某県某市。
シンデレラガールズ・プロジェクトという一大興行は莫大な富をプロダクションにもたらし、女子寮と事務所をいっしょくたにした巨大なビルをも所有することになっていた。
そこに住むのは、180人近くのアイドルたち――シンデレラ・ガールズと、彼女らのプロデュースを細腕一本でこなす敏腕プロデューサーのみ。
人々はプロデューサーを羨み、そして真実の姿に驚愕、プロデューサーを敬うようになる。
そして、その巨大なビルを、人々はこう呼ぶ。
『地獄のハーレム寮』と―――。
朝五時。
プロデューサーの仕事は既に始まっている。
スラスラとキーボードを撫でるたび、アイドルたちの予定が打ち込まれては、印刷されていく。
その脇にはプロデューサーの奥さん役として、事務所の母として、みんなを見守る元アイドル――三船美優さんが。
毎朝変わらぬ光景に、アイドルたちも変わらぬ目覚めを迎える。
ローテーションによる家事の分担で揉めることもなく、平和な日々が続くと思っていたのに。
幸せな日々は、突如終わりを告げる。
地獄の法改正、少子化への対策として打ち出された『多夫多妻制度』の導入によって。
一度に百人以上の妻を持つことになったプロデューサーを待っていたのは、ただでさえ悩ましかったアイドルたちからの、誰憚ることのない誘惑の日々。
人々の同情の声は止まず、しかし姿を表すアイドルたちは日に日に艶やかに、色っぽくなっていく。
半年間、毎日続く結婚式――プロデューサーは、それを地獄と呼んだ――
「みたいなことになるかも知れないですね」
「なってたまるか」
「え?アイドル全員の好感度を振り切らせたせいで毎日誰かとイチャイチャしてるプロデューサーさんが?無理なんですかぁ?」
「…………うん」
「……その一言に、重みを感じますよ」