雨の日の木竜家。  
 カディオが出かけてロイとノイは留守番だ。  
 だがこの実験大好き小悪魔コンビがおとなしく留守番をしているはずがない。性懲りもなく怪しい植物を作り出そうと、鬼の居ぬ間に師匠の部屋を探索し始める。  
「オモシロ植物の資料になる本が、どこかにないかな」  
「きっと、ベッドの下とか本棚の後ろとか、そういうところに秘密の魔法書とかが隠されていたりするのよ」  
「あ、ありそうありそう!」  
「じゃあ、私はベッドの下を探すわね。本棚は重いからロイがお願い」  
「分かった」  
 がたごとがたごと。ごそごそごそ。師匠のプライバシーを侵害しまくって、ベッドの下からノイが一冊の本を手に這い出した。  
「ロイ、この本見て! 『禁断の花園』ですって!」  
「うわあっ、すっごい研究心をくすぐられるタイトルだね!」  
「カディオが帰ってくる前に、部屋で写しちゃいましょっ」  
 わたわたと本棚やベッドのシーツを元に戻して証拠隠滅をはかり、小悪魔達は戦利品を片手に自分たちの部屋に駆け戻った。  
 なにしろカディオがこっそり隠して置いた本なのだ。きっとすごい事が書いてあるに違いない。これでまた新しい植物が作れると、二人は勇んで本を開いた。  
 ところが。  
「・・・・・・っっええ〜〜っ!! 何これ!?」  
「はだかの女の人の絵ばっかり!!」  
 ----たしかにソレは隠しておかねばならぬシロモノだろう。使い道の分からない子供に見せるモノではないし、分かるなら尚のこと見せたくはない。  
「あ、でも女の人だけじゃないね」  
「男の人もはだかで、ふたりでくっついてるよ」  
 なんだろー、なにしてるんだろー。これのどこが『禁断の花園』なのー?  
 師匠の禁断の花園を無邪気に無慈悲に荒らし回る小悪魔達。  
 だけど、そのちっとも意味の分からない『花園』を見ている内に、なぜか二人とも心臓がどきどきしてきた。  
「・・・・・・」  
「・・・・・・」  
 ごくり。  
「・・・ねえ、ロイ」  
「・・・なに? ノイ」  
「これって、やっぱり実験してみないと、何だか分からないわよね」  
「うん・・・そうだね」  
 ほっぺたが赤くなったお互いの顔を、じっと見つめ合う。  
「じっけん・・・してみる?」  
「・・・・・・・うん」  
 
 それじゃ、まずはだかにならなきゃね。  
 そう言いながら、二人はお互いに背中を向けて服を脱ぎだした。ちいさい頃から数え切れないくらい一緒にお風呂に入っているのに、今日は何だか妙にはずかしい。  
「ノイ、服・・・脱いだ?」  
「・・・うん」  
「じゃあ・・・ベッドに寝てみて」  
「・・・・・うん」  
 きしっと小さな音を立ててノイがベッドの上にあがる。胸とおへその下を手で隠しながらノイが寝転がると、本を枕元に置き、ロイが覆い被さるようにしてその両脇に手をついた。  
「ええと・・・じゃあ、ぼくがノイの上にのっかるね」  
「う・・ん・・・」  
 いつもはどちらかと言えば主導権を握っているノイが、今日は少しおとなしい。ロイは両手をついたまま、ノイのきゅっと閉じた両足をまたいでベッドの上に乗る。  
「ノイ、おへその下の手をどけて。でないと、つぶれちゃうよ」  
「え。あ・・・うん」  
 重くないかな。ちょっと心配になりつつも、ためらいがちに手をどけたノイの上に、ロイはそうっと身体を降ろした。  
「ひゃんっ!」  
 裸の肌が直にふれあって、冷たいような熱いようなおかしな感覚にノイが声を上げる。  
「ご、ごめん!」  
 あわててロイは腰を引いた。  
「だ、大丈夫。びっくりしただけ。・・・今度は平気。のっかっていいわよ、ロイ」  
「う、うん」  
 言われて、もう一度ゆっくり身体を乗せる。ぴったりとくっついた身体から、お互いの心臓の音が聞こえてきた。  
「・・・なんだか、すごくどきどきする」  
「・・・わたしも」  
「・・・ちょっと、きもちいいね」  
「・・・うん」  
 息がかかるくらい顔が近付いているから、自然と大きな声ではなくてささやくような声になる。  
 
「これで・・・どうしたらいいのかな」  
「本には、どんなふうに描いてあるの?」  
「えっとね・・・」  
 本を見ようとロイが身を乗り出すと、ノイがまた声を上げた。  
「きゃんっ」  
「わっ!? どしたのノイ?」  
「だ、だって・・・ロイのおちんちんが、わたしのおまたにあたって・・・やんっ!」  
 ちょっぴり硬くなったロイのそれが、ノイの大事な場所をつついている。  
「やあんっ、どいてえ」  
「ちょ、ノイ、待って」  
 逃げようとしてノイがモゾモゾと動けば動くほど、それは足の間に潜り込んできた。あたたかくてやわらかいノイのふとももの間でもまれて、それはどんどん硬さを増していく。  
「きゃあんっ!」  
 さっきよりも強くそれにつつかれて、ノイがかわいい悲鳴を上げた。  
「ご、ごめん、ノイっ。でもっ、これ・・きもちいい・・・!」  
「あっ、やあっ、ロイ・・・っ」  
 ぐりぐりとロイにこすられたノイの大事なところが、かあっと熱くなる。  
「ふあっ、やあんっ」  
「ノイ、ノイ・・・っ」  
 はあはあと走っている時のように息を弾ませたロイが、ノイの名前を呼んでいる。ロイがこすりつけている場所はどんどん熱くなって、ぬるぬると湿り気を帯びてきた。  
 
「あっ、あんっ、ああ・・・」  
 肌がこすれ合う少し乾いた音が、くちゅくちゅと濡れた音になってゆく。それと一緒にノイの声も段々と甘えるような声に変化する。  
「ああ・・はあん・・・ロイぃ・・・気持ち、いい・・・・・っ」  
「ノイ・・ぼくも・・・っ」  
「ん、あ、ああっ、もっとっ、もっとぉ・・・!」  
 その行為の意味もまだ知らないから、恥じらいもためらいもなく、ただ気持ち良さを求めて甘い声がねだる。  
「んあぁっ! イイ、イイのっ・・・ロイ、そこぉッ」  
 淡い茂みの下でぐちゅぐちゅと幼い茎と花がからみあい、禁断の蜜をしとどに溢れさせる。それは木竜達の部屋に青く甘い秘密の香りをふりまいた。  
「ふああぁんっ、ロイ、ロイ・・・・・・!」  
「ノイっ・・・!」  
 ベッドをきしませ、互いをこすり合わせるだけのつたない行為が、二人を高ぶらせ追いつめる。  
「やあっ、だめ、ダメぇ、ロイぃっ!ひゃああんっっ!!」  
 ひときわ強く擦り上げられて甲高い声を上げるノイ。ふるるっと身体をふるわせて、ノイの上でロイが達した。力の抜けた身体が折り重なってベッドの上に沈む。   
 初めての体験にしばらくは二人とも動けない。  
 
 だが我に返ったのはロイの方が早かった。ぐったりとしたノイの上から慌てて身体を起こす。  
「ノイ、ノイ・・・大丈夫?」  
「・・・ロイ・・・・」  
 まだとろりとした表情で見上げたノイが、ロイと視線が合うとふにゃん、と嬉しそうに笑った。  
「気持ち、よかったあ・・・」  
「ノイ・・・っ」  
 かわいい。すごくかわいい。  
 ああもう、かわいすぎるよノイ! その笑顔にロイはまた反応してしまう。  
「ロイ?」  
「・・・カディオが帰ってくるまで、まだ、時間はある・・・よね?」  
 雨はやみそうにないから、どうせ師匠は泊まってくるだろうし。  
「・・・・・もっと、実験、してみる?」  
「・・・うん!」  
 
 こうして二人の秘密の実験は、まだまだ当分続くのであった。  
 
 
<おしまい>  
 
 

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