あなたと二人で・・・  
 
竜王の竜術士マシェルが8人の子竜達を預かり始めて  
一番竜ナータは心配性なこともあり7人の子竜の中でも一番成長していました。  
その姿は幼竜の特徴の尻尾は既に無く  
背丈は少々大きいものの年は人間にすれば暗竜エリーゼと同じかそれ以上になりました。  
そんなある日―――  
 
「マシェル」  
小鳥のさえずりが聞こえる朝  
台所には人影が二つ  
「なんだいナータ?」  
「新鮮なミルクがない」  
毎朝マシェルは早起きして子竜達のご飯を作ります  
朝食の準備は子竜達の中でも一番大きいナータの日課にもなっていました  
「え!どうしよう今日の朝食はパンをミルクに浸して焼こうと思ってたのに・・・」  
「飲む分しかないがカータはぬるいミルクは嫌いだしな」  
そんな所帯じみたこと朝の台所で男二人が話してるのも妙ですが  
この家ではこれが当たり前なのです  
そして家の外で木剣の素振りをしていたサータが帰ってきて  
アータが外でルンタッタと一緒に育てている花の世話を終え戻ってきました  
こうして朝食は目玉焼きを載せたパンとトマトとぬるいミルクになり  
子竜達から不満がわんさか出ました  
 
「じゃあ三人とも、俺は出かけてくる」  
「ああ、いつものとこだね」  
とマシェルが言い  
「遅くなるなよ」  
とサータが言い  
「気をつけてね」  
とアータ言いました  
そういうとナータは家を出ました  
カータとハータがナータはどこに行ったのか聞いてきましたが  
ナータより成長はしてないもののほとんど同じくらいのアータとサータが答えました  
「ああ、それはね」  
「愛しの彼女に会いに行ったのさ♪」  
 
花畑と川のある野原  
そこに一人の少女がたたずんでいた  
黒髪が長くおとなしい感じの少女だ  
「遅くなった」  
少女は振り向きナータが現れたのを見て笑顔になった  
「ううん・・・」  
少女・・・暗竜エリーゼはナータと会う約束をいつもしていた  
「これ」  
ナータは手に持っている籠を差し出した  
「ケーキを作ってきた、一緒に食べよう」  
「うん」  
そしてナータはエリーゼと一緒にケーキを食べ花畑で遊んだ  
しばらくしてエリーゼはナータの肩にもたれかかって花畑の真ん中で寝てしまった  
ナータはしょうがないなと思いながらもあらかじめ用意していた薄い毛布を掛けた  
しばらく平和で平穏で、幸せの時が流れた  
だがナータは考えていた  
この幸せは長くは続かないと  
いずれくる、エリーゼが成竜になった時彼女は暗竜の一族の元へ旅立ってしまうだろう  
それがエリーゼの・・・彼女の昔からの望み  
止めるわけにはいかない、かといって補佐竜である自分が竜術士を置いていくわけにも行かない  
だから自分には旅立つ彼女を見送ることしかできないのだ  
そしてナータは花を何本か摘み花の指輪を作ってエリーゼの指につけた  
左手のくすり指に・・・・・  
 
エリーゼは家に帰ってきてから花の指輪に気づいた  
それからしばらく考え事をしていた  
「どうしたんだい?エリーゼ」  
「お母さん・・・」  
暗竜術士メリアはラルカ、エリーゼの本当の母親ではないが二人はお母さんと言ってくれていた  
「悩みがあるならいってごらん?」  
「お母さん、あのね・・・」  
 
 
次の日――――  
ナータはエリーゼに呼び出されて昨日の野原に来ていた  
「どうしたんだ?」  
ナータは心では心底心配していた  
もし、もう旅立つなんて言ったらどうしようと  
「あのね、私・・・」  
やっぱり行くんだ、ナータはそう思った  
だが  
「行かない事にした」  
「え?」  
彼女が言った言葉は絶対に言わないと思っていた言葉  
「あなたと離れたくないから、あなたが大切だから・・・」  
「エリーゼ・・・」  
そしてエリーゼは指輪を見せ  
「一緒に居てくれる?」  
「もちろんだ」  
ふたりの幸せは終わる事無く、ずっと続いていく・・・  
「君が好きだ、エリーゼ」  
「私もよ、ナータ」  
幸せそうに微笑むエリーゼの指には花の指輪があった  
 
 
                       End  
 

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