この事務所、わけがわからない構造になっている。
どこからどう見ても普通に見るとビルの一室にしか見えないのだが、中は恐ろしいことに、100人が入れるスペースがあるのだ。
どうやら、この事務所の扉は異次元へつながっているようだ。だが、常時は75人に中にいる人数が制限されている。
これは明確な理由は語られたことはないが、異次元への接続が不安定になり事務所が時空のかなたをさまよう可能性があるからだろう。
今後の拡張しだいでは、このスペースが巨大化する可能性もあるが、おそらくは2ヶ月は無理だろう。
だが、いつの間に部屋の数が増えていたりしているので異次元説はほぼ確定だろう。
とりあえず、俺のために個室を準備してくれたのは助かるのだが(女性の着替えはさすがに見ちゃまずいだろ)、
その個室が無駄に広いのは勘弁してくれ。だいたいここで寝泊りするにしても明らかに過剰設備である。
これだけあれば4人家族住めるぞ。…ってもしやとは思うが、社長、それを狙ってるのか?
「社長、これだけ広い部屋には何かわけでもあるんでしょうか」
「ああ、あるとも。何らかの過ちが発生しても収拾がつくようにね」
「…いやな予感しかしませんが」
「過ちを犯さぬようがんばってくれたまえ」
だいたい、性欲をアイドルに持つようならそもそもプロデューサーなんてつとまらない。
一番怖いのが、アイドルから迫ってくることだったわけで、そうなると俺はそんなに力強くないから、
9歳の女の子にも押し倒されかねない。そうなったら一巻の終わりである。
だから、いっせいに70人のアイドルが全員自分を包囲したときは硬直して気を失ってしまった。
そして病院へ運ばれ、数週間後に意識を取り戻したときには、アイドルのうち20人ほどが身ごもっていた。
まあ、ほぼ確実に俺が父親だろうな。社長が父親ということもありえるが。誕生後とっとと遺伝子検査をさせた。
案の定自分が父親だった。気づかぬうちに自分が多数の女と性的関係を持った、ということが確定して呆然とした。
それが、俺の最後の記憶だった…。
「やれやれ、このプロデューサー、ショックで死んでしまいましたね。次のプロデューサーを探さないといけません」