ガンガンガンッという、扉を引っ切り無しに叩く音。いつ破られてもおかしくない。
アリッサはトイレの中で、息を殺していた。
(怪人は、自分がトイレに入るところを見ていないはずだ)
そういう考えがあったからだ。
殺人鬼が、尚も扉を強く叩く音が響く。
が、しばらくすると、その音はぱったりと止んだ。ここにはいないと踏んだのか、それとも何かの罠か。油断して出て行ったところを襲う気なのか。
アリッサは、じっと耳に神経を集中する。しかし何も聞こえない。
ホッとして、扉に手を近づけたところで、アリッサは思い直した。
(いえ、でも・・)
と、出した手を引っ込める。しかしこんな事をしていたのでは、いつまでも進めない。
しかし、アリッサの第六感のようなものが、先程から危険だと強く訴えかけているように彼女には思え、どうしても踏み出せ無い。
事実、アリッサの読みは正しかった。
硫酸男の方も、トイレの中にアリッサがいると確信していた。
まるで去ったかのように見せる下手な演技をした後、男は今か今かと、扉から半歩離れたところで硫酸を構えていた。しかし、中々出てこない。
何故か、男の方も踏み出せなかった。その理由は、あと一歩進むと、自分が酷い目に合う予感がしていたからだ。硫酸男には、それが具体的には想像できなかったが、潰れる、という言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。
一体どのようにしたら、潰れるというような未来が出てくるのだろうか?
(マサカ扉にタタカレテ、ペシャンコになるワケではアルマイ・・)
そんな馬鹿げた想像を、結局硫酸男は捨てられずに、長い時間が過ぎた。一体もう、何時間こうして、硫酸男は変な姿勢を取っているだろうか。
一方、アリッサの方も座り込んだまま、疲れ果てていた。
(あたし、何やってんだろう・・)
だんだん、恐怖感も薄れてきた。
(もう、出ようかな。さすがにもういないでしょ)
そう結論付けて、立ち上がった時、ふと激しい尿意が襲ってきた。
「っ・・!」
とても我慢できそうに無かった。アリッサは、制服のポケットに入っていたウェットティッシュを出して便座を拭き、なるべく、直接お尻に便座が触れないように、排尿体勢を取った。
一方、硫酸男もある決意をした。それは踏み出す決意だ。ぺしゃんこになったってかまうものか、と開き直り、一歩足を進める。
と、その時。硫酸男は、扉に小さな穴が開いていた事に気がついた。
何だ、この穴を見れば早いではないかと、硫酸男はその穴に目を近づけた。
すると・・・そこには今まさに、小便をしようと、下着を脱ぎ始めているアリッサがいた。
(イマダ!イマナラ無抵抗ノママ・・)
(ムテイコウノまま・・)
その考えるのは、殺人鬼としては当然だったが、何故か男はそこから動くのをやめ、じっとアリッサを見つめていた。
いや、何故かという程の物でもない。
単純に、貴重なものが見られるという、怪人になっても持ち続けているスケベ心のせいだった。
「んっ・・」
アリッサは下腹部にかすかに力を入れ、排尿を始める。まさかその様を、硫酸男がじっくりと見ているとも知らずに。
硫酸男のモノは、いつの間にか勃起していた。人よりやや大きめのそれを、背負っていた硫酸も何もかもほっぽりだし、静かにしごき始める。
「ハァ・・ハァ・・・ッ」
その様は、不死身の殺人鬼にはとうてい見えない。誰が見てもただの変態に成り下がった男は、次第にその手の動きを早めて行く。
「アリッサァ・・アリッサァ・・!」
男は、アリッサの排尿が終わるまで一度も瞬きをしなかった。だが、アリッサの排尿を見終えると、今度は途方に暮れた。絶頂まで、そう遠くない位置で止められてしまったのだから無理も無い。
アリッサの方はというと、当然覗かれたことも知らずに、扉に手をかける。
バンッ、と強烈な衝撃が、男の身体にやってきた。まさにペシャンコに、男は壁に叩きつけられてしまった。
ただ一つ予想と違ったのは、一人でしごいていた男のペニスが、普段なら痛いとしか感じない衝撃を、絶頂のきっかけとしてしまった事だった。
白濁した精液が宙に飛び、アリッサの頭に振りかかった。
「っ!!」
アリッサの声にならない叫びは、二つの驚きによるものだ。一つは、扉を開けたら硫酸男がいたこと。もう一つは、目の前を飛んだ白い液体が、男の性器から飛び出しているのに気づいたことだ。
「っっ・・きゃあああああっ!!」
アリッサはその二つの理由、どちらかといえば後者の理由で悲鳴を上げ、走り出した。
「アリッサァアアア!」
硫酸男もまた、アリッサを追いかけるために走り出した。大事な大事な、硫酸道具一式も持たずに。
「キャアアアッ!」
ブラブラとモノを出したまま追っかけて来る男に、アリッサは少女として悲鳴を上げる。聖水を持っていることも忘れ、ただ逃げ回る。
逃げ回って辿り着いた処は、細い通路の行き止まりだった。振り返ると、やはり硫酸・・というか、露出男がいる。
「アリッサァ・・オマエもこのリュウサンデ・・」
と、務めを思い出したような台詞を男は吐いてみたが、そんな物は持ってきていないのに気づき、慌てだした。
「あ・・」
アリッサはその時ようやく、自分が聖水を持っている事に気づく。
(これをかけてやれば、ここを突破できるかもしれない。だってあいつは、硫酸みたいな危険なものは持ってきてないし、チンチン出・・してる・・し)
その陰語が頭に浮かんだ時、アリッサは赤面しながらも、つい男の物を凝視してしまう。それは、小さい頃に見た、デニスのモノより遥かに大きかった。
男は、アリッサの視線に気づいた。男の目から見ると(アリッサは慌てていたせいで忘れていたが)、アリッサは今、男の精液を頭に被っているという、男から見ればとても興奮させられる状態だ。
その少女が、自分のモノを見ている・・そう思うと、男のモノは再び元気を取り戻してゆく。
「ッ!!」
アリッサは目を疑った。男のモノが、みるみる大きくなって行く。知識として知っていても、目の前でマジマジと見るのは初めてだった。
「ア、アリッサァ・・!」
ついに男は堪えきれずに、男はアリッサに飛び掛った。男の物に目を奪われていたアリッサは、一瞬反応が遅れる。
「キャアッ!」
バタバタと二人は倒れこむ。男はアリッサの上になり、身体を擦り付けるようにアリッサにくっつける。
「イヤアッ!」
その時初めて本当の危機を感じたアリッサは、何とか男から逃れようと、這うように逃げる。
男の方は、それを上手く抑えられず、まるでアリッサの背中に乗っている大きな子泣きじじいのようにまとわりつき、ずるずるとそのまま引きずられる。
そんな中、男はペニスが陰部まで届かないため、太ももの裏側にこすり付けた。アリッサのズルズルと引きずる振動が、男に心地よい感覚をもたらす。
「いやっ・・何これ!?」
振り返らず、アリッサは上ずった声を上げる。自分の太ももに吸い付く固いものが、気持ち悪くて仕方なかったからだ。
「あ、アリッサァ・・ッ!サイコウダー!」
男はそう言うと、本日二度目の射精を迎えた。
その白濁液は、アリッサの下着から太ももまで飛び散り、男の望むままの光景を作り出した。
「ひいっ!」
身体に降りかかる、熱い液体の正体が分っていただけに、アリッサは小さな悲鳴を上げる。その声は、本当に気持ち悪そうだ。
「ウへへッ!」
男のモノは、もう二度も出したというのに、元気だった。男はさらに、ペニスでアリッサの下着越しの尻をつつく。
アリッサはそれに対し、反射的に太ももを閉めてしまう。結果的に、アリッサは男に対し、妙な形の素股をしているみたいになる。
「もーやだ・・」
涙混じりの声で、アリッサは這いずりながらの逃亡を続ける。もちろん男もそれにぴたりと離れず、素股を楽しむ。
「ウハッウへへへへッ」
最早アリッサの背中の上にいるのは、ただの性欲あまりまくりの変態男だった。男はアリッサの動きをそのまま快楽に変え、股間から溢れる快感に酔いしれているようだった。
「くっそぉ・・っ」
その時、カランと聖水の瓶が制服からこぼれ落ちた。
(・・やるしかない。じゃないといつまでも・・・)
この状態が長く続くのだけは、避けたかった。
「アリッサァーー!」
男はもう、絶頂が近いようだった。アリッサの動きが止まったのを良いことに、アリッサの太ももを使ってラストスパートをかけている。
「この・・変態!」
そう叫んで、アリッサは聖水の蓋を開ける。
「アアそうさ!オレハヘンタイサ!」
男が再び絶頂の時を迎えた。それと同時に、アリッサは男に聖水を振りかける。
その瞬間。
両者の顔には、互いに相手にかけたいものが、見事にかかった。
「ギャーーーーッ!!」
「キャーーーーーーーーーーーッ!!」
男には、聖水三杯分が、アリッサには男の、三回目にしてはずいぶんと濃い精子がかかった。
二人は、腹の底から悲鳴を上げた。