「PチャンPチャン!」
「お、どうしたみく?」
バタン!と大きな音を立てて部屋に入ってきた少女―前川みくに、プロデューサーが視線をやる。
ニャンコのアイドルを自負している彼女が、何故か全裸にネコミミだけというセクシー極まりない格好をしているのは、見ないふりをしておこう。
「どうしたもこうしたもないにゃ!今日事務所で雪にゃんを抱っこしてたり、のあにゃんとあーにゃんに挟まれてデレデレしてたにゃ!浮気はダメにゃ!」
「浮気って……まぁ浮気だな」
「フシャー!」
悪びれる様子もないプロデューサーに、みくは威嚇するような声をあげる。
しかしながらプロデューサーには通じず、むしろ「はっははこやつめ」とばかりに抱き締められてしまう。
「浮気しちゃうPチャンなんてキライにゃ!」
「あーそっかー、みくにゃんに嫌われちゃったかー。なら仕方ないなー、みくにゃんと別れて新しい恋人を探すかー」
「! ?」
みくの裸体を放すと、プロデューサーは大袈裟に溜め息をついてみせる。
一方みくはと言えば、ポカンと間の抜けた顔でプロデューサーの顔を見つめながら言葉を反芻し、そして言葉の意味に気付いて絶望していた。
「ちょ、Pチャン!?あんなにちょーきょーしてたみくにゃんを捨てちゃうのかにゃ!?」
「え、いや違うって。俺がみくを捨てるんじゃなく、みくが俺を捨てるんだろ?」
「捨てないにゃ!みくにゃんはみんなのニャンコアイドルだけど、Pチャンだけのメスネコにゃ!Pチャンのミルクがないと生きていけないにゃ!」
「いや、別に無くても生きていけるだろ?」
「無理にゃ!Pチャンを見るだけで発情しちゃうぐらいエッチなニャンコにされちゃったのにゃ!」
泣きべそをかきながら、みくはプロデューサーに身を擦り付ける。
マーキングのようなものらしい。
「だからね、今から、みくにゃんをママニャンコにするために、Pチャンのミルクを頂戴?」
「え、捨てた相手にいうの?」
「捨てないにゃ!Pチャンだけのメスネコを可愛がってほしいにゃ!発情したペットの性欲処理も、飼い主のお仕事なのにゃ!」
マタタビを貰った猫のような眼差しが、プロデューサーを捉える。
全身から立ち上る色気に、プロデューサーも我慢しきれなくなっていたところだ。
これが事務所なら、鋼の精神力を見せつけたのだが。
「なら、反抗期のメスネコをたっぷり躾けないとな」
みくのキスが、答えだった。