プロデューサーにも休日はある。
例え100人を超える大所帯を切り盛り出来るような人外であったとて、人間はやはり人間なのである。
さてそんなプロデューサー(以下P)と一緒にいるのは、『エロい』と男性の股間を刺激してやまない、アイドルの新田美波ちゃん。
バストサイズもそれなり、成人してもいない大学生と、パッと見は普通なのだが、とかく持っている雰囲気が甘いのだ。
「な、なぁ美波?」
「Pさん…私、小悪魔なんですよ?」
「あぁ、うん、知ってる。ハロウィンに合わせて小悪魔コスで撮影してたな」
「小悪魔は、悪戯が大好きなんですよ?トリックオアトリック?」
「一択じゃないか…」
Pのことを慕うアイドルは、ことのほか多い。
それが『せんせぇ』だとか、『プロデューサー』だとかの真っ当な感情ならば、彼も喜んで受け入れるだろう。
だが、それが性愛であるのならば、彼はそれを受け入れたりはしない。出来ない。
「な、美波?アイドルがしがないプロデューサーに抱かれるってのがバレたら、そりゃもうスキャンダルだ。そしたら、お前だけの話じゃなくなる。事務所も危なくなるんだ。解るな?」
「解りますよ……でも、私がPさんのことを大好きだって言うのも、解って欲しいんです」
身体全てをプロデューサーに預け、アイドルが静かに涙を流す。
「好きで好きで、でも独り占めなんて出来なくて……。私がアイドルをやめてアプローチ出来たらいいなって思って、でもアイドルをやめたらPさんとの接点をなくしちゃいます……」
「――美波」
「どうして、恋って嬉しいのに辛いんでしょうね……?」
彼女の想いに薄々と気付いていたPは、何も言えない。何も言わない。
下手な慰めは彼女を傷付けるだけだし、かといって一時の感情に身を任せたら、後に待つのは破滅だけだ。
美波をぎゅうっと抱きしめてやる。
言葉はなくとも、それだけで彼女には充分理解して貰えると、そう思った。