アイドル:三村かな子  
シチュエーション:水着、スイート(甘)なホテル  
 
 
「いいわよーかな子ちゃん。ほら、もっと笑って笑って」  
「は、はぁ……」  
「んもう、固すぎるわよ、かな子ちゃんったらー。もっとリラックスして頂戴、取って食べたりしないから」  
「は、はい……」  
 
 ぱしゃ、ぱしゃ。  
 少しだけ乾いた音――シャッター音が耳に届く中、私は照りつける太陽の下で笑みを浮かべようと努力する。  
 さんさんと照りつける太陽は6月に入ったばかりだというのに実に強くて、日焼けしないだろうか、なんてふと思う。  
 出来る限りの日焼け対策はするように、なんてプロデューサーから言われたのでその辺はばっちりなのだが。  
 当のプロデューサーが日差しにやられてパラソルの影でへばっているのを見て、私――三村かな子はくすりと笑った。  
 
「おっ、いいわねいいわねー、その笑顔。んもう、おじさんキュンと来ちゃう」  
「あ、ありがとうございます……」  
「その照れた感じの顔もいいわねえ。純真な感じが出てて好きよ、そういうの」  
 
 くすり、と笑って、それでシャッター音を響かせていたカメラマンの人の言葉に、ふと意識を戻す。  
 ああ、どうしてこんなことになっているのか、なんて。  
 ぱしゃ、と鳴ったかと思えば、かしゃり、とカメラを変えての一枚。  
 そんなことを繰り返しながら進んでいくお仕事――グラビア撮影に、私はふと空を仰ぎ見た。  
 
 
 事の始まりは……そう、CDデビューを果たして少ししてからのことだった。  
 地道な販促が功を結んだかのようにある程度売れた私のデビューCD。  
 私のほかにもデビューしたアイドル達には販売数で負けてしまったようだが、それでも私のCDを買ってくれたファンがいるという事実に心が温かくなったのを覚えている。  
 そうして。  
 私達以外にもぞろぞろとCDデビューの話が進んでいって、そして、じゃあ私の2枚目のCDを考えようか、なんてプロデューサーが言い出したころに舞い込んだ、一つのお仕事。  
 それがグラビア撮影だった。  
 それまで写真といえば活動着ともいえる学校の制服だったり、色々な洋服を着てのお仕事だったのだが、今回のグラビア撮影はそのままの意味で、水着。  
 少年雑誌の巻頭グラビアということだった。  
 だけど。  
   
「……別に、私じゃなくても良かったんじゃないかな……」  
 
 なんて、天気が崩れ出して休憩になったパラソルの下で呟いてみる。  
 私は……その……す、素直に言えば、肉付きがいい……良すぎたりする……。   
 今も視線を落せばむにっ、と水着の縁に軽く胸とかお腹のお肉が食い込んでいたりする状況で、それを見て私は少しだけ落ち込んでしまう。  
 私と同時期にCDデビューしたアイドルの中に、渋谷凛ちゃんと高垣楓さんがいる。  
 凛ちゃんは私より2歳下の女の子なのだが、すらっとした体型ながらも実に女の子らしくて、私からすれば少し羨ましい。  
 楓さんに至っては25歳の大人な女性ということもあって、その大人な色気を醸し出す身体のラインは、女の私から見ても実に艶やかなのだ。  
 そんな2人――他にも2人いるが、とりあえずは置いておいて――がいるというのに、私のグラビアを巻頭に乗せるという。  
 私としては、どうしても比べてしまう2人の方が良かったのではないか、なんて思ってしまう。  
 
「……はぁ」  
「どうした、かな子? 溜息なんかついて」  
「あっ……プロデューサーさん……」  
 
 がっくり、と肩を落としながら一つ溜息をつくと、頭の上から聞きなれた声。  
 ふい、と顔を上げると、少し青い顔をしたプロデューサーが私を見下ろしていた。  
 ……気分が悪いなら休んでおけばいいのに。  
 そんなことを思うも、彼が私のことを考えてそれでも声をかけてくれたことは嬉しく思う。  
 大切に、大事にされてるんだなあ、と思うと同時に、少しだけずるい、なんて。  
 そんなに優しくされたら勘違いしちゃいますよ、と言えれば簡単だった。  
 
「天気が崩れるみたいでな、今日はちょっと止めておこうって話になったらしいぞ」  
「へ……じゃあ、今日はもう終わりですか?」  
「まあ、そういうことみたいだ。スコールの情報も入ってるみたいだし……撮影は明日に持越しらしい」  
「そう、ですか……」  
 
 悩んで2人と比べて打ちひしがれていたというのに、更なる追い討ちがプロデューサーの口から放たれる。  
 順調に進めば1日で済む撮影の予備日とされていた2日目は、1日目で何事もなく撮影が終了すれば自由時間に充てられるはずだった日だ。  
 いうなれば、休暇。  
 今来ている撮影地は観光地としてそれなりに栄えていて、プライベートビーチを使用させてもらっているホテルの回りにも色々と観光出来る場所があるという。  
 そんな観光地を放っておく訳にはいかないとばかりに、私は2日目が自由時間になると予想を立ててお出かけの予定を考えていた――もちろん、プロデューサーを誘って一緒に。  
 いわゆる、デートというやつだ。  
 それがあったからこそ、私としては色々な部分で負い目がある今回のグラビア撮影を受けようという気になったのである。  
 ……それなのに。  
 ぐすんっ、なんて涙が零れそうな気がした。  
 
「とりあえずは、俺達も一度ホテルの部屋に戻ろう、かな子。雨に降られてもかなわないし……あ」  
「そうですね……あ」  
「やばい、降ってきた……急ぐぞ、かな子」  
「えっ、きゃ、ちょっと待ってください、プロデューサーさんってば」  
 
 そんな私の心情を拾ったのか、急にごろごろと言い出した天気模様にプロデューサーが慌てたように私を促す。  
 確かに、雨に降られてはかなわないと思って私も部屋へと引き上げるためにプロデューサーが用意してくれていた薄手のパーカーを羽織る。  
 途端、ぽつりとパラソルから音が聞こえた。  
 ぽつり、ぽつり、とだんだんと増えていく音は次第に強まっていき、やばい、と駆けだすプロデューサーに手を取られて走り出していた時には、大粒の雨が私達を覆い尽くしていた。  
 ……本当、ついてない。  
 
◇◇◇  
 
◇◇◇  
 
「うへぇ……びちょびちょだ……大丈夫か、かな子?」  
「あっ、はい……だいじょう、くしゅんっ」  
「ああ、言わんこっちゃない。こっちの雨は随分と冷えるらしいから、早くシャワーで……ッッ?!」  
「ふぇ……?」  
 
 ざあざあ、と雨の音が窓を叩く中、ぽたりぽたり、と滴を垂らす私とプロデューサーはホテルの部屋へと駆けこんだ。  
 ホテルに入った時にはすでにずぶ濡れだったのだが、急な雨にホテルのスタッフさん達も忙しそうで、そんな私達は特に見咎められることもなく部屋へと辿り着いていた。  
 水着の上にパーカーを羽織っただけの格好だから何かを言われるかも、なんて思っていたが、そんなことは無かった。  
 そうして辿り着いた部屋にぽたり、またぽたりと滴の跡をつけて、私とプロデューサーは部屋の中で一息ついた。  
 ずぶ濡れになってはしまったが、雨に打たれ続けることは無かったので身体を冷やすことはなかっただろう。  
 なんて思っていると、不意にむずむずとした鼻に、思わずくしゃみ。  
 私のくしゃみに、びしょびしょになった上着を脱いでいたプロデューサーが振り向いた――そして顔を真っ赤にした。  
 風邪でも引いたのかな、なんて思っていると、私に向いていた視線が下がるのに合わせて身体を見下ろしてみる。  
 ……水着の上に羽織っていたパーカーが雨で肌に張り付いていた。  
   
「きゃあッ」  
「う、うわぁぁあ……す、すまん、かな子ッ……」  
「あぅ……あ、謝らないでください、プロデューサーさん……それにこれ、下は水着ですし」  
「あ、ああ、そうだよな、水着だよな。はは、うん、うん……水着だよな、よし、落ち着け俺」  
   
 ぴとり、と身体に張り付くように濡れいていたパーカーは私の胸のラインから腰のライン、その全てをくっきりと表していた。  
 どきんっ、と胸が痛くなる。  
 撮影の時はへばってて見られてなかった私の身体を、今プロデューサーは目の前で確認している。  
 凛ちゃんよりも、楓さんよりも肉付きのいい、ぽっちゃりとした私の身体が見られている。  
 どきんっ、と胸がなって、ずきんっ、と心が痛くなった私はつい声を上げて身体を隠す様にしゃがんだ。  
 その動きに合わせて謝罪を向けてくるプロデューサーに、誤魔化すように口を開く私。  
 太ってる私を見られたことじゃなく、透けている水着が恥ずかしくなって照れた私を演出するように口を開くと、慌てたようなプロデューサーの声に、あれ、と首を傾げる。  
 ……もしかして、私の身体を見て反応してくれた?  
 
「いや、そのだな……すまん、かな子」  
「いえ……私こそ、凛ちゃんや楓さんみたいに綺麗な身体をしてないから恥ずかしくて……」  
「そんなことないッ」  
「……ふぇ? え……あ、あの、プロデューサーさん……?」  
「えっ……あ、いや……ええっと、だな……その」  
 
 けれど、私の身体で反応してくれるなんて、淡い期待。  
 凛ちゃんみたいなら、楓さんみたいなら、それなら少しは自信を持てただろうな、なんて私の言葉は、けれどプロデューサーに一喝された。  
 びくり、と身体が震えて、どきりっ、と心が震えた。  
 
「その、だな……かな子は綺麗だと、思う、ぞ……。凛や楓さんも綺麗だけどさ、えと……うん、かな子も綺麗だ」  
「ふぁ……? あ……あはは、やだな、プロデューサーさん……私、だって……太って、るし……」  
「太って、ああいや、その、太ってるようには見えないよ……それに、俺はかな子のこと綺麗だと思うし可愛いと思う」  
 
 どきんっ、どきんっ、と胸が高鳴っていく。  
 降っていた雨は少しだけ小降りになっていて、プロデューサーの何処か照れたような、けれど確かな言葉が耳に良く響く。  
 私のことを綺麗って言ってくれた。  
 私のことを可愛いって言ってくれた。  
 その事実に、雨で張り付いていたパーカーに包まれた身体が、かっと熱を帯びる。  
 プロデューサーが綺麗だ可愛いと言ってくれたことが嬉しくて。  
 プロデューサーがそう言ってくれたのに自分を卑下しそうになる自分が悲しくて。  
 ぽとり、と髪から滴が垂れるとともに、一粒だけ涙が零れた。  
   
 どきり、と胸が高鳴っていく。  
 今なら言えるかもしれない――卑下する自分が隠してきた、甘くて大切なこの心。  
 今なら伝えられるかもしれない――他のアイドルの女の子達に負い目を感じて隠していた、胸を締め付けるこの想い。  
 どきんっ、ともう一度胸が高鳴った。  
 
「だ……だったら…………見せて下さい」  
「ん……何だって?」  
「見せて下さい、プロデューサーさん……私が綺麗だって、可愛いって言う証拠を……見せて、下さい……」  
 
 顔を紅くして雨に濡れたままのプロデューサーは、照れて少しばかり混乱しているのか濡れたままにベッドの縁に座った。  
 間仕切りによって私とプロデューサーの部屋に仕切っている、そのプロデューサー側のベッドがぎしり、と音を立てる。  
 その座っているプロデューサーに、私は立ち上がって一歩、また一歩と近づいていく。  
 一歩進むたびにどきんっ、どきりっ、と心臓が高く鼓動して、雨に冷えたというのに身体中がいやに熱い。  
 じじじ、と雨に濡れないようにとプロデューサーに身体を見られないように一番上にしていたパーカーのチャックを少しずつ下ろしていく。  
 その振動が首元を通り、胸元を通り過ぎる時、ぷるっ、と少しばかり胸が揺れた。  
 
「かな、子……」  
「プロ、デューサーさん……私……私、プロデューサーさんのこと……好き、です……」  
「かな子……俺……俺は……」  
 
 かちんっ、と音がしてチャックが一番下についたことを知ると、はらり、とそれを外す。  
 少しだけ窮屈だった胸がふるんっ、と解放されて揺れ動き、胸に押される形でパーカーが大きく開く。  
 ひゅんっ、と少しだけ空気が冷たくて身体が震えそうになるけれど、それを我慢してまた一歩、プロデューサーに近づいた。  
 
「好きなんです……プロデューサーさんのことが……。好き、です……」  
「……ま、待て、落ち着け、かな子……俺とお前は……」  
「アイドルとプロデューサーでも……私は、あなたのことが……あなたのことを……」  
 
 ぎしり、とベッドを軋ませながらプロデューサーがその上で後ずさる。  
 濡れたままだからか、ベッドの上で主張していた掛布団はその動きにつられてくしゃくしゃとなり、プロデューサーの後ろに白い山を築いたみたいに見える。  
 はぁ……はぁ……。  
 濡れた唇から零れる吐息が実に熱く感じられる。  
 吐息と高鳴る心臓の音が耳を支配して、それでもプロデューサーの声だけはクリアに聞こえる。  
 ぎしり、と私もベッドに乗ると、四つん這いのままにプロデューサーに近づいていく。  
 プロデューサーの視線が私の顔に向いて、次いでその視線が下に下がると赤く染まる。  
 身体を見られてる、なんてことを考えて、それが嬉しくて。  
 ぎしり、またぎしり、と近づいて、気づけば目の前にあるプロデューサーの顔。  
 どきんっ、と一際強く胸が高鳴った。  
 
「か、な子……」  
「プロ、デューサーさん……」  
「……はは……俺は、馬鹿だな。……アイドルとプロデューサーだってのに、アイドルのことを考えれば突き飛ばすべきなのに……かな子に想いを告げられてこんなにも嬉しいだなんて……俺はプロデュ  
 
ーサー失格だ」  
「……だったら、私はアイドル失格ですよ。たった1人のファンに見て欲しいだなんて……その人にだけでも可愛く思って欲しいだなんて……そんな我儘なアイドルなんですから」  
「……だったら、俺も我儘だな。……かな子の水着姿を見て、もっと見たいと思った……その綺麗な身体をもっと見たいって思った……」  
「……見て、下さい……プロデューサーさん……。私の身体……綺麗だって言うんなら、その証拠を……見せて下さい」  
「かな子……」  
「プロデューサーさ………………ん」  
 
 少しづつ近くなっていく私達の顔。  
 濡れたままの雨の匂いが強くて、少しだけむわっとしていて、それでも離れることはない。  
 プロデューサーの濡れたスラックスに手を置いて、さらに身体を近づけていく。  
 びくんっ、とプロデューサーでも震えるんだ、緊張してるんだ、なんて嬉しい思い。  
 お互いの吐息がかかる距離まで顔を近づけると、観念したようなプロデューサー。  
 その手が私の頭を、髪を、唇を、頬をなぞっていくと、少しずつ近づいてくるプロデューサーの顔。  
 どきんっ、と胸が高鳴って、けれどさっきまでの痛いものとは違う、甘い甘い疼きにも似た胸のときめきが心地よくて。  
 私はそっと瞳を閉じる――。  
 ――そして。  
 私とプロデューサーは、触れるだけのキスをした。  
 
◇◇◇  
 
◇◇◇  
 
「かな子……」  
「プロデューサー……ん、ちゅっ……んんっ」  
 
 ちゅ。  
 ちゅっ、ちゅぱっ。  
 んっ、ちゅるっ。  
 触れるだけのキスが、唇が動いて鳥が啄みあうようなキスへと変わっていく。  
 唇を端を啄みあい、上唇を唇で挟んで吸い、頭の角度を変えて深く、ただ深くプロデューサーと唇を交じり合わせていく。  
 つん、と舌と舌の先が軽く触れあい、びくっ、と身体が震えたと思うと、腰に感じるプロデューサーの腕。  
 ぐいっ、と身体を強く引き寄せられて、私の上半身がプロデューサーの上半身に押しつけられて。  
 身体も心も近くなった私たちは、どちらからともなく、交じり合った唇の間で舌を絡ませていた。  
 
「んんッ……ん、ちゅぅ。るちゅっ、んちゅ……ん、ふぅっ」  
「かな子……かな子……ッ」  
「んふぁっ……ぷろでゅーさー……んっ、ちゅるっ……んふっ」  
 
 強く腰を抱きしめられて。  
 強くプロデューサーの首に回した腕を抱き寄せて。  
 唇と唇の間で奏でられる粘つく水音に交じって、雨に濡れていた身体がぴったりと張り付いて、僅かな水音を零す。  
 ぴったりと張り付いた水着とパーカーは肌に纏わり付いてその感覚を浮き上がらせ。  
 ぴったりと同じように張り付いたプロデューサーのスーツからその身体の輪郭を読み取らせていく。  
 重い枷を外すようにプロデューサーが上着を脱ぐと、シャツに張り付いたその肌が、私の肌に合わさられる。  
 雨に濡れて冷たいというのに、その肌がいやに熱くて、その熱に身体の中が熱くなって、熱から逃れるようにさらに深くプロデューサーの唇を奪っていく。  
 
「んっ……ぷろ、でゅうさぁ……ひぅッ」  
「かな子……少し、冷えてるな」  
「んっ、ふっ、んっ……あた、ためて下さい。プロデューサーさんの熱を……下さ――ひゃうッ」  
 
 熱を求めて。  
 酸素を求めて。  
 プロデューサーを求めて。  
 深いところで絡まっていた舌は、しかしてプロデューサーが私の身体を少し離したことで離されることになる。  
 つうっ、と唇から唾液の糸が伸びて、その先がプロデューサーの唇に繋がっている。  
 それを嬉しいと思いつつ、けれど離れたことを悲しいと思いつつ。  
 雨に湿気たプロデューサーの頭を抱いてキスを再開しようとすると、首元に感じるぬめった暖かい感触。  
 雨に冷えた肌にそれはあまりにも突然で、驚きの声を上げると気をよくしたのか少しずつ動いていく暖かい感触。  
 それがプロデューサーの舌だ、なんてあまりも当然の考え。  
 舐められてるんだ……。  
 その事実に、私はぞくりと背筋を震わせていた。  
 そして、その舌から来る熱をもっと求めて、プロデューサーの頭をさらに強く抱きかかえた――。  
 ところで、不意に腰のあたりでプロデューサーの手が動いた気がした。  
 
「ぷ、ぷろでゅーさーさん……」  
「……かな子はさ、自分のこと太ってるとか言ってたけど、別にそんなことは無いよ。それに、こんなにも綺麗だ」  
「あ、ありがとう、んくっ、ございます……。けど……ええ、と、そのぅ……んっ、口が動くのがくすぐったい、ひぅ」  
「俺、もっとかな子のことが見たい。かな子の綺麗な身体をもっと見たいんだ……いいか?」  
「は、んっ、はい……いいんですけど。その、ッ、息が……」  
    
 さわり、と腰を撫でられて、不意に強ばって仰け反った喉元にプロデューサーが強く吸い付く。  
 吸い付きながらチロチロと舌先で肌を舐められて、言いしれぬ感覚に身体から力が抜けていく。  
 そんな力の抜けた私の身体を、プロデューサーはさらに強く抱きしめてくる。  
 強く、ただ強く抱きしめられて。  
 息苦しさよりも愛おしさを感じ。  
 不安よりも暖かさと安心を感じた。  
 ふるふると震える腕を必死に動かして、私もプロデューサーの頭を抱き寄せる。  
 その度に肌の上で口が開かれて、吐息がそれをくすぐっていく。  
 もぞもぞと口が肌の上で蠢いて、暖かい吐息が言葉とともに肌をなぞって感覚を引き出していく。  
 くすぐったいと思うと同時に言いしれぬ別種の感覚に声が漏れそうで、必死でそれを押さえ込んで、ついプロデューサーに強く抱きつく。  
 そうするとさらに感じられる甘い熱に、いつしか動き始めていたプロデューサーの手に気づくのが遅れていた。  
 
「かな子……」  
「ひゃ、うっ……っ。んっ……んくっ、ひぅ」  
 
 ふにょん、といった感触が胸から脳へと伝えられて、羞恥で顔と身体が熱くなる。  
 顔は真っ赤だろうな、なんて思えるほどに頬が熱くて、どきんどきん、と心臓が高く早く鼓動した。  
 水着越しに胸を触られている。  
 心臓が飛び出そうなほど恥ずかしくて緊張しているというのに、それでもこんなに心が温かいのは何故だろう。  
 そんなことを考えたとき、すとん、とプロデューサーに触れられているから、なんて答えが落ち着いた。  
 恋をしている、なんて言葉では言い表せないほどに甘い、ただ甘い感情。  
 好き、では足りないほどの大好きが、私の心を温かくさせていた。  
 
「やぁ……んんっ、んくっ……。ふぁ……はっ、やぁ……ッ」  
「かな子の胸……すごい柔らかい。ふわふわして、もちもちして……まるでマシュマロみたいだ」  
「ひゃぅっ……んぁ……そ、んなぁ……恥ずかしい、ですぅ……んっ」  
「……水着、ずらしてもいいか、かな子?」  
「ひぅッ……………………はい」  
 
 ふにょん、もにゅん、むにゅ、ふにゅふにゅ。  
 自分の胸が自分の意思とは関係なしにその姿を変えていくという不思議な感覚に、どうにも身体の奥がこそばゆい。  
 柔らかく胸を揉まれればじんわりとこそばゆさが滲み出て、痛くない程度に力強く揉まれれば溢れ出るようにこそばゆさが増していく。  
 だけどそれも。  
 じんわり、じんわり、と。  
 羞恥で顔と頭が熱くなって、胸が揉まれて吐息が肺から追い出されて。  
 ぼー、としてきた頭の中で、確かにこそばゆさが熱へと変わっていくのを感じていた。  
 じんっ、と胸の先端にある突起−−乳首に、熱が固まっていく。  
 プロデューサーに胸を揉まれる度に、その手の平が少しずつ固くなっていく乳首を押しつぶして、こりっ、とした感触。  
 びくんっ、と身体が震えて、さらに身体の奥底からこそばゆさが滲み出て、熱へと変わっていった。  
 
 そして。  
 ずるっ、とプロデューサーの手によって水着が上へとずらされる。  
 ぽろんっ、とも、ぷるんっ、とも形容出来る様子で、胸が揺れると、ごくり、とプロデューサーの喉を鳴らす音。  
 つられてごくり。  
 その動きに合わせてまた揺れた胸に、プロデューサーがそっと触れた。  
 
「ふっ、んっ……」  
「う、わぁ……さっきより全然柔らかい……吸い付くみたいだ」  
「やぁ……やめっ、だめぇ……ひっ、んっ。……そん、なっ……ひぅっ、こりこり、しない、でぇ……」  
「でも、かな子? かな子のここ、さっきよりどんどん固くなってきてるよ? それとも気持ちよく無い?」  
「ひぁっ……ん、ふっ。んんっ……いじわる、です……」  
「かな子が可愛すぎるのが悪いと思うな」  
「ふふ……私のせいですか?」  
「ああ。かな子が可愛くて、こんなにも淫らで……。俺は、どんどんかな子に溺れていく」  
「ん……。……はい、おぼれて、ほしいです……プロデューサーさんに、もっと私に溺れてほしい……」  
「……かな子」  
 
 上にずらされた水着から胸が空気にさらされて、熱が籠もり始めていた胸が幾分かひんやりとする。  
 部屋の温度自体はそれほど冷えていないはずなのだが、雨で濡れた水着に包まれていたからか、その感覚の違いに胸の奥がじんっ、と疼いた。  
 それに合わせるように、熱すぎると思えるほどのプロデューサーの手が私の胸に柔らかく触れる。  
 それだけで、胸に熱が再び籠もってその先端が少しだけ疼いた。  
 ぶにゅん、と胸が少しだけ押しつぶされるように揉まれて、その指が軽く乳首をひっかく。  
 びくんっと身体が勝手に反応して、胸の奥から新しいこそばゆさが湧きだして、溢れていった。  
 こりっ、こりっ。  
 ぷっくりと私からでも分かるほどに固くなり始めていた乳首がプロデューサーの指で刺激されて、さらにこそばゆさが溢れ出る。  
 こりこり、と上下に刺激されて。  
 くりっ、と先端を押さえつけるように円に動かされて。  
 ぴんっ、と指先ではじかれるように刺激されて。  
 その度にびくんっ、と身体が奥底から震えて、胸の奥よりさらに奥、身体の奥底がじゅんっ、と熱を帯びる。  
   
「かな子……」  
「ぁ……」  
「その……こっちも、いいか?」  
「っ…………は、はい」  
「…………濡れてる、な」  
「ッ、そん、んっ、そんなことッ……いわなっ、ひぁっ、んんっ、やぁッ」  
 
 それを見透かされていたのか、つつっ、プロデューサーの指が肌を滑って下腹部を動く。  
 その指が水着−−下腹部にある女性の部分を覆う布に少しだけ触れると、彼が何を思っているのかが唐突に理解出来た。  
 もっと求められているという事実。  
 恐怖がある、羞恥がある、不安がある。  
 女という身において、人生の中でも一度きりしかないその瞬間−−破瓜はどうしたって怖い。  
 大好きなプロデューサーが相手でさえも。  
 けれど。  
 私のことを求めてくれているプロデューサーの真剣な眼差しが。  
 私のことを労ってくれて、無理そうなら、という顔をしたプロデューサーが、とても愛おしくて。  
 こくり、と私は頷いていた。  
 そして。  
 私の緊張が移ったのか、いつもからでは似合わないほどに顔を強ばらせたプロデューサーは、そっと水着越しに私の女性部分に触れた。  
 くちゅり、と水音がした。  
 
「ひ、ぅっ……ちょっ、ぷろ、でゅぅさぁさっ、んッ。胸と、両方は……ッ、だぁ、やぁっ、だめぇ……ッ」  
「かな、子……んっ。くちゅくちゅ言ってて、すごいいやらしいよ」  
「だめぇ、ですぅ……そんな、両方は……ッ。んくっ……ひぁっ……んんっ、ひゃぁ……」  
「腰もここもびくびくしてるよ、かな子……気持ちいいの?」  
「ひぅっ……んっ、はぁ……あんっ」  
「……俺も、気持ちよくしてほしいな」  
「ふぇ……ひゃうッ」  
 
 くちゅり、にちゅり、と自身の下腹部から聞こえる粘っこい水音に、何よりもまず羞恥が勝る。  
 プロデューサーに触られるまで気づくことは無かったが、その音の分だけ淫らに感じていたのだ、なんてことを言われているかのようだ。  
 それだけでも凄い恥ずかしいのに、水着の上から女性部分をなぞるように指を動かされて、ぴくんっ、と身体が震える度にさらに増える水音。  
 それがまた恥ずかしくて、赤くなった顔を見られたくなくて。  
 上に乗っかったままプロデューサーの肩に顔を隠すように身体を近づけると、くりっ、とした刺激が胸へともたらされる。  
 途端、びりっ、とした何かが身体を走り抜けて、喉をそらす。  
 じゅわっ、とこそばゆさが――確かな快感が身体の奥底から溢れだして、女性部分の水音をさらに粘っこくさせる。  
 胸とその先端と女性部分が、同時に刺激されていく。  
 もにゅん、むにゅ、と強弱つけて胸を揉みしだかれ。  
 くりくり、こりっ、と摘まんで擦ったり、先端のさらに先を指先でほじられたり。  
 女性部分から溢れ出る水音の元――愛液をすくい取るように水着の上からほじられて、水着をずらされて直に弄られて。  
 ぴくん、びくん、と身体が与えられる快感に震えて、さらなる快感を求めようと自然に身体が動いていくのが分かる。  
 もっと強くしてほしい、もっと奥までほしい、なんて淫らな本能が恥ずかしくて。  
 その事実から顔を背けようとしたら、ふいに腕をプロデューサーに取られる。  
 何だろう、と不安半分でそれに逆らわないでいると、不意に感じるとても熱い感触。  
 固くて、ごつごつしてて――そして、すごくどきりとする。  
 どきどきとしながら視線を動かせば、私の手にはプロデューサーの男性部分――肉棒が握らされていた。  
 
「えっ、そのっ、ぷろでゅーさーさんッ……」  
「……だめ、か……かな子?」  
「い、いえ、その……ほ、ほんき、ですか……?」  
「ああ。かな子にしてほしい」  
「んっ……ふぁ…………わかり、ました……んんっ」  
 
 ぴくんっ、と私の手に握らされている肉棒が少しだけ動く。  
 その根元に生えた毛が届かぬほどにそれは伸びていて、その先端はつるつるとした感じながらも、どこか醜悪な感じ。  
 赤いとも黒いとも言えそうな色のままに、私の手が力を入れたり抜いたりするだけでぴくぴくと動くその肉棒に、私はどきどきが止まらなかった。  
 はっきりと言って、女が肉棒を握ってからどうするのか、という知識を私は知っている。  
 私だって女の子で女子高生だ、そういうことに興味を持ったりもするし、誰彼と結ばれる時にと知識を求めたこともある。  
 真っ赤になって、同級生の子とそういう話をして、雑誌にあった特集をドキドキしながら読んでみて。  
 そうして得た知識の中で、肉棒を握ったここからどうすればいいか、なんて知識を知っていて、知らず唾を飲み込んだ。  
 ――おずおず、と手を上下に動かしてみる。  
 強くすれば痛い、ということは知識として知っていたため、本当に包むぐらいの力で。  
 ぴくんっ、と肉棒が揺れた。  
 上へ、下へ。  
 動かすたびにぴくんっ、ぴくんっ、と肉棒が揺れて、秘める熱がどんどん高まっていくように熱くなっていった。  
   
「んっ……かな子……」  
「んんっ、ふ、ぁあッ……きもち、気持ちいいですか……ひゃっ、ぷろでゅうさっ、んあっ」  
「ふっ、ああ……気持ちいいよ、かな子……ッ。もう少しっ、先の方もいいか?」  
「ふぁっ……ふぁい……。んんっ、ん、あッ……ひぅんっ、んぁッ……」  
 
 プロデューサーに言われるがままに肉棒を上下に擦るだけでなく、その先端のつるつるした部分も刺激していく。  
 ぐいっ、とプロデューサーに強く抱きかかえられたために、枕と布団と背もたれに背中を預けているプロデューサーの身体に私の身体は密着していた。  
 その熱い肉棒がプロデューサーが弄る私の女性部分の近くの肌に当たる。  
 とても熱い、その感触。  
 キスを交わして舌を絡ませあい、胸を揉まれて、乳首を刺激されて、女性部分を弄られながら、密着したままプロデューサーの肉棒を刺激していく。  
 何という背徳感、何という厭らしさ、何という淫らさ。  
 携帯電話の動画サイトでたまたま見たことのあるアダルトビデオのような絡み合いに、頭の中がぼうっとしていくとともに、身体の感覚が敏感になって、熱くなって、奥底から快感を生み出していく。  
 にちゅにちゅ、と私の愛液が生み出す水音に、プロデューサーの肉棒の先から少しずつ湧き上がる何かの水音が混じり合う。  
 熱い熱い感触が私のお腹に触れて、その先端の粘つく液――先走り液というらしい――が、半透明な橋を作った。  
 ぐりっ、と女性部分の入口から極僅かに入った部分にプロデューサーの指が少しだけ入れられて、びくりっ、と身体が震える。  
 その震えに合わせて乳首がプロデューサーのシャツを滑って刺激されてまた身体が震え、その震えがプロデューサーの肉棒に伝わって、びくびくっ、と脈動する。  
 その先端から溢れ出る先走り液がにちゃねちゃと厭らしく水音を奏で、私の手やお腹を濡らして、汚していく。  
 
「かな子……かな子……ッ」  
「ふわぁッ。んあっ、ぷろっ、ぷろでゅっさぁッ……はげしっ、はげし、いッ」  
「ぴくぴく動いてるぞ、かな子……気持ちいいのか?」  
「はっ、ふぁっ……はぅ、きもッ……きもちっ、いぅ……ッ」  
 
 ぴくんっ、ぴくんっ、と脈動するプロデューサーの肉棒が少しだけ震えると、にゅちゅんっ、と水音の後に女性部分に少しだけ違和感。  
 その水音に視線を動かしてみると、先ほどまで私の女性部分の入口を弄っていたプロデューサーの指が、完全に私の中に入っていた。  
 その事実にどきんっ、と胸が高鳴って、一気に身体が熱くなる。  
 それを見計らってか、ぐりゅんっ、と確かな異物が私の中を――膣の内部を動いた。  
 ぐりゅんっ、ぬぷぷ、にゅちゅんっ、にゅぷ、にちゅっ、にゅちゅにちゅっ。  
 内部と入口を広げるように円軌道で動いていく指に知らず身体が反応してびくんっと震えてしまう。  
 確かな異物感、違和感に身体が拒否しているのか、なんて思ったりもするが、少しだけ広げられた女性部分の入口からとろりとした愛液が止めどなく溢れてきて、羞恥でさらに身体が熱くなる。  
 私……気持ちよくなっちゃってるんだ……。  
 それまで――少しだけ自分でしたこともあったが――殆ど弄られることの無かった女性部分の内部が弄られる度に、無理矢理拡げられる少しばかりの痛みと感じたことのない快感が背筋を振るわせて  
 
いく。  
 溢れ出る愛液に合わせて指が少し抜かれ、ひくっ、と動く女性部分に合わせてまた少しだけ指が挿れられて、また愛液が零れ出す。  
 ちかっ、と視界に白いものが混ざる。  
 指を抜いて、挿れて、拡げるように動かされて。  
 一番敏感な部分を弄られているというのに、プロデューサーは胸は乳首を舐め上げて、首筋も舐めて、お尻を揉んで、絶え間ない快感を私に送り込んでくる。  
 ちかっちかっ、とまた視界が白くなっていく。  
 身体の奥底が震えて、お腹や胸の奥が自分でも分かるほどにビクビクと震えていく。  
 もう身体に力は入らずに、私はプロデューサーにもたれていた。  
 
「きゃうっ、なにっ、んぁっ、なにかッ、くる……ッ。ひぅ、ひゃぅんッ……ぷろ、でゅぅさッ」  
「入口も中もひくひくしてる……イきそうなのか、かな子?」  
「ふ、んんッ、やぁっ、ふぁ」  
「……」  
「きゃふぅんッ。やぁ、だめ、そこはぁ……んぁ、んくッ……んッ〜〜〜〜ッッッッぅぅ」  
 
 にゅるり、じゅるり、とキスを交わして舌を絡ませあい。  
 れろっ、ちゅるっ、と首筋に口づけを落とされて、舌で舐め上げられ。  
 むにゅん、もにっ、と胸を優しく、時には強く揉み上げられて。  
 くにゅん、こり、くにっ、と乳首を舐められ、指先で弄られ、しごかれ、弾かれて。  
 にちゅん、にぷ、にゅぷ、と女性部分の入口を弄られて、その中を指で穿られしごかれて。  
 女性部分の少しだけ上、乳首と同じように快感によって固くなっていた敏感な突起――クリトリスが、プロデューサーの指で押しつけられて、優しく指で刺激される。  
 それまでの快感とはまた別の、それこそ身体がふわりと浮き上がってしまったのではないかと錯覚するほどの強烈な刺激。  
 びくっ、びくんっ、ぴくんっ、ぴくっ、と身体が震えていくのに合わせて――クリトリスを弄られて身体と意識が浮き上がっていくのに合わせて、先ほどまでよりもっと強く視界と思考が白く染まっていく。  
 そして――。  
 プロデューサーに強く抱きしめられ、もう一つの手でクリトリスと女性部分の中を同時に刺激された私は、迫り来る快感に抗うことは出来ずに、絶頂を迎えていた……。  
 
◇◇◇  
 
◇◇◇  
 
「いまさらだけど……本当にいいのか?」  
「は、い……ぷろでゅーさーさんがいいんです。……ぷろでゅーさーさんが、ほしいんです……」  
「かな子…………ああ、分かった。……痛かったら言うんだぞ?」  
「はい…………んんッ」  
 
 そうして絶頂を迎えた私は、その波が通り過ぎるまでプロデューサーに強く抱きしめられながらその胸に身体を預けていた。  
 むにゅっ、と胸が押しつぶされて少しだけ息苦しいものがあったが、それすら、今は愛おしい感覚だった。  
 びくびくっ、と震えていた身体が少しずつ落ち着きを取り戻していき、意識が少しだけ定まった時。  
 かな子……、と。  
 愛おしそうに、慈しむように、求めるように私の名前を呼んでくれたプロデューサーにキスをして――そのまま、ぼふんっ、とベッドに押し倒された。  
 あ……さっきまでとは逆だ……。  
 なんて快感の抜けきってない思考で考えていると、かちゃかちゃ、と何かの金属の音。  
 少しだけ視線を動かせばそこに見えたのはさっきよりも隆々としていたプロデューサーの肉棒だった。  
 どきんっ、と胸が一つ高鳴る。  
 プロデューサーの優しい言葉とは裏腹に、その肉棒は酷く凶器的で、指こそ受け入れることが出来たが、本当にあれが入るのかどうかが怪しく思えてくる。  
 それでも。  
 にちゅっ、とその先端が私の女性部分に宛がわれると、粘つく水音と共に、ひくんっ、と蠢く自分の身体の奥に、自然と声が漏れて腰が浮いたまま喉を仰け反らせる。  
 ぐぬっ、と。  
 そんな私の動きに合わせて、プロデューサーが腰を少しだけ押し入れて、その肉棒を少しだけ女性部分に入れてくる。  
 
「いっ……たい、です……」  
「まだ全然入ってないよ、かな子……やっぱり止めておくか?」  
「いや、です……抱いて、下さい……。私のことが綺麗なんだって、可愛いんだって……好きなんだって、証明して、ください……」  
「……分かった……一気にいくぞ、かな子。…………怖かったら、俺にしがみついとけ」  
「はい…………んぁ……んくっ…………つつああぁぁぁぁぁぁッッッ」  
 
 本当に少しだけ、それだけのはずなのにとっても痛い。  
 さっきまでの指とは違う、力任せに無理矢理押し広げてくるような痛みが、ずきんっ、と女性部分から腰を巡って意識へと送られてくる。  
 本当にこんなものが入るのだろうか、痛みを我慢出来るだろうか、なんて不安に自然と涙が零れてくる。  
 それを指でぬぐい取って、唇でぬぐい取って、私よりも不安そうなプロデューサーが不安な言葉を口にした。  
 綺麗、可愛いを証明して欲しい、なんてそんな言い訳はもういらないのに。  
 大好きなプロデューサーに抱きしめて欲しくて、抱いて欲しくて、私のことが好きなんだって証明して欲しくて。  
 ただそれだけなのに、それだけを言葉に出すのは何だか恥ずかしくて。  
 ぽろり、ぽろり、と零れる涙を舐め取ったプロデューサーは、少しだけ覚悟をした肉棒を宛がったまま私を抱きしめてくる。  
 怖い、不安、その感情のままに私はプロデューサーの背中に腕を回して必死で抱きついた。  
 温かい身体、大きい背中。  
 それにほっと安堵して――ずぶんっ、と身体を引き裂くような感覚と実際に引き裂かれた痛みに、私は声を上げてプロデューサーに爪を立てていた。  
 
「う……ううぅ……」  
「だ、大丈夫か、かな子?」  
「だいじょばないです……けど……とーっても、うれしいです、ぷろでゅーさーさん。わたし、しあわせです……」  
「かな子……」  
「いたいですけど、うごいてください……もっと、ぷろでゅーさーさんをかんじさせて下さい」  
「……痛かったら我慢せずに言うんだぞ?」  
「ふふ……はい。……ふっ……はっ……あっ」  
 
 ぽろり、ぽろり、とまた涙が零れていく。  
 けど、さっきまでの不安のものとは違う、これは嬉し涙。  
 大好きなプロデューサーと繋がりあえたこと、とーっても大好きなプロデューサーに好きだって証明してもらえたことへの、嬉し涙。  
 凄く痛いけど、それよりも大きな幸せと嬉しいという感情に、私は大きなプロデューサーの背中を抱き寄せる。  
 ひくんっ、と私の中でプロデューサーの肉棒が一度蠢き、ひくんっひくんっ、と二度三度と動いていく。  
 ……気持ちいいって、感じてくれてるんだ。  
 そんな感情がふと顔を覗かせて、もっと気持ちよくなって欲しいだなんて思って、涙が少し流れるままににこりと笑う私。  
 ちゅっ、と涙の後にキスを落としたプロデューサーは、少しだけ――少しずつ、身体を動かし始めた。  
 
「ひっ……んっ……ふっ……ふぁ……」  
「かな子の中……凄いきつい……。ぎちぎち締め付けてくる……」  
「んんっ……ふ、ぁ……おく、ひぅっ……ふかいぃ……あっ、んっ……」  
「奥がいいのか、かな子? ひくひくしてきてるけど……」  
「ふっ……んぁっ……わかん、ないっ、です……っ。すこし……ちがうかんじは……あっ……します、けど……ひぁっ」  
「じゃあ、少しずつ奥でするぞ……きつかったら言えよ」  
「はっ……い……ッ。ふッ、んぁ……ひぅ……んッ、ふわッ……ひゃっ、う……ッ」  
 
 ずちずち、と肉棒が引き抜かれていき。  
 ぬちぬち、と挿れられていく。  
 押し広げていくような異物感と、身体の奥底から何かを引っ張り出そうとするような喪失感。  
 引きちぎられた処女膜に肉棒が当たって鋭い痛みを全身に走らせ、その痛みに眉を顰めるたびに零れる涙を、プロデューサーはぺろりと舐め取っていく。  
 まるで動物のように、ぺろりぺろり、と愛情を表現するかのように、涙を舐め取っていく。  
 それが何だか嬉しくて、幸せで、温かくて。  
 だからだろう。  
 引いて、挿れて、引いて、挿れて。  
 その動きを繰り返していたプロデューサーの肉棒がごりっ、と私の身体の最奥――膣の奥にある子宮を叩いた時、ふと身体が熱を発した気がした。  
 
「はぁ、んぁっ……ひぁっ……ひゃっ、ふぁっ……んっ」  
「かな子の中……少しずつ、動きやすくなってきた……。やっぱり奥が気持ちいいのか?」  
「わかっ、りッ……つぁっ、ませ……ッ。けど……っ、じんじっ、んッ……してきて、あつく……んッ……なって、きて……ッ、ひぅッ」  
「抜くときにひくひくしてるし、挿れる時には動いてくるし……やばい……気持ち良すぎる……」  
「んあぁッ……おくで、ぐりぐりっ、しない、でぇ……っ。ひっ、うっ……ひゃんっ、はっ、はやッ……はげしッ」  
 
 じゅん、と。  
 膣の奥の子宮を肉棒で叩かれて、熱とは違う何かが私の中から零れ出す。  
 にちにち、ぬちち。  
 肉の音が僅かばかりに耳に届く中、その零れた何かによって、その音に水音が混じり出すのを、私は確かに認識していた。  
 にちゅにちゅ、にゅちにゅち、ぬちゅぬちゅ、ぐちゅぐちゅ、にゅりゅぬちゅ、ぐぷぐにゅ。  
 子宮をこつんと叩かれる度に零れ出す何か――愛液は、いつしか膣の中を出し入れされる肉棒の動きを補助するほどに溢れ出していて。  
 子宮の更に入口に宛がわれた肉棒でぐりぐりとそれが押し広げられようとすると、鈍くて、重くて、甘い快感がずっしりと身体へと堕ちてくる。  
 びりびりっ、と静電気や電流にも似た快感が背筋を走って、知らず喉を仰け反らせようとする。  
 その喉にプロデューサーが甘く噛み付いて、唇や舌で味わって。  
 びくんっ、と私の身体が震えるたびに、プロデューサーの腰の動きが早くなっていく。  
 
「んきゃぅッ、はげっ、はげしっ、いッ、ぷろッ、でゅぅさっ、んあっ、やぁ、やぁッ」  
「すまん、かな子ッ……けど、我慢出来そうにない……ッ」  
「ひぅッ、おくッ、つぁッ、おくっ、ふかッ、いぃッ、ひゃぅっ、んくっ、びりってッ、きちゃっ、ひぁっ、きちゃう、んぁっ」  
「かな子……かな子……ッ」  
「んっ……んんっ。ぷろでゅっ、さぁッ、ぷろでゅっさぁっ、だいっ、すきッ、だいすきっ」  
「かな子……俺も……俺もかな子のこと、大好きだ……ッ」  
「きゃんッ、ひぁっ、はぁんっ、あっ、はっ、はぅッ、く、るっ、ひんっ、ぅぁっ、ひッ〜〜〜〜〜んんんんッッッ」  
 
 破れた処女膜は未だ痛みを与えてくるが、それよりもなによりも、子宮が突かれて愛液が溢れ出し、その愛液でぬめりの良くなった膣はそれ以上の快感を私に与えてくる。  
 じゅぷんっ、にちゅんっ、にゅちゃっ、ぐぷっ、ぬぷっ、ぱちゅっ、ずちゅっ、ずじゅっ、ずにゅっ。  
 膣を押し広げるように腰を動かしてくるプロデューサーが、子宮を突きながら私にキスをして舌を絡ませてくる。  
 舌を絡ませ合って流れ込んできた唾液を飲み込んで。  
 息も忘れるほどに求め合うと、酸欠からかぼうっとしてくる意識なのに、快感だけは重く深く、私を浸食していく。  
 ちかちか、と視界と意識が白く染まりだし、ひくひくっ、と腰と膣が震えて、びくりっ、と身体が反応する。  
 ごりゅっ、ごりっ、こつんっ、ごつんっ。  
 子宮を絶え間なく刺激され、膣の壁を抉るように肉棒が動かされ、その動きが早くなっていくとびくんっびくんっ、と大きく脈動しはじめるプロデューサーの肉棒。  
 びくんっ、と脈動し、ひくひくっ、と何かを我慢するかのような震えに、女として、雌として、つい身体が反応してびくりっ、と大きく震えてしまう。  
 そして。  
 ただただ深く、早く、強く私を求めるプロデューサーがただ愛おしくて、もっと私も感じたいと思って。  
 その首に腕を回して深く抱きついて、その腰に脚を絡ませて深く繋がって。  
 ずんっ、と一際大きく子宮を叩かれた時、その肉棒に続いて熱くて重い塊が私の子宮へ吐き出されると、その熱によって私は再び絶頂に達していた。  
 ごびゅり、どびゅり、と二度三度、さらに多く肉棒が脈動して私の中に熱を放っていた。  
 
◇◇◇  
 
◇◇◇  
 
「ふっ、あっ、ひぁっ、ふぅ、んっ、きゃっ、ぅんッ、ふかっ、これっ、ふか、いッ」  
 
 二度目の絶頂を迎え、重くて熱い塊――精液を中に放たれた私は、その余韻と熱の心地よさによって少しばかり脱力していた。  
 自分で致した時とは違う、余りにも多くの体力を必要とする行為の疲れもあっただろうが、なにより、大好きなプロデューサーと心も体も繋がれたことが大きかった。  
 幸せ、幸福、安心。  
 そういった色々な温かい感情のままに、私は抱きついたまま、その胸板に頬を寄せていた。  
 だからだろう。  
 ぐいっ、と腰の辺りに感触がして唐突に身体を引き起こされたことに対応出来なかったのは。  
 未だ固いままだったプロデューサーの肉棒によって繋がったまま身体を引き起こされた私は、いつのまにかベッドに寝そべったプロデューサーの上に跨る形となっていた。  
 騎乗位、というらしい。  
 上から見下ろされるのも中々に恥ずかしかったが、下から見上げられるのも結構に恥ずかしい。  
 そう思っていると、ずりゅんっ、と下から突き上げられる感覚。  
 ずにゅちゅ、ずじゅん、ぐじゅぷ、じゅぐちゅっ。  
 一度中に放たれた精液がまだ塊のまま膣の中に残っているというのに、プロデューサーの腰の動きに合わせて肉棒が上下に出し入れされると、その熱が子宮へと届いて再び快感を呼び起こす。  
 ずちゅ、ぬじゅ、ぐじゅ、ぐちゅ、にゅぷ、ぐぷ。  
 歌のリズムを取るみたいにリズミカルに、小刻みに上下運動を繰り返されて、こつこつっ、こつこつッ、と子宮が何度も何度も軽く叩かれていく。  
 その度にぴくんっ、びくんっ、と身体が反応して、ついつい、先ほどまでと同じようなもっと強い刺激が欲しいと腰が勝手に動いてしまう。  
 プロデューサーの腰の辺りに手を置いて、自分の腰を上げて落とす。  
 小刻みな動きに合わせればもっと深く強く繋がれる筈、なんて思った末のことであったが、一つの誤算はプロデューサーの動きが読めなかったことだろう。  
 本能的につい動かしてしまった私の腰が下へと落とされる瞬間、プロデューサーはそれまでの腰の動きを変えて、思いっきり突き上げてきたのだ。  
 ごりゅんっ、と身体の奥が爆ぜた。  
 
「きゃふんッ、やっ、やぁッ、ぷろっ、こ、れっ、おくがっ、ふかっ、ふかいぃッ」  
「かな子……もっと腰動かして……。上下だけじゃなく、前後とか……ッ」  
「ふわぁッ、なにっ、これッ、さっきよりっ、くるッ、きもちッ、いっ」  
「ぷるんぷるんって揺れるかな子の胸、凄い綺麗で厭らしい……」  
「ひゃっ、ぷろでゅぅさのてッ、あたたかッ、くてっ、やさしっ、く、てっ、ひんっ、もっと、んあっ」  
 
 ちかちか、と意識に光が混ざり始める。  
 絶頂を向かえたさっきまでとは違う、本当に意識がどこかへ行ってしまうんじゃないかと思えるほどの快感に、ふと不安になって、これ以上気持ちよくなっちゃだめだと理性が呼びかけてくる。  
 プロデューサーから離れるつもりはないが、離れなくなってしまう、甘く甘いままに堕ちていってしまう、戻れなくなってしまう、と理性が本能を押し止めようとする。  
 けれど。  
 下から突き上げられる肉棒から逃れようと腰を前後に逸らしてみても、熱くて固いプロデューサーの肉棒は膣の壁を抉りながら子宮を叩いてくる。  
 その度に意識が光に染まっていき、胸を弄って乳首を刺激するプロデューサーの温かい手にそれを戻される。  
 快感と、理性と、本能と、恐怖と、愛しさと、切なさと。  
 与えられる快感に思考が上手く定まらない。  
 突き上げられる勢いで口から涎が零れて厭らしく私の胸にねっとりと落ちては緩やかな甘い刺激を堕としていき。  
 快感からくる恐怖に零れた涙は頬を伝ってプロデューサーの腰に落ちて、私の愛液とプロデューサーの精液が混じった何かしらにさらに混ざり合って二人の間に粘液の橋を作り出す。  
 
「やぁ、ちくび、くりくりしちゃぁ、らめぇ、んあっ、ひんッ、つまんじゃっ、ふあっ、なでな、いでぇッ」  
「乳首もクリトリスもひくひくしてるよ、かな子……。俺で気持ちよくなってくれてるのか?」  
「ひゃんっ、きもひいいッ、んんっ、あっ、あぅんッ。ぷろでゅぅささんッ、きもちいいのっ、ひぅ、ッ、んくっ」  
 
 じゅちゃ、ぬちゃ、ずちゃ、ぐちゃ。  
 ぬぷっ、ぐぷっ、にぷっ、にゅぷっ。  
 上下に突き上げられて、前後に中を引っ張られて、その度にごりりっ、と膣を抉っていく肉棒に三度視界が光に染まっていく。  
 一度目と二度目とは違う、本当にプロデューサーに堕ちてしまいそうな程に甘美で淫靡で卑猥な快感。  
 ちりっ、と頭の奥底が焼け付くような音を立てて、電球が切れる直前のように視界がどんどん明るく、白く、光に染まっていく。  
 離れられなくなる、離れたくない、堕ちてしまいそうになる、堕ちてしまいたい。  
 相反する感情が意識の中に浮かんでは消えていくが、ずんっ、と子宮を叩かれる度に快感が全てを染め直していく。  
   
「うひゃんっ、んあっ、ひぅっ、んくっ、やっ、やぁッ」  
「かな子……俺……ッ」  
「わたっ、わたひもッ、ぷろでゅッ、さっ、っあッ、にゃぁっ、ひっ、くぅッ」  
「かな子……かな子……ッ…………かな子ぉぉッッ」  
「んきゃぅッ、ひぁっ、んふっ、きひゃっ、きひゃぅッ、いぁっ、やぁっ、ふぁ、ふぁぁっ、ひんっ〜〜〜〜〜〜くくぁぁぁぁぁッッッ」  
 
 快感、甘い甘いお菓子のような快感。  
 感情、甘い甘いお菓子のような好き、大好きという感情。  
 食べ始めたら止まらない、なんて言うけれど、求め始めたら止まらない、気付いてしまったら止まらないのはその二つも同じ。  
 きっと止められない、きっと止めることなんてない。  
 そんな感情を二つぐるぐると胸の内で感じながら、ぐりゅんっぐりゅんっ、と肉棒によって抉られる膣が意識を根こそぎ白く染めていく。  
 止められないなんて考えるけど、止まらないなんて考えるけど……今だけは、プロデューサーと一緒にこの快感を深く味わいたい。  
 ぐちゅんっ、ぐぷんっ。  
 腰を動かして肉棒を迎え入れて、腰を落として肉棒を奥まで誘い入れて、手をプロデューサーの腰で支えにして勢いよく肉棒に腰を打ち付けて。  
 ちかちか、きらり。  
 快感と刺激と感情がどろどろに混ざり合って、私とプロデューサーの体液みたいに溶け合って。  
 ぞくぞく、と身体の奥底と背筋が震えだして、それが全身に広がっていって。  
 三度目ということもあってか、絶頂が来る、なんて無意識で身構えていると、その私の感情の動きに反応してか、きゅうっ、と自分でも分かるほどにプロデューサーの肉棒を締め付ける。  
 そんなもんだから、ぐりゅんっ、と肉棒に密着してこれまでよりももっと深く甘い快感が背筋を通って、ぶるぶると膣が震えるのが分かる。  
 あっ……イっちゃう……。  
 理性と本能の向こうでそれを冷静に判断して、その私の膣の動きに中に入っている肉棒がびくんっびくんっ、と一際大きく脈動するのが感じられて。  
 ごりっ、と子宮の入口がこじ開けられるのではないかと思えるほどに叩き付けられた肉棒と、そこから子宮の奥深く目掛けて放たれた熱くて固くて重い精液の熱が全身を駆け抜けて――。  
 ――私は、あまりの衝撃と快感に意識を失っていた。  
 
◇◇◇  
 
◇◇◇  
 
「いいわよーかな子ちゃん。ほら、もっと笑って笑って」  
「ふふ……はーい」  
「いいわねー、そのリラックスした笑顔。おじさん、取って食べちゃいそう」  
「うふふ……もう、ダメですよ、そんなことばっかり言っちゃ」  
 
 ぱしゃ、ぱしゃ。  
 少しだけ乾いた音――シャッター音が耳に届く中、私は照りつける太陽の下で自然と笑みを浮かべていた。  
 あの後――プロデューサーさんと結ばれた後。  
 意識を失うように眠りについた私は、次の朝に起きることは出来たものの、それまでの心労と雨に打たれたこと――あと、初めて、その、せ、性交渉ーーーもあってか、丸一日動くことが出来なかった。  
 雨に打たれて体調を崩したみたい。  
 そういう理由でカメラマンさんやスタッフさんに無理を言って一日延ばして貰ったから、とプロデューサーが伝えてきたときには申し訳無い気持ちで一杯だった。  
 一応はプロのアイドルなのに、なんて悔しんでみても、俺も悪かったよ、なんて頭を撫でてくれるプロデューサーに少しだけ安心感。  
 結ばれた、という事実があっても、それでもいきなり変わらないその安心感に、私はほっとしたのだ。  
 …………まあ、その安心感に浸ってしまって、交わった記憶やら感触やらを思い出して再び求めあったのは、本当にプロとしてどうだろうか、なんて思ってしまったが。  
 昨日の含めて6回戦だな、なんて笑うプロデューサーを見て、男の人は体力が多くてずるい、なんて思ってしまった。  
 それを思い出して、くすり、と笑う。  
 
「おっ、いいわねいいわねー、その笑顔。んもう、おじさんキュンと来ちゃう」  
「えへへ……ありがとうございます」  
「その照れた感じの顔もいいわねえ。純真な感じだけじゃなくて甘い感じも出てて好きよ、かな子ちゃんの笑顔」  
 
 一体何があったのかしらねぇ、なんて意味深に笑うカメラマンにドキリ、と胸が鳴る。  
 ぎくり、と背筋を振るわせたプロデューサーが視界に入って、それが何だか面白可笑しくて、また一つ、くすりと笑った。  
 
「ほんと、何があったのかしらねぇー? 少しだけ色っぽいわよ、今のかな子ちゃん」  
「ぅぇ? ほ、本当ですか? そう言って貰えると何だか嬉しいです」  
「あら、それだけ? 慌てる写真を撮りたかったのに、それだと面白みがないわねえ」  
「そんなこと言われたってー……」  
「ふふ、冗談よ」  
 
 むすー、と膨れた顔を一枚ぱしゃ。  
 以前までなら――プロデューサーに私のことを証明してもらう前ならば、きっとグラビア撮影でもこんな表情は出来なかった。  
 他にも可愛くて綺麗なアイドルがいる中でなんで私が、なんて撮影初日に思っていたのを思い出して、また笑う。  
 ぱしゃり、とまた一枚。  
 けれど、そんな私をプロデューサーは認めてくれて、好きだと言ってくれて、可愛いと言ってくれて、綺麗だと言ってくれた。  
 そして、それを証明もしてくれた。  
 そう、少しも卑屈になる必要なんて無いんだって、教えてくれた。  
 イチゴがたくさんのったショートケーキになれたかな、私……?  
 なんて、デビューCDの歌詞を思い出して、少しだけくすり。  
 
「かな子ちゃん、さっきからニヤニヤばっかりしてるわよ。やっぱり何かいいことでもあったでしょ」  
「えへへー、んふふー……秘密、です」  
「いやーん、おじさんだけ仲間外れは酷いわよー……まあいいわ、一旦休憩にしましょ。この分なら次で終わるでしょうから、一気に行くわよ。覚悟しておいてね」  
「はい!」  
 
 休憩。  
 その一言で私は一気に駆け出した。  
 勿論目標は決まっている。  
 げっ、て顔した誰かさんに向かって、砂に足を取られながらも一気に駆け抜けて――。  
 ――私は、プロデューサー目掛けて飛び込んだ。  
 
   
(甘いお菓子ようなこの感情、あなたは受け止めてくれる?)  
 

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