アイドル:北条加蓮  
シチュエーション:援助交際  
 
「うーん……高い」  
 
 眉間に皺を寄せながら、私――北条加蓮はショーケースの中身を見つめながら呟いた。  
 ギラギラと自己主張しすぎない、けれど確かな存在感を示すシンプルなデザインのネックレス。  
 大人っぽくて綺麗なそれに一目ぼれした私は、けれどそれを即購入できることなく頭を悩ませていた。  
 
 お値段、実に48000円。  
 それが、私の頭を悩ませている原因だった。  
 
 
   
「むぅ……どうしようかしら?」  
 
 アクセショップからの帰り道、学校帰りや会社帰りの人達で賑わう駅前を歩く。  
 わいわい、がやがや。  
 不規則で乱雑した不協和音のように辺りに響く声を無視しながら、私はどうやってあのネックレスを手に入れるべきかを悩む。  
 不幸にも、お小遣いが手に入る日はまだ遠くだ。  
   
 私は、身体が弱い。  
 物心つく前に余命何か月です、というレベルの病気に患った関係らしい。  
 それでも何とか治療法が見つかって治って、大きな後遺症もなく現在――高校生になるまでに至った。  
 そんな過去があるものだから、パパとママは私に対して過保護に近いものがあった。  
 愛されている、と感じれるのだから何も思うことはないし、その影響もあってお小遣いは他の高校生――友達の女子高生よりも多い。  
 過保護で、でもある程度は自由に育ててくれて、愛してくれる家族を私も愛している――でも、お金の問題はまた別だ。  
 
 うーん、と再び頭を悩ませる。  
 お小遣いが入る日まで待つのもいいが、けれど、その日まで待ったが故にあのネックレスが売れてしまったでは意味がない。  
 そもそも、今現在欲しいものは何もあのネックレスだけではなかったりする。  
 新しい服も欲しければ新譜のCDも欲しい、友達とカラオケに行くお金も必要であれば遊びにいくお金も必要である。  
 むーん、と再び頭を悩ませる。  
 ――が、悩んだ所でお金が降ってくるわけが無い。  
 結局の所は、結果は行動しなければ生まれないのだ。  
   
「……仕方ない、か。……本当は、あまりしたくないんだけど」  
 
 一言だけ呟いて、ずきんっ、と痛んだ良心の呵責に蓋をする。  
 両親への良心の呵責、なんてどうでもいいことを想いつつ、私はケータイからウェブサイトを開いた――。  
 
 ***  
 
 
 身体が弱い私は、そもそもとして運動とか労働というものを医者から禁止されている。  
 もちろん、それは両親からのものでもあるので、私としてはそれを破ることは出来ない。  
 心配で想ってくれているのに、それを裏切ることなんか出来ないからだ。  
 まあそんなこんなで、そうなってくるとバイトなんか出来る訳がないし、もししたいと言うものなら激しく両親から止められてしまう――既に体験済みである。  
 そうやってお小遣い以外の金策など出来るはずも無い、なんて思っていた私は、ある日、ふと友達――少しだけ質の悪い友達から、ある金策に誘われた。  
 それは私のそれまでの世界を壊してしまう代わりに、私の目の前に新しい世界を開くもので。  
 それまでの私が壊れていく感覚をずきんっ、と痛む心の中に閉じ込めながら、今日も私はその金策に――バイトよりも時間的拘束が少なく、ある程度の体力でお金が入る方法に明け暮れていた。  
 
   
 ――それが、援助交際。  
 俗に言う、援交である。  
 
 
「ひぁ、ひぅん、ふっ、ぁぁッ」  
 
 身体を無理矢理押し広げられる感覚とそれを成している中年男の肉棒からの熱で、びりびりと電気にも似た何かが背筋を走る。  
 ずりゅんっ、ぐりゅんっ。  
 膣を抉るように出し入れされる中年男の肉棒が敏感になったクリトリスを軽く擦り上げ、目の前がちかちかと白く染まる。  
 
「あっ、んふぅッ、ひゃ、んんッ」  
 
 はぁ、はぁ、と中年男の荒くて熱い吐息が私の肌を撫でていく。  
 ずぬぬ、と肉棒を突き入れられる勢いのままに身体を反らせば突き出された胸と乳首が吐息と舌の温かさに蹂躙され。  
 ぬぷぷ、と引き抜かれていく肉棒の快感に耐えようと身を縮ませれば首元を熱と共に甘噛みされた痛みが快感を増長させていく。  
   
「ふっ、んんっ、ちゅ、んあッ、はっ、ふっ、ぅ」  
 
 熱くてタバコの臭いを放つ口が、私の口に被せられる。  
 私が零した愛液を染みつかせててらてらとぬめる唇は少しだけ荒れていて、そり残した髭がちくちくと肌に刺さる。  
 ぬめり、とした舌が私の舌に絡みつくように蠢いて、それでいて時々焦らすかのように引いて。  
 股下から迫る快感と熱から少しでも逃れたくて、少しでも意識をそらしたくて。  
 私は中年男の頭をかき抱いて、自ら熱くて湿る舌を一心に絡ませていった。  
 
「んちゅぁ、んっぶっ……っはぁぁんッ、ひぁんッ、ふぁっ」  
 
 互いの口内を蹂躙し合い、こぼれ落ちるまま溢れるままに唾液を交換し、それを潤滑油として更に舌を絡め合わせていく。  
 酸素を求めるために口を離せば、中年男は身体を起こして私の腰を掴んだままに勢いよく腰の運動を早めていった。  
 じゅぐちゅっ、じゅにゅちゅ、じゅぷっ、じゅぴゅ、ぐぷっ、ぐにゅんっ。  
 ごっ、ぐりっ、と中年男の先端が私の最奥を手加減無しに力強く叩いていく。  
 あわよくばその内部にまで入り込もうとしているのか、最奥を突かれたままにぐりぐりと肉棒を押し込められて、私は力無しに喘ぐことしか出来ないでいた。  
 
「ふ、くっ、んんぁぁっ、はやっ、んぁッ、つよ、いぃ」  
「はぁ、はぁ……ふ、んっ。出る、出ちゃうよ、加蓮ちゃん……ッ」  
 
 それも、後少しで終わりだ。  
 突き入れては最奥を抉り、乳首に吸い付いてはクリトリスを弄り、胸を揉みしだいては腰を掴んで一気に突き上げる。  
 その一連の動作は、けれど確実に終わりの時へと近づいていて。  
 ぴくぴくっ、と細かく脈動を始めていた中年男の肉棒が、びくんびくんっ、と大きく震えた時、それは私の最奥をこれまでで一番強く突き上げていた。  
 
「ひぁっ、ひゃぅっ、やぁ、ぁんっ、んんっ……〜〜〜〜っっっつつつつぅぅッッ」  
「んぐぅ……っぁぁぁぁ」  
 
 途端、ごびゅりっ、と熱くて固い塊が私の最奥へと一気に流し込まれる。  
 その固さと熱に身体中の熱が一気に跳ね上がって、それまで快感に酔いしれていた身体はその極みに達していた。  
 ごびゅりっ、どびゅっ、ごぶりっ、どぷっ……びゅくっ。  
 一度、二度、三度、四度、間が空いて五度。  
 絶頂を向かえた私の膣に誘い出される形で中年男の肉棒から精液が吐き出されていき、その度に私の子宮は熱いもので満たされていく。  
 ぎゅうっ、とベッドのシーツを必死に掴みながら、満たされていく安心感――そして汚れていく身体と心を見せないようにする。  
 ごぽっ、と中年男の肉棒が抜かれるのに合わせて精液によって満たされた膣に空気が混じる音と、溢れ出た精液が零れる音を聞いた。  
 三ラウンド、それだけの中出し分であればかなりの量である。  
 いくらピルを服用しているとはいえ不安になりそうな心境ではあるが、ここで弱気を見せてしまえば中年男の劣情に再度火を付けてしまうことを恐れた私は、零れる精液を指ですくいながら態とらしく微笑んだ。  
 
「ん、もう……三回も中で出しちゃって……。中出しは3万だよって言ってたよね?」  
「ふふ、分かっているよ、加蓮ちゃん。ん……っと、はいこれ。三回で9万で良かったんだよね?」  
「えっ……嘘、ホントにッ?! わぁ……おじさん、ありがとッ」  
「ぐふふ、いいって、いいって。わたしも楽しませてもらったからねぇ。……まっ、今度はサービスしてくれると有り難いが」  
「うんうん、分かってる♪ 次は口でも胸でもさせてあげるからね?」  
「ぐふ、楽しみにしてるよ」  
 
 シーツを胸元にかき寄せて、猫撫声で中年男へと身を寄せる。  
 ぬちょっ、と膣から零れる精液が粘着質な音を立ててシャワーへの気持ちを急かせるが、ここで甘えておかないと次への繋がりは生まれない。  
 胸元は乳首を隠すだけ、これだけで男というものは次なる情事へと気持ちを昂ぶらせてくれるから安易である。  
 さわりさわり、と太腿や頭を撫でてくる中年男から離れるために、私はシャワーという言い訳をもって中年男から身を離したのであった。  
 
  ***  
   
   
「やぁ……あんっ、んぁッ、はぅ……ん、んっ」  
 
 明けて数日。  
 私の首元にはあのネックレスがあった。  
 金属特有のひんやりとした感触に、きらりと光るその煌めき。  
 それが――背後から男に突かれる私の首元でゆらゆらと揺れていた。  
 
「んぁゅ……あ、んっ……ん、ふぅ」  
 
 ずぬぬ、ぬぷぷ、ずにゅぬ、にゅちゅぬ。  
 男と女の情事なる運動。  
 けれど、その動きは酷く遅く、そしてもどかしい。  
 さすさすと露わになっているお尻を男に撫でられて、それに合わせるようにゆっくりと動く男の腰に腰がひくひくと蠢いてしまう。  
 
「んー……加蓮ちゃんの腰、早く動いて欲しそうだねぇ」  
「あ、はっ……ひぅ……っはぅっ……そんな、こと……なぃ……んんっ」  
「そんなこと言って……自分で腰を動かしてるじゃないか」  
 
 ぐぬぬっ、と男の肉棒が押し入ってくれば、その最奥がきゅんっと動いて性感を煽り。  
 にちゅちゅ、と抜かれていれば名残惜しそうにひくひくと膣と腰が蠢く。  
 その焦らされるような動きに、つい合わせるように腰が動いてしまう。  
 ゆっくりと最奥目指した肉棒の動きに合わせてその最奥――子宮を肉棒に押しつけて。  
 ゆっくりと抜かれていく肉棒から与えられる快感がもっと欲しくて、男の腰についていくようにお尻を押しつけていく。  
 
「いやぁ、加蓮ちゃんは可愛いねぇ……そんなに動いて欲しいのかい?」  
「んあぁ……っはぁ、あッ……あ、うん、ッ……」  
「ほほぅ、そうかいそうかい……なら、一気に行くよっ!」  
 
 ホックだけ外されて露わになっている胸が男の運動によって少しだけ揺れる。  
 それを柔らかく揉みしだかれながらゆっくりと押し入ったまま最奥にぐりぐりと押しつけられる肉棒に、身体の奥底から白い何かが走る。  
 じゅわっ、と膣から溢れ出る液が増えたことを恥ずかしく思いながら、それでも、男の言葉についつい惹かれてしまう。  
 もっと快感が与えられる――ただそれだけに、私は頷いていた。  
 そして。  
 私の右腕を取って身体を引き起こした男は、ゆっくりと引き抜いていた肉棒を、力の限りに押し込んだ。  
 
「あぁぁッ、あんっ、あっ、は、うんっ、っイイッ」  
 
 
 ズンッ、と一際力強く子宮を突いた肉棒に、びりびりっ、とした電気が身体中に走る。  
 目の前は真っ白になって、頭の中は一気に弾けて、身体の中は一気に熱を帯びた。  
 じゅんっ、と先ほどよりも多くて密度の濃い愛液が内股を伝い落ちて、溢れ出る愛液をすくうかのように肉棒が膣へと出し入れされる。  
 じゅぷんっ、にぷっ、ぐちゅっ、ぶちゅっ。  
 腕を引っ張られた状態で後ろから激しく突かれるものだから、胸を張り出すように身体を前後に揺れる。  
 きらきらと動くネックレスが段々と意識の中から消えていって、酸素を求めるように口を開いた私の口に男の指が侵入してくる。  
 
「ん、ぶっ……ちゅ、んちゅっ、は、んぁ……れりゅ、る、ん、ちゅぁ……ッ」  
 
 男の指先が私の口の中を蹂躙し、舌を指で弄る。  
 指先で撫でるように、指先で擦るように、指先で摘むように、指先で犯すように。  
 ぐちゅんっ、にちゅんっ、と更に激しくなっていく肉棒に子宮を突かれ、その動きに押し出されるように吐息を吐き出そうと口を開けて舌を出す。  
 その動きに合わせて男の指先が私の舌を更に激しく弄り、膣と子宮から来る快感と舌先からもたらされる快感に意識が白く染められていく。  
 
「はぁ、はぁ……加蓮ちゃんの中、ひくひくと欲しそうにしてきたよ……このまま中に出すよ?」  
「はぁッ、ん、れちゅっ、ふぁっ、んくぁ、ぁんっ、う、うんッ」  
 
 口の中を蹂躙するように蠢く男の指に舌を絡ませて、腕を放されてベッドに押しつぶされるように腰を打ち付けられる快感が、私から思考能力を奪っていく。  
 大丈夫、今日は危険日じゃないしそもそも援交をすると決めた日は事前にピルを飲んでいる。  
 大丈夫、だいじょうぶ、ダイジョウブ――そう思わないと、膣出しされる恐怖と迫る快感の不安に押しつぶされそうだった。  
 ぐじゅぷっ、と突き入れられた肉棒にごりっと子宮が刺激され、その快感に合わせて愛液がこぼれ落ちていく。  
 男の片手は私の腰を持ち上げながらクリトリスを刺激し、もう片方は気に入ったのか私の舌を弄り倒す。  
 肉棒に後ろから突き動かされ、男の指で口を蹂躙されて、前後を快感に染められていく私は、びくびくっ、と膣が震えるのを感じていた。  
 
「くぅ……ッ、加蓮ちゃん、もうっ……くぅぁぁッ」  
 
 最奥を突く度にびくびくと震える膣と同じように震える男の肉棒に、男の限界も近いことを本能で知る。  
 女の身体というものはこういうとき現金なもので、迎えている雄の限界が近いと知るや、雌として自らも限界を迎えようとする。  
 つまりは、だ。  
   
「ひぁんっ、は、ひゃっ、んあっ……んんんんぁぁぁぁぁッッッ」  
 
 びゅるッ、と快感に染まっていた意識でも理解出来るほどに熱くて粘くて固い塊が子宮に注がれたのを切っ掛けとして、その熱によって私の身体を意識は絶頂を向かえていた。  
 びくんっびくんっ、と痙攣するかのように脈動する膣に合わせて、びゅるりっ、びゅくっ、と精液を吐き散らしながら脈動する肉棒。  
 真っ白な意識の中でその熱だけが確かなもので、吐き出される精液が愛おしいと思えるもので。  
 あまりにも吐き出されて子宮は元より膣から溢れた男の精液が愛液と同じように内股から零れていくのを指で掬い取って、私はとろんとした意識のままに指を舐めていた。  
 
「ん、ちゅるっ……はぁ、にが」  
「はは、まあ美味いとは聞かないね」  
「ん、そだね……さて、それじゃあ胸出し1万中出し3万、締めて4万頂きまーす」  
「む……まだまだいけそうなんだが、もう1ラウンド、どうかね?」  
「あはっ、おじさん元気なんだー……でもごめんね、もう帰らないとパパとママが心配するから」  
「……仕方ないねぇ。おじさんが近くまで送ってあげるよ」  
「ホントッ?! わぁ、ありがと、おじさん」  
 
 未だ固いままの肉棒が私の中から抜き出されて、そのカリの部分に引っ張られるかのように精液が膣から零れ落ちる。  
 むわっ、とした雄の臭いに顔をしかめそうになるが、お金の関係で成り立っている以上、支払いを円滑に進めるためには嫌な顔を見せる訳にはいかない。  
 そういう嫌々な態度を好ましいと思い興奮する人も中にはいるので一概には言い様は無いが、そもそもとして、もうぼちぼち帰らなければいけない時間なのは確かだ。  
 ここでもう1回なんてことになるのは困る私としては、今の状況は好ましいものだった。  
   
 でれでれと顔を崩す男に抱きついた私は、最後の一押しのためにその頬に唇を落とした。  
 
 ***  
 
 
「ひぅっ、ん、はぁっ、ひゃ、ひぃ、んんんッッッッ」  
 
 胡座を組む細男の上に座る形で、私は細男の首に腕を回した状態で迫りくる快感と絶頂を受け止める。  
 どびゅりっ、ごびゅりっ、と噴き上げてくる精液が勢い良く子宮を直撃し、その固さと熱から逃れるように酸素を求めようと喉を仰け反らせる。  
 れるっ、と露わになった鎖骨やら喉を細男に舐められて、口端から零れる涎を舐め取られて、そのままの勢いで唇を重ね合わせる。  
 酸素を求める私にとっては細男の絡みついてくる舌は邪魔者以外の何者でも無かったが、拒否するかのように動く私の舌には快感に翻弄されて勢いがない。  
 それをこれ幸いにと舌を絡ませてくる細男は、満足したのか唇を離した。  
 
「ふぃー……いやぁ、加蓮ちゃんの中、気持ちよかったよー」  
「……どうも」  
「あれ、ちょっと機嫌悪い? おじさん下手くそだった?」  
「別に……私も気持ちよかったですけど……中出しは駄目だって言いましたよね?」  
「……つい。加蓮ちゃん、気持ち良くって」  
「……5万ですからね」  
「ええッ?! 相場は3万じゃ……」  
「駄目だって言ったのに出したからです。……それとも、10万にしますか? 勿論、嫌だって言ったらケータイ持って警察行きますけどね」  
「……5万、払わさせて頂きます」  
   
 
念入りにシャワーを浴びて、身体の中に残っていた細男の精液を出した私は、細男と別れた後に塾へと向かう。  
 塾の前や帰りに援交をしている私だが、私のためにお金を払ってくれている両親のためにも、塾自体には通っている。  
 身体が弱くとも知識や勉学は問題無いのだから、何でも出来無いのだと妥協したくはなかった。  
 
「あ……新曲だ……」  
 
 そうやって脚を早めていると、ふとコンビニから聞こえた曲についつい脚を止めてしまう。  
 シンデレラガールズ・プロジェクト。  
 今やどの番組でも見ることが当たり前になったアイドルという職業、それに憧れる女の子達をアイドルにプロデュースするという計画。  
 私と同世代から始まり、上下の年齢に幅広く門戸を開いているそのプロジェクトは、世の女の子にとっては輝きを持った王子様そのものだ。  
 それまでの自分から変わることが出来る、なんてまさしく童話のシンデレラと同じような話ではある――が。  
 
「ふふ……私には無理、かな……」  
 
 CDショップのウィンドウからテレビに映し出される少女達は、皆一様に可愛らしくも激しいダンスを行いながら歌を歌っている。  
 ダンスと歌は別、なんてことを聞いたこともある――それでも、私のように身体が弱いとダンスすら出来やしないし、ダンスと歌を一緒になんて不可能に近い。  
 結局の所、私とアイドルという職業は余りにも遠すぎるものだった。  
 
「アイドル……かぁ……」  
 
 キュートで可愛らしい衣装。  
 クールで力強い歌声。  
 パッション溢れるダンスと笑顔。  
 そのどれもが、私とはかけ離れすぎていて。  
 憧れというものを抱く前に、諦めを私は抱いていた。  
 
「……ちょっとだけ、見ていこうかな」  
 
 それでも、やはり流行りの曲というものは心惹かれるもので。  
 少しぐらいなら時間もあるし――とCDショップを扉を開けようとして、直前に開いた扉に驚いた。  
 
「――ほら、凛ッ、早く行かないとレッスンに後れるぞっ!」  
「ちょっと待って、奈緒……あっ、すみません」  
 
どたばた、といった風に走っていくもこふわな髪の少女をクールといった言葉を表すような少女が追いかけていく。  
 先の少女はこちらに気付かなかったようだが、後の少女は気付いたようで、すれ違う直前に一瞬だけ視線があった。  
 ――夢と希望と情熱に溢れている、そんな視線。  
 私が求めようとして、けれども決して求めることの無かった視線に、何故だかずきんっと胸が痛んだ。  
 
「望むことなんか出来ないのにね……」  
 
 ずきずき、と胸は痛み心は泣いているみたいで。  
 その痛みに名前を付けられないでいて。  
 
 
 
 人肌が恋しいな、と思った私は塾が終わるとケータイを開いていた。  
 
「……生中出し、3万でどう?」  
 
 
 
(自ら汚れ堕ちる少女)  
 
「……ねえ、奈緒?」  
「んあ……なんだよ、凛?」  
「スカウトってさ……私達でしてもいいんだっけ?」  
「んー……確かに、プロデューサーも良さ気な奴がいればスカウトするなり連絡なりしろって言ってたけどさ……なんだ、まさか?」  
「うん。多分、私達と同じ歳ぐらいだと思うけど……プロデューサーに一応話してみるね」  
 

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