アイドル:渋谷凜
シチュエーション:純愛、浴衣、温泉、
「――大好き」
さあさあ、と風で木々が揺れる。
綺麗な紅葉が風で宙を舞い、ひらりひらりと視界を――世界を覆っていく。
静、と。
静かに静まりかえった空気は雪が降るのでは無いかと思えるほどに冷え込んでいて、口にした言葉と相まって、私の身体は震えていた。
「……大好き、なの」
ひゅう、と風が僅かばかりにスカートを巻き込んでいく。
ぶるり、と身体を震わせて、私は正面に立つ制服姿の少年を見た。
私より頭一つぐらい大きく、無造作に跳ねた髪はその性格を表すかのようである。
髪に隠れるように、いつもは無邪気な笑みで彩られる顔は、今は私の言葉を受けてか驚きによって染められていた。
驚いて、考えて、恥ずかしがって――そして、無邪気な笑みで彩られる。
そして、少年の口から言葉が発せられる。
「……俺も」
一際強く吹く風が、紅葉を飛ばして世界を朱に染めていく。
恥ずかしさで顔を真っ赤にする私も。
無邪気な笑みの中に恥ずかしさを隠して顔を赤くする少年も。
二人の間で交わされる、赤く染まりそうなほどに真っ直ぐな言葉も。
何もかもが。
そうして。
「俺も、お前のことが好きだ。大好きだ」
少年の口から次なる言葉が放たれるのを待ち構えていたかのように――。
「……はいっ、カットッ」
――かちこんっ、という音と共に。
老齢なる男性――映画監督の声が周囲に響いた。
◇◇◇
「よっ、お疲れ」
「プロデューサー」
「寒かっただろ。ほら、ココア入れておいたぞ」
「ん……ありがと」
ざわざわと賑わいだした周囲をよそに、私――渋谷凜は用意されている椅子にと腰掛ける。
椅子においてあった誰かしらの見覚えのある防寒着を着込んで座れば、へらっとした――台本に書かれていた無邪気な笑みの少年とは似ても似つかない、笑みをもって、プロデューサーがカップを手渡してきた。
甘い、チョコレートの香り。
ココアに少しだけチョコレートを溶かしたプロデューサー特製ココア――ホットチョコレートとも言う――の香りを少しだけ楽しんで、私はそれを口にする。
ほんわか、と甘い味と香りが口の中と鼻腔に広がった。
「いやはや、それにしても、いよいよ撮影もクライマックスだな」
「……普通さ、映画の撮影って場所ごとに必要な部分を録って、最後にそれを編集するんじゃないの?」
「まあ普通はそうらしいんだけどさ。この監督さんはシナリオの流れ通りに録って初めて魂が入る、ってのが持論の人でな」
「ふーん……まあ、分かる気がする。それに、私、こういうの嫌いじゃないよ」
ココアを口にしながらきょろ、と周りを見渡せば、私以外の役者さんやスタッフさんが、今日の撮影は終わりとばかりに撤収作業を開始していた。
――渋谷凜、映画デビュー。
その仕事が決まったのは、初めてのCDが発売されて、2枚目のCDも発売されて、順調な売り出しに3枚目を売り出すためにどんな曲にしようか、その話をしていた時だった。
初めは、プロデューサーが何を言っているのか分からなかった。
はっきりと言って、あの時のプロデューサーも自分の言っていることが分からなかっただろうに思う。
アイドルとしてはまだ駆け出しで、順調とはいえそこまで売れている訳でもないCDを出している私に、映画のオファーがあったというのだ。
それも、聞いたことのある監督が作る作品――その主演だと言う。
まさか有り得ない、有り得たとしても同姓同名の別人だろう、主演とか言うけど端役かもしれない。
そんな色々な不安をプロデューサーと分け合いながら、それでも迎えたクランクインで、私はあの時のプロデューサーの言葉が真であったことを知った。
というか、目の前で見たことのある監督が主演よろしく、なんて言うものだから、信じる他無かった
そんなこんなで撮影のクランクインから、早2ヶ月が経とうとしていた。
撮影が開始されたのは夏場を過ぎた頃からだが、映画の内容が男子高生と夏休み明けから転校してきた女子高生の恋愛ものだったから、幾分か素直に撮影は過ぎていった。
むしろ、夏場から秋、冬口にかけての撮影はそれを踏まえてのことだったらしく、こうして、紅葉が散る中で最後の撮影を進めているというのは、ベテランな監督らしく、段取りが良いものだ。
「それで、プロデューサー? この後の仕事は?」
「ん、ああ、ちょっと待てよ……ええっと、今日は……何にも無し、だな」
「……何も?」
「何も」
「……営業努力が足りてないんじゃない?」
「む、失礼な。制作側から最終日とその前日は何が入るから分からんから明けておいてくれ、って頼まれたんだよ」
「急な撮影、的な?」
「多分そうだと思う。シーンの取り直しとか、色々とあるって話だしな」
「ふーん……」
CDのプロモーションビデオに惚れた、なんて初顔合わせの開口一番で言い放った監督の顔を思い描いて、ああ、あの顔ならいきなり撮影を入れそうな気がする、と一人納得。
失礼なことを考えてるだろ、とプロデューサーに、そんなことないよ、と私。
ぴゅう、と一際強い風に身を震わせつつ、私は椅子から身を起こす。
「今日はもう何にも無いんでしょ? だったら旅館に帰ろうよ、プロデューサー」
「ん……まあ、そうだな」
「あと、寒いから早く温泉に入りたい」
「がくっ……なんとまあ年寄り臭い」
「……別にいいじゃん。気持ちいいんだし」
「まあ、それには否定しない」
明日は最終日だからな、ちゃんと鋭気を養っておけよ。
はい、お疲れ様でした、お先に失礼します。
失礼します。
監督やスタッフと色々挨拶をして、私とプロデューサーは車にと乗り込む。
白い、アウトドアなんかに似合いそうな車だな、と初めて見た時には思ったものだが、確かに、こういう紅葉が舞い散る中では実に良く白が映えていた。
――ただまあ、紅葉が積もり重なって少々不格好なのはしょうがない。
ばたんっ、きゅるる、ぶろろろ。
手慣れた手つきでプロデューサーが車を動かすと、助手席の窓から見える紅葉がどんどんと遠ざかっていく。
ひらりひらり、と舞う紅葉が後ろへと流れていくのに視線を流して、私は瞳を瞑った。
◇◇◇
「〜〜っくはぁぁッ。仕事の後はビールが美味いッ」
「それ麦茶じゃん」
「分かってるよ、言ってみただけだ」
「仕事が終わったとはいえ、明日もまだあるんだから。呑んじゃ駄目だよ?」
「分かってるって」
今日の分の撮影が終わった頃は夕暮れだった空も、旅館にたどり着けば黒と蒼と朱が混じり合ったような紫だった。
思ったよりも撮影の時間が長かったらしく、疲労よりも先に空腹が目立つ。
プロデューサーと意見が一致した私は、温泉よりも先に夕食を取ることにした。
「あー、今日でこの飯ともお別れかー」
「美味しかったよね、ここの料理」
「そうだろそうだろ。撮影現場の近くで飯も美味くて温泉もあって、な旅館はここしか無かったんだ。いやー、凜に喜んでもらえて良かったよ」
「そういえば、以前にも来たことあったって言ってたね」
「学生のころに少し、な。他にも近場の温泉なんかも知ってるぞ」
「……おじさん臭い」
「んなッ。俺はまだ25だ」
近くに流れる綺麗な川でとれた鮎の塩焼きに、新鮮な魚介を用いた刺身に天ぷら、山の幸などがふんだんに盛り込まれた食事は、プロデューサーならまだしも、私には少々多い。
少々多いのだが、プロデューサーの言うとおりに美味しいものだからついつい食べ過ぎてしまい、結局は温泉に長く入って汗を流すのだ。
それにしても、学生のころ、と懐かしむようなプロデューサーの視線は何だかおじさん臭い。
お父さんが若い頃は、とか、お母さんのお父さんと付き合いたての頃はね、といった時に似ている気がする。
――何だかずるい、と私はいつものように思う。
生まれるより前とか、出会う前のことを思いだされても、そこに私はいないのだ。
何だか一人置いてけぼりをくったようで、寂しいと思うと同時に、ずるいと思った。
「ぷはっ、食べた食べた。ご馳走様でした」
「ご馳走様でした……やっぱり、ちょっと多いね」
「なんだ、食べ過ぎたのか?」
「……だって、美味しいんだもん」
「そうだな」
にこやかに笑うプロデューサーに、やっぱりずるい、と睨み。
男の人は一杯食べても問題無いのだろうが、私は女、それも女子高生で、アイドルなのだ、日々体重計の数字と戦う戦士なのだ。
なんて思考に、プロデューサーが辿り着くはずも無く。
ずずず、なんて音を立てながら食後のお茶をすする姿は、やっぱりおじさんみたい。
「……なんか失礼なこと考えてないか?」
「さあ、気のせいじゃない?」
「む……まあ、いいか。さて、そろそろ風呂にでも行くか?」
「んー……そうだね。ふふ……一緒に入る、プロデューサー?」
「んぐッ?! げほっ、ごほっ……お前なぁ……女子高生の言う言葉じゃないだろ、それ」
「別にいいじゃん。プロデューサーのこと好きなのは変わらないんだし……それと、そう言うとやっぱりおじさん臭いよ、プロデューサー」
ほっとけ、と苦笑いするプロデューサーが立ってお風呂の荷物を取り出すのに合わせて、私も自分のカバンからそれを取り出す。
下着――初日と最終日用にと持ってきている新品――をタオルに包んで袋に入れたものと、備え付きの浴衣。
バスタオル、簡単な化粧水、その他女の子の諸々を持った私は、部屋の入り口付近で待っていたプロデューサーの横に並ぶ。
「……それにしても、お前も中々に曲げないのね」
「プロデューサーが好きってこと?」
「……しかも、平気で恥ずかしいことを言うやつだとは思わなかったよ」
「そう? 女子高生なんてこんなもんじゃない?」
「俺の中で女子高生という概念が今崩れ去った」
「それは良かった」
「どういう意味だ」
「これでプロデューサーの中で、女子高生は私が基準になるんだね」
「……」
ぺったん、ぺったん。
人気のない静かな廊下に、私とプロデューサーのスリッパの音。
私の言葉にプロデューサーの沈黙が返ってくるが、私はこの沈黙が嫌いじゃない。
私の言葉を受けて、プロデューサーが悩んだり考えたり思案したり、どんな言葉を返すべきなのかと私のことを考えてくれている証、なんて恋する乙女の妄想。
男性モデルの人より体格も顔も優れている訳ではなく。
男性の役者より言葉が立つ訳でもなく。
ファンの人達ほど優しい訳でもなく。
最高に優れている男性ではないけれど、私にとってたった一人の男性(ひと)。
私の言葉を真摯に真剣に真面目に考えてくれて。
無愛想な私に根気強く向き合ってくれて。
私の気持ちに応えてはくれないけれど、それでも私のプロデュースを止めて離れようとはしない、優しい人。
そんな大好きなプロデューサーの横を歩きながら、私は頬がにやけそうになるのを必死で我慢する。
「んと……それじゃあ、俺はこっちだからな」
「うん。……なんだ、とうとう部屋付きのお風呂には一緒に入らなかったね」
「何でそんなに残念そうに……いや、聞かないでおくか」
「聞かないの?」
「聞かない」
「けち」
「何でだよ」
けれど、と思う。
私がプロデューサーのことを好きだと自覚して、その想いを言葉にして伝えて、もうそれなりの時間が立つ。
デビューCDを出した後の話だったから、すでに数か月ぐらいになるのだが、プロデューサーが私の想いに応えてくれる気配はない。
嫌いではない、と答えてはくれたが、それでも、それがイコール好きだと自惚れるほど子供じゃない。
――けれど、私だって女の子だ、不安にだってなりはする。
そんな私の想いに気付くことは無く。
男湯に入っていくプロデューサーの背中が見えなくなるまで、私は視線を送っていた。
◇◇◇
「それじゃあおやすみ、凛。あんまり夜更かしするんじゃないぞ」
「……分かってるよ、プロデューサー」
おやすみ。
今日一日のあいさつを残して、プロデューサーがふすまの向こうに消える。
それなりのお値段がする部屋の間仕切りをして、私とプロデューサーの部屋に分けている形だが、私としては同じ部屋で寝泊まりすることには何の支障もない。
予算の節約と男女同衾せず、というった考えの下なのだが、恋する乙女としては少しでも長く一緒にいたいというのが本音だった。
――男女が同じ部屋で寝泊まりをする、その先を、期待していなかったと言えば嘘になるが。
だからこそ、一番可能性の有りそうな初日と最終日前の今日のためにと新品の下着を用意していた。
けれど。
ふすまが閉められて静寂が訪れた部屋の中で、それも無意味だったかと落ち込んでしまう。
お風呂に入るまえに感じた不安が、プロデューサーは私のことを女の子だと思ってくれていないのだと――好きなんかじゃないのだと、どうしても思わせてしまう。
ぶるり、身体が震える。
不安が怖い、静寂が怖い、独りが怖い――プロデューサーに見放されるのが怖い。
泣きたく、叫びたく、暴れたい衝動が、さらに不安を掻き立てる。
「……プロ、デューサー」
でも駄目だ、隣にはプロデューサーが寝ている――そこまで考えて、私は考えることなく自然と立っていた。
どきんどきん、と心臓が高鳴る。
プロデューサーに想いを告白した時よりも大きな鼓動は、耳元で太鼓を鳴らすように騒がしい。
何をしようとしている、と理性が呼びかけるが、この不安と隣でプロデューサーが寝ているという事実が本能を動かしていく。
すっ。
軽い、本当に軽い音を立てて開けられたふすまの向こう。
やんわりと薄明りの差し込む部屋の中で、背中を向けてプロデューサーが眠っていた。
「……起きてる、プロデューサー?」
「……」
「……何だ、もう寝てるのか」
「……」
声は出来るだけ平静を心掛けて、でも心臓は爆発しそうなぐらいに高鳴って。
プロデューサーの返事が無いことを確認した私は、背中を向けたままのプロデューサーの傍に座る。
手を伸ばせばすぐに届く距離、いつもの事務所と同じ距離なのに、不安がその距離を遠くしていく。
「あの、ね、プロデューサー……私、プロデューサーのこと、好きだよ?」
「……」
「好きで、大好きで……プロデューサーと一緒に仕事をすることも好きで、私、すっごい充実してる」
「……」
「アイドルとしてCDもデビューして、雑誌に載って、ドラマや映画にも出て……すっごい感謝してる」
「……」
「けどね……一番アイドルとして――女の子として見て欲しいプロデューサーにどう見られてるのかが分からなくて、見えなくて、どうしようもなく不安で……」
「……」
「私……わたし……」
「……凛」
「ッ……」
本当にどうすればいいのだろう。
アイドルとしてデビューして、仕事も増えて、確かにプロデューサーは褒めてくれる。
けれど、それは彼が私のプロデューサーだから、と思う。
プロデューサーだから、担当アイドルを褒めてくれる。
プロデューサーだから、担当アイドルのことを気に留めてくれるし、向き合ってくれるし、想ってくれるのだ。
――でも、私はプロデューサーを一人の男性(ひと)として好きになってしまった。
女子高生、15歳という子供とも言える年齢から、プロデューサーは自分しか近くに男がいないからだ、なんて言っていたけど。
それでも、私は彼のことが好きなのだ。
けれど、その想いもプロデューサーが受け止めてくれなければただの感情で、宙に浮いたままだ。
足場の無いふわふわとした感情は、えてして受け所が無ければ酷く不安定で危ういものとなる。
その不安で、どうしよもない感情が暴れそうになるのを必死で堪えて――涙が零れそうになるのを我慢していた私の耳に、プロデューサーの声が届く。
……寝言?
けど、私の疑問はプロデューサーの言葉が続けられる形で氷解する。
「……凛。俺はな、お前のこと嫌いじゃないよ」
「……それ、前にも聞いた」
「はは、そうだな、前にも言ったな」
「……そうだよ」
「悪い悪い。そう、だな……言い方を変えるよ」
「……言い方?」
「ああ、今の凛に誤魔化すのも悪いしな」
私の言葉に、プロデューサーはその身体を起こして苦笑いを向けてくる。
その表情が本当に申し訳なさそうで。
不安に蝕まれている私の心には、それが最悪な結末を持ち運ぶように見えた。
嫌だ、そんなのは嫌だ――プロデューサーの口からそんな結末は聞きたくない。
そう思った私であったが、それよりも早く、プロデューサーは――私が想像した最悪の結末とは違う言葉を放った。
「俺はな、稟……好き、だなんて言葉は使えないんだよ、使っちゃいけないんだ」
「……え?」
「考えてもみろ。俺はお前をスカウトして、アイドルにして、仕事を持ってきて、トップアイドルにしようとしてるんだぞ? お前が歩むべきだったかもしれない道を押しのけてまで、だ」
「でも、それは私が……」
「お前が望んだにせよ、だよ。アイドルという道を提示して、こっちに引きずり込んだのは俺だ、この俺なんだよ、凛。普通の恋愛も、普通の交際も、普通の学校生活も、普通の結婚も子育ても、その全てを凛の人生から外したのは、この俺なんだ、凛」
「プロ、デューサー……」
「その俺が、どうしてお前のことを好きだなんて言える? 10も歳の離れた女の子の人生を滅茶苦茶にしておいて、どうして俺がその女の子に想いを告げられるというんだ……凛」
「……え、その……プロデューサーは、私のこと、好き、なの?」
「ああ、好きだ。誤魔化さずに言う。俺は凛のことだ好きだ、お前の言葉で言うなら大好きだ」
え、ちょっと待って、プロデューサーは何を言っているの?
突然のことに思考が追いつかない、プロデューサーがアイドルとプロデューサーがそもそも付き合えるはずも無い、なんて言ってるけど、そんなことが入らないぐらいに思考が暴れている。
いけない、落ち着け、落ち着け私。
しかし、いくら冷静になろうとも暴れる思考は落ち着くはずも無く、大きくなりすぎていた不安は消し飛び、じんわりとした熱が心を埋めていく。
ほろり、ぽろ、ぽろ。
熱に押し上げられる形で頬が濡れていくのを感じる。
ぽたっ、ぽたっ、と浴衣に涙が落ちていく音が耳に届くと、頬に感じるプロデューサーの手が、零れ行く涙をせき止める。
「……ごめんな、凛。こんな俺を好きになって」
「……ぐすっ。普通さ、そこはありがとうじゃないの?」
「……ありがとうなんて、言える訳ないだろ。俺はお前の普通を取り上げたんだぞ?」
「……あのさ、プロデューサー。私、私さ、普通じゃないってのも嫌いじゃないよ――むしろ、結構好き、かも」
「凛、お前……自分の言っている意味が分かってるのか?」
「当然」
頬に添えられたプロデューサーの手に、自身の手を添える。
頬に感じる力と熱が強くなるのを感じつつ、私はプロデューサーの目を真っ直ぐに見ながら微笑んだ。
普通の生活をただ過ごしていくのだろうと思っていた私に、プロデューサーは普通じゃない道を示してくれた。
確かに普通の女の子というのに憧れたこともある、普通の恋愛も結婚も花嫁も、その全てに憧れた。
けれど、その全てに物足りなさを感じていたのもまた事実で。
今こうして、男と女という普通の関係と、アイドルとプロデューサーという普通じゃない関係を持つ私とプロデューサーが、それぞれ好き合っているという事実は、私の心に温かく染みた。
普通じゃなくなるなんて、アイドルに誘われた時から覚悟はしてる。
ただ普通の道を歩むだけだなんて、今の私からすればもう考えられない。
――これから歩むであろう普通じゃない道、その隣にプロデューサーがいないことなんて、絶対に考えられなかった。
「……もう、普通には戻れないぞ?」
「上等。私とプロデューサーなら、問題は無いよね」
「……俺、結構嫉妬深いぞ?」
「私も。……他の子達にデレデレしたら刺しちゃうかも」
「……俺、我慢できないぞ?」
「別に――ううん、いいよ。私も、プロデューサーが好きだって気持ち、我慢したくないし……んっ」
お互いにくすくすと、普通じゃないことを隠す様に笑いあう。
別に誰に隠すでもないのだが、いつの間にか近づいていた――私が近づいていたらしい――顔を突き合わせて笑う様は、心地いいものだった。
頬に添えられたままのプロデューサーの手から感じる熱を求めるように、自らの手でそれを頬に押し付けながら、顔を動かす。
むにむに、と頬が動くがそれすら愛おしく、私はプロデューサーの熱を求めていく。
空いている手をプロデューサーの頬に添えれば、私と同じように熱を求めるプロデューサー。
その様にまた笑い合いながら、私とプロデューサーは更なる熱を求めるかのように、自然と口づけを交わしていた。
◇◇◇
「その……本当にいいのか?」
「念を押し過ぎ、プロデューサー……それとも、私じゃ駄目?」
「……駄目な訳ないだろ」
「んっ……んふぅ」
プロデューサーの部屋、その布団の上。
いつの間にか抱き合う形になっていた私とプロデューサーは、お互いに抱きしめあったまま、くすくすと笑い合っていた。
けれど、私の心臓は先ほどよりもっと早く脈打っていて、鼓動が聞こえるんじゃないかという心配よりも、心臓が破裂してしまわないかと心配するほどだった。
プロデューサーと一緒になりたい、なんてキスの余韻で言ってしまった言葉の勢いで抱きしめられたままだが、そうなるとプロデューサーの鼓動が良く聞き取れて、彼も緊張しているんだなあ、なんて思ってしまう。
――きっと、私の鼓動も聞かれているのだろうな、なんて。
軽くキスを落とされ、深く求めるようなキスに強くなる鼓動にそんな事実でさえも、幸せに感じてしまう。
ぬるっ。
熱くぬめった感触が唇をさわりと撫でる。
それがプロデューサーの舌だと自然に覚えて、私は――おそるおそる――自分の舌をそれに合わせていった。
「んはっ……んる……ちゅれっ……」
「んく……凛」
「んっ……いい、よ……プロデューサー」
舌の先端がチロチロと擦り合わされ、舌の面積の広い部分がぬりゅぬりゅと合わされ、お互いの唾液や吐息を求めるように深く、ただ深く繋がっていく。
唾液が甘い、なんて変態チックな考えが浮かぶが、それすらも愛おしく、ただプロデューサーと深く舌を絡ませていく。
途中、さわり、と本当に柔らかく触られる胸。
びくり、と身体を震わせたからか、一度は引かれたプロデューサーの手。
もう一度、ふわり、と触れてきたプロデューサーの手に身体が震えることもなく、私はその感触を受け入れていた。
「んっ……んふっ、あっ、はっ……んちゅ」
「……凛、何で下着つけてないの?」
「んくっ……寝る前はつけないもんだよ、プロデューサー」
「へー、そうなんだ」
「そうな、のっ……あんっ、ちょっ、強ッ」
「あっ、すまん……でも、その、な、凛の胸が柔らかくて気持ちよくて」
「はんっ……でも、私の胸、大きくないよ?」
「凛の胸だから気持ちいいんだよ」
「そ、そう……つうんッ」
浴衣の上からさわりさわりと触っていたプロデューサーの手が、するりと浴衣の合わせ目から中へと入りこむ。
手の平で軽く乳首が刺激されて声が漏れそうになるが、舌を絡めていたため、鼻から空気が漏れていく。
びくり、と身体が震えるが、今度はプロデューサーも手を引くことはなく、手の平で乳首を圧迫したままもにゅん、と胸を揉みしだき始める。
つつー、と首筋にプロデューサーの舌が這うのを感じつつ、意識は胸から送られてくる不思議な焦れる感覚に向かう。
ふにゃん、と揉まれるたび、びくんっ、と身体が震える。
ふにふに、と触られるたびに、びくびく、と身体が震える。
むにんっ、と強く揉まれれば、びくりっ、と身体が大きく震えた。
私の反応を楽しんでいたプロデューサーの手が乳首をこすっ、と擦れば、大きく身体が震えた。
「んっ、やっ、やあっ」
「凛、声可愛い……」
「だ、だめっ、ダメだってば、ぷろでゅぅ、さぁッ」
「ぷっくりと膨れて立ってきて……可愛いよ、凛」
「んあッ……なめちゃぁ、だめぇ」
指と指で乳首を挟んだまま弄りながら、手で胸を揉まれると胸全体と胸の先端からくる刺激に身体が自然と震えていく。
びくんっびくんっ、と身体が震えるたびに意図せずに声が漏れて、顎や頬やにキスを落としていくプロデューサーが私の声を求めて、ぺろり、と乳首を一舐め。
先ほどまで自身の舌で感じていた熱くて湿ってぬめる舌が、自分の胸や乳首をれろりと舐めていくたびに、身体が奥底から震えて、意識が甘い疼きによって白く染められていく。
「やっ、やだッ、そんな、舐めっ、ないでぇ」
「でも凛のここ、ひくひくしてる」
「そんなッ、そんなことっ」
「どんどんと硬くなってきてる、凛のここ。ぴくぴく震えてる」
「つぅッ、じ、実況しちゃだめ、プ、んっ、ロデューサ、ひぁんッッ」
「……ちょっと甘いよ、凛」
「な、なめちゃぁ……んくっ、つぁっ、ひううんッ」
びりびり、じくじく。
乳首がこすられ、その先端が柔らかく刺激され、思考の端がわずかばかりに白く染まる。
胸全体を手で包んで乳首を刺激され、ちろちろと首筋をプロデューサーの舌が這い、ぴんっといった感じで乳首がはじかれる。
そのたびに胸の奥底から湧き出てくる感覚に、身体が震えるのが止まらない。
プロデューサーが指を動かすたびに身体の芯から耳に届くこりこりとした乳首の感触が、甘い甘い感覚となって口から漏れ出ていく。
つつつ、と胸の回りを舐めたかと思うと、、ちろりちろりと胸の先端。
乳首を舐めて、その周りを舐めて。
まるで私の快感を探るように動かされる熱い舌に、どくんっ、と身体が熱くなっていく。
びくりっ。
一層強い甘い感覚――快感だと自覚できるものが、胸から全身に響いていく。
ちろりと舐められて、ぐりぐりと舌の先端でほじられて、ちゅぱちゅぱと口全体で吸われて。
びくりっ、びくんっ、と身体が震えるたびに甘い快感が思考に広がり、吐息が漏れ出て。
そして。
「んああぁッ」
こりっ。
軽く歯で挟まれたのだろう、ビシリッ、とした一際強い刺激が乳首に与えられたかと思うと、そのまま歯に挟んだままにいじいじと擦られ。
胸の奥底から全身にまで一気に走り抜けて、思考を白く染めていった。
「凛、少し腰上げて」
「うっ……ん」
ちかちか、と視界を覆っていた白い何かが収まってくると、するり、と動く浴衣の裾。
ごくり、とつばを飲み込むような音が出たことから、恐らくはプロデューサーだろう。
だろう、というのは、力の抜けた状態でそれを確認するほどの余力が無いからなのだが、それでもプロデューサーの言葉に素直に従ってしまう。
するする、と。
簡単なほどに下着が脱がされていくと、露わになる私の女性部分。
熱を帯びて、雌の匂いを発して――とろっ、と何かが零れる感覚に顔が熱くなった。
「凛、濡れてる」
「……それ言う、普通?」
「はは、悪い。でも、綺麗だからさ」
「う、うん……ありがと。……んっ……んはっ」
にちゅり。
確かな水音が、私の女性部分を触るプロデューサーの指先から奏でられる。
ほんのわずかな水音なのに、耳元から聞こえるほどに響くそれが、羞恥と確かな幸せとして意識に溶け込んでいった。
「んんっ、あぁっ、んっ、ふあっ」
指の腹で愛液を掬うように入り口を刺激されて、指の先端で入り口の穴をほじくるように動かされる。
そのたびに女性部分の入口はひくひくと蠢き、とろりとした蜜液が零れてはプロデューサーの指を濡らしていった。
そして濡れた指先で弄られる、女性部分でも敏感なもの。
じゅりゅ、ぬりゅ、ぬるる、こりっ。
様々な刺激をそこに与えられ、胸やその先端を刺激され、女性部分の入口を刺激され。
「ふっ、はっ、ああっ、んくっ、んんんっ……はぁ……ぷろ、でゅうさ?」
身体のそこかしこを刺激されて、甘い刺激が胸の奥底や女性部分を覆って、その奥から熱い刺激が疼きを上げて、意識が再び白くなる直前。
すっと離れていくプロデューサーに一抹の寂しさを覚えた私は、視界を動かした先にそれ――プロデューサーのそそりたつものを見つけた。
「……凛、もう我慢できそうにない……いいか?」
「う、ん……うん、いいよ、プロデューサー。……きて」
「……ああ、いくぞ、凛。痛かったらちゃんと言えよ」
「んッ……〜〜〜〜〜〜んあ゛あ゛あ゛ッッッ」
いつのまに下着を脱いでいたのか、浴衣の合わせ目から覗く黒くそそりたつそれ――プロデューサーの肉棒に、目をひかれると同時に軽く恐怖を抱く。
……ちょっと大きくない?
内心抱く恐怖を表に出さないように心の中でおどけてみるが、そんな私の葛藤をよそにプロデューサーは肉棒を私の女性部分にと宛がう。
にちゅにちゅ、と肉棒の先端に蜜液を塗りたくると、その蜜液を通してその熱が女性部分へと伝わる。
熱い、なんて感想を抱くものだが、女性部分はその熱を求めているのか、それとも受け入れる準備をしているのか、私にも分かるほどに蜜液の量が増えた。
恥ずかしい、なんて思う間もなく。
ずりゅっ、ずずずっ。
肉棒の先端が女性部分を押し開けて入り込み、その壁――膣を押し広げながら進み、そして。
ぶちんっ。
髪の毛が抜けるものとは違う、深爪した時とは違う、怪我をした時とは違う――身体の奥にある何かが引き裂かれる音。
それが処女膜である、などと思考を働かせられないほどに、激痛が私を襲っていた。
「っぁぁぁ……」
「きっつ……凛、大丈夫か?」
「へ、いき……って言いたいけど、ちょっと痛い……」
「ちょっとどころの話じゃないだろうに……力、抜かないと痛いままだぞ?」
「むり、かも……」
ぎちり、ぎちり。
先ほどまで女性部分を濡らしてその奥に受け入れる準備をしていた蜜液の存在など無かったかのように、プロデューサーの肉棒が奥へ奥へ入れられようとする痛みが身体中に走る。
身体の強張りを無くそうとしてくれているのか、ぺろぺろとまるで犬が慰めてくるかのように頬や目尻をプロデューサーが舐めてくるが、それに安心はするものの痛みが消えることはない。
けれど。
ぽろり、と。
痛みで――そして処女をプロデューサーに上げられた嬉しさで涙が零れる。
痛いけれど、この痛みこそが想いが通じ合った証拠なのだ、私は涙を零しながらにどこか幸せだった。
「悪い……ちょっと、我慢できそうにない
「あっ、あっ、はっ、ふっ、うんっ、動いても、いいよっ」
「すまんッ」
「んっ、んふっ、んんっ、あふっ、んちゅっ」
ずちずち、ずちゅり。
じちじち、じにゅちゅ。
身体の中が引っ張り出されそうな感覚と痛みを伴って肉棒が抜かれ、抜けきる直前で痛みと共にゆっくりと挿れられていく。
痛みを生み出す処女膜に肉棒が触れるたびに鋭い痛みが身体を襲う。
肉棒を受け入れる準備に出てた蜜液は意味があったのだろうか、処女膜から流れる血は意味意味ないのだろうか。
なんてことを痛みの中で思いながら、プロデューサーが腰を動かすたびにわずかばかりに響く水音が耳に届く。
にちゅにちゅ、にちり。
ぬちゅぬちゅ、じゅくり。
痛みが和らげばと舌を絡めるも、口から漏れるは痛みに耐える吐息ばかり。
痛い、けれど幸せ。
幸せ、けれど痛い。
抜いて挿れられて、前後する肉棒の形や熱が膣から感じ取れて、ぐちゃぐちゃになりそうな頭のままで、プロデューサーの首に腕を回しながら、深く深く、口づけを交わしていく。
ぐちっぐちっ、ちゅぐりっ。
にちっにちっ、にちゅり。
「ふっ、はぁっ、んんっ、んくっ」
「はっ……は……はっ」
「つッ、んあっ、ふっ、はっ、んっ」
引き裂かれた痛みはずきんずきん、としたものからずくんずくん、となってきていて、初めよりはその痛みが治まりつつある。
けれど、やはり痛いものは痛いもので、プロデューサーの熱い肉棒が女性部分を出たり入ったりするだけで痛みが走るし、その膨らんだ部分が引っ掛かると、つきんっ、とした痛みで涙が出るほどだ。
けれど。
やはり男性はそれでも気持ちいいのか、何かに耐えるように荒い息遣いのプロデューサーが痛みの中でも愛おしくて、私はその頬に手を添えてキスへと誘う。
腰を動かすことに意識が行き過ぎておざなりな、キス。
腰を動かし過ぎて唇はずれるし、舌は絡めようにも動き回る。
けれど、本気で私を求めてくれている、そんな証。
それが嬉しくて、愛しくて。
「り、んっ……もう、やばい」
「う、んっ、いいよっ、中でいいっ」
「うぁ……で、出るッ」
熱を求めて、もっと熱いものを求めて、もっとプロデューサーを求めて。
深く深く繋がるようにとプロデューサーの腰に脚を絡ませて、自らに押し付けるようにすると、早く強くなるその腰の運動。
痛みはだいぶ薄れてきて、代わりに感じる熱い肉棒の脈動に、それが限界に近いのだと自然のところで知る。
そして。
びゅくり、びゅりゅり、と。
熱く塊のような何か――精液が肉棒から放たれて身体の奥底を叩くのを感じながら、私は目の前で荒い息をつくプロデューサー――その頬にキスをした。
◇◇◇
「んっ……ぷろでゅーさーのすけべ」
「嫌いか、すけべな俺は?」
「……嫌いじゃない」
かっぽーん、なんて音が聞こえてきそうな檜張りのお風呂に二人浸かりながら、くすくすと再び笑い合う。
汗とか体液――あと血――を洗い流して部屋付きのお風呂に入ろうというプロデューサーの提案に、私は承諾の意を返した。
元々、こうなることを望んでいたとあって、断る理由などあるはずもない。
ずきん、と痛む下半身を労わってか、布団のシーツを巻いた状態でお姫様抱っこされた時はさすがに恥ずかしかったが、たっぷりとあるお風呂に身を清めて入れば、それも全て流れていった。
だというのに。
もたれかかる形でプロデューサーと身を合わせれば、もぞもぞと動くその手。
胸やお尻、女性部分の近くをさわさわと触る彼を睨めば、にやりと笑う顔にスケベなんて言葉が出てきた。
もっとも、私自身初めて知ったことだが、こうしてお風呂の中で触れられるのは悪いものではない。
お湯で温まった身体がプロデューサーが触れることで熱くなって、私としてはもっとその熱を求めたくて、自然と身体を寄せていた。
「凛の身体が綺麗だからな……このまま、凛とまた繋がりたい」
「……本当、すけべ。……別にいいけどさ、お願いがあるの」
「何だ?」
「キスして」
「ああ……お安い御用だ」
「うん……んっ……ふっ……〜〜ッンンッ」
ぴくぴく、と乳首が弄られるたびに身体が震え、抱きかかえるようにした腕と指で女性部分を弄られて、快感に力が入らない。
お湯に濡れないようにアップにした髪から覗くうなじにキスを落とされ、普段見られないような部分を見られているという事実に心が揺れた。
プロデューサーの上に座る形だからか、そのいきりたった肉棒がお尻に触れてその部分が熱い。
知らずなのか、僅かばかりに動いている腰のために、肉棒がお尻を少しだけ擦りあげる。
熱い、熱い感触がお尻の間を動いて、その膨らんでいる部分が僅かばかりに女性部分をこすった。
上半身を捻ってキスをせがめば、落とされる口づけと下から貫かれる感覚に、また身を震わせていた。
「んふっ、ふあっ、んんっ、んぁ」
プロデューサーの肉棒が押し込んできたお湯が膣の中を焼く熱さに身を震わせ、先に繋がった時より一際熱い肉棒にまた身を震わせる。
処女膜を失った痛みはだいぶ引いており、時折じくじくとした痛みをもたらしていたが、それが悪化することなく肉棒はすんなりと私の膣に入った。
熱い。
お湯に浸かったまま繋がっているせいか、膣の中を熱い肉棒が出入りするたびに、身体の奥底から熱が広がっていく。
ずりゅずりゅ。
お湯なのか蜜液なのか分からない液が肉棒の出し入れによって膣の中に入り込み、その熱によって身体が熱くなっていく頃。
私は、自然と嬌声を上げ始めていた。
「ふわっ、なにっ、なんか、なんかッ」
「気持ちよくなってきたのか、凛? さっきと違って、膣中がびくびくしてきたぞ?」
「そんっ、そんなわけ、ないっ、しッ」
「でも、ここもひくひくしてる」
「きゃうんッ。ちょ、挿れているとき、にっ、そこはッ」
ばしゃばしゃ、とプロデューサーと私の身体が動くたびにお湯が音を立てて揺らめき動き、辺りに水と熱の匂いを撒き散らしていく。
窒息しそうなほどに濃い水の匂いは温泉だからか、熱の匂いに頭の奥をぼうっとさせながら、迫りくる快感にさらに熱を求めていく。
くにくに、と乳首を弄られれば。
腰を抑えられて膣の最奥――子宮を突かれ。
腕を持たれて最奥を突くために身体をそらされれば、びりっ、とした快感に女性部分の敏感なところ――クリトリスを弄られたのだと知る。
ずばしゃんずばしゃん。
じゅりゅじゅりゅじゅりゅ、ぐりゅぐりゅ、ぐちゅん。
お湯が暴れる音と、それでも聞こえる膣を責められる音。
ごつごつ、と子宮が肉棒によって叩かれ、ちかちかとそのたびに視界が白く染まっていく。
「んぁ、んんっ、ぷろ、ぷろでゅ、さッ、おくに、おくにぃ、きひゃうっ、きひゃうぅ」
「ああ、奥だ、奥に出すぞッ」
「んんっ……つつああぁぁッッッ」
水と熱と男と女の匂いに、魚のように口をぱくぱくさせて酸素を求めていく。
上半身を捻らされてキスをして口を塞がれれば、いよいよをもって酸素が少ない私は意識をやる場所がなく。
否応なしに意識を持っていかされる快感に、意識の奥が太陽に焼かれたように白くちりちりとする。
そして。
ごりゅっ、ごびゅりどびゅる。
熱い精液が肉棒から放たれて子宮を叩けば、お湯の熱とその熱によって私が感じる熱は最高潮にまで達することとなり。
その熱によって、私の意識は白く染められていた。
「や、やだっ、これ、ふか、ふかいッ」
じゅちゅじゅちゅ。
意識が飛ぶほどの熱で絶頂を迎えた――上せたとも言う――私は、力の入らないままに後ろからプロデューサーに犯される。
お湯から引き上げられたまま押しつぶされる状態で後ろから肉棒を出し入れされると、どちらかというと獣の交わいのようで、言いようのない不安と快感が、同時に押し寄せてくる。
力が入らないのでされるがままにプロデューサーに身体を弄られて、押しつぶされるように乳首を弄られて、クリトリスを弄ばれる。
「んあっ、あやぁ、やぁっ、ふぁ、あはっ、あふっ」
力の入っていない腕を後ろに引っ張られて、背筋を伸ばされれば真っ直ぐになった膣を肉棒がごりゅごりゅと抉っていく。
ちかちか、と視界に白いものがまざって、私は軽い絶頂を迎える――けれど、プロデューサーは止まらない。
「やっ、ちょとまって、ぷろでゅ、さッ、わた、わたひっ、イった、いっらばっかりッ、やぁッ」
「悪い、凛、止まらない……止められないよ。膣中気持ち良くて……無理ッ」
「大好き、大好きなのッ、ぷろでゅーさーッ」
「俺もだ、俺もッ、お前のことがっ、凛のことがッ、大好きだッッ」
びくんっ、と身体と膣が震えて絶頂を迎えても止まらないプロデューサーの押挿に、身体が真っ白に染まるのではないかと思えるほどの快感。
身体と膣が震えるのを止めず、蠢く膣が肉棒によって抉られて送られる快感に、最早何に色があるのか分からないほどに白く染まっていく。
腰を固定されて深く強く肉棒が出し入れされて、ぐりぐりと子宮の入り口をこじ開けられる。
それすらも快感に変えて感じる膣に、プロデューサーが一際強く肉棒を入れた時。
私とプロデューサーは同時に絶頂に果てていた。
「ひゃんっ、あっ、はぅっ、イっひゃう、イふ、イふぅ……ん゛ん゛ん゛あ゛あ゛ぁぁぁぁッッッ」
◇◇◇
「はい、カット―ッ」
その言葉とカチコンという音ともに、辺りは一斉に賑わいに包まれる。
映画の参加――というよりもこういった役者事が初めてだった私にとって初めてづくしだった今回の撮影が終わったことは、その賑わいの理由が分かると同時にどこかさびしいものを感じていた。
「いよう、渋谷。お疲れさんだな」
「監督……」
「ん、なんだ、もしかして寂しいとか言う気か? そんな玉じゃあるまいし」
「む……私だって女の子なんです、寂しいとも思いますよ」
「がっはっはっはっ、そうかそうか、それもそうだったな。いやに達観してるからつい忘れてたぜ」
齢80に迫ろうかとい高齢をものともせずに笑う映画監督に、私は苦笑しつつ辺りを見渡す。
撮影終了の賑わいの中でも片づけの仕事を進めていくのはやはりプロの成せる業なのか、そんなことに意識をめぐらせていると、ふと見えるプロデューサーの姿。
――共演した女の子達にまとわれてデレデレしていた。
むっ、とした私は脚を一歩進ませる。
後ろから、監督の声が聞こえた。
「そういや、渋谷は今日帰るんだったな。プロデューサーの奴が昨日そんなこと言ってたが」
その監督の声に、脚を止める。
古い、監督のその情報はとても古い。
そう言いたいけれど、けどそれは監督に悪い気がして、笑顔のままに私は振り返った。
「今日は、ゆっくりと温泉に入る予定なんです。帰るのは、また明日」
「ほー、そうかそうか……何だ、楽しいことでもあるって顔してるな」
「……まさか」
そう、まさか。
楽しいことがある、なんてものではない。
私にとって、プロデューサーと共に歩むアイドルという道全てが楽しいのだから、監督の言葉は微妙に違う。
にやにやと笑う監督に笑顔でお疲れ様でした、とあいさつをして――。
――私は、女の子に囲まれてデレデレしていたプロデューサーに抱きついていた。