「――いやッ、止めてくださいッ!?」  
 
 どたんっ、と先ほどまで手にしていた古書と同じタイミングで文香の身体は床へと押し倒される。  
 叔父は会合で出かけたばかりだ、それを狙っていたのか、店内をうろうろとしていた男によって押し倒されたのだ。  
 
「へへっ、ずっと目をつけてたんだよなぁ、ひひっ」  
「や、止めてください、何を……ひっ」  
「じゅる。はは、何をって……こういうことするんだよッ」  
 
 男性より女性の方が非力というのが常だが、文香はさらにそれより非力と言えた。  
 本を運ぶことこそどうにか出来てはいるが、外に出ることも少ないため、手足は細く、肌は色白い。  
 そんな所を狙われたのだろう、と男の下から懸命に這い出そうとしている文香は、ぬちゅり、とした感触を感じて背中を震わせた。  
 男が、首筋を舐め上げたのだ。  
 生温かくて唾液に濡れた感触が、文香に嫌悪感を抱かせる。  
 ナメクジが這いまわっているような、そんな感覚。  
 それを増長させるかのように、男は文香と床の間へと手をすべり込ませて、文香の胸を強く掴んだ。  
 
「きゃあァッ?! 止めて、止めて下さいッ、お願いっ」  
「おおぉッ! こりゃなんてこった、予想よりも遥かにでかいじゃねーか」  
「あぅっ。いやぁ、何で、こんな……ッ」  
「へへ、揉み応えがあるぜぇ」  
「ふっ、くっ……あ、んっ」  
 
 むにゅん、と胸が揉まれるのを文香は身をよじって逃れようとするが、男の体重に逆らえる様子もない。  
 むしろ、自分と男の体重によって男の手に包まれるように胸が収まっており、身動ぎするたびにいらない感触を与えられていた。  
 ぎゅむっ、と一際強く胸を掴まれて、鈍い痛みが文香を襲うのだが、その後にふにゅん、と柔らかく揉まれて、じんわりと身体が熱くなる。  
 男の体重で肺から空気が押し出されているのか、頭が少しだけぼうっとしてきた。  
 その感覚が非常に不味い、と感じた文香は、どうにか男の下から逃れようと腕と身体に力を込めるが、びくともしない。  
 それどころか、強弱のついた胸への刺激にどうしてか力が抜けていくばかり。  
 ついには、胸の先端部分をこりっ、と刺激されて声が漏れ出た。  
 
「ふ、くぁ……ん、あっ……はな、してぇ……ひ、ぅ」  
「お、おお? 感じてるのか? 身体は正直だなぁ、びくびくしてるぜぇ」  
「ひゃん、っぁ……う、うぅ……」  
「ん、へへ、泣いてるのかよ? はは、ん、べろ」  
「んんっ……ん、ふ、あ、んぁ」  
 
 ぞわり、と背筋が震えた。  
 怖い、痛い、嫌悪――そんな中に感じてしまった、甘い快感。  
 それが、文香の背筋を震わせて、そして少しずつ抗う意識を削いでいく原因となった。  
 強弱混ざり合う胸への刺激に、先端に与えられる強弱の刺激が新たに加えられる。  
 胸全体を強く掴まれたかと思うと、優しく擦るかのように先端――乳首を刺激され、甘い快感がこみ上げてくると乳首を強く掴まれて、なだめるように胸を優しく揉みしだく。  
 頭の中はとうに熱く熱されて、まるで風邪でも引いたかのように思考能力が低下していく。  
 唯一違うのは、与えられる快感に逆らえない身体がびくんっ、ひくんっ、と胸を刺激されるたびに震えていることだろうか。  
 じっとりとかきはじめた汗が髪を額に張り付けて、ついっ、と持ち上げられた顎のままに男は零れる涙と汗に張り付いた額を舐め上げていく。  
 そして、にゅちゅ、と煙草の匂いがする男の唇が文香のそれに合わされた。  
 
「んんー……ちゅるるるっ。ぷはっ、さいこーに柔らかいなぁ、甘くて美味しいなぁ。んちゅ」  
「ん、ぷぁ……はぁ、はぁ。もう、やめてぇ……んんっ」  
「ん、はぁ…………もう我慢できねぇ」  
「ぁ、んっ……ひゃぅ、な、何を……ッ」  
 
 煙草臭い息が、文香の口内を蹂躙していく。  
 それから逃れたくて口を閉じていても、男は文香の顎を掴む手に力を入れてそれを無理矢理に開いていく。  
 もわぁ、と男の吐息が文香の口内に通じ、ぞわり、と文香は身体を震わせた。  
 すると、男は貪るように文香の唇を堪能し始めたかと思うと、文香の首筋を舐め上げた舌を文香の口内へと侵入させてきた。  
 にちゅり、と、にゅるり、と、文香の口内に一切の躊躇なく侵入してきた男の舌。  
 それから逃れたくて文香は必死に自らの舌で追い出そうとするが、それが一際背筋を震わせていった。  
 熱くて、粘膜同士が擦れる感覚は文香の身体を熱して、甘い快感を否応無しに高めていく。  
 それでも、当初の嫌悪感は拭いきれない。  
 男が息継ぎのためか口を離した隙に文香は男の下から逃れようともがく――スカートが乱れることすらいとわずに。  
 それが、男の嗜虐心をくすぐった。  
 かちゃかちゃ、と音をさせた男は、文香のスカートを一息にまくり上げるとその身体を一気に前へと押し出した。  
 
「ッ……か、はっ、ァァ?」  
 
 初め、文香にはそれが理解出来なかった。  
 男の下から逃れようとしていた文香は、スカートが乱れることすら気にせずにもがいていた。  
 そのスカートに覆われた下半身が、一息に空気にさらされたのは偶然だと思っていたのだ。  
 身体が熱され、湿り気を帯びていた下半身が一気に感じた空気、それを、文香は次いで自らの秘所に感じた。  
 ずりっ、と力任せに横へとずらされた下着は汗で湿っており、露わになった秘所もまた汗で熱気を放っていた。  
 そんな秘所の奥から、じゅくり、と何かがこみ上げて、つつっ、とそれを垂れる。  
 濡れいている、それを感じた直後に、ちゅくり、と熱い何かがそれに触れて、一気に文香の身体を引き裂いていた。  
 
「ぁ……ぁぁ……ぃ、ぃた、ぃ……」  
「くっはぁぁ〜。凄い締まる……気持ちえぇ」  
「う、ごなかい、でぇ……」  
「無理無理。こんな気持ちいいのに、動くなってのはな。文香ちゃんも、すぐに気持ちよくさせてあげるからねぇ」  
 
 ぎちりっ、と針で刺されたかのような鋭い痛みが文香の中から湧き上がる。  
 つま先から脳天まで一気に走ったその痛みは、男が身体を前後させるたびに文香の中を暴れまわった。  
 それから逃れたくて床に手を這わすが、そんなことで逃れられるはずもなく、男が文香の腰を引いて一気に腰を突きだす。  
 そのたびに鋭い痛みが文香の中を駆け巡り、男の何か――肉棒が文香の最奥を突いた。  
 痛みに翻弄される文香の胸は、腰を前後させる男によっていつの間にか露出されていた。  
 膝をつく男の高さに合わさるように持ち上げられた腰は男の動きに合わせて前後に動き、その動きに合わせて文香の胸までもが動いていた。  
 その度に、汗が滴り落ちて木造の床に染みを作る。  
 腰を抱くように身体を密着させてきた男は、腰を前後させたままに文香の秘所――その入り口にあるもっとも敏感な部分を指で優しく刺激した。  
 
「ふぁ、んッ……ん、ふっ、っあ、ひ」  
「おっとぉ、びくびくんって動いたよ、文香ちゃんの中。ここが気持ちいいのかい?」  
「ちが、ッ」  
「そんなこと言って、ここ、だんだんと固くなってるよ、分かる? 乳首ももうこりこりだし、中も始めよりは柔らかくなってるよ」  
「きゃふッ、だ、だめッ、だめぇ……」  
 
 いつの間にやら、文香は片足を男の肩に乗せる形で犯されていた。  
 逃れるように上半身を捻っても、男の前後の動きに合わせて最奥は鈍く突かれ、露わになった胸には男の手と舌が這いまわる。  
 それに加えて、秘所の入り口にある敏感な部分――クリトリスを男の指が這うたびに、文香の身体の奥は熱を灯して、口から熱く甘い吐息を漏らし始めていた。  
 犯されている――なのに感じてしまっている。  
 その事実が、文香の心の中に暗い影を落として、それが一層快感を引き上げていく。  
 じゅちゅん、一際大きく男の腰が動いて、もはや破瓜の血だけでは表現できない水音を響かせた。  
 
「気持ちよくなってるでしょ? 聞いた今の音。中もぐりゅぐりゅ動いてるよ」  
「ちひゃぅ……ひぁ、んっ、ちがう、のぉ、んんッ、ふぁ、ッ」  
「奥、好きそうだねぇ。ごりごり、って犯されて感じちゃってる」  
「ひっ、お、くぅぁッ、ふか、ッ、ふかぁ、ぃぁっひっ、ふぅんッ、ぁっきゃぅ」   
「……一番奥で出してあげるからね」  
 
 頭の中は、もはや何も考えられていない。  
 逃げなきゃいけない、と覚えているものの、それはもはや男に対してではなく、徐々に形を成してきた快感の塊に対してである。  
 頭の中は熱を帯び、身体の奥は甘い快感に震え、胸の奥にはこのまま流されてしまいたいという欲求が生まれている。  
 駄目だ――そう思っても、繋がれた唇から差し込まれる舌は拒めようもなく、拒絶する意識のままに粘膜の交換を自ら求めていた。  
 ごりっ、と文香の最奥――子宮が、男の肉棒の先端によって押し込まれて少しばかりその口を開く。  
 それだけで文香は背筋を震わせて、中を蠢かせた。  
 その動きに、男の肉棒がびくびく、と大きく震えた。  
 それに合わせて男の前後運動が大きく激しくなり、文香は両足を抱えられる形で上から犯されていく。  
 もはや、なにもない。  
 あるのは、ただ快感の壁だった。  
 
 そして――。  
 
「ふぁ、ぁ、ゃ、んっ……ひ、ぅ、な、んぁ、きちゃ、っぁ……〜〜〜〜〜ッッ」   
 
 それまでよりも一番に強く深く突きいれられた男の肉棒は、文香の快感の壁を穿ち――その向こうにある絶頂を露わにしていた。  
 目の前が真っ白になる、そんな快感。  
 無理矢理に一番奥にまで突きこまれた男の肉棒からはまるで噴水のように熱い塊――精液が吐き出され、文香の最奥のさらに奥を汚していく。  
 その熱さに身体が震え、絶頂を迎えたばかりだというのに、今また身体は絶頂を迎えていた。  
   
「……まだ、終わりじゃないよ?」  
 
 ぬちゅっ、と粘つく水音と共に抜かれた肉棒が、文香の視界にてらてらと輝いて映る。  
 醜悪な形で粘つく液体に包まれたそれが、文香には幼い頃に読んだ本に出ていた悪魔のように見えた――。  
 
 

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