「あ〜………」  
 
ぐっと伸びをしながら、欠伸をひとつ。  
デスクワークばかりをしていると、身体が鈍るようでいけない。  
アイドルたちはワイワイガヤガヤ。  
沢山スカウトし過ぎた感じが否めないが、しかし皆頑張ってくれているし、アイドル同士での決めごとをしたり、仲良くやっているようだ。  
そして、アイドルたちを見てプロデューサーは毎度思うことがある。  
 
「あ〜………………俺も彼女欲しいな」  
 
刹那。  
事務所の喧騒が、静寂へと変わる。  
 
「さって、続き続きっと」  
 
喧騒が静寂へと変わるなど、この事務所では日常茶飯事。  
プロデューサーは気にするそぶりも見せず、再び書類へ挑む。  
かのように思えたが。  
 
「プロデューサーさぁん……?」  
「聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど」  
「『彼女が欲しい』と。そう言いましたね?」  
「まゆに凜、ありす。どうした?」  
 
ゴゴゴゴと聞こえてきそうな重圧を放つアイドルに、プロデューサーが笑う。  
 
「まゆはぁ、プロデューサーさんならいつでもいいですよぉ…?」  
「私も。プロデューサーが求めるなら、いつでもいいからね」  
「私が子供を孕める身体になる前に、予行演習してもいいですから」  
 
重圧をそのままに、アイドルたちは日常へと返る。  
きょとんとした年少組、獲物を見つけた肉食獣のような野心を秘めた年長組、そして――――  
 
プロデューサーの知らぬ場所で、アイドルたちの血戦は、始まっているのだった。  
 

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