冬海の体が大きく震えた。  
 もう一人の男――斉藤の手が、スカートの中に入り込んだのだ。  
「下着だって服だよ、ふ・く」  
 冬海が騒ぎ立てる前に、大木は先手を打って言い訳する。悲しそうに冬海の瞳が伏せら  
れる。  
(や……いやぁ……)  
 下半身を動き回る斉藤の手を避けるように、体をよじらせる。しかし、それはまるで腰  
を振っているかのようで、逆に男たちのエロティックな欲望をかき立てた。  
「だめじゃん、冬海ちゃん。演奏の時は軽く足を開いて。こんな風に膝を閉じちゃいけま  
せんよって習ったでしょ?」  
 固く閉じた膝の間に斉藤の足が割りこみ、無理矢理に広げさせる。  
(いや……助けて………だれか……)  
「音がかすれてるよ、冬海ちゃん。しっかり吹かないと〜」  
 冬海のタイを解いて、大木はさらにブラウスのボタンに手を掛けた。  
 クラリネットの旋律が一瞬途切れる。  
「おや〜、降参かな?」  
 斉藤がからかうように声を掛けると、すぐに冬海は演奏を続けだした。  
(……香穂子……先輩………)  
 ただひたすらに香穂子の笑顔を思い浮かべて。  
 彼女のためだけに演奏しようと思うのに、どうしてこんなに笑顔が遠いんだろう。  
 
「か〜わいい下着だね」  
「……!!」  
 ブラジャーを撫でていた大木が、胸の先端で引っ掻くように指を動かした途端、ぴりっ  
と冬海の背中を何かが走り抜けた。  
(な……何……今の……?)  
「……あれ?」  
 大木の手が重点的にそこを弄りだす。途端に冬海の体が震えだした。ビリビリとした感  
覚が、どんどん強くなっていく。  
 本当は、少し前から覚えていた奇妙な疼き。あえて考えまい、意識すまいとしてきたそ  
の感覚が、薄いレース越しに先端に触れられることで、一気に高まってしまったかのよう  
だった。  
「もしかして、ちょっと感じちゃってる?」  
(ち、違…う……)  
「ほら、レースの上からでもハッキリとわかるよ。乳首がこ〜んなに尖っちゃって」  
「こっちも」  
 お尻を撫でていた斉藤の手が、すっと前に回った。  
「すごく熱くなってる。敏感なんだねえ、冬海ちゃん」  
「いやあっ!!」  
 下着の上からとはいえ、秘部を触られて、とうとう冬海は悲鳴を上げた。  
「や……もう、やめてください……っ」  
「あれ、もう降参しちゃうんだ?」  
 こくこくと冬海は頷いた。  
 
「日野のことはいいの?」  
「…………っ」  
 冬海の手から、クラリネットが滑り落ちる。両手で顔を覆って、冬海は嗚咽を漏らした。  
「黙ってちゃわからないよ、冬海ちゃん」  
 大木がレース越しに胸の頂を引っ張った。  
「ゃ……っ」  
「はっきり言わないと。『私はもう日野香穂子のことはどうでもいいです』って」  
 冬海は答えない。ただ首を激しく左右に振るだけだ。  
「言えないんだ。じゃあ、俺たちも止めるわけにはいかないな」  
「……ゃ…いやっ」  
 大木の手が、斉藤の手が、冬海に体に絡みつく。  
「いや……!!!」  
 彼らの手から逃れようと冬海は暴れたが、男二人の力にかなうはずもなかった。  
 上着をはぎ取られ、ブラウスも半ば脱がされた状態で床に押し倒される。ショートカッ  
トの髪が乱れて、髪留めがはじけ飛ぶ。  
「…やめ……やめてっ、お願いです……」  
「騒いでも無駄だ。ここは防音されてるんだから」  
 大木がブラジャーをずりあげる。まだ未熟ながらも形の良い真っ白な乳房、その中で先  
端だけは鮮やかに色づいている。  
「やっぱり感じてるんじゃん」  
「ち、違います……」  
 
 冬海は消え入るような声で否定する。震えるその体を組み敷いて、大木は嘲笑した。  
「嘘ついても無駄だよ。体が本当のことバラしてる」  
 大木の指が固くしこった先端を弾く。  
「…ぁっ! や、やめてください……っ」  
「そんなに怯えなくてもいいじゃん。もっと気持ちよくしてやるからさ」  
 大木の横で、斉藤もいやらしい笑いを浮かべる。  
「ここも……ほら、ちょっと湿ってきてることだし」  
 冬海の下肢に伸びた斉藤の手が、下着の中心を強く擦った。  
「ああっ!」  
 電流のようなあの感覚が、ふたたび冬海の全身を貫いた。  
(う、そ……。わたし……ほんとうに?)  
 最初は気持ち悪いとしか思えなかったのに。いいえ、今だって気持ち悪いと、嫌だと心  
では叫んでいるのに。  
 怖い。  
 電流はどんどん強くなっていく。  
 このままでは、自分はどうなってしまうのだろう。  
 男たちが与え続ける感覚から逃げたくて、精一杯もがいてみても、2人がかりで押さえ  
つけられていては手を少し動かすのがやっとだった。  
「……ち、うぜえな」  
 煩わしそうに顔をしかめた大木がふと床に目を止める。  
「……ふん、これでいいか」  
 さきほど外した冬海の青いタイを手に取ると、大木は冬海の両手首をつかんで上にあげ、  
まとめて縛った。  
 
「…や……」  
 涙に濡れた目で、冬海は男たちを見上げる。それが、彼らをさらに煽ることになるとも  
知らずに。  
 大木が冬海の胸にむしゃぶりついた。斉藤が下肢から下着を抜きさる。  
 冬海の悲鳴は、練習室の外には届かない。  
 敏感になった先を温かくぬめる舌が包む。それだけでもう、ぞくぞくとした戦慄が冬海  
の背筋を這い上がる。  
 形を変えるほど乱暴に乳房を揉みしだかれても、乳首をきつく吸い上げられても、痛み  
すら甘い電流に変わってしまうようだった。  
「ああっ」  
 冬海の背がしなる。  
 斉藤の指が茂みの中に潜り込み、冬海の秘められた芽に触れたのだ。  
(いまの……)  
 冬海が何かを考えるよりも早く、ふたたび斉藤が芽をつまんだ。女性のもっとも敏感な  
場所に与えられた愛撫に、冬海は惑乱した。快楽――それが快楽であることを、もはや冬  
海は認めていた――が、冬海の神経をビリビリと灼く。  
「うわ……冬海ちゃん、濡れ濡れじゃん」  
 親指で芽を弄りつつ、斉藤が中指で内部を擦る。一瞬、鈍い痛みを感じたが、すぐにそ  
れも痺れるような快感の中に紛れていった。  
 
 くちゅ、くぷ、ちゅ……  
 やがて、冬海の耳に湿った水音が届いた。  
「聞こえる、この音? 冬海ちゃんの中からどんどんあふれてる……」  
(いや……違う、違うっ)  
 冬海は何度も何度も首を振る。しかし、どれほど否定したくても、いやらしい水音は耳  
に入ってくる。縛られた両手では耳を塞ぐこともできず、残酷な現実に冬海は打ちのめさ  
れた。  
(……香穂子先輩、助け…て)  
 涙があふれて冬海の頬を濡らす。  
 犯されているという事実より、自分が感じてしまっているというそのことに、冬海はシ  
ョックを受けていた。  
「んぁっ」  
 かりっと胸の頂に歯を立てられて、冬海の体が跳ねる。もうひとつの頂は、指の腹でく  
にくにと転がされる。  
「やめて……おねがい、お願いしま……や、あ……んんっ……ぁ……」  
 悲痛な哀願の声。しかし、それは甘さを含んで、練習室の中に響いた。恐怖に青ざめて  
いた顔は今や熱く火照り、乱れた衣服から覗く無垢な体は、淡く桜色に染まってきている。  
「冬海ちゃん、見てごらん」  
 不意に体を持ち上げられる。  
 目を開けた先には、鏡があった。演奏しているときの姿勢をチェックするため、練習室  
には大きな姿見が壁にかけられているのだ。  
「――いやっ」  
 後ろから膝の下を抱えられ、大きくM字に脚を開いた自分の浅ましい姿をまざまざと見  
せつけられ、冬海は目をそらす。  
 
 しかし、すぐに斉藤の指が冬海の中をかき回し、彼女をふたたび快楽の中へと追い込ん  
でいった。  
「ほら、ほら、見てごらんって。すごく気持ちよさそうだよ、冬海ちゃん」  
「ぁあっん、あ……やめて、くださ……ぁぁ……」  
 鏡の中で、ほっそりとした肢体が身悶える。大きくはだけたブラウスから覗くみずみず  
しい乳房は、後ろから伸びる男の手によって揉みくちゃにされている。常には腰を覆うス  
カートが今は大きくまくれあがって、すべてをさらけ出している。固く隠されてきた場所  
は、紅くほころび、悦びの蜜を滴らせながら別の男の指を受け入れていた。  
 やがて、冬海の体が小刻みに震えだした。  
「あれ? もしかしてイクのかな?」  
 冬海は自慰をしたことがない。もちろんこれまで男性経験もない……いや、なかった。  
だから、絶頂の感覚というものを知らない。  
 だが、それでも……それだからこそ、体の奥から急速にふくれあがってくる感覚に怯え  
た。ソレを知ってしまったら、もう戻れない――そんな気がした。  
「いや、いや……や、いや、んぅっ、いや、やぁ……あっ」  
 半ば意識を快感に支配されながら、冬海はうわごとのように拒絶の言葉を口にした。首  
を振り、体をよじって、快感を逃そうとする。しかし、男たちは容赦なく冬海を追いつめ  
ていく。そして、固く尖った芽を男の指がぐるりとひねった刹那。  
 ソレが爆発した。  
「やぁっ、あ、あ、あ、ああぁぁぁぁあああ……っ」  
 大きくのけぞった喉から、空気を裂くような細く高い声があがる。甘い痺れが体全体に  
拡がり、意識すらも侵されて、白く白く溶けていく。びくん、びくんと脚が跳ね上がる。  
 
(あ……あ…………せ、んぱ……い……)  
 香穂子の笑顔が、遠く、遠く、かすんでいく。  
(わた、し……もう……)  
「おほー、イイ声出しちゃって。激しいねえ、冬海ちゃん」  
「冬海ちゃんの中、俺の指をきゅうきゅう締めつけてるよ。本当にエッチなんだから」  
 羞恥に震える体を打つ、男たちの嘲笑。  
「あー、ちくしょう。俺もう我慢できねえよ」  
 扉の前に立ち、目隠しの役をしていた男――平井が冬海の体に手をかけた。慌てて大木  
が制止する。  
「ばかっ、お前は見張りをしてろよ! 後でやらせてやるから」  
「だーって、こんなもん見せられちゃ、たまんないって。大丈夫だよ。鍵はかかってるん  
だし、窓から死角でやってりゃ」  
「ちっ……しょうがねえな」  
 力の抜けた冬海の体を、扉のある方の壁際に運んで、平井は冬海の体を抱え込んだ。  
「おいっ、平井」  
「い、いいだろ。お前らは、今までさんざん楽しんだんだから」  
「大目に見てやれよ、大木。なんなら、お前はお口でしてもらえば?」  
「……ふん。じゃ、俺は冬海ちゃんにフェラチオしてもらうか。斉藤、お前は?」  
「俺は下のお口でさんざん遊ばせてもらったからね。後でいいよ」  
「そっか。……おい、口開けろよ」  
 
 ゆるゆると冬海は首を振る。その顔からは生気が失せ、まるで表情というものが抜け落  
ちてしまったかのように見えた。  
 そんな冬海の様子には頓着せず、大木は彼女の顎をつかんで、無理矢理に仰向かせた。  
耐えきれずに開いた唇の中に、自分のモノをねじ込む。  
「う゛、げほっ」  
 いきなり奥まで入れられて、苦しそうに冬海がえづく。大木は意に介さず、自分勝手に  
腰を使い出した。フェラチオというよりイラマチオといった方がふさわしい乱暴なやり口  
に、冬海は苦しそうにうめき声を上げることしかできない。  
 大木と競争するかのように、平井も慌ただしくズボンを降ろし、冬海の脚を抱え上げた。  
 冬海は抵抗しない。  
 濡れそぼった冬海のそこへ、固く張りつめたモノを押し当て、平井は一気に腰を進める。  
 破瓜の痛みに、びくんと冬海の脚があがり、大木のモノで塞がれた喉から苦悶の声がこ  
ぼれ落ちる。  
 しかし、それでも冬海は抵抗をしない。涙すら流さない。まるですべてを諦めてしまっ  
たように――。  
「うおー、処女はキツイって本当だな」  
「平井、これでお前も素人童貞卒業じゃん」  
 男たちが下品な笑い声を立てる。ほどなく2人は終わりを迎えた。  
「おー、すっきりした」  
 身支度を整える大木に、平井が耳打ちする。  
「おい……なんかさあ、こいつ、変じゃね?」  
「……そういえば」  
 
 ようやく彼らは冬海の様子がおかしいことに気がついたのだった。  
 涙を流しながら、怯えながら、それでも、か弱い力で精一杯の抵抗を繰り返してきた少  
女。――なのに、今は何一つ抗おうとはしない。  
「おい、お前……おいっ!」  
 大木は冬海を揺さぶった。だが、彼女はがくがくと揺すられるまま反応を返さない。そ  
の瞳はうつろにひらかれ、目の前の大木を素通りして宙を見ている。  
「まさか、おかしくなっちまったんじゃないだろうな」  
「どうするよ……?」  
「どうするったって……」  
 顔を見合わせる大木と平井。面倒ごとの予感に、早くも腰が引けている。  
「大丈夫だ、俺に任せておけよ」  
 2人の肩を叩いて、斉藤が冬海の側にしゃがみ込んだ。  
「あーあ、好き勝手やっちゃって。後の人間のこと考えろよな。……うーん、と、これで  
いいか」  
 落ちていた冬海のジャケットを拾うと、斉藤は精にまみれた少女の顔を簡単にぬぐう。  
それから少し考えて、「ま、いっか」とひとりごちると、少女の両腕を縛っていたタイを  
解く。その後、無造作に冬海の足首をつかんで広げ、血と体液の混じり合った場所をおな  
じように拭いた。  
 その間も、冬海は一切、無反応のままだった。  
 それに構わず、斉藤はいきり立ったものを秘所に近づける。  
「ま、ショック療法ってコトで」  
 
 斉藤は平井のように性急に押し進めたりはしなかった。少し進めては戻り、じっくりと  
冬海の狭道に自分のモノを馴染ませていく。そのうちに、冷え切っていた冬海の中が、ふ  
たたび蜜をにじませてきた。  
「………ぁ…」  
「……濡れてきたね」  
 それは異物を受け入れるための、女性の体の自然な仕組みだ。だが、それをさもいけな  
いこと、いやらしいことのように、斉藤は囁いた。  
「やっぱりね。冬海ちゃんは淫乱なんだよ。犯されて感じて、ぐちょぐちょに濡れちゃう  
んだもんね」  
 冬海の瞳が揺れる。ガラス玉のようだった瞳に、かすかに感情の光が灯る。  
「でも、安心して? 俺たちはエッチな子はだ〜い好きだよ」  
「……や……」  
「いや、じゃないでしょ。イイ、でしょ?」  
 斉藤が、弱いながらも反応を示しはじめた冬海の顔をのぞき込んで、ニヤリと笑う。  
「嘘だと思いたい? これは、全部夢だって? でも、残念だったね。これは現実。冬海  
ちゃんが俺たちに触られて気持ちよくなっちゃって、可愛い声をあげてあんあん喘いで、  
こうやって――」  
 斉藤は強く腰を押しつけ、冬海を突き上げた。  
「俺を嬉しそうに呑みこんでるのは、現実」  
 冬海の瞳にじわりと涙がにじんだ。  
 
「い、や……」  
 逃げたかった。  
 体が逃げられないのなら、せめて心だけでも。  
 なのに――自分には、それすらも許されないというのだろうか。  
 じわじわと、冬海の体にもどかしいような疼きが広がっていく。  
(いや…いや……)  
 無理矢理に散らされた痛みは今も残っているのに、体の奥がちりちりと切ない熱に炙ら  
れているようで。  
(わたし……どうして?)  
「俺さあ、女の子を気持ちよくさせるの好きなんだよね。だから大丈夫。俺のモノで、ち  
ゃ〜んとイカせてあげる」  
 ぐいっと腰を密着させると、斉藤は敏感な突起も刺激するよう、深くゆっくりと腰を廻  
した。  
「……ぁ、…ん……っ」  
 びりびりと走った痺れに、意志に反して冬海の腰が浮いた。  
「ふふっ、冬海ちゃんは本当にココが好きだよね」  
 斉藤は茂みに指を潜り込ませると、充血してふくらんでいる粒をぐりぐりと弄った。  
「んぁああ……っ」  
 冬海が仰け反る。全身を貫く快感。体の奥の熱が一気に広がり、目の前がちかちかと瞬  
いた。  
 
 冬海の高まりを察し、斉藤は大きく腰を動かした。狭い内部をえぐられるように突かれ  
て、かと思うと小刻みな律動を繰り返され、否応なしに体がうねる。体の中心から間断な  
く送りこまれる快楽の波に冬海は翻弄された。  
「…あ、あっ、あうっ……ゃ、あぁっ、ひ、っ……」  
「んー、イイ声。ほら、ほら、冬海ちゃんの中もいい感じに濡れてきたよ」  
「いやぁ……」  
 ぐちゅぐちゅと、ふたたび冬海の中から淫らな水音が聞こえだしていた。かき混ぜるよ  
うに腰を動かして、斉藤はより大きく音を響かせる。羞恥に頬を染めて、冬海は力なく首  
を振った。  
 苦悩する心と相反するように、快感はより高まっていく。水音を意識すればするほど、  
中心から甘い痺れが沸き立って、どうしようもなく体が火照る。  
「冬海ちゃんの、中、熱くて気持ちいい、よ。俺のに、絡みついてくる」  
 斉藤もそろそろ余裕がなくなってきていた。冬海の膝裏を抱え上げ、より激しく律動を  
開始する。  
「ああぁっ、あ、や……いや、です…、ふ……んぅっ……も、やめてくださ……っ」  
 快楽に押し流されそうな意識を必死に留めながら、冬海は哀願した。  
「おねが……っ、も……許して……」  
「だ・め」  
 最奥を突かれて、ぐんっと冬海が背を反らした。強烈な快感がさざ波のように全身に広  
がっていく。頭の中が白くかすむ。  
 
(いやっ、ああ……)  
 来る。また来てしまう。あの感覚が。  
「や……ひ、あ、あ、あ、あ……!」  
 冬海の声がせっぱ詰まった響きを帯びてきた。最後を迎えるために、斉藤がめちゃくち  
ゃに腰を叩きつけてくる。  
「あ、あ、…………――――――――!!」  
 背筋を駆けのぼる快感にこらえきれずに冬海は最後の理性を手放した。意識が真っ白に  
弾けとんで、全身が痙攣する。少し遅れて、何かが自分の中に流れ込む。最奥を灼く熱に  
冬海は切なく悶えた。  
「う、お……っ、気持ちいいー……」  
 満足したような呟きを漏らして、斉藤は冬海の上に倒れ込んできた。  
(え……いまの…………)  
 陶然としていた冬海の表情に、急速に理性が戻ってくる。  
 今、体内に流れこんできたものが何だったのか、彼女は正確に理解した。  
 絶望が冬海の心を染め上げる。  
 すでに一度、汚された身ではあったが、今回は違う。自分は――快楽に浮かされた自分  
の体は、男の精を受け入れることに確かに悦びを感じていた。  
 斉藤がゆっくりと身を離す。硬さを失ったモノが引き抜かれていく感触に、ぶるりと冬  
海は体を震わせた。  
(……赤ちゃん……できちゃうのかな…………)  
 感情の麻痺してしまった頭で、ぼんやりと思う。  
 
「ふふっ、冬海ちゃん、惚けちゃって。そんなによかった?」  
 斉藤が冬海の胸の先端を人差し指でピンッと弾いた。  
「あぅっ」  
「ほーんと、敏感だよね。冬海ちゃんは」  
 クッと笑って、斉藤は冬海の滑らかな体を指先でたどっていく。いまだ絶頂の余韻が抜  
けず、薄紅色にほんのりと上気した肢体が小刻みに揺れた。  
「あ……あぁ……」  
「ほらほら、冬海ちゃん見てごらん」  
 大木が携帯を冬海の目の前に突き出す。  
「……っ」  
 冬海は大きく目を見開いた。携帯の画面には、愉悦に染まった顔で男を受け入れている  
冬海の姿が写し取られていた。  
「よく撮れてるだろ。これ、プリントして掲示板に貼りだしたらどうなるかな? あ、ネ  
ットに流すのもいいな」  
 冬海の顔が青ざめる。快感ではなく恐怖で震えだした彼女を見て、ケタケタと大木は笑  
った。  
「冗談だよ。ジョーダン。もったいなくて、人に見せたりできないよ。これは、俺たちと  
冬海ちゃんだけの秘密」  
「だからさ、これからも仲良くしようよ、ね?」  
 平井が冬海の体を抱え起こし、そのまま胸に吸いついた。ちゅうちゅうと、わざと大きな  
音を立てて吸い上げる。  
 
「や、ぁああっ」  
「俺たちさ、冬海ちゃんのこと気に入っちゃったんだ」  
 ぺろりと首筋を舐めあげられる。脚を持ち上げられ、内股に口づけられる。  
「こんなエッチな子、他にいないもんな」  
「んっ、ぁ、あふっ、うくっ」  
「怖がらなくていいんだよ。冬海ちゃんのこと、たっぷりと悦ばせてあげるから」  
「っっ、そこ……っ、ひぃあっ、……や、いやぁ……」  
「俺たちなしじゃいられない体にしてあげる。だから――」  
 斉藤が冬海の顎を持ち上げ、熱い吐息を漏らす唇を奪う。それが、少女の初めてのキス  
だった。  
「これからも、よろしくね。冬海ちゃん」  
                                                 (終)  
 
 

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