プロデューサーの夜は遅い。
アイドルたちが帰宅し、事務員や社長が去った後も、かたかたとキーボードを叩く音が事務所に奏でられる。
一人では気が滅入るから、と音楽を聞いてみるが、寂しさまでは隠せない。
家に帰れば雫がいるし、早く帰りたい、ただその一念が、彼を突き動かしている。
「また残業かい?残業費は出ないと聞いていたんだけどね」
「残業費はなくてもな。やっぱり、あいつらのためだから頑張れるんだ」
「本当にPはアイドルが好きだね」
カタ、と音を立てて、冷えた缶が置かれる。
呆れたような眼差しに晒されたプロデューサーは、しかし不敵に微笑む。
「アイドルが好きなんじゃないさ。あいつらの笑顔が好きなだけだ。……さて、雫たちも待ってるだろうし、今日は切り上げようか」
「そうするといい。……あぁ、それから。釣り上げたつもりは無くとも、君に釣られて女にされた私のことも、たまにはじっくり愛して欲しいね」
「あぁ、そうだね、木場さん――いや、真奈美?」
「意地悪だな、御主人様は……♪」
プロデューサーに抱き寄せられた真奈美は、その汗やアイドルたちの匂いが入り交じったプロデューサーの胸に顔を埋めてしまう。
結局、真奈美の気の済むまでキスを繰り返した二人が帰るのは、30分ほど遅くなってしまうのだった。