歩きなれたいつもの道を全力で駆け抜ける。  
通りすがる人達がびっくりして目を丸くしてるけど、それを気にする余裕なんてないんだ。  
もうすぐ交差点。  
左に曲がったすぐのところがいつもの待ち合わせ場所。  
――――――いた!香穂ちゃんだ!  
 
「香穂ちゃん!」  
 
勢いを殺さないまま突っ走ってくる俺に驚きながらも、香穂ちゃんは笑顔で俺の名前を呼んでくれる。  
ああ、ごめん。  
ちょっとだけ待って。  
息が整ったら、言うから。  
ちょっと心配そうな瞳で俺を覗き込む香穂ちゃんは、最近、なんだか女らしくなったような気がする。  
初めて出会ったころから可愛いとは思っていたけど、こんな風に大人っぽい表情を見せることはなかったのに。  
――――――春の学内コンクールで香穂ちゃんと出会ってから、本当にいろんなことがあった。  
それまでずっと楽しいってことだけしか知らなかった俺が、君と出会ってからいろんな感情を知った。  
苦しい気持ちも、切ない気持ちも、情けない気持ちも……それを全部上回るくらいの嬉しい気持ちも。  
だから、真っ先に香穂ちゃんに知らせたかったんだ。  
「火原和樹、トランペットのコンクール、学生の部で優勝しました!」  
息を呑んで驚いた後に、香穂ちゃんが全開の笑顔になる。  
あああ。どうしよう。  
俺、今すごく香穂ちゃんをぎゅーってしたいよ。  
香穂ちゃんに伝えたいこといっぱいあるはずなのに、どれもうまく言葉にできなくなる。  
 
「えっ?!いいよ、そんなの!!」  
 
お祝いなんてしてくれなくてもいいよ。  
俺にとっては、今この瞬間、笑顔の香穂ちゃんが目の前にいてくれてることが何よりも嬉しいからさ。  
……って!なんでそんなに真っ赤になるの?  
俺、変なこと言った?  
恥ずかしい?  
う――――――そっかなぁ?  
で、でもこれが俺の正直な気持ちだから!  
だから、そんなに顔赤くしないで。  
でないと俺の顔も赤くなってきちゃうよ。  
お互いに気恥ずかしくなってきちゃって、思わずクスクスと笑いあう。  
ああ……俺、やっぱり、香穂ちゃんが好きだ。すっごく好きだ。  
どうやって伝えたらいいのかわかならないくらい好きだ。  
え?やっぱりお祝いさせて欲しいって……。  
俺の欲しいもの?欲しいもの……。  
急に言われても浮かんでこないよ……。  
うーんと考え込んでしまった俺に、下から覗き込む香穂ちゃんの目が少し曇る。  
め、迷惑なんかじゃないよ!  
こ、困った……。  
何か考えないと、俺!  
 
――――――――――――――――――あ!  
「俺、香穂ちゃんが欲しい!!」  
 
うん。  
最近お互いに忙しくってあんまり会えなかったから、俺、香穂ちゃんと一緒にいる時間が欲しいよ。  
俺は内部進学とはいえ一応受験があったし、コンクールもあったし。  
香穂ちゃんは香穂ちゃんでヴァイオリンの練習で忙しかったみたいだし。  
その分、いっぱいメールや電話をしてきたけど……でも、やっぱりできるだけ顔を見て話をしたい。  
わがままかな?  
ちょっと心配になって香穂ちゃんを見ると、さっきよりももっと顔を赤くして固まってしまっていた。  
「ご、ごめん。迷惑?嫌?」  
俺の言葉に香穂ちゃんは弾かれた様に首を横に振る。  
嫌じゃないけど、心の準備が?……どういう意味?  
困らせるつもりなんかこれっぽっちもなかったんだけど……ごめん。  
 
そうだよね。香穂ちゃんも忙しいもんね。  
ごめんね。わがまま言って。  
俺、情けないよね。年上なのにわがまま言って好きな子をこんなに困らせちゃうなんて。  
そんなことない?ただ突然だったから?  
突然……かなぁ。  
俺、いつも思ってたよ。  
香穂ちゃんともっと一緒にいたい。独り占めしたいって。  
「わかりました」?  
何故だか拳を握り締めた香穂ちゃんがキッっと俺を強く見つめる。  
え?香穂ちゃんの家に行っていいの?ほんとに?  
やったぁ――――――!!  
香穂ちゃん家って行ったことなかったよね。  
いや、家の前までは何度も行っているんだけど中に入ったことはなかったよね。  
あああ……なんかちょっと緊張してきた。  
俺、うまく家の人に挨拶できるかなぁ?  
え?家の人誰もいないの?  
そ、そうなんだ。  
………………な、何考えてるんだ俺!!  
香穂ちゃんは純粋に俺のお祝いのために、今日ゆっくり過ごせる場所を提供してくれるだけなんだから!  
変なこと考えるなよ俺!!  
 
「お邪魔します……」  
 
誰もいないとはいえ、いや、誰もいないからこそ、「おとなしく」を心がけながら玄関をあがる。  
香穂ちゃんの部屋、2階なんだ。俺とおんなじだね。  
そんな些細な共通点に嬉しくなりながら俺は香穂ちゃんの部屋に入り込んだ。  
「うわぁ……」  
女の子の部屋だぁ……。  
かわいらしい柄のカーテンもところどころに置かれたぬいぐるみも、俺の部屋にはまったく無縁のもので、ちょっと感動。  
なんか、匂いまで違う気がする。  
ううん。確実に違う。……香穂ちゃんの、匂い、だ。  
…………お、落ち着いて、俺!  
部屋のドアをカチャリと閉めた香穂ちゃんが、小さな声で「どうぞ」と座る場所を勧めてくれた。  
え……と。  
ベッドの上に座っちゃって、いいの?  
俺、床でも全然平気だよ?  
俺の言葉に、香穂ちゃんが目を丸くする。  
「で、できれば最初はベッドで……」って、そんな真っ赤にならなくても……。  
これ以上香穂ちゃんを困らせるのも嫌だし、恐る恐るベッドに腰を下ろしてみる。  
…………う。  
な、なんかやばいかも。  
だってこのベッドで毎日香穂ちゃんが寝てるんでしょ?  
それを考えたら……ちょっと、くる。  
「な、なに?!」  
小さな声で俺を呼んだ香穂ちゃんに今考えてしまったことを悟られないように、必要以上に大きな声をだして返事をする。  
「私……初めて、なんです……」って……何が?  
香穂ちゃんの言葉の意味がわからずに首をかしげると、俺の目の前で信じられないような出来事が起きた。  
香穂ちゃんが、突然上着を脱ぎだしたんだ。  
「か、香穂ちゃん?!」  
ちょ、ちょ、ちょっと待って!!  
俺の心の悲鳴は香穂ちゃんには届かず、とうとう彼女はキャミソール姿になってしまった。  
だ、駄目だよ香穂ちゃん!  
それ以上脱いだら――――――!!  
慌てて香穂ちゃんを止めようと両腕を伸ばしたら、ベッドのやわらかさも手伝って俺の体勢が崩れてしまう。  
「うわっ!!」  
倒れこんだ衝撃に息が詰まる。  
反射的に瞑った目を開くと、ものすごく近いところに香穂ちゃんの顔があった。  
「ご、ごめん!!」  
慌てて体を起こそうとすると、香穂ちゃんの手がゆっくりと俺に向かってくる。  
細い指先が、俺の頬に少し触れた。  
 
「……っ!!」  
一瞬のうちに、全身に鳥肌が立った。  
ちょっとしか触れられていないのに……頬が、熱くなる。  
「か、香穂ちゃん……?」  
裏返ってしまった俺の声に突っ込むでも笑うでもなく、香穂ちゃんはじっと俺を見つめ続ける。  
――――――や、ややややややばい!!本当にやばいよ!!  
香穂ちゃんのちょっと潤んだ瞳が。  
赤くなった頬が。  
俺の頬をわずかになぞる指が。  
白い腕が。  
何もかもが――――――――――――やばい。  
勢いよく起き上がり、香穂ちゃんと距離をとる。  
ベッドの上だからそんなには離れられないんだけど……でも、さっきの距離よりはまし。  
 
「と、とりあえず服着て!!お願いだから!!」  
 
背を向けた俺の悲鳴のような言葉に、香穂ちゃんが息をのんだのがわかった。  
続いて弱弱しい「ごめんなさい」って言葉と……鼻をすする音?  
「な、泣いてるの?!」  
びっくりして振り返ると、香穂ちゃんがうつむいたまま涙を拭っている。  
「やっぱり私じゃお祝いにはなりませんか?」って……?  
お祝い?  
…………。  
…………。  
…………。  
…………あ。  
 
「あああああああああああ――――――――――――!!」  
 
お、俺、香穂ちゃんに何て言った?!  
お祝いに、「香穂ちゃんが欲しい」って言わなかった?!  
そ、それって……聞きようによっては……っていうかどう聞いても……。  
うわあああああ!!俺の馬鹿!!  
あまりの恥ずかしさに頭を抱えた俺に、恐る恐る香穂ちゃんが声をかける。  
ううううごめん。本っ当にごめん。  
俺、馬鹿だ。  
今までもそうじゃないかとは思ってたけど、やっぱり、俺、本当に馬鹿だ。  
考えなしに物言って人を困らせて、挙句に香穂ちゃんにこんなことさせて……しかも泣かせるなんて。  
穴があったら掘って入りたいって、こういう気持ちのことを言うんだね。またひとつ勉強になったよ。  
ああ。そんな心配そうな声で俺を呼ばないで。  
俺、今、自己嫌悪の真っ最中だからさ。  
……え?  
嬉しかった?何が?  
意外な言葉に顔をあげると、少しだけ近づいていた香穂ちゃんがはにかむように小さく微笑んだ。  
お祝いに香穂ちゃんが欲しいって言ったことが、嬉しかったの?  
なんで?  
「今まで、私のこと女として見てくれてないのかなぁってちょっと不安だったから」って……。  
え?え?  
驚く俺に、香穂ちゃんは更に言葉を重ねる。  
た、確かに俺たち付き合いはじめてから何ヶ月か経つよね。  
手を繋ぐことはもう普通にできるようになったし、キスもいっぱいしたよね。  
でもそれ以上に進む気配がまったくなくって……不安だった?女の子として意識されてないようで?  
「そ、それは……。俺、なんか、どうしていいかわかんなくって……。ずっとしたい、って思ってたけど、がっついてるとか  
思われたら立ち直れないし……。それに、女の子って初めてのときに色々理想みたいなのがあるみたいだし……」  
クラスの友達から回ってきた雑誌に、そんなことが書いてあった気がする。  
夜景の見えるホテルの最上階の部屋、とか。彼氏の部屋、とか。  
俺のお小遣いじゃ前者はちょっと厳しいし、後者は家族っていう大きな難関がある。  
でも俺も大学生になるんだしバイトでもしてお金貯めて、香穂ちゃんを旅行とかに誘っちゃったりして……、なんて色々考えて  
はいたんだけど。  
……「どこで、よりも……誰と、の方が重要です」?  
 
そう、だよね。うん。そうだよね。  
あはは。やっぱり、俺、馬鹿だよね。  
香穂ちゃんを喜ばせたくて、もっと俺を好きになって欲しくて……また、空回りしちゃってたんだ。  
俺、男だし年上だし、君の前ではいつだってかっこよくいたいって思うのに。  
……そんな優しい声で俺を呼ばないで。  
「え?」  
い、今、何て言った、香穂ちゃん?!  
「今じゃ駄目ですか?」って……え?え?  
思いがけない言葉に混乱しながら香穂ちゃんを見つめる。  
赤く染まった頬も震える小さな手も、儚げで弱そうだけど……強い、まっすぐな視線。  
本気なんだ、香穂ちゃん。  
本気で俺と……。  
「……ありがとう」  
嬉しくて、胸がつまる。  
思わず泣きそうになっちゃったのは、俺だけの秘密にしておこう。  
あ、ちょっと待って、香穂ちゃん。  
その続きは俺に言わせて?  
やっぱりこういうことは男から言いたいじゃない。  
だから改めて。  
 
「香穂ちゃんを、俺にください」  
 
涙目になりながら、それでも俺の大好きな笑顔で「はい」って微笑んでくれた香穂ちゃんが愛しくて愛しくて。  
俺は香穂ちゃんが瞼を閉じきる前に唇を重ねた。  
……待ちきれなかったんだ。ごめん。  
いつもするキスは、「ちゅ」って唇と唇が触れるだけのキス。  
深いキスも何度かしたことはあるけど、今はそのどれよりも熱いキスがしたい。  
舌で触れると、香穂ちゃんの唇が薄く開いた。  
性急に俺の舌を捻じ込むと、香穂ちゃんがくぐもった声をあげる。  
その声も、息も、柔らかくて熱い舌も、もっと欲しくて、俺はシーツを掴んでいた手を香穂ちゃんの頭に添えた。  
サラサラの髪に指を差し込んで、ぐっと引き寄せる。  
香穂ちゃんがまたくぐもった声を上げるけど、ごめん。  
だって俺、香穂ちゃんにもっと近づきたいんだ。  
香穂ちゃんがもっと、欲しいんだ。  
唇が離れた一瞬に、香穂ちゃんが「ぷはぁ」と息をあげる。  
それすらも全部飲み込んじゃいたくて、俺はまたすぐに香穂ちゃんの唇を塞ぐ。  
歯列をなぞり舐め、舌を絡め、唾液を飲み込む。  
唇を食み、口内の触れられるところすべてをまさぐっていく。  
どのくらいの時間そうしていたんだろう。  
気がつくと、香穂ちゃんの息がすっかりあがってしまっていた。  
「だ、大丈夫?!ごめん、俺、夢中になっちゃって……!」  
トランペットを吹く俺の肺活量と香穂ちゃんの肺活量に、どのぐらいの差があるかなんてちょっと考えればわかることなのに……。  
一生懸命に息を整えながら「大丈夫です」って微笑む香穂ちゃんに、俺はもう一度謝る。  
ごめんね。   
俺、男なんだしもっと上手くリードできたらいいんだけど……。  
ちょっと落ち込む俺に、香穂ちゃんがゆっくりと腕を伸ばす。  
恐る恐る俺の髪を梳く香穂ちゃんがうつむく。  
そして。  
「もっと、近くにきてください」って消え入りそうな声で言ってくれたんだ。  
胸がぎゅって鷲づかみにされたみたいに、息が詰まる。  
俺を見つめる香穂ちゃんの瞳は、心なしか熱い。  
顔と同じように赤く染まった耳や首とか。  
片方だけずれ落ちてしまっているキャミソールの紐とか。  
俺の髪を梳く細い指先とか。  
視界に入る香穂ちゃんの全てが俺を急き立てる。  
「香穂ちゃん……!!」  
ドサリ、と音をたてて、今度は俺は俺の意思で香穂ちゃんを押し倒した。  
焦ってるみたいに唇を重ね、深く絡め合っていく。  
香穂ちゃんの首筋に触れると、体がピクリと動いたのがわかった。  
そのままそっと下に辿り、右手でささやかな膨らみに触れる。  
 
例えようがない柔らかな弾力が掌に伝わって、体中の血が体とアソコに集まっていくのがわかる。  
お、落ち着いて。  
ゆっくり。  
壊さないように。  
優しく。  
そんな単語を何度も何度も頭の中で繰り返しながら、指先に力をこめていく。  
その力のままに、ふにん、と形を変える感触がもっと欲しくて……どんどん、加速していく。  
キャミソールの上からでも、膨らみの頂上が固くなっているのがわかる。  
「直接触っていい……?」  
俺の問いに、香穂ちゃんは小さく、本当に小さくうなずいてくれた。  
キャミソールをたくし上げる。  
中から現れたギンガムチェックのブラジャーに、心臓がドキンってする。  
こ、これ……どうやって外すんだろう……。  
……こう?あ、外れた、かな。  
自分の器用な手先に感謝しつつ、一気にブラジャーを持ち上げる。  
続いて現れた白い膨らみに、俺の目は釘付けになった。  
想像していたより控えめなその膨らみはふるふると震えていて……なんだか俺を誘っているようで。  
導かれるように、俺はそこに唇を落とした。  
舌で、指で、掌で、香穂ちゃんの肌に触れる。  
白くてすべすべで、当然だけど俺のとは全然違くて。  
香穂ちゃんが小さな声を上げる。  
初めて聞く甘さを含んだ声に思わず香穂ちゃんを見上げると、視線と視線がぶつかった。  
……知らなかった、俺。  
女の子の泣きそうな顔が、こんなに色っぽいだなんて。  
今にも沸騰しそうな頭の中を少しでも冷やすために、俺は小さく深呼吸をした。  
落ち着いて。  
ゆっくり。  
優しく。  
柚木にこっそり教わったそんなおまじないの言葉をもう一度繰り返す。  
そうしないと、やばい。  
今にも…………、しちゃいそうだ。  
もう一度深呼吸をして、俺はそっと膨らみの頂上に触れた。  
ぎゅっと目を瞑った香穂ちゃんが、さっきよりも少しだけ大きな声を上げる。  
「痛い?」って聞くと、ふるふると首を横に振ってくれる。  
ってことは、感じて、くれてるんだよね?俺が触れていることで。  
なんて、なんて嬉しいことなんだろう。  
もっと俺を感じて。  
もっと俺でいっぱいになって。  
すっかり硬くなってしまった蕾を唇で食むと、ぞくりとするくらい甘い声が香穂ちゃんからあがる。  
……もっと、聞きたい。その声。…………聞かせて?  
舌で蕾を転がす。  
押しつぶすくらい抑えて、軽く吸い上げる。  
左の指で捏ねる様に触れると、香穂ちゃんは俺の欲しい声を上げてくれる。  
右手をゆっくりと下降させる。  
香穂ちゃんのおなかをすぎて太ももに辿り着く。  
そのまま優しく足をさする。  
これは、合図。  
お願い。俺をもっと、香穂ちゃんの近くにいかせて?  
ちゃんと合図を受け取ってくれた香穂ちゃんの脚から、ゆっくりと力が抜けていく。  
でも俺の手が太ももの内側に入り込んだ瞬間、香穂ちゃん脚に再び力が入ってしまう。  
「香穂ちゃん」  
呼びかけると、戸惑ったように香穂ちゃんが視線をくれる。  
「俺、……香穂ちゃんが好きだよ。すごく、どのくらい好きかわからないくらいに。だから、香穂ちゃんの全部が  
見たいんだ。……お願い」  
え?俺が卑怯?……なんで?  
そういう風に言われたら断れない、って……そっか。ごめんね。  
でも、俺の正直な気持ちなんだ。だから。  
香穂ちゃんが見たい。見せてください。  
「先輩も……脱いでください」って……、そ、そっか。そうだよね。  
 
香穂ちゃんに言われるままに背中を向けて、シャツを脱ぎ捨てる。  
ジーンズを脱ぐのに少し躊躇って、手が止まる。  
でも背後で起き上がった香穂ちゃんから衣擦れの音がして、俺は一気に全部の衣服を放り投げた。  
っと。兄貴からもらったアレどこだっけ。確か財布の中に……。  
無事に小さな袋を探し出し、こっそり毛布の下に滑り込ませる。  
長い付き合いの中でも見たことがないくらいに勃っているモノに「もうちょっと我慢!」って心の中で呼びかけて、ちらり  
と香穂ちゃんの様子を伺う。  
そして。  
乱れた髪とわずかに覗く首筋と白い背中が視界に入った瞬間、俺は自分でもびっくりするくらいの勢いで香穂ちゃんを  
押し倒していた。  
香穂ちゃんが俺の名前を呼んだ様な気がするけど、その声が頭に届く前に俺は彼女の唇を塞ぐ。  
額に、瞼に、頬に、耳に、香穂ちゃんの顔中に唇を落とす。  
再び香穂ちゃんの内腿に入り込んだ手を、膝から這い登らせる。  
香穂ちゃんの体がまたピクリってして少し力が入ったけど、ゆっくりと膝が開いていく。  
――――――指先に、少し粘着質な湿った感触が届いた。  
香穂ちゃんが自分の手で顔を覆う。  
指先に神経を集中させて、俺はそっとそこの探索を始める。  
こ、ここの少し窪んでるところが香穂ちゃんの…………。  
で、この上が…………。  
無意識のうちに、ゴクリと俺の喉が鳴る。  
「見たい」  
そう思うのと同時に声が出ていた。  
香穂ちゃんが小さく頷いてくれたのを確認して、俺は体を下にずらす。  
初めて見る女の子のアソコは、思っていたよりも生々しくて……扇情的で。  
太腿の白さと薄紅色に染まっているそこのコントラストが俺の思考を停止させる。  
指を動かすと、小さな水音がたった。  
香穂ちゃんの体がビクッと跳ねる。  
ペチャペチャと音のする窪みに、そっと指をめりこませる。  
くぷん、とそこが俺の右中指の第一関節を飲み込んだ。  
「……うわぁ」  
熱い。  
きゅ、って指先が柔らかく締め付けられる。  
ここに俺のを入れたら、って考えてしまったら……やばい。  
入れる前に出ちゃうとか、それは勘弁!落ち着いて俺!  
何度目かの深呼吸をして、ゆっくりゆっくり指を進ませていく。  
「痛い?」  
俺の問いかけに、少しの間を置いて香穂ちゃんが頭を振った。  
……もしかしたら、ちょっと痛いのかな。我慢させちゃってるのかな。  
でももっとほぐさないと、痛い、んだよね?その……、俺のをいれる時。  
入り口に近い内壁をさするように指を動かす。  
香穂ちゃんから甘い声があがる。  
少し柔らかくなってきた気がする。香穂ちゃんのここ。  
大丈夫、かな?  
ゆっくりとしたリズムで円を描きながら、俺は指を更に進入させていく。  
中指全部が、香穂ちゃんの中に埋まった。  
柔らかく熱くキツク俺の指を締め付けるそこの感触に、俺のモノももうギリギリになってしまう。  
でも、我慢。  
落ち着いて。  
ゆっくり。  
優しく。  
一度深呼吸をして、小さく指を動かす。  
香穂ちゃんの体が跳ねる。  
香穂ちゃんの声が、一段高くなる。  
香穂ちゃん、気持ちいい?感じてる?  
もっと、もっと気持ちよくなって?俺を感じて?  
指を動かしたまま、香穂ちゃんの花芯に唇を落とす。  
小さな芽を隠すように覆う花弁を舌先で優しくこする。  
香穂ちゃんの声が、俺の動きを加速させていく。  
初めて嗅ぐ匂い。初めて知る味。  
香穂ちゃんの全部が知りたくて、嬉しくて、煽って――――――。  
 
指先に感じる水音が増したような気がする。  
ピチャピチャと響く音が、俺の唾液なのか香穂ちゃんから溢れるものなのか。  
高くなる水音に重なる香穂ちゃんの声は、もうはっきりと甘くて。  
――――――ああ、もう、俺。  
「いい……?」  
俺の言葉に、香穂ちゃんがしっかり頷いてくれる。  
さっき隠した袋を取り出して、歯と左手で破る。  
ずっと入れたままだった指を引き抜くと、香穂ちゃんが一際高い声をあげた。  
何度か練習したお陰でスムーズにアレを装着できたモノを、香穂ちゃんの入り口にあてがう。  
ギュッと目を瞑って怖さに耐えてくれている香穂ちゃんが愛しくて、俺はその小さな唇ををペロリと舐めた。  
くすぐったかったのか、香穂ちゃんがクスリと笑う。  
それが嬉しくてもう一度香穂ちゃんの唇を舐めると、俺はゆっくりと腰を進めた。  
俺のモノでノックをするように香穂ちゃんの入り口をこする。  
ちゅぷ、と小さな音を立てて、俺のモノの先端が熱に包まれる。  
香穂ちゃんの眉間に皺が寄る。  
「……痛い……?」  
そう聞くと、香穂ちゃんは首を横に振った。  
痛いんだと思う。香穂ちゃんの表情がそう言ってる。  
我慢してくれてるんだ。  
俺の、ために。  
このまま力ずくで先に進めたい欲求を全身で押さえつけて、ゆっくりゆっくりモノを埋め込んでいく。  
テンポはラルゴ。強さはピアノ・ピアニッシモ。  
慣れ親しんだ音楽記号を思い浮かべると、理性がちょっと強くなったような気がした。  
「……入ったよ、全部。香穂ちゃんの中に」  
荒くなった息を悟られないように小さな声で告げる。  
弱く、でも嬉しそうに香穂ちゃんが微笑んでくれる。  
締め付けられる感触に俺の本能が「動け!」って騒ぐけど、香穂ちゃんが落ち着くまでもうちょっと待っていよう。  
そう思っていたのに。  
……え?いいの?  
本当に、動いてもいいの?大丈夫?  
返事の変わりに、香穂ちゃんの指先が俺の頬をなぞる。  
「大好きです」って、今、この状況でそんな事言わないで。  
そんなこと言われたら、俺――――――――――――!!  
それから先はもう、夢中だった。  
記憶が断片的に、しかも感覚しか残っていない。  
俺を締め付ける熱。俺を包む熱。俺の理性を飛ばす熱。  
柔らかい感触。  
香穂ちゃんの匂い。  
水音。  
肌が触れる音。  
甘い声。  
荒い息。  
そして――――――――――――解放。  
その瞬間に俺が叫んだのは、やっぱり香穂ちゃんの名前だった。  
 
 
 
 
 
 
 
初めて出会ったのは、春だった。  
偶然ぶつかってしまった女の子。  
俺と同じように学内コンクールに出るのだと言った彼女は、抱えていたヴァイオリンを弾いたことすらなくて。  
音楽の楽しさを知って欲しかった。  
一生懸命に練習を重ねる彼女が微笑ましかった。  
だからできる限り助けてあげたくって――――――それはいつの間にか、俺を頼って欲しいっていう気持ちに変わっていて。  
一人の女の子をここまで意識したのは初めてで、気がついたときにはもう、恋に落ちていたんだ。  
それからいろんなことがあったね。  
コンクールが終わってからも、季節が変わってからも。  
秋になって突然コンサートに参加することになって。  
アンサンブルメンバーをまとめてコンサートを次々に成功させていく君の傍で、俺はどうしようもない嘘を作ってしまって。  
悩んで苦しんで、みっともない俺を支えてくれたのは君だった。  
もし、君が何かに苦しむことがあるなら、今度は俺が支えたい。  
全力で助けて、応援して、元気付けてあげたい。  
君がいつも、笑顔でいれるように。  
昨日よりも今日よりも、毎日もっと君を好きになっていくこの気持ちを音にこめて、いつでも何度でも君にエールを送るよ。  
君がいて、よかった。  
ずっとずっと、傍にいる。  
君が望むのなら、いつだって傍に。  
 
 
 
 
 
終わり  
 

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