論、そんな状況で教会カンタータなど、バッハに申し訳なくて練習できる筈がない。神への祈りが煩悩まみれの  
曲となっては森真奈美にも申し訳が立たない。  
(・・・参ったな)  
 平均的な男子高校生、それも彼女が居て経験済みなら決して不健全でもなんでもない、むしろまっとうな  
反応であることを、その性格と経験とが災いして当然この男、理解していない。自分が獣か何か、  
とんでもないものに思われて月森は頭を抱えた。  
 
「どうしたの?」  
「・・・んー、ちょっとね」  
 ついたため息は、香穂子ファンを自称する加地を呼び寄せたらしい。一人での練習を求められて既に三日。  
(・・・もしかして、嫌われたかな?距離をおきたいとか、そういうこと?)   
 それとも、無意識のうちに自分が練習を邪魔していたか。否定的な可能性を想像しては落ち込む悪循環が  
既に確立されてしまっている。  
「もしかして、月森くんと喧嘩でもした?」  
「・・・そんなんじゃないよ。私最初っから怒ってなんかないもの」  
「僕でよければ相談に乗るけど・・・あ」  
 加地の示す先を見ると、土浦が立っている。  
「よ」  
 土浦は二人に気付いて片手を上げて見せるが、香穂子は応える気にもならない。  
「何だよ、しょぼくれてんなあ。また月森に何か言われたのか?」  
「・・・またって、人の彼氏を冷血人間みたいに言わなくたって」  
「違うのかよ」  
 相変わらず土浦と月森は仲が悪い。アンサンブルまで成功させておいてこれなのだから、これはもう  
生まれ持っての性格の違いだろうと香穂子は思っている。  
「違うってば」  
「日野さんはきっとあれだよ、痘痕も笑窪。恋は盲目ってやつ」  
「違いねえ」  
「・・・加地君まで」  
 香穂子は机に突っ伏した。人が身の振り方について本気で悩んでいるというのに、相手がこの二人では  
ろくに相談も出来やしない。  
 
 同じ頃、月森も練習室で溜息を吐いていた。昼休み一つでさえこのところは気が気でない。音楽科とは別校舎である  
普通科にはあの二人―月森がアンサンブルでのメンバーで誰よりも敵意を剥き出しにして憚らない加地と土浦が生息して  
いる。月森と香穂子が付き合う前から、その後はそれ以上に増して牙を研ぐことに余念のない土浦といい、牽制など  
どこ吹く風、隙あらば入り込む気満々の加地といい、考えただけで気が滅入りそうだ。  
 そう。気が滅入る。会えばどんでもない夢想をしてしまうのに、会わずにいるのも気が滅入る。何の禁断症状だ、  
と思いかけて、そうして漸く禁断症状、という言葉にたどり着いた。いや、麻薬でもあるまいし、第一自分たちはまだ  
高校生なのだ。閨事に溺れるほうが馬鹿げている。欲望は理性に従うべしとかのキケロも言っているではないか。  
しかし実際に周囲が見えなくなっているのは確かであり―。こうして理性が要求するままに言い訳を考えている時点で、  
自分の頭に血が上っていることを認めざるを得ない。一年前の自分が今の自分を見たら、何を色惚けているんだと  
さぞ呆れたことだろう。  
 
 記憶が正しければ、会わなくなって今日で一週間になる。練習室の受付のノートに彼らしい丁寧な字で書かれた  
「2-A 月森蓮」の書面に香穂子は溜息を吐く。記述が正しければ、彼はまだ練習室にいるはずだ。  
(また、だ)  
 また溜息。月森に会えないことがこんなに苦しいことだとは思わなかった。会いたい。会って話がしたい。自分に  
落ち度があったなら謝る。それだけだ。確認した番号の部屋の前で立ち止まる。間違いない。彼の音が聞こえる。  
 
 ドアをノックする音に、月森はヴァイオリンを置いた。  
「はい」  
「蓮くん」  
 声色に、どきりとする。おそらく扉の向こうで、彼女は泣きそうな顔をしているのだろう。  
「入っていい?」  
 答えにためらった。彼女がこのところひどく落ち込んでいることは天羽の情報から知っている。彼女は自分の好奇心以上に  
親友の不調の原因に対して黙っていられなかったに違いない。それと同時に土浦と加地がこれを好機とばかりに今まで以上に  
頻繁に彼女にちょっかいを出していることも伝え、最後に「アンタ香穂に何やってんのよ!」と一発怒鳴りつけて立ち去った。  
 手を打たなければならないことは分かっていても、それ以前の問題で、場所を問わずに抱き締めて押し倒さないとの保障がない。  
既に例の回想の中で香穂子は服を脱ぎ始めているのだ。唇の柔らかさ。なだらかな肩。シーツに広がる色素のうすい髪。  
差し入れるその艶やかさ。首筋のどきりとするような色の白さ。その他諸々。そんなものたちが一気に襲ってきて、  
思わず月森は頭を押さえた。勿論、今は帰れと言えば香穂子はおそらく引き下がるだろう。それも、多分あの泣きそうな  
顔で、不信感と不満で胸を一杯にして。  
「蓮くん」  
「・・・どうぞ」  
 
 招き入れると、予想通りの顔で香穂子は月森に縋り付いて来た。慌てて練習室の扉を閉め、扉の窓から死角になるよう  
身体を移動させる。  
「こんなの、もう嫌だよ」  
 香穂子は月森の匂いに安心する。音楽科の制服のベストに顔を埋めて上げないのは、その答えがあまりに辛いものであった  
ときに泣かずにいられる自信がないからだ。  
「ちゃんと言ってくれないと分からないよ。私、何か蓮くんのことを傷つけるようなこと言った?だとしたら、謝るから」  
 分からない。気持ちは、ただ抱えているだけでは分からない。言葉にしないと伝わるものも伝わらない。ただ僅かに、  
躊躇いがちに髪の間を通る月森の指の優しさが、愛想を吐かされたのではないことだけは教えてくれる。  
 長い沈黙が部屋を満たした。泣きそうになる香穂子が次の言葉を求めて頭を上げると、月森が漸く重い口を開く。  
「・・・違う」  
「・・・」  
「そういう理由じゃない。君が悪いとか、そういう事じゃないんだ」  
 一番好きな低い声なのに受け入れられないとばかりに思わず身を強張らせた香穂子の背を、月森は緩やかに撫でる。  
「ただ、その」  
 ぷつりと途切れた言葉と俯いた彼の声に、香穂子はぱちくりと眼を瞬かせた。彼はいまだかつて、こんなに困惑した  
顔をしていた事があるだろうか。  
「俺が」  
 相当に言葉を選んでは、それでも言いあぐねている。  
「君といれば・・・」  
 欲しくなってしまうから。果たして最後のほうはまともに言葉になっていたかどうか。一瞬意味を理解できず、そして  
飲み込んだ香穂子の顔が急速に紅潮していく。とんでもない勘違いも加わって、二重の意味で言葉が続かない。  
この部屋に入ってきたときに抱えていた悲壮な決意も何もかも、頭の天辺から熱となって抜けていく。  
 月森は変わらず顔を上げない。それが照れ隠しなのだと、香穂子はあまりに遅まきながら理解した。  
「・・・嫌われたのかって、そればっかり考えてた」  
「すまない」  
 二人は揃って深々と溜息を吐いた。一体今日で何度目だろう。全身から力が抜ける。一度情けないところを見せて  
しまえば後はもう取り繕う必要もなくなって、月森は今度こそ柔らかく彼女を抱き寄せた。くたりと香穂子が  
身を任せてくる。  
「大丈夫だよ。本当に・・・その、したくないって時は、ちゃんと言うから」  
 たぶん、根源は同じなのだろう。大切にしたいと思う理性と抱きたいと思う衝動は、どちらも愛おしさあってのものだ。  
彼女と自分の関係があってこその感情だ。それなのに、どうしてこうも対立するのだろう。まるで磁石のようだと  
月森は思う。心のままに生きると書いて性というのに、その実はどうにも上手くゆかない。  
「二人とも、同じこと考えてたのにね」  
「ああ」  
 二人で笑って、久しぶりにキスをした。  
 
 月森の部屋のベッドに降ろされてその上に覆い被されると、香穂子は抵抗する意志と手段をすっかり失ってしまう。  
耳元でぎちりとスプリングが軋んだ。  
「・・・っん」  
 制服の中に入ってきた冷たい手に、燻っていた熱を煽られる。手の冷たい人は心が温かいとよく言うが、彼の場合は  
少々極端だ。冷たい手ときつい言葉の奥に、不器用な温かさをちゃんと持っている。制服が肌蹴られてブラとスカートの  
ホックが外され、探っていた手がはっきりと目的を持った愛撫に変わると、心地よさと恥ずかしさにいたたまれなくなって  
香穂子はきつく目を閉じた。今更初めてではないのにひどく緊張するのは、多分こころを通わせた後だからだ。多少の  
情けなさを曝け出してもお互いにそれを受け止められる以上、うん、大丈夫だ。  
 肩から制服が滑り落ちて残った下着が抜かれてしまうと、あとはもう身体を覆うものは何もなくなってしまう。  
「っ、あ、」  
 鎖骨を月森の舌が走る。短くて柔らかな彼の髪に喉元を弄られる。彼の息は静かな熱だ。火山のマグマのように、  
誰一人気付かないところで静かに鳴動している。身体に絡みついてくる腕の強さに身を委ねた。指先が膨らみの先端を  
撫でると、それだけで足の付け根が疼いてどうしようもなくなる。煽られて上がった体温だけが原因ではない。  
全身で求めて、そして求められている。  
 
 ひといきに壊してしまわないようぎりぎりのところでブレーキをかけながら、月森は香穂子の身体を開いてゆく。  
暖かい膚は滑らかで、絹のような感触で掌に吸い付いてくる。それを自分がゆるされていることを幸せだとはっきり  
感じた。押さえ込んだ太腿を、わざと柔らかな手つきで撫でながら下腹部に舌を這わせると、  
「やっ」  
 反射的に髪の中に差し込まれた指先の、何とまあ心地よいことよ。  
「蓮、くん」  
 月森は愛撫を止めない。胸に口付け、叢に指先で触れて、唇を塞いだ。素直に応えてくるその柔らかさに酔い、  
僅かに息を整える。情けないところも、みっともないところも、全ては自分だ。他人の前ではどれだけ取り繕っても、  
香穂子はその情けなさまでも受け入れて愛してくれる。それなら全て受け入れてしまえばいい。正の感情も負の感情も、  
全ては自分自身の胸のうちから出てくるものだ。  
 唇を離すと、眼が合った。ふっと香穂子が笑う。抱き締めたまま、ごく浅く貫いた。  
 
「・・・っ!」  
 思わず、香穂子は目を閉じた。躊躇い勝ちに打ち込まれた楔が、浅いところで動きを止める。違和感にはだいぶ慣れたが、  
焦れるような速度で内側を擦られてなけなしの理性が悲鳴を上げる。融けるような痺れは下半身を満たしているが、  
煮詰められる本能のほうが一息に楽にしてくれとねだる。  
「大丈夫か?」  
「っ、大丈夫」  
 壊してしまわないように労わられているのだと分かった。相変わらず日本語の下手なひとだ。そしてその不器用なところも、  
全て月森蓮だ、と香穂子は思う。音楽馬鹿なところも、口下手なところも、不器用なところも、優しいところも、月森を  
構成する全て。まだ香穂子の知らない顔もあるのだろう。それはこの先一つづつ知っていけばいい。何も焦る必要はない。  
「んっ、や、・・ああっ」  
「香穂子・・・っ」  
 当初緩やかだった行き来が、少しづつ冷静さを失ってゆく。薄皮越しの熱と月森の腕に、香穂子は恋人の肩口に爪を立てて  
酔いしれた。身体の一番滾ったところをあやまたず細かな律動で揺さぶられると、理性の最後の一片まで押し流されてしまう。  
立てた爪が衝動を吸収できなくなり、僅かに皮膚を裂いた。月森が一瞬痛みに顔を顰めたのが分かったが、すぐに何も  
考えられなくなった。  
 達する直前に口付けられて、彼の顔を見た。泣きそうだ、と思った。  
 
 後日。  
 仲直りした(とはいっても喧嘩にすら発展していなかったが)二人に天羽と森は機嫌を直し、それを知った土浦と加地は  
少々落胆したのだが。  
 しかしそれとほぼ同時に、月森の肩に刻まれた傷が体育の着替え中にクラスの男子全員を黙らせ悶絶させたことを、当人たちは  
知らない。  
 
 
以上です。   
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