幸子はかわいい。それも尋常じゃない位かわいい。  
どうしてこんなにかわいいかわいい言っているかというと、幸子が助手席に座っているからである。  
助手席からでも伝わる甘い香り、辛辣な口調に隠れる思いやり。  
正直、辛抱堪らんこの現状。いったいどうしたものか。  
 
「――でしたよね。……プロデューサーさん?ちょっと、聞いてるんですか?」  
「ん?あー、すまんな幸子。ぼーっとしてた」  
「残念ですねプロデューサーさん。ボクがかわいすぎるせいで耳までおかしくなっちゃったんですか?」  
「あー、そうかも分からんなぁ。幸子はかわいいからなぁ」  
「最近お疲れなのは分かりますけど、こんな所で事故はゴメンですからね」  
 
幸子が腕を組みながら俺の顔を覗きこんでくる。正直かわいい。  
きれいな琥珀色の瞳にちゅーしたい。幸子かわいい。  
赤信号になったので止まると、幸子が後部座席に置いてあったコンビニのビニール袋から栄養ドリンクを取り出して、ハンドルを握る俺の手に押し付けてきた。  
 
「あれ、スタドリじゃないんだな」  
 
ある意味見慣れた、ちひろさんの笑顔と共に現れるのとは違った、市販の栄養ドリンク。  
ありがとうな。と呟いてからカチリと蓋を捻って飲むと、甘苦い、生薬っぽい味が口いっぱいに広がった。  
そんな俺の声に幸子は溜息をひとつ。  
まったく、プロデューサーさんは……とでも言いたげに、もったいぶって口を開いた。  
 
「いいですか?スタドリはプロデューサーさんが本気を出す時に使うんです。それに糖分だらけですし、身体に悪いです」  
「そうなのか。幸子は物知りだなぁ」  
「そうですよ。糖尿病になんかなられたら困ります。プロデューサーさんは一人しかいないんですから」  
 
幸子はそう言うと窓の向こうに視線を移した。ほんのり赤い耳がかわいい。  
昨今、ついに幸子のかわいさが世間の視線を席巻し、今の幸子は朝も夜もないようなものだった。  
 
14歳の少女には辛いだろうと心配だが、幸子はそんな事をおくびにも出さずに俺を心配してくれる。  
今、俺のいるプロダクションには開花を控えたアイドル達がいて、みんなの担当が俺だった。  
そのプロダクション、最初のアイドルである幸子と二人三脚で走ってきて、ようやくプロダクション全体に光が当たり始めている。  
一緒にここまで来た幸子だから、俺の事を分かっていて、そして心配してくれるのだろう。  
学業との両立もあるだろうし、健康管理も大変だ。それでも大変さの尻尾も見せない彼女は、もう立派なアイドルだった。  
 
「心配掛けてごめんな」  
「仕方のない人ですからね。もっとボクを褒めてくれてもいいんですよ」  
「うん、幸子ありがとう」  
「本当にボクがいないと駄目なんですから。少しくらい、ボクの事も考えていてくださいね?」  
 
少しだけ寂しそうに言った幸子に、はっとする。  
今のところ、プロダクションのプロデューサーは俺一人。あとは事務員のちひろさんだけ。  
毎日がてんやわんやの忙しさだし、良く考えれば、こうやって幸子と一緒にいるのも本当に久しぶりの事で。  
予定を組んだり、新しい仕事を取ってきたりで毎日名前を呼んで、画面上では見ているものの、  
こうやって隣合ったり、なじられまくるのは何カ月ぶりだろうか。  
 
「……寂しかったの、か?」  
「このボクがそんな事思うように見えますか?」  
「嫉妬とか、してたのか?」  
「プロデューサーさんの可哀想な妄想の話なんて聞いてないです」  
 
完璧を重んじる幸子の事だ。  
寂しい気持ちも、毎回幸子とは違う誰かと一緒にいる俺に、何も感じないわけではないだろう。  
確かに妄想乙。と言われてしまえばそれまでだが、静かに俺のスーツの裾を掴んだ幸子を見れば、あながち間違いではないと思うに違いない。  
 
「そういえばなぁ幸子。この間のドラマ、すっごくかわいかったぞ」  
「ずいぶんいきなりですね。まあ、当然ですけど」  
「昼のバラエティーでも良かったぞ。あんな大物MC相手に、うまく話せてたし」  
「見る時間なんてあったんですか? その時間は島村さんの現場に行ってたじゃないですか」  
「今のスマホはすごいんだぞ幸子。お前の番組はぜーんぶ予約済みだ」  
「うわ、変態ですよ変態。良くそんな事、本人を前に言えますね」  
「まあな。かわいい幸子を見逃すわけにはいかないからな」  
「……よく、分かってるじゃないですか」  
 
 残念なプロデューサーさんの癖に。  
 小さくそう呟くと、幸子はまたそっぽを向いてしまった。  
 時間を確認すると、夜はかなり遅くなっていた。規定によって撮影などは早く終わるが、帰りの渋滞はそう簡単に家に帰してはくれない。  
 もしかしたら一旦事務所に帰って、そこで少し待ってから幸子の家に向かった方が、疲労はたまらないかもしれない。  
 そのほうが幸子も休めるし、俺も仕事を片付けられそうだ。  
 
「なあ幸子、事務所に帰って時間つぶさないか? 渋滞、かなりひどくなりそうだし」  
 
 幸子はさっと渋滞情報に目をやると、こくりと頷いた。  
 
「そうですね。どうせ帰りは深夜になりそうですし」  
「ごめんな、遅くなっちまって」  
「なに謝ってるんですか。謝る暇があるならさっさと車線替えてください」  
「すまんな。お、どうせならコンビニ寄るか。事務所の冷蔵庫空っぽだし、雑誌も買わなきゃだしさ」  
「えっ、ざ、雑誌ってなんのですか!」  
 
 ぐいっと車線を替えて好調に飛ばしていると、急に幸子の声が上擦った。  
 今週のテレビチャンの表紙は幸子のかわいい単独写真だったから、恥ずかしいのだろうか。  
 
「なにって、テレビチャンだろ? 幸子のかわいいスマイルの」  
「……ああ、そういう。ま、まあそうですよね! 表紙のボクがかわいいのも当たり前ですから!」  
 
 まだちょっとだけ高い声でずらずら喋る幸子もまた、かわいかった。  
 しかし一体なんだ。俺が買う雑誌で、幸子が慌てるもの――。  
 
「なるほど、あっはんうっふんな雑誌か? 妄想したのか?」  
「いえ、特に。ほら、ちゃんと前見てください」  
 
 幸子をいじれると思って勢いよく幸子の方を見たら、すごい勢いで押し返されて首が痛い。  
 すでに幸子は元の幸子に戻っていた。ああ、もう少し早かったら、ちょっとくらい顔の赤い幸子を見れたのかもしれないのに。  
 
 そんな風に悲しく考えているうちにコンビニに着いてしまった。  
 簡単に変装させて、俺のジャケットを着せて一緒にコンビニの自動ドアをくぐると、  
 幸子にジト目で「なんでエッチな本がトイレの側に並んでるか分かりますか?」なんて言われた。  
 そそる。ぞくっと背筋にくる何かを感じると同時に、なんだかものすごく悲しくなった。  
 この際、ふざけてゴムでも買った方が良いのかもしれない。  
 
「幸子、女の子が気付いちゃいけないとこだぞ、そこは」  
「へえ、そうなんですか。それより何を買いますか?ボク、ちょっとお腹すいちゃいました」  
 
 えへへ、とかわいく笑うと、幸子はおやつコーナーの方に行ってしまった。  
 かわいい。本当に誘われてるんじゃないだろうかと思ってしまうくらいかわいい。  
 しかし、そんなかわいい幸子の恋愛圏内に俺が入るかと言われれば、もちろんありえない。  
 幸子はそんじょそこらの女の子、さらにはアイドル、女優を軒並み平凡にしてしまうくらいかわいいのだ。  
 だが、意地悪するくらいならいいかもしれない。  
 赤くなった幸子の顔なんて、こんな流れでしか拝めそうにないのだから。  
 そんな事を考えながら、ゴムをカゴにいれて、カモフラージュに菓子やらジュースやらをこれでもかと詰め込んだ。  
 もちろん、かわいい幸子が微笑むテレビチャンは全部カゴに入れた。  
 
「うわ、こんなに買うんですか」  
「ああ。俺の愛ってやつかな」  
「下手ですね。もうちょっとさりげなく言ってくださいよ」  
 
 ジャケットの襟元を僅かにすぼめながら、小さな声で幸子は言った。  
 思わず口を閉じてしまう。幸子は今や有名人だ。こんな気軽に名前を呼んで、ばれたりしたら大変だ。  
 最近はまだ顔が知れていない子の相手をしていたからか、気が緩んでいた。  
 
「すまない、軽率だった」  
 
 頭を下げた。軽く、怪しまれない程度に。  
 そんな俺を、幸子はきょとんと見ていた。  
 
「え、っと……ボク、先に車、戻ってますね」  
「うん? ああ、分かった。欲しい物は全部か?」  
「そんなに食べるようにみえます? あと、このボクを待たせたら承知しませんからね」  
 
 溜息をこぼしながらそう言うと、幸子は逃げるようにコンビニを出た。  
 プロ意識の高い幸子だから、怒らせてしまったと思ったが、今回は幸子が諦めてくれたようだ。  
 いつものやり取りに少しだけ安心しながらレジを打ってもらっていると、大量のテレビチャンと一番下に隠れていたゴムを見た店員に変な目で見られた。  
 いえいえまったく違います。用途なんて無いんです。ゴムなんて買うの高校以来なんですから。  
 
「幸子ー、ただいま。待ったか?」  
「まあ、プロデューサーさんにしては早いですね。ボクが寒いので、早く入ってください」  
 
 幸子はそういうと、俺の両手に持ったビニール袋を素早く取った。  
 重めの袋をよいしょと持って、さりげなく俺のコーヒーをドリンクホルダーに入れてくれる。  
 こういうところがまた愛おしい。こういう言葉を聞けるのが俺だけだと考えるだけでにやにやしてしまう。  
 
「なにニヤついてるんですか」  
「いや、幸子はかわいいなぁと思って」  
 
 ようやく座席に着いて、エンジンと共にエアコンを入れながら答える。  
 甘いコーヒーを一口啜る。知ってますと言いたげに溜息をつく幸子。  
 なんとなく、今までの一緒にいたアイドル達とは違う安心を覚えている事に気が付いた。  
 こういうキツくてさり気ないやり取りが少しだけ懐かしくて、幸子が隣にいる事を実感する。  
 
 こんなにかわいいかわいいと思ってしまうのも仕方が無い事。  
 一緒にいるだけで、今まで感じていた焦りや、会えなかった時の空っぽな感じが埋まっていく。  
 14歳の女の子に恋をしていた。  
 尖った言葉の裏に潜む優しさに気が付く度に、どんな時にも気丈さを失わない姿を見る度に。  
 だから、  
 
「ふぅん。じゃあ、キスしたいとか思うんですか?」  
 
 こんな事を言われて  
 
「試してみるか」  
 
 大人らしく誤魔化す事ができなかった。  
 
「プロデューサーさんに、できるんですか」  
 
 挑戦的に笑って、若干震えた声に胸がときめく。  
 コーヒーをドリンクホルダーに入れる。助手席の幸子を逃がさないように右手を握り、左手は窓に縫い付ける。  
 顔が赤い。こんな時でも目を見つめてくる彼女が、すごくかわいい。  
 
「じゃあ、遠慮なく」  
「え、え、……ぁ、っん」  
 
 ゆっくり顔を近づけて、唇を合わせる。  
 顔を逸らして逃げられるようにゆっくり近付けたのに、幸子は逃げなかった。  
 それより、目を閉じて待っているようだった。  
 ほんの少しだけの、小鳥が果実をついばむほどに短い口づけ。  
 小さくて柔らかい唇からは、湿り気を帯びた甘い味がした。  
 
「……どうだ」  
「……コーヒーの、味ですね」  
 
 ぽうっとする幸子は、こなれたようにそう言った。  
 その一言に、股間のイチモツが反応するのが分かった。  
 
「に、逃げないのか、幸子」  
「プ、プロデューサーさんも、こんなにかわいいボクが誘ってるのに、どうしてもっと来てくれないんですか!」  
 
 鼻が触れそうなくらい近くで叫ばれた。しかし、俺はどきどきしすぎて死にそうだった。  
 幸子の目は涙で潤んで、小さな瞳に収まらなくなった感情が、綺麗な頬を伝って流れていく。  
 どうしようもないくらい扇情的だった。喉が渇いて、ひりつくくらい幸子が欲しい。  
 
「襲うぞ、幸子ぉ!」  
 
 プロデューサーとしての箍が天元突破しそうで叫んだ。  
 幸子から良い匂いがする。拒否してほしいのに、してほしくない。焦れる程に幸子が欲しくてたまらない。  
 
「プロデューサーさんはそうやって、ボクだけ見てればいいんです!」  
 
 さちこは きが どうてんしている!  
 クリアな思考を持っているいつもの自分だったら、こんな良く分からない誘いには絶対に乗らないはず。  
 しかしもう駄目だった。大人であることは非常に難しいのだ。  
 
「――下手でも、噛まないでくれよ」  
 
 ぽろぽろ涙を流す幸子に口づけて、彼女の唇を舌でなぞる。  
 怯えたようにゆっくり開いた口に舌を入れると、幸子の身体がくっと強張るのが分かった。  
 小さい口だった。少し舌を伸ばせば、簡単に奥歯に届いてしまう。  
 幸子の小さくて薄い舌に比べると、自分のものは随分と分厚く、大きい。  
 べろりと舌をすくって絡ませる。吸ったり甘噛みしたりをするうちに、おずおずと触れ合う舌に息が上がる。  
 
「っはぁ、ん……ん、ぅ、っはぁ」  
 
 幸子の唾液は無機質な味だった。透明で、僅かに甘いだけのまっさらな味。  
 そんな唾液が自分の口に含まれて、飲み下すという行為に下腹の辺りがずくずく痛むようにむずくなる。  
 たまらなくなって左手を離して、幸子の後頭部を支えて、もっと深く口づけていく。  
 勝手が分からず戸惑う幸子を落ち着かせるように撫でていると、彼女の自由になった右手が背のスーツを掴んだのが分かった。  
 
「っぷろ、ぁ、やめ、て」  
「ん。楽にしてろ」  
 
 唇が離れても荒い息は収まらない。むしろ、獣みたいに大きく、劣情に駆られたものに変わっていく。  
 幸子の頬のあたりに落ちた唾液を舐め取ると、無機質の中にしょっぱい涙の味がした。  
 ああ、幸子は泣いているんだと思ったら、電極を入れられたように気持ちよさが背筋を駆け上がる。  
 なんだか無理矢理犯してるみたいだ。それも、こんなに小さくてかわいい女の子を。  
 
 考えるだけで出てしまいそうだ。  
 だったらいっそ、そっちの方が興奮する。  
 頬を舐めて、目尻を優しく舐め上げて、一旦距離を置いて幸子を眺める。  
 
 時折、ふるりと震える身体があった。  
 胸を上下させて必死に息をしていて、撮影用のフリルのついた白いワンピースには皺がよってしまっている。  
 潤んだ琥珀色の瞳が俺を見上げた。思わず息を飲む。ああ、もう襲ってしまおう。  
 グッバイ理性、さようなら。すべてはかわいい幸子が悪い。  
 
「なにを……駄目、です。嫌ですってば!」  
「幸子がかわいくて我慢できないんだ」  
 
 首筋に口づけを落とすと、幸子の綺麗な藤色の髪がこそばゆい。  
 濡らした首筋にわざと息を吹きかけて、すうと息をのみ込めば甘い香りが、再びばちんと電気を流す。  
 
「ぅあ、プロデューサ、ぁ」  
 
 切なそうにスーツを握りしめる幸子をほとんど無視して、胸元のボタンを外す。  
 構造なんてまったく分からない。だから乱暴にぐいぐい引っ張って、偶然外れたのを良い事に全部外す。  
 どうやら横には開かないデザインらしく、半脱ぎなあたりが何とも艶めかしい。  
 首筋から鎖骨に唇を落としていく。低体重と診断されている辺り、若干骨が浮いているように見える白い肌。  
 浮き出た鎖骨をこりこり甘噛みすると、甘さを含んだ声が降ってくる。  
 かわいいにもほどがある。真っ白なブラの上に手を置くと、心臓がばくばく動いているのが伝わってきた。  
 
「……緊張するのか?」  
「あなたは、人をなんだとっ」  
「かわいい幸子」  
「ほんとにっ、ブラ外すのも下手くそなんですね!」  
 
 ぜいぜい息を吐きながら幸子が突っ込んできた。  
 ブラを外すのは想像以上に難しかったが、幸子が背中を浮かせてくれたおかげで何とか外せた。  
 胸を揉む。身体は薄いのに胸はふわふわに柔らかくてけっこうクる。というかそろそろ出そう。  
 Cカップらしいが、やっぱり女の子の胸。小さいので片手のてのひらだけでも覆えた。  
 ふにふにと温かな弾力を楽しんで、下から持ち上げるように捏ねまわす。  
 
「やあ、ぁ、駄目です、ってば」  
 
 幸子は慣れない感覚に耐えるように歯を食いしばる。くすぐったいのか、気持ちいいのか、まだ曖昧なのだろう。  
 子どものように弄ぶのをやめて、少しずつ硬くなってきた乳首を優しくつねると、幸子が背を丸めた。  
 
「ひゃあっ、」  
「ん、痛い?」  
「なんか、じわって来ました……ここのところ」  
 
 下腹の辺り、ちょうど子宮があるであろう場所に手を置いた幸子に、胸をいじっていた手が止まった。  
 荒く息を吐きながら見上げてきた顔に口づける。  
 手はとっくに動きを変えて、スカートの中に潜り込んでいた。  
 
「あ、やっ、プロデューサーさん?」  
 
 幸子が不安そうに声をかけてくるが、耳に入っていなかった。  
 頭に焼き鏝を入れられたみたいに何も考えられない。身体が燃えてるくらい熱くて、乱れる幸子がもっと見たくて。  
 
 下着に触れると、すでにびしょびしょに濡れいていた。上からそっと秘裂をなぞると、幸子の身体がびくんとはねた。  
 すごく淫らでいやらしい。普段の気丈な彼女とのギャップに、腰のあたりが甘く痺れる。  
 
「幸子、ここすっごい濡れてる」  
「違います!っふ、ぅ、ボクは、そんなんじゃっ」  
「気持ち良かったのか?」  
「……っ、聞くんじゃなくて、手を、動かしたら…っひあ」  
 
 下着を軽くずらして指を入れると、温かい愛液で幸子の内股はしっとりと濡れていた。  
 とろとろになった花弁を優しく撫でて、入口辺りを中指と薬指でほぐすように揉むと、掠れたような甘い嬌声が漏れた。  
 声を出す事も、息をする事も億劫で、何も言わずに幸子を抱きしめながら親指で陰核を押すように撫でる。  
 
「……っ、そこ、だめっ!」  
 
 幸子がぎゅっとしがみ付いてくる。いじる手のひらに腰が押し付けられてきて熱い。  
 柔らかい肉をかき分けるように、中に指を一本、抵抗の少ない辺りまで入れて、くっと鉤状に折り曲げる。  
 ぎゅうっと膣が収縮して、指が締め付けられた。指の腹の辺りで、どくどく脈打っているのが分かる。  
 
「や、やです、そこぉ」  
「気持ちいいだろ、ここ」  
「っはぁ、あ、あっ、や、ぁ」  
 
 幸子が胸のあたりに顔を押し付けて来た。  
 嬌声を隠したいのだろうか、真っ赤になった耳が髪の間から覗いていた。  
 中指を小刻みに動かすと、嬌声の感覚がだんだん狭くなって、スーツを掴む幸子の手が震えてきた。  
 
「っく、ふ、ぅう、ひゃうっ」  
 
 幸子は歯を食いしばって耐えていた。  
 とろけたような愛液が指に絡み、滑らかに動いて幸子を追い詰める。  
 中指を動かす代わりに、さっきよりも強く陰核を押しつぶすと、びくりと幸子の身体がこわばった。  
 
「んっ、ふ、ああぁっ!」  
 
 幸子の身体がびくびくと痙攣する。崩れ落ちそうな幸子を支えるように身体を寄せると、力が抜けたようにもたれかかってきた。  
 そっと指を引きぬく時にも、幸子は少しだけ甘い声を漏らした。  
 
「その、大丈夫か?」  
「……これが大丈夫に見えるんですか? 本当に、可哀想な人ですね」  
 
 肩で息をしながら言うと、幸子は身をよじらせた。  
 
「そうですね、痛いです」  
「ど、どこだ!? どこが痛い!」  
「左手、ですかね」  
「……あ、」  
 
 右手で窓に縫い付けていた幸子の左腕は、もはや白に近いくらい血の気が失せていた。  
 慌てて手を離して街灯の光に晒すと、俺の手形がうっすらと残っているのが見えた。  
 
「すまん、つい、夢中で」  
「そうでしょうね。ボクがかわいいからって、こんなに掴まなくても逃げません」  
 
 幸子は手形の残った左腕を愛おしげに撫でる。  
 ほんのり上気した肌に、薄紅色に染まった頬のままに言われると、心臓が思い出したように激しく脈を打ち始めた。  
 
「しかし幸子、お前本当に……」  
「ボクはプロデューサーさんが好きです」  
「……幸子」  
「……いけませんか?」  
 
 そう言うと、幸子は俺を下から覗きこんできた。  
 こんなに正直に言われると思っていなかったので、言葉に詰まってしまう。  
 あーだのうーだの言って、あうあうしている俺を見かねたのか、今度は幸子が迫ってきた。  
 
「ば、ばか来るな。だめ、幸子だめ!」  
「そう言って今度は自分が逃げるんですか? ボクは優しいですけど――ん、?」  
「ひ、っく、ふぁあ……ぁ、好きだから、好きだから来ないでって、さちこぉ」  
 
 ちょうど股間に置かれた手のひらに体重が乗って、急に強く刺激されたせいでびくびく痙攣してしまう。  
 イってしまった。それもちょっと手を置かれて、押されたくらいで。  
 
「な、なんというか、らしいですね!」  
 
 賢明なフォローが辛い。  
 半ば無理矢理犯した挙句、告白されて、ビビって出ちゃったなんて最低過ぎる。  
 
「すまん、本当にすまん。……ごめんなぁ、男らしくなくて」  
 
 はっきり言って、女性経験は一回だけある。  
 高校時代に一目惚れした女に嵌って、アルバイトもくたくたになるまでやった。  
 クリスマスの日に間に合うように高い指輪を買って、その日に初めてヤって、そしたら彼女は本気でもなんでもなかった。  
 貢がせて、遊ばれていたのだ。終わった後に指輪を渡して、泊まる予定だったのをその場で止めて、逃げ帰って。  
 
 泣きたくなるくらい惨めな女性経験。  
 初めて本気で向き合ってくれる相手を前にしても、カッコよくリードもできない。  
 落ち込む俺を、幸子は何も言わずに抱きしめてくれた。  
 
「まあ、いいんじゃないですか? ボクだけが気持ちよくなってもあれですし」  
「なんだそれ」  
「勝手に思い詰めないでください。ボクは、プロデューサーさんと気持ちよくなりたかったんですから」  
 
 このままするのは危ないですし。  
 幸子は少しだけ残念そうに、溜息をつきながら言った。  
 胸がきゅんと、幸子のかわいさに締め付けられる。  
 謝ろうとしたとき、俺の頭にティンと閃くものがあった。  
 
「……ある、あるぞ、ゴム」  
「え、何言ってるんですか」  
「いや、ちょっと待てよ! あるから!」  
 
 戸惑う幸子の頭を撫でながら、後部座席に放りこまれたビニール袋を漁る。  
 一つ目の袋をひっくり返しても見つからず、次の袋を見ると、普通に一番上に置いてあった。  
 
「見ろ幸子、ゴムだ」  
「い、言われなくても分かります!」  
「……続き、してもいいか」  
 
 ごくりと、生唾を飲み込む。  
 ここから先を進めば、本当に戻れなくなる。  
 好きの気持ちが戯れではなく、本気の恋になる。  
 
 幸子は何も言わずに俺の手からゴムの箱を取ると、無造作に開け始めた。  
 袋を一枚とって、口にくわえる。  
 俺に迫った体制のまま、ぐっと体重を掛けて押し倒してきた。  
 幸子の顔が近い。刺激のあるゴムの匂いと、幸子の甘い匂いが一緒に襲ってきて、目がちかちかする。  
 
「ボクにこういう事させる意味、分かってますよね」  
 
 確認するように、掠れた声で。  
 幸子は行く場もなく腰にそえられていた俺の手を取ると、自分の股に持っていった。  
 俺の指が触れると、あっ、と小さく幸子の声が漏れた。  
 濡れていた。内股に伝うくらい愛液が溢れていて、潤っている。  
 
「……っ、ん、分かります? こんなに待ってるんですよ?」  
 
 じっとりとした目で睨まれる。  
 一度精を吐きだした肉棒が、硬く張りつめる。幸子は手の下にそれを感じ取ると、くすりと笑って、俺の獣性を煽り立てた。  
 
「最後まで、ボクを貰ってください」  
 
 俺にのしかかっていた幸子を、助手席の方に押し倒す。  
 シートを倒して、幸子にあてがわれていた手を動かすと、くちゅりといやらしい音がした。  
 
「っあ、は、きゅう、ですよぉ」  
「幸子の全部、貰うからっ」  
「んぅ、っふぁ、ぷろでゅーさぁ、っぁ」  
 
 入口からゆっくりと中に指を一本潜らせて、内膜を広げるようにじっくり撫でる。  
 丁寧にほぐすように、膣の中を確かめるように指全体を動かしていると、じわじわ愛液が溢れてくる。  
 幸子に口づけを落としながら、敏感な部分をなぞっていると、幸子がぎゅうとしがみ付いてきた。  
 
「きついか?」  
 
 びくんと身体を震わせながらも、幸子はふるふる首を振った。  
 
「ボク、だけじゃなくっ、て」  
「ん。ちゃんと慣らしとかないと、幸子がきついからな」  
 
 脚を開かせて、その隙間に身体を入れる。  
 秘所をいじる手を、手のひらごと性器に押し付けて密着させると、幸子は短く、高く鳴いた。  
 幸子の身体が震える。とどめとばかりに、一際強く膣壁を擦りあげると、か細い悲鳴をあげて幸子は達した。  
 
「あんっ、ん、――っぁああ!」  
 
 はっはっと胸が揺れる。熱に浮かされたように新鮮な空気を求める幸子を待たせないように、自分のベルトに手をかけた。  
 ベルトを外すのは慣れたものだ。ボタンを外すよりもずっと早く解いて、ボクサーごとズボンを下げる。  
 
「……うわ、あ、……すごい、ですね」  
「強そうだろう」  
「いえ、それはあまり」  
 
 肉棒を見せつけるように腰に手を当てて見たら、さすがに目を逸らされた。そりゃそうだ。  
 軽口を叩けるくらいは落ち着いてきたのだろうか。  
 幸子の口からこぼれたゴムの袋を開けて、両手でなんとか装着する。  
 途中、幸子から、手伝いますか?など声をかけられたがなんとか付けられた。  
 薄いゴムの表面は先走りで少しぬるついていて、張り詰めた肉棒がみっちり収まっている感じだが、まあ平気だろう。  
 
「幸子、挿れるぞ」  
「は、はい――あ」  
「ん?」  
「……手」  
 
「手?」  
「手を、握ってください」  
 
 おずおずと出された手を握る。恋人つなぎのようにしっかり。  
 幸子の身体は小さく震えていて、俺を見つめる瞳は先程で濡れていたが、僅かに恐怖が見え隠れしていた。  
 かわいい、素直にそう思った。いくらでも頼ってほしかった。  
 自分がこの子の支えになれるのなら、いくらでも手を握ろう。  
 彼女に頼られる事を、これからの恋の形にしていこう。  
 細い腕が首にまわされて、幸子の顔が近くなる。  
 肉棒に手をそえて、ゆっくりと膣口に合わせた。温かく湿ったそこに触れた途端、ぶるりと背筋が震えた。  
 
「――っくぅ、あ、ゆっく、り……ン、きてくださ、い」  
 
 ぴったりと合わせてから腰を進める。壁に沿わせるようにじわじわ進んでいく。  
 挿入を支えていた手を幸子の背にまわす。続けざまに高くあがる声には、まだ怯えが含まれていた。  
 
「幸子、大丈夫だ。ちゃんと優しくするからな」  
 
 きゅうきゅう締め付ける中が気持ちよすぎて、しかめっ面になりながら彼女の背中をさすった。  
 過呼吸になったように短く、小さな悲鳴が混じった呼吸が、なんとかゆっくりしたものに変わっていく。  
 額に汗が滲んでくる。幸子のきつく閉じられた目からは涙がこぼれていた。  
 痛みがひどいのだろうか。きつく抱きつかれた手と、握り合った手の、白くなり始めている幸子の指先をみると、それしか考えられなかった。  
 少しでも気が楽になるように、まなじりに口づけ、涙のあとを唇でたどった。  
 
「ッ、いた、ぁ……っくふぅ、ふっ、ぅう」  
「やめるか? 俺は大丈夫だから――」  
「はぁ、ッボクが、ぁ、大丈夫じゃ、ないんです!はー、ぁっ、ぜんぶ……くださいよぉっ!」  
 
 半ば叫ぶようにそう言って、俺の腰に足を絡めてくる。  
 ぎゅうと中が狭くなる。一度出したおかげで、腰の重みはそこまでひどくなかった。  
 甘い空気には、少しずつだが血の匂いが混ざり始めている。  
 なんとか深く入れようとして角度を変えると、幸子の悲痛な声が甘くとろけた。  
 
「っっぁ、ぁあッ! 変な、あう、っふぁ」  
「ん、任せろ幸子、もうちょっとな」  
 
 亀頭にこつりと何かがあたった。  
 腰を進めるのをやめて、肉棒全体を柔らかく、きつく締め付ける感覚に大きく息をつく。  
 幸子にゆっくり口づける。食いしばっていた歯を優しく開かせて、深く舌をねぶる。  
 
「んく、ぜんぶ、入りましたか?」  
 
 最初よりも上手に舌を絡ませてから、幸子は窺うように聞いてきた。  
 俺は安心させるように頷いてから、軽く腰を揺らす。奥のこりこりしたところに、亀頭がこつんと当たった。  
 
「入ったよ。ここが一番奥だ」  
「……っふぅ、なんか、熱くて、押し上げられ、てっ」  
「痛みが引くまで、ちょっと揺らすからな」  
「くぁ、いいです、いいです、そんなっああ、ぁッ!」  
「っは、幸子、あんまりっ締めるな」  
 
 内臓を押し上げるように動くと、きちきち締まる膣に肉棒が扱きあげられる。  
 一回出していて本当に助かった。これだけでも軽く達してしまいそうだった。  
 
「もっと、……っは、動いて、動いてください」  
「ん、我慢するなよ、痛いのも、声も」  
 
 がんばるから。幸子の耳元で囁くと、彼女はこくこく頷いた。  
 奥に押し付けていた腰を引く。首にまわされていた腕に力が入って、スーツ越しでも、肩に爪を立てられるのが分かる。  
 入口まで戻して、もう一度ゆっくりと中に入る。  
 途中で幸子の弱い、恥骨の後ろの脈打つところを責めると、甘い喘ぎがあがった。  
 何度も何度も前後を続けるうちに、膣内から愛液が溢れだしてきた。  
 感じているのが分かって嬉しくなる。やっとこうして繋がれたのに、幸子が苦しいのは嫌だった。  
 緩く引いて、角度を変えながら深く押し付けているうちに、腰の動きが奥に叩きつけるようなものに変わっていく。  
 そんな刺激から逃れようとする幸子の腰を掴んで、もっと深く。  
 彼女の腰が浮き始めて、限界が近い事が知れた。  
 
「やめ、ぷろでゅーさ、ぁ、もう、もうだめ、」  
「あと少し、だろ?」  
「う、ぁああッ!んっ、……んぅ!」  
「幸子、大丈夫だからな」  
 
 奥が縮まって、緩んでを繰り返す。  
 それでも貪るように突き続けると、幸子がぎゅうっとしがみ付いてきた。  
 
「ぷろ、でゅーさぁッ!ぁああ!」  
「くう、幸子、イきそう、ッ」  
 
 お互い、隙間が無いくらい密着して、俺も幸子をきつく抱きしめて、子宮口に亀頭を捻じ込んだ。  
 狭い膣が脈動するようにうねって、絞り取られると錯覚する。下腹に力を込めて射精を耐えようとしたが、無理だった。  
 精液がびゅっと勢いよく出る。何回かびゅくびゅく痙攣してから、やっと射精が収まった。  
 
「っは、ぁ―――ッ……っく、幸子?」  
 
 まだ体を固くして、背を丸めるように俺にしがみ付いている。  
 幸子は小さく喘ぎながら、肩に食い込む爪を、更に深くした。  
 
「ッぁ、あう、っふ、ぅ」  
 
 ぶるりと、幸子の身体が震える。  
 
「幸子?だ、大丈夫か?……ちゃんと、気持ちよくなれたか?」  
 
 そのままぐったりとシートに倒れこんでしまったので、慌てて抱き起こす。  
 よく見ると、しっかり握りあっていた手もほどけていて、一瞬、死んでしまったんじゃないかと思ってしまう。  
 目を合わせると、幸子の目はすっかりとろけきっていた。  
 頬にも淡く赤みがさしていて、劣情をそそるかわいさがそこにあった。  
 僅かに開いた口元の瑞々しさに、何とも言えず口付ける。  
 
「ん、……よかった、ですよ」  
「あー、その……イった、か?えっと、さっきの気持ちよかったか?」  
「はぁ、野暮ですね。……頭がぱちっとして、なんか……お腹、いっぱいです」  
 
 幸子が、まだ俺の入ったままになっている下腹を撫でた。  
 
「そう、ですね……すごく気持ちよかった、です」  
 
 そう言ってふにゃりと、力が抜けたように笑う幸子に釘付けになる。  
 
「本当か……ありがとなぁ、幸子。どっか痛いとこないか?血とか、結構出てたけど……」  
「まだちょっとジンジンしますけど……まあ、今は動きたくはないです」  
 
 初めてなのに、激しくし過ぎたらしく、幸子は俺の背中に緩く手を回すだけで精一杯といったかんじだ。  
 かなり負担をかけた事に、今さらながら後悔する。だが、それでも受け入れてくれた幸子が、胸が詰まるくらいに愛おしかった。  
 
「ごめんな、幸子、痛かったろう……その、次はがんばって、もっと痛くなくするから」  
「次するのも決定なんですか?気が早いんですよ、プロデューサーさんは」  
 
 次は三回くらい抜いてからしよう。  
 そうでもしないと、思春期の男子並みに暴走しそうだ。  
 つながったまま少しだけ上体を起こすと、僅かに中が擦れて、肉棒がぴくりと跳ねた。  
 
「……あの、プロデューサーさん?」  
「……幸子、今のはな、お前がかわいくてだな」  
「も、もっと欲しいんですか?」  
 
 やってしまった。正直、終わってから幸子の顔を見たら、すぐに硬さが戻った。賢者タイムなんてなかったのだ。  
 いたたまれなくなって幸子を見ると、彼女は顔を真っ赤にして、何かを耐えるように下唇を噛んでいた。  
 ゾクゾクする。あ、と思った時には、すでに大きさが増していた。  
 
「プロデューサーさんはどれだけボクが好きなんですか!」  
「だ、だって……」  
「……まあ、ボクは心が広いので許しますよ。何か、言い訳はありますか?」  
 
 おたおたしてると、幸子がぐっと力を込めて、俺の顔を自分の顔の前まで近付けた。  
 待っているようだった。いつも通りの物言いと、押し殺しているであろう不安に、思わず笑ってしまう。  
 
 いつも気丈な幸子が求める言葉は一つだけで、今だってそれを確かめたくて、  
 そんじょそこらにいる、普通の女の子のように聞いてくるのだ。  
 そんな幸子がかわいくて、大好き。  
 
「もちろん」  
 
 少し乱れた藤色の髪に指を絡ませると、幸子は猫のように擦り寄って、再びほころぶように笑った。  
 
「幸子が世界で一番かわいいからだよ」  
 

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