アイドル:北条加蓮  
シチュエーション:熱、BadEnd  
 
 
「ふぁっ、ひ、ひぅんッ」  
 
 ずちっ、じゅぐんっ。  
 ぐちゅ、にぢゅんっ。  
 粘質な水音が部屋の中に響いていき、それが男のものとも女のものとも取れない淫靡な匂いに混ざって、部屋の空気を濃密にしていく。  
 腰を引いて、突き出す。  
 ただそれだけの行為がそれを生み出しているのだ、と何処か遠い本能で理解して、それを快感だと認識して、俺は腰の運動を一層強める。  
 
「ひぐっ、ひゃ、んんっ、ふぁっ」  
 
 その行動に併せて、俺の視界の中で肌色が揺れる。  
 年相応の瑞々しく、そしてハリのある肌。  
 年不相応の、けれどもどこか幼げな印象を抱く女性らしい肢体。  
 胸元から下半身に至る細くくびれた腰回りは、雄を誘い入れるかのように妖しく蠢く。  
 腰を――男性にしか有り得ない肉棒を深く突き入れると、それに合わせてぷるぷると揺れる乳房が、どこか淫らで、猥らだった。  
 肉棒を引き抜いていくと少しだけ切なげに震える肢体の下腹部に、そっと左手を這わせる。  
 
「ふっ、ぅんぁッ、っぁ」  
 
 つつっ、と指先でなぞると、びくんっ、と目に見えるほどに一際強く震える肢体の肌に、俺はさらに指先を進めていく。  
 指先這わす肌の下には確かに俺の肉棒が入り込んでいる感触が感じられ、そのことを不思議に思い、そして猥らに思いながら肢体のへそへと指先と到達させる。  
   
「ふぁっ、そ、んなとっ、こぉ」  
 
 くりっ、とへそを指先で軽く刺激すると、指先を這わせた時より大きく震える肌と、肉棒を包み込む膣。  
 指先より先にある爪で少しだけ強く刺激すると、いやいや、とまるで子供のように手でどかせようとしてくる肢体の主。  
 けれど、それでもなお与え続けられる快感と刺激に力は入らず、当初の目的を叶わせることなくただ触れてくるだけであった。  
 その肢体の主の手に逆らうように、俺は肢体の上で震えるそれ――乳房へと指を這わした。  
 正確に述べるのなら、乳房のその上、自己主張するように快感によって固く勃起した乳首にである。  
 
「あ、んッ、くぁ、ふッ、うぁっ」  
 
 くにっ、と乳首を刺激すると、まるで電撃が走ったかのように肢体が跳ねる。  
 快感に目を見開き、酸素を求めるように開かれた口からよだれを垂らすその様は、普段のクールと一言で表現できる彼女からは想像も出来ない。  
 今時風な女子高生という見た目ながらも、何処か冷めたような、諦めているような瞳に感じて――社長の言葉を借りるならティンと来た――スカウトしたアイドル。  
 16歳という年齢からか、常日頃から面倒くさそうな言葉をはく彼女は、けれども、仕事に対しては内に秘めた情熱を惜しむことはしない少女。  
 真面目であることは知っている、真摯であることは知っている――ただ少し、体力が無いだけなのだ。  
 幼少の頃に病弱であった少女の肢体は透き通るように白く、滑らかな絹を連想させる。  
 跳ねた肢体の腰を手で引き寄せてその最奥――子宮を肉棒で突き上げると、少女は一際高く喘いだ。  
 
「は、んっ、ぷろでゅ、さぁッ」  
 
 びくんっ、と一際大きく身体を震わせた少女の肢体――その膣から過度の緊張が抜けていく。  
 ただひたすらに締め付けてくるだけの反応が、ゆるゆると、雄を悦ばせようというものに変わっていく。  
 それに合わせて、少女の顔が快楽を享受するものから何かを我慢するようなものへと変わるが、とりあえずはちっぽけな理性より本能を優先する。  
 けれど先ほどまでとは違い、ゆるゆるとした膣を大きく刺激することなく、腰の前後運動だけを行っていく。  
 無理はさせたくない、とばかりに、ただ肉棒を抜いて入れるだけ。  
 それだけでも結構な快感で、沸き起こりそうになる熱を感じると、少しだけ緩めて。  
 それでもこのままではと思い、俺は手を――少女の肌に這わせていた左手ではない、右手を蠢かせる。  
 
「ふっ、ぅんッ、はぁ、っ、んんッ」  
 
 くちゅっ、ぬちゅっ。  
 ぐぷっ、にちゃりっ。  
 腰の動きはそのままに、右手全体で少女の胸を揉みしだく。  
 若く瑞々しい胸は、適度な張りで手を押し返してくる。  
 じんわりとした汗の感触が手を胸に貼り付けて、まるで吸い付くような感触を生んでいた。  
 胸の先端――乳首は、度重なる快感によって既に痛そうなほど勃起している。  
 柔らかな胸の感触の中にあるこりっとした感触が楽しくて、俺は左手で少女の腰を抱きながら肉棒を突き入れ、それと同時にその胸を刺激していく。  
 指先で突き、弾き、擦り、優しく撫で上げる。  
 
「ひぁっ、ひっ、ふぅんッ、ぁっ」  
 
ゆるゆると、それでいて確かに雄を求めていた少女の膣が、ひくんっ、ぴくんっ、と蠢く度に締め付けを強くしていく。  
 ぐちゅぐちゅ、と粘つく水音は、やがてぐじゅぽっじゅぽつ、と溢れるような水音になっていて、少女の愛液に白いものが混ざり始めると、その身体が絶頂を前にしたことを本能で理解した。  
 男の本能とは存外にも簡単なもので、俺の下でまたしても快感に崩れていく少女の顔に、何とも言えぬ感覚が背中をじわじわと駆け上る。  
 雌を悦ばせるという雄の悦び。  
 雌を己のものとする雄としての欲。  
 雌を――少女をただ欲するという俺の願い。  
 様々なものが混ざり合いながら、それでも確かにある何かを求めるように、俺は腰を動きを早めながら少女の身体に覆い被さる。  
 年頃の真面目さと人を小馬鹿にしたような不真面目さを両立させているような常の顔を本能の裏に潜ませて、ただ快感に歪んでいる少女の顔が目の前にある。  
 涙を流し、涎を垂らし、汗に塗れ、それでもなお雄を求める視線に背筋がぞくりと震わされる。  
   
「ふっ、ぐぅ、はッ、ぁんっ」  
 
 快楽か、或いは自身の熱か。  
 朱に染まる白い肌――少女の首元に口を寄せて、流れる汗を気にすることなくそこに舌を這わす。  
 首元、鎖骨、喉、顎、耳元、耳。  
 丹念に舐め上げていくと、少女の口から漏れ出る快感一色の声。  
 迫る快感に反応的に涙を流し、開かれた口端からよだれを流す様は、少女を無理矢理に犯しているようで何処か倒錯的だ。  
 濃い茶色に染められた髪から覗く顔は快感に喘いでいて、それでも何処か安心したように俺の身体にと腕を回していて少女――北条加蓮が俺に信頼を預けてくれているのだと、嬉しく思ってつい腰の動きに力がこもった。  
 ごりゅんっ、と肉棒の先端が子宮を強く刺激すると、途端に反応する加蓮が縋り付くように俺の身体へと手を這わしていて、それがまた嬉しくて、つい溜まりそうになっていた頭の熱を共有したいとばかりに、俺は加蓮に口付けていた。  
   
「ふ、んっ、ちゅぅ、れるっ、んんっ、ふはっ、はぅ、んッ」  
 
 ただただ深く繋がろうとする、舌を絡める行為。  
 甘い口付けだとか、想いを確かめるなどという幻想めいた行為ではなく、身体全体を交じり合わせるような口付け。  
 熱を交換して、唾液を交換して、ただ深く舌を絡めて求めあって。  
 たったそれだけだというのに、頭の奥底でちりちりと快感が焼け付いていく。  
 頭の奥底で焼き付いて、ただそれだけしか考えられなくなるのではないかと思えるほどの快感――幸福。  
   
「ん、は、んッ、ふ、ぁッ、んふぅッ、ん、ふっ、んちゅっ、ちゅる」  
 
 ぐらぐらと身体の奥底で熱が滾っていくのが分かる。  
 酸素と唾液と舌を奪い合う口付けに頭は熱を帯び、加蓮の身体に腰を打ち付ける行為で身体は熱を発し、その快感によって熱が飛びだそうと藻掻く。  
 ――じんわり、と汗が目に入って涙が零れる。  
 それに触発されたか、肉棒の根本に溜まり始めていた熱く滾った熱がその先端からじんわりと漏れ出す。  
 限界が近い。  
 俺も、加蓮も。  
 ねちゅっ、くちゅっ。  
 じゅぷんっ、ぐちゃんっ、にちゅんッ、ちゅぷんッ。  
 ぐにゅちゅ、にちゅっ、ぐぬぷっ、ぐちゅんっ。  
 もはや、上と下、繋がり合っているどちらからの音かは理解出来ない。  
 熱を堰き止めている塊を崩すかのように、俺は加蓮の中に強く、ただ強く肉棒で叩き付ける。  
   
「ひぅ、ひゃんっ、ぷろ、ぷろでゅ、さぁッ。はげっ、しッ。も、っと、おくぅッ、ぷろでゅさー。んぁッ、んっ、きゃっ、そ、んなッ、はいらなッ、んんッ」  
 
 びくびくっ、と首元に回された加蓮の腕が細かく震え出す。  
 迫る快楽の熱を逃すように喉を仰け反らせる加蓮の、露わになった喉元に強く強く吸い付いた。  
 増えていく嬌声、濃密さを増していく喘ぎ、熱の籠もる息づかい。  
 じゅぷんっ、ぐちゃんっ、にちゅんッ、ちゅぷんッ。  
 びりびり、と。  
 頭と身体に電流が走る。  
 肉棒の根本で暴れていた熱が、一気に肥大したのを感じて――。  
 
   
「あっ、ああッ、ひっ。ぷろでゅさッ、ぷろでゅさ――んんんぁぁぁぁぁッッッ」  
 
 
 加蓮が絶頂を向かえるのと、それによって締め付けるように振動する膣に俺が熱を――精液を放ったのはほぼ同時だった。  
 どびゅっ、ごびゅりっ、どぶりっ、ごぽりっ。  
 腹筋が引き付けるほどの勢いで、二度三度――それ以上の回数を経て溜まりに溜まっていた熱く滾った精液が放たれていく。  
 加蓮の奥――子宮に数度放たれた精液が、溢れて敏感な肉棒を伝っていく感触が実に生々しい。  
 それでも、その精液の流れに逆らうように未だ放たれる精液に、一体どれだけ溜まってたのかと自分でも理解に苦しむ。  
    
 
 
 そうして。  
 ようやっと精液が放ちきられ、身体の熱がとりあえずの峠を越えたが。肉棒自体は未だ硬さを保っており、うにうにと蠢く加蓮の中を再び犯せ、と本能に囁きかけてくる。  
 実に魅力的な提案である。  
 雄としての自分は不完全燃焼でまだまだ余力はある。  
 何より、目の前で絶頂を向かえて未だ快感に震えている加蓮――雌は、少女としてのあどけなさと女としての淫靡さを併せ持つ、最高の雌だ。  
 これからもう一度まぐわうことに何ら問題は無い。  
 ――しかし。  
 
「……思春期か、俺は」  
 
 男の本能、獣性がちらちらと頭の中で燻ることに、理性で溜息を放つ。  
 ただ肉欲を欲する中学生のようだ、なんて自己嫌悪で、どうにかこうにか身体の熱を無理矢理に冷ました。  
 ――肉棒はちょっとどうしようもない、生理反応だし。  
 なんて言い訳をしながら、汗に濡れた髪を加蓮の顔からはねる。  
 すーすー、と聞こえ始めた寝息に苦笑して。  
 俺は、何でこんなことになったのかと過去を振り返ることにした。  
 
◇◇◇  
 
 
 
 
◇◇◇  
 
 ――とはいえ、こんな状況で明確な過去を振り返ることなど出来る筈もなく。  
 俺は簡潔に、事の推移を思い出すに留めた。  
 
 加蓮から、体調を崩したからレッスンを休むという連絡が入る。  
 渋谷凜、神谷奈緒との合同レッスンだったので、2人に連絡を回すと加蓮の見舞いに行くという始末、騒がないように注意する。  
 仕事がとりあえず落ち着き、渋谷凜、神谷奈緒と入れ違いで加蓮の家に到着、見舞いに行こうと部屋に上がる。  
 着替えの最中だった加蓮と鉢合わせする――何で凜と奈緒が帰ってすぐに着替えていたのかはとりあえず抜きにしておくとしよう。  
 
「……はぁ」  
 
 一つ呟いて、俺はちらりと加蓮のベッドの下に散乱してあったピンクのパジャマに視線をやり、手にとった。  
 既に身支度を調えた俺の鼻に、ふわり、と甘い香りが漂う。  
 その香りに、パジャマが洗濯されてからあまり時が経っていないことを知ると、俺は眠っていることを良いことに、体液で汚れていた加蓮の肌を清潔にして、それを着させた。  
 ――先ほどとは違うながらも、裸に近い加蓮の肢体が目の前にあって、つい情事を思い起こしてしまう。  
 どきん、と胸が高鳴ってしまうのを無視しつつ、俺は加蓮にパジャマを着せると、彼女をベッドに横たえた――ベッドのシーツは替えが分からなかったので、出来るだけ拭っただけだ。  
   
「……はぁ」  
 
 溜息をもう一つ。  
 結局、着替え中だった加蓮が混乱して、熱が上がって、倒れそうになって、それを支えて――その拍子に押し倒してしまって。  
 そこまでを熱による夢だと理解してしまった加蓮に告白されて、口付けをされて――そのまま致してしまった次第だった。  
 先ほどとは違った自己嫌悪に、気分が滅入ってしまう。  
 告白されて、口付けをされて――はね除けることは出来たというのにそれをしなかった自分に、どうしようもない感情を抱く。  
 アイドルとプロデューサーの恋愛は御法度だというのに、加蓮の告白が嬉しいと感じてしまった自分が、どうしようもなかった。  
 
「プロデューサー失格だ……俺って……」  
 
 惹かれていた。  
 外見だけではない。  
 病弱であったという過去と、過去から何も出来やしないだろうと諦めていた現在。   
 そんな中にあった確かなアイドルへの憧れという光が照らす加蓮を、俺は支えたいと思った。  
 口では不真面目ながらも、一生懸命に、ただひたすらに光になろうと、光を目指した加蓮に惹かれるのは、時間の問題だった。  
 けれど、俺はプロデューサーで、加蓮はアイドルだ。  
 どうしようもないのだと、笑顔の裏に想いを隠していくのだと思っていた。  
 ――けれど。  
 
「……夢だな。……泡沫の夢」  
 
 これは夢なのだ、と俺は自分に言い聞かせる。  
 加蓮が熱にうなされて見た夢の一コマなのだ、と無理矢理に納得させる。  
 加蓮が好いてくれている、というのは嬉しい事実だが、アイドルとプロデューサーという関係もまた事実で。  
 どうしようもない現実に、夢に憧れるのは少女達だけで十分だと思った。  
 
「そもそも、俺みたいなおっさんが夢とか……はは」  
 
 そうだ、夢を見るのは少女達だけで十分なのだ。  
 アイドルとしての自分を夢見ている加蓮、その邪魔をする訳にはいかないのだ。  
 だからこそ、俺は夢から覚めなければならない。  
 夢から覚めて現実を見て――加蓮をトップアイドルにするのだ。  
 そう想いながら、俺は加蓮の顔へと近づいていく。  
 
「……だからな、これが最後だ」  
 
 夢から覚めるには――。  
 夢から覚ますには――。  
 それは、古来よりたった一つの方法。  
 
 
「――さよなら、加蓮」  
   
 
 そう呟いて、俺は加蓮にキスをした――。  
 
 
 
 
 
 後日。  
「……ねえ、プロデューサー?」  
「ん、どうした?」  
「私ね……絶対、夢は諦めないから」  
「……そうか」  
 
(夢から覚めるには)  
 
 

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