「早く結婚しろって、親がうるさいんですよね」
「私もそうですよ」
カタカタとキーボードで音を奏でる作業を続けながら、プロデューサーが笑う。
その瞬間、狭くもない事務所に詰めていたアイドルの視線がプロデューサーに集中する。
愛されてるな、と思いながら、ちひろはお茶を煎れる。
「仕方ありませんね!プロデューサーさんが後二年独身だったら、カワイイボクが結婚してあげま…ひっ!」
先陣を切るのはやはりこの子か、とプロデューサーは内心笑む。
どうやら他のアイドルの強いプレッシャーにあてられてか、ビクビクしながらプロデューサーにすがり付いてきた。
「仕事の出来る男には、仕事の出来る女が似合うと思うの。それはわかるわ」
「プロデューサーさぁん?まゆはいつでもいいですよぉ……?」
「結婚もいいけど、私のことを蔑ろにするのはやめてね」
「結婚するのはけっこんだけど、ね……ふふ……」
「……あの、プロデューサーさんが結婚したら……私たちはどうなりますか…」
やいのやいのとアイドルが騒ぎ立てるのを聞きながら、プロデューサーは作業を止めることはない。
「あぁ、そうだ。結婚で思い出した」
わざとらしく、プロデューサーが大きな声を出す。
直ぐ様黙り込むアイドルたちに、ちひろは苦笑する。
「俺、次の日曜日にお見合いがあるからな。だから、仕事のある奴は社長とちひろさんに送り迎えして貰ってくれな」
室内の温度が一気に下がる。
絶句するアイドルたち。
ニヤニヤと笑うプロデューサー。
あぁ、いつも通りの意地悪プロデューサーですか、と笑うちひろと違い、アイドルたちの顔は一様に蒼白になっていた。
続く?