アイドル:城ヶ崎美嘉  
シチュエーション:酔っ払い、純愛  
 
 
 まじでヤバイ。  
 そんな心の声に蓋をして、アタシ――城ヶ崎美嘉は、目の前にある並々と注がれたグラスに視線を送る。  
 薄い緑色で、グラスのところどころに気泡をつけたそれは一見すればメロンソーダなどの炭酸飲料に見える。  
 だが。  
「きゃはは。美嘉、早く呑もうよ〜。お酒、美味しいよ〜?」  
「そうそう、美嘉ちゃん。これぐらいのお酒なら高校生の美嘉ちゃんでも問題無いでしょ? 一緒に呑んで楽しもうよ」  
 アタシを取り巻く環境が、それがただの炭酸飲料では無いことを教えていた。  
 酔っ払い多数。  
 なんでこんなことになった、と自問するも、ここが居酒屋であるということからそれもすぐに理解する。  
 お酒が入った、ただそれだけ。  
 そして、それが目の前にあるのだからアタシとしては頭を抱えたい気持ちでいっぱいだ。  
 りんごサワー。  
 一杯300円のお酒が、私の手の中にあった。  
 
「あー……お酒を良く飲みなれてるって聞いたから、やっぱりそのぐらいじゃ美嘉ちゃんには弱いかな?」  
「う、ううん。ア、アタシ、これ好きなの。う、うわー……美味しそう」  
「へー、サワーが好きとか、やっぱり女の子だねえ。可愛らしいよ」  
 お酒なんか好きなわけがない――むしろ呑んだことすらない。  
 以前、お父さんが飲んでいたビールを少しだけ舐めたことぐらいはあるが、あんなに苦い飲み物を好き好んで呑む大人の味覚が理解出来なかったのを覚えている。  
 だというのに。  
 アタシの両隣にいる女の子――アイドルになる前にギャル向け雑誌モデルで一緒に活動していた友達が酔っ払いながらもグラスに注がれているお酒を飲み干せば、当然アタシが出来ないとなると浮いた存在になってしまう。  
 それだけは嫌で、アタシなりの意地もあって見栄を張れば、対面に座る男達――合コンの相手には好印象であったらしい。  
 にこり、と笑いながら、アタシに呑むようにと勧めてくる。  
 数合わせの合コンなんて来なければよかった。  
 後悔するにしても、本当に今更だ。  
 レッスンが終わって、そのまま莉嘉が待つ家に帰れば良かったのに、友達の家に泊まるからと言った以上、このまま家に帰るのは何かかっこ悪い。  
「うわー、何これー。白くてねっとりとしてて、凄い美味しいー」  
「カルーア・ミルクっていうカクテルだね。甘くて飲みやすくて、美味しいでしょ?」  
「うわっ、これも美味しいー。グレープフルーツの味とこの縁にある塩がいい味出してる」  
「ソルティドッグだね。女の子にも飲みやすいカクテルだと思って頼んだんだけど、気に入ってもらえて何よりだよ」  
 それに、友達が美味しい美味しいとごくごくお酒を呑んでいる以上、そんなに苦くないのかななんて思えてくる。  
 ミルクとかグレープフルーツって言うぐらいだし、目の前のりんごサワーもそれなりに美味しいのかもしれない。  
 ごくり。  
 極力緊張を出さずに、一つつばを飲み込んでグラスを動かす。  
 10cm、8cm、5cm――1cm。  
 あと少しだけ動かせばグラスの縁から緑色の液体が口から喉へと注がれる。  
 緊張のままに覚悟したアタシは、それを勢いよく傾けようとして――。  
 ――後ろから伸びてきた手によって、グラスを奪われることになった。  
 
「う? ……あ、え?」  
「……んぐっ、んぐっ、ぷふはっ。ったく、高校生が酒なんぞ呑んでんじゃねえぞ。おらお前らも、高校生に酒なんか呑ませていいと思ってんのかよ、支払だけ済ませて帰れ帰れ」  
「ああ? 誰だよ、てめえ」  
「誰って……何だ、名乗ってもいいのか?」  
 すかっ。  
 傾けようとしたグラスがアタシの手から消えてなくなって、そのグラスは後ろから手を伸ばしてきた人物によって中身を飲み干されることとなった。  
 そうしてそれを成した人物の声が頭の上から聞こえてくると、その聞きなれた声に驚きの声を出せぬままに、対面に座る男達とその人物の声が応報される。  
 それも後ろの人物が何かを見せたのだろう、ぎくりと見るからに身体と表情を強張らせた男達がそそくさと帰り支度を始めてしまうと、終わってしまう。  
 あまりの急展開にぽかんとしていたが、男達が支払の後にレジからありがとうございましたとの声を受けて店から出ていくと、ようやく理解が追いついてくる。  
 アタシは、後ろにて鼻を鳴らしていた人物――プロデューサーに向けて口を開いた。  
「……なんでこんなとこにいんの、プロデューサー?」  
「それはこっちの台詞だ、美嘉。新しい仕事が決まったから連絡しようにも電話に出やしないし、家には帰らないって言われたとか莉嘉は言うし。どこにいるのかと探してみれば居酒屋にいるとか……」  
「うっ。ご、ごめん……」  
「…………まあ、とりあえず今はいい。とりあえず出るぞ」  
「あっ、うん。……ほら、二人とも。帰るよ」  
「え〜、もう〜? まだ呑むー」  
「じゃんじゃんお酒持ってこーい」  
「……この酔っ払い」  
 
 そうして。  
 二人――プロデューサーの背に一人、アタシが支えていた一人を家まで送り届けた後、アタシ達は特に会話をするでもなくふらふらと歩く。  
 プロデューサーの斜め後ろ一歩をアタシは歩くが、プロデューサーは振り返ることもなく黙々と歩いていた。  
 怒ってるのかな、というよりも怒ってるだろうな。  
 いつもは良く喋り、良く笑うプロデューサーの見慣れない黙った背中が、ずくりと胸を刺す。  
 心配かけたんだろうな。  
 ごめんなさい、その一言をまずは言えばいいのに、中々それを声に出すことが出来ない。  
「…………プ、プロデューサー、その……ん?」  
「…………うぷっ」  
 何と言えばいいのだろうか、何と謝ればいいのだろうか。  
 レッスンでは厳しく接されることこそあれど、酷く怒られたこのないアタシとしては、黙ったままのプロデューサーの経験は皆無である。  
 そんなもんだからどう言えばいいのやら、と思っていたアタシは、とりあえず声をかけなければと口を開いたのだが。  
 帰ってきたのは――気持ち悪そうにえづく、プロデューサーの声だった。  
「……美嘉」  
「な、何?」  
「……めっちゃやばい。吐きそう……」  
「えっ、ちょ、ちょっと待ってッ。え、えとここからだと……そうだ、プロデューサーの家に行こうッ」  
 うぇっぷっ。  
 プロデューサーが振り向いて顔と視線を合わせてくれたことに内心喜ぶが、それも気持ち悪そうな声と隠された口元、青い顔を見せられてしまえば心配の方が勝る。  
 ふらりふらふら、と足元から覚束なくなってきたプロデューサーに肩を貸しながら、アタシは大急ぎでプロデューサーの家までの道筋を脳裏に浮かべて、脚を急がせた。  
 
 
「あー……すまん」  
「……お酒が呑めないんなら無茶しなければいいのに」  
「……面目ない」  
 辿り着いたプロデューサーの家、そのベッドにスーツの上着を脱いだプロデューサーは仰向けに倒れこむ。  
 ある程度の気持ち悪さは抜けたのか、先ほどまでの青い顔ではなく、幾分か赤く上気したような顔色を見るに、とりあえずは落ち着いたらしい。  
 途中の自販機で買った水をごくりごくり、と飲むプロデューサーから視線をそらすことなく、アタシはベッドの縁に腰掛けた。  
「……ごめん、プロデューサー。心配、かけちゃったね」  
「分かっているなら、それでいい。ただ、次からは無しにしてくれよ」  
「ん、分かった」  
 ぎしりと鳴るベッドの上から、プロデューサーの顔を見下ろす。  
 普段は背の高いプロデューサーから見下ろされる形なのだが、こうして見下ろす形が実に新鮮で、目元が赤くなったプロデューサーの顔を飽きることなく見つめる。  
 ごくり、とプロデューサーがもう一口水を飲む。  
「……それにしても、プロデューサーなんかしたの? あの男の人達、凄い急いで帰っていったけど」  
「んー……ああ、別に大したことはしてないよ。その、あれだ、その上着の胸ポケットなんだけど……」  
「えーと……ってこれ、普段使ってる手帳じゃん。これがなんかあるの?」  
「いや、それ黒いだろ? ちらっと見せられたら警察手帳に見えるぐらいに」  
「あっ……プロデューサーって結構あくどいね」  
「失礼な」  
 それに、高校生だと分かって酒呑ませる奴なんて大半が悪いことしか考えてないからな、こういう簡単な手でも結構効くもんだ。  
 そうしてドヤ顔で胸を張るプロデューサーがぶり返してきた気持ち悪さにえづくのを視界の端で確認しながら、アタシはその手帳を何となしにぺらぺらとめくっていく。  
 プロデューサーの予定、アタシのスケジュール、他のアイドル達のスケジュール。  
 色々な予定が刻まれている手帳をめくっていたアタシの手が、ふと止まる。  
 莉嘉の名前に090から始まる携帯番号、そこから続けられていく見覚えのある友達の連絡先に、聞いたこともないような居酒屋の名前と連絡先。  
 殴り書いたようなそれらの文字に、ふとプロデューサーを見る。  
 もしかして、凄い心配してくれた?   
 アタシに連絡がつかなくて、莉嘉に確認すれば家には帰らないの言葉、心配して心配して、莉嘉から共通の友達の連絡先を聞いて、その友達からアタシの居場所や予定を聞いて、居酒屋で合コンと知ればそれらに全部当たって。  
 これはただの推測でしかない――けれど、一番有り得そうな推測だ。  
 その事実に、ドキン、とも、キュン、とも形容しがたい音で胸の奥がなった。  
 なんだってプロデューサーは――この男の人はこんなにも格好いいんだろう、と。  
 
「っと……もうこんな時間か。家に帰らないとか言ったみたいだけど、そろそろ帰れ、美嘉」  
「あ……うん」  
 はっきりと言って、アタシはギャルだ、それは間違いない。  
 友達とはしゃぐのが好きで、遊ぶのが好きで――少しだけ初心だというのは認める、けど、その生き方を悔いることは無い。  
 そんなアタシだから、世間様は色々な態度でアタシに接してくる。  
 学校の先生はアタシがギャルで色んな男と遊んでいる風に説教してくるし、同じクラスの男子達はそんなアタシに経験させろとか言ってくる、先輩にも同じ輩がいる。  
 街にでればちゃらちゃらしたような男が声をかけてくるし――全部断っているけども――プロデューサーに言われるまで気付かなかったが、今日みたいに身体目的で悪さをしようとする男もいる。  
 ――だけど、プロデューサーは違った。  
 初めこそ声をかけられたときはナンパだと思った、けれど、名刺を渡された時はアダルトビデオのスカウトだと思った。  
 話をしてそれが誤解であると知った時、ギャルとしてのアタシはそれに飛びついた。  
 でもアタシとしてのアタシは、不安で一杯だった。  
 アタシなんかがアイドルとしてやれるのか、ギャルなアタシがアイドルなんか出来るのか、アタシはアタシらしく笑えているだろうか。  
 アイドルという活動の中で、本当に不安で、胸一杯の不安で押し潰れそうになった時、いつも救ってくれたのは、やっぱりプロデューサーだった。  
 ギャルなアタシに真摯に、真剣に、真面目に向かい合ってくれた。  
 励まされ、気合を入れられ、活を入れられ、盛り上げられ――心配してくれた。  
 ――恋に落ちない訳がなかった。  
 どきり、と胸がなる。  
 恋心を向ける――好きなプロデューサーと二人で部屋にいるという事実に今更ながらに恥ずかしくなり、ふと思いついてしまったことに顔が熱くなる。  
 顔は紅くなっていないだろうか、なんてことを心配しながら、これも心配し助けてくれたお礼だと自分を納得させて、プロデューサーとの分で2本買った水のもう1本の蓋をあける。  
 たぷん、と中の水が零れそうになるが、今のアタシのそんなことに意識を払う余裕は無い。  
 ごくり。  
 つい先ほどにお酒を呑もうと緊張していた時よりさらに激しく緊張したまま、アタシはその水を口に含んだ――ただ、飲み込みはしない。  
 勢いよく、プロデューサーに向き直る。  
 頭に疑問を浮かべながらこちらを見るプロデューサーはどこか間抜けで、それでも、口の中に含んだ水を吹き出すわけにはいかない。  
「え、っと……美嘉、一体何……んぐッ」  
「んんっ」  
 プロデューサーが口を開く。  
 今が好機、とは思うが、胸の奥が高鳴ったまま、すぐには動けない。  
 女は度胸、ギャルは度胸、アタシは度胸。  
 何の呪文かは分からない単語を頭の中で繰り返したアタシは、ええいままよ、と勢いと衝動のままにプロデューサーに――その唇にアタシの唇を突撃させた。  
「んぐっ……みか、ごくっ、なに、をっ」  
「んんっ……ちゅっ。……そ、その、心配してくれたのと助けてくれた、お礼……かな」  
 勢いよく唇が合わさったために、その中にある歯ががちりと音を立てる。  
 痛い。  
 そう思うが、胸が大きく高鳴り、アタシとしてはそれどころではない。  
 唇をうっすらとあけて、その中に含まれていた水をプロデューサーの口の中へと流し込む。  
 いわゆる口移しというやつだが、いきなりされたプロデューサーは目を白黒させながら、口に注ぎこまれていく水を必死に飲み込んでいく。  
 その様が何だか可愛くて、合わせた唇が心地よくて。  
 離れたくないと思っていた唇がプロデューサーによって離された後、思い出して恥ずかしくなりそうなのをこらえて声を絞り出した。  
 
「お礼って……」  
「凄い心配してくれたんでしょ? 莉嘉とかいろんなところに電話かけて、アタシの居場所を探してくれて……そういうの、凄く、嬉しい」  
「なっ、おま、手帳をッ」  
「うん……ごめん、見ちゃった」  
「ッ……」  
 プロデューサーに身体を起こされて、傍から見ればアタシがプロデューサーを押し倒している形になる。  
 上から見るプロデューサーは顔を紅くして慌てていて、見たことのないその姿に気持ちがどんどんと大きくなっていくのが分かる。  
 ああヤバイ、本当に好きなんだなあ。  
 気持ちが言葉として浮かんでくるたびに、くすりと笑いが零れた。  
 ――それが笑われたと思ったのか。  
「あの、ね……アタシ――って、キャアッ。ちょっと、プロデ……んッ」  
「んっ……」  
 今なら言える、この気持ちを――恋心を言葉にすることが出来る。  
 好き、という言葉をアタシは口に出そうとしたのだが。  
 不意に身体にかかる衝撃――身体を入れ替えてプロデューサーに押し倒される形になったのだと理解した時には、アタシの唇はプロデューサーのそれに塞がれていた。  
 アタシがした口移し――という名を借りたキス――のそれとは違う、貪られるように押し付けられる唇に、内心ぞくりとした。  
 恐怖なのか、嫌悪なのか、はたまた別の感情なのか。  
 それが理解できるよりも早く、プロデューサーは怒ったような、申し訳なさそうな顔をしてアタシから離れた。  
「……あの男や他の男にこういうことをされているのかもしれない、それ以上のことをされているのかもしれない。そうなればアイドルとしてお前は御終いだ。それを心配するのは当然のことだろう?」  
 プロデューサーの仕事をしただけだ。  
 そういうプロデューサーの顔は、けれどそれだけでは無いように見えて。  
 吐息がかかりそうな距離で申し訳なさそうに視線をそらして身体を離そうとするプロデューサーの首に腕を回して、アタシはその頬に軽く口づけた。  
「ほんとうにそれだけ……?」  
「……」  
「あのね、プロデューサー……アタシ、プロデューサーのこと……好きだよ? 好きで、好きで、大好きで……だから、プロデューサーが心配して駆け付けてくれて助けてくれた時、アタシは凄い嬉しかったの。  
……だからね、それだけじゃない理由で――もし、例えば、プロデューサーがアタシのことを一人の女の子として想って心配してくれたんだったら、もっと、嬉しいな……」  
「美嘉……」  
 言った、ついに言ってしまった。  
 どきんどきん、ばくんばくん。  
 心臓が口から飛び出そうなほどに鼓動している、目の前のプロデューサーに聞こえるのではないかと心配するほどに高鳴っている。  
 余りの緊張に身体が知らず震えてしまうが、意志の力ではそれを抑え込むことは出来そうにない。  
 今だって、プロデューサーがそれに気づいたような顔をしていた。  
「…………俺だって、嫌いじゃないから心配したんだ」  
「……それって好きってこと?」  
「……知らん。言わん。聞くな」  
「……えへへー。んー、ちゅっ」  
 だからこそだろう、アタシが震えるほどに緊張しているということを考えてか、プロデューサーは視線を逸らしたままながら、本心を口にしてくれた――真剣に向き合ってくれた。  
 嫌いじゃない、それがイコール好きだと思えるほどにアタシの頭はお花畑ではない。  
 けれど。  
 顔と耳を真っ赤にしながらもそれを言葉にしてくれたプロデューサーに、アタシはもう一度その頬に口づけした。  
 
 
 
「その……おまた、せ」  
「お、おおっ……って、なんで制服着てるの?」  
「だ、だって……バスタオル一枚とか、恥ずかしい……」  
「……いやまあ、いんだけどさ」  
 そうして。  
 好きという気持ちを表したアタシと、嫌いじゃない――素直に好きって言ってくれればいいのに――という気持ちを表したプロデューサーは、お風呂タイムという時間を挟んで再びベッドの上で相対する。  
 ただし、先ほどまでとはその意味するところが違う。  
 プロデューサーは腰にバスタオルを巻いただけの格好、アタシは制服を――その下の肌はすべすべになるまで磨いているが――着たままの格好である。  
 プロデューサーがお風呂から出てきた時にバスタオル一枚だったことに驚き恥ずかしではあったが、アタシもバスタオル一枚の方がいいのかと散々悩んだ挙句に制服をそのまま来てでた。  
 もちろん、制服から下着の諸々は洗濯乾燥済みである。  
 そんな自分でも初々しいと思えるお風呂を出た後、アタシはベッドの縁に座るプロデューサーの隣にと腰を下ろした。  
 ぎしり、とベッドが軋んで、胸がどきりと跳ねた。  
「その、いいのか、こんな俺なんかで……? お前、初めてだろ?」  
「……そういうことは普通黙っておくとこだよね? ……まあ、そんなふうに色々と心配してくれて想ってくれるプロデューサーだから、アタシは好きになったんだけど」  
「うっ……お前、結構恥ずかしいんだな」  
「えへへ、そう? ……んっ」  
 アタシのギャルな見た目からすれば、きっと経験済みに見えてもおかしくは無いのに。  
 アタシに真摯に向き合ってくれるプロデューサーは、そんなまやかしに惑わされることなく、アタシが処女だということ見抜く――まあ、口に出したことは減点だけどさ。  
 そんなふうに軽口を叩きあうのがアタシとプロデューサーらしくて、好きなプロデューサーと早く触れ合いたくて。  
 隣に座るプロデューサーに顔を近づけると、キスをされた。  
「んっ……ふぅ……んふっ」  
「ちゅっ……んっ……ちゅる」  
 初めは触れるように。  
 次いで唇を味わうように、吐息を味わうように、気持ちよさを味わうように。  
 啄むように、求めるように、感じ合うように。  
 唇と唇が触れ合う感覚に身を任せていると、唇をあけるように熱くてぬめる感触。  
 それがプロデューサーの舌なのだと直感的に理解して、アタシは恐る恐るながらも自身のそれを触れ合わせてみた。  
「んっ……くちゅり……んふぅ……ひゃふぅ」  
「んっ……美嘉の口の中、すげえ甘い」  
「……プロデューサーの口は凄いお酒臭いけどね」  
「……すまん」  
 ぬるぬると熱い舌を絡めあって、相手の吐息を吸い付くすかのように吸って、記憶するかのように口の中を舌で蹂躙し合って。  
 いつしか抱きつく形でお互いの舌を求めあっていたアタシ達は、軽口を叩きながらくすくすと笑った。  
 
「んんっ、ちょっと、いきなり……んんふぅッ」  
「……柔らかい」  
 ちゅるちゅる。  
 ちゅっちゅっ。  
 舌を絡めたり軽い口づけをしたりしてゆっくりと気持ちよくなっていると、不意に胸に感じるプロデューサーの手。  
 掴まれるでも押し付けるでもなく、たださわりと触ってくる感触に、どちらかといえばくすぐったい。  
 身をよじるようにプロデューサーの手を避けようとすると、深いキスの中でふにゃんと揉まれる胸に、声が漏れそうになる。  
「あっ……んんんッ。んぁっ、ひゃん……あんっ。あんまり、みないでぇ」  
「どうして? 美嘉のおっぱい、凄い綺麗で可愛いのに」  
「だって……おおきく無いし、ひゃうんッ」  
「乳首も綺麗だし。ほら、少し硬くなってる」  
「や、やめっ。んひぅっ、ひゃっ、こりこ、りっ、しちゃ、だめっ、んっ」  
 ふにゃん、ふにゅん。  
 ブラと服の上から胸を揉まれる感触は実に不思議で、胸を揉まれるという恥ずかしいことなのに、何故だか少しばかり物足りない。  
 そんなアタシの気持ちを感じたのか、ぷちっ、と外された制服のボタンによって出来た隙間からプロデューサーは手を入れて、ブラの上から胸を揉みしだいてくる。  
 びくんっ。  
 いきなりの感触に身体が震えて、知らず甲高い声が漏れる。  
 そんなアタシの反応が楽しかったのか、ブラの上から胸を揉まれているという展開に身構えていたアタシは、いつの間にか外されている制服のボタンが増えていることに気付いた。  
 ピンク色のブラが、シャツの間から出ていることに羞恥で顔が熱くなる。  
 それよりも何よりも。  
 そのブラさえも下にずらされて、挙句にはそこから覗く乳首を指でこすられて、そこからびりびりとした感覚が身体を走ったことに、一瞬だけ思考が止まった。  
「だんだんと硬くなってきてるよ、美嘉のここ。ぴくぴく震えてもきてる」  
「つぅッ、じ、実況しちゃだめ、プ、んっ、ロデューサ、ひぁんッッ」  
「……少しだけ甘いよ、美嘉」  
「な、なめちゃぁ……んくっ、つぁっ、ひううんッ」  
 びりびり、じくじく。  
 乳首がこすられ、その先端が柔らかく刺激され、思考の端がわずかばかりに白く染まる。  
 胸全体を手で包んで乳首を刺激され、ちろちろと首筋をプロデューサーの舌が這い、ぴんっといった感じで乳首がはじかれる。  
 そのたびに胸の奥底から湧き出てくる感覚に、身体が震えるのが止まらない。  
 プロデューサーが指を動かすたびに身体の芯から耳に届くこりこりとした乳首の感触が、甘い甘い感覚となって口から漏れ出ていく。  
 つつつ、と首筋を舐めていたプロデューサーの舌がわずかに覗く鎖骨をちろりと舐めた後に、胸へと至る。  
 乳首の回りを首筋と同じようにちろちろと舐めた舌は、乳首も同じようにちろちろと舐めてきた。  
 びくりっ。  
 一層強い甘い感覚――快感だと自覚できるものが、胸から全身に響く。  
 ちろりと舐められて、ぐりぐりと舌の先端でほじられて、ちゅぱちゅぱと口全体で吸われて。  
 びくりっ、びくんっ、と身体が震えるたびに甘い快感が思考に広がり、吐息が漏れ出て。  
 そして。  
 こりっ。  
 軽く歯で挟まれたのだろう、ビシリッ、とした一際強い刺激が乳首に与えられたかと思うと、それは身体の芯から一気に走り抜けて、思考を白く染めていった。  
 
「ほら、脱がすよ……?」  
「ッ……」  
 びくん、びくん。  
 身体が快感で震え、白く染まっていた思考が定まってくると、アタシはイったのだと理解した。  
 ふわふわと身体が浮いているような感覚があるが、その感覚の中で下半身――女性部分が空気にさらされていくのを認識する。  
 一瞬だけ羞恥と不安から抵抗心が生まれるが、絶頂を迎えたばかりで意識が覚束ないアタシにそれを留める余裕はない。  
 するり、と。  
 いっそ簡単なほどに、アタシはショーツを脱がされて、女性部分を露わにされていた。  
「……気持ちよかったのか? ひくひくと動いてる」  
「し、知らないッ」  
 つつつ、とプロデューサーの指が恐る恐るアタシの女性部分に触れる。  
 ぴくり、と身体が震えて、空気に触れているそれがひくひくと動いていることに、顔が熱くなる。  
 顔が近いのだろうか、プロデューサーの吐息がふわりふわりと刺激してくるのに声が漏れそうになった。  
「こんなに濡れてるのに素直にならないとか……強情だな、美嘉は」  
「べ、べつに強情なんかじゃ……ひゃうんッ?! ちょ、ちょっと、いきなり触らないンンッ」  
「触るよ、美嘉」  
「んんっ、あんっ、……う、うんっ、いい、よッ、んくッ」  
 ぬちゃり。  
 股にある女性部分から聞こえる粘ついた水音に、一気に身体が熱くなる。  
 ひくひくとする女性部分からトロトロと粘つく水――愛液が零れていくのが、敏感になりつつある肌を流れていくのが感じられる。  
 そのことに余計に羞恥を感じていると、女性部分の入り口をプロデューサーが刺激してくる。  
 指の腹で愛液を掬うように入り口を刺激してくれば、指の先端で入り口の穴をほじくるように動かしてくる。  
 そのたびに入り口はひくひくと蠢き、愛液が零れてはプロデューサーの指を濡らしていく。  
「んんっ……れろり……んる」  
「ひゃあんッ。ちょ、ちょっとプロデューサー、そんなとこきたなッ、ひぅんッ」  
 れちょり。  
 熱い感覚が女性部分を刺激するのに、慌てて顔を上げてみれば、そこに顔をうずめるプロデューサーに驚愕する。  
 その驚愕のままに女性部分の入り口を舐め上げ、舌を少しばかり女性部分に入れられてしまえば、身体は反射的に反応してしまう。  
 先ほど絶頂を得た時とは違う、さらに大きく震える身体に恐怖を覚えてプロデューサーをどけようとするも、脚に手をやられて固定されてしまえばそれも難しい。  
 結局のところ。  
「ひうっ、ひゃっ、ぷ、ぷろでゅーさ、なにか、んひゃぅっ、なにかがッ、きひゃう」  
「んくっんくっ、じゅるっ」  
「ひっ、ひうっ……ッ、アアアアァァァッ」  
 プロデューサーの頭に手を置いても意味はなく、女性部分の入り口からその少し奥やらを未知の快感で刺激されたアタシがそれに耐えられるはずもなく。  
 先ほどの乳首の先端のものからとは似ても似つかない甘い快感が身体の奥底から湧き出てくるのに身を任せて、アタシは再び意識を白く染め上げていた。  
 
「ぷろ、でゅーさー……」  
「もう、我慢できそうもない。……いいか、美嘉?」  
「……うん。いいよ、きてぷろでゅーさー……ンンツツゥッ」  
 びくん、と身体が震えるたびに女性部分から溢れ出る愛液をプロデューサーの指が掬って、にちゃにちゃと弄んでいるのを、ぼうっとした視界で眺める。  
 どこか楽しそうにしていたプロデューサーであったが、はらり、とバスタオルを取り去ると、そのいきり立ったモノ――肉棒を露わにした。  
 びくりっ、と身体が震える。  
 ギャル仲間から色々と話だけには聞いていたが、男のものを見るのが初めてだったアタシとしては、その肉棒は凶悪という他ない。  
 コーヒーのロング缶ほどもある太さと長さに、あれがズボンや下着の中に入っていたものだとは到底理解できない。  
 さらにはあれがこれから自分の中に入るのだと思うと、それは徐々に不安や恐怖となっていくのだが。  
 少しかすれた声で甘えるように紡がれたプロデューサーの声に、それを拒否することも出来ないでいたアタシは、ベッドに仰向けになった状態で脚を広げられる。  
 恥ずかしい。  
 そう思ってみても、脚を広げられた体勢では隠れるものも何もなく、不安と恐怖のままにプロデューサーの首に腕を回して――身体を貫いた痛みを受け入れていた。  
「っぁぁぁ……」  
「うっ、きつ……美嘉、力抜かないと痛いままだぞ?」  
「でも……いたいもんはいたいぃ……」  
 ぎちり、ぎちり。  
 先ほどまで女性部分を濡らしてその奥まで濡らしていた愛液の存在など無かったかのように、プロデューサーの肉棒が奥へ奥へ動こうとすると痛みが身体中に走る。  
 身体の強張りを無くそうとしてくれているのだろう、ゆさゆさとプロデューサーが身体を揺するが、帰ってくるのはずきずきとした痛みだけだった。  
 ぽろり。  
 痛みで――そして処女をプロデューサーに上げられた嬉しさで涙が零れる。  
 痛いけれど、この痛みこそがその証拠であるのだと、アタシは涙を零しながらにどこか誇らしげであった。  
「んっ、んふっ、んんっ、あふっ、んちゅっ」  
「ごめんっ、我慢できそうもないッ」  
「んっ、いい、よぉッ。うごい、てッ」  
 ずちずち、ずちゅり。  
 じちじち、じにゅちゅ。  
 身体の中からひっくり返させられそうな痛みと共に肉棒が抜いて行かれ、抜ける直前でまた押し込まれる痛みと共に挿れられていく。  
 痛みを感じる前から残っていた愛液と処女膜から流れる血によってわずかにぬめるのか、プロデューサーが腰を動かすたびにわずかばかりに水音が響く。  
 にちゅにちゅ、にちり。  
 ぬちゅぬちゅ、じゅくり。  
 肉棒が傷ついた処女膜をこするたびに鋭い痛みが身体を遅い、痛みが和らげばと舌を絡める口から吐息が漏れる。  
 痛い、けれど幸せ。  
 幸せ、けれど痛い。  
 抜いて挿れられて、前後する肉棒の形や熱が女性部分の奥――膣から感じられて、とても共存出来ないような感覚が胸を占める。  
 けれど。  
 
「んっ、んんっ、んあっ……んひゃうっ」  
「……ん? 美嘉、もしかしてここがいいのか?」  
「ち、ちがっ、っん、ひゃんっ、ひあっ、な、なんでこれッ」  
 それも時間の問題だった。  
 ごりっとする奥より手前で、ざらっとする敏感な部分より奥で。  
 ざらっ、ごりっ。  
 それまで痛みしかなかった肉棒がそこを刺激しながら進んでい行くと、痛みの中でも分かるぐらいに身体の奥がびくりと震えた。  
 当然、それはプロデューサーにも伝わったことだろう、それまで探るようにしか動いていなかった肉棒が、執拗にそこを責め始める。  
 ぬちゃぬちゃ、じゅくり。  
 ずちゅずちゅ、じゅにゅり。  
 ぐちゅぐちゅ、じゅぐり。  
「んあっ、あんっ、はっふ、はふぅっ、あへぅ」  
 明らかに先ほどまでの痛みの中にあった幸せに似たものとは違う、確かな甘く感じられるほどの疼きが、膣から感じられていく。  
 抜いて、挿れられて、抜いて、挿れられて。  
 そのたびに甘い疼きを送る部分を肉棒によって刺激されて、嫌が応にも声が漏れ出ていく。  
 明らかな快感、それを感じてしまえば多少痛む処女膜でさえ気にならなくなってくる。  
「ふぇぅ……あっ、あっ、いや、はげし、はっ、ひゃんっ、んんっ」  
 そうしてずんずんと早く大きくなっていくプロデューサーの腰の動きに、与えられる快感も徐々に大きくなっていく。  
 ごりり、と膣を削られながら奥を突かれ。  
 ずりゅりゅ、と肉棒の先端でひっかきながら愛液をかきだされ。  
 びくんっびくんっ、と大きくなっていく身体の震えにさっきまでとは違う、本当にどこか飛んでしまうのではないかと思えるほどの甘い快感が全身を覆っていく。  
 それが不安で、怖くて。  
 アタシは、プロデューサーの首に回していた腕を強くひきつけた。  
「んんっ、んふっ、ひゃんっ、あっ……んくぅぅぅぅッ」  
 舌を絡めながらも突かれて息が漏れる。  
 突いて抜かれる時に抜け切りそうなプロデューサーの腰に脚を絡ませて、抜けないように必死に手前にと寄せる。  
 ごんっごんっ、と最奥が突かれてそれに身体が反応して。  
 意識と視界が白く染まって、それが真っ白になる直前――。  
 ――最奥まで全力で突かれた肉棒から勢いよく放たれた熱い塊がアタシの奥――子宮を直撃して。  
 アタシは、その熱で絶頂を迎えた。  
 
 
「こっ、んなっ、どうぶつみたいなっ、かっこう、んんっ」  
「美嘉も気持ちよさそうじゃないか。お尻の穴もひくひくしてるし、こっちの方が好きなんじゃないの?」  
「そんっ、んんッ、なわけぇ、ないッ、しぃっ」  
 四つんばいで後ろから突かれながら、お尻の穴が丸見えであることに驚いて身体を震わせる。  
 快感で力が抜けてもはや後ろから押しつぶされるような形になりつつあるが、お尻の穴を隠そうと手を伸ばしても、プロデューサーにどけられてベッドに押し付けられる。  
 ごりり、と。  
 先ほど――正常位の時とは違う部分が刺激されて愛液の量が増えて、プロデューサーの挿押の勢いが増していく。  
 じゅぐりじゅぐり。  
 膣の中で暴れながら壁をえぐる肉棒に、快感が止まらない。  
 涙か汗か分からない水分で髪は額に張り付き、上で結んで止めていた髪はプロデューサーに解かれていた。  
「んぁ、んんっ、おくに、おくにぃ、きひゃうっ、きひゃうぅ」  
「中がびくびくしてるぞ、美嘉。そろそろイキそうなのか?」  
「んっ、いく、いっちゃうッ、しろく、い……いくぅぅぅッ」  
 力の入らない身体を持ち上げられて、プロデューサーに抱えられる形で下から突かれる。  
 弛緩した身体はプロデューサーに寄りかかり、振り返って舌を絡ませながら、胸と女性部分の敏感なところ――クリトリスを刺激されつつ、プロデューサーの腰が前後左右上下に動いて、アタシに快感を送ってくる。  
 気持ちいい。  
 幸せ。  
 満たされている。  
 暖かな気持ちが思考を白く染め上げ、びゅるりびゅくり、と膣の中で脈動して熱い塊を放つプロデューサーに肉棒に、意識までもが白く染め上げられる。  
 ごぷりっ。  
 収めきれなかった熱い塊――精液が、アタシの膣から肉棒を伝ってベッドへと染みを作っていった。  
 
「んんッ、んぐっ、き、きもひい、いッ、もっひょ、もっひょおくッ」  
「奥だな。一番奥に出してやるぞ美嘉、子宮にな」  
「ん、うんッ。おくにだひてぇ、ぷろっ、でゅさぁッ」  
 快感の余韻がさめぬままに、身体を入れ替えられて――向き合う形で再び下から突き上げられる。  
 ぐちゅりゅぐちゅりゅ。  
 二回も中で放たれた精液と絶えず送られてくる快感によって溢れ出ている愛液によって、お尻に回されたプロデューサーの手によって腰が密着するほどに近づけられた身体によって、膣の中のものとは違う、粘質な音が響く。  
 アタシの腰はプロデューサーの手によって密着させられ。  
 アタシはアタシでプロデューサーの腰に脚を回して密着して、首に手を回して上半身も密着して。  
 下から突き上げられるたびに身体は揺さぶられ、乳首がプロデューサーの肌でこすれ、クリトリスがプロデューサーの陰毛でくすぐられてその奥にある肌で押し付けられて。  
 ぞくぞく、と快感が背筋を震わしていく。  
 全身が、プロデューサーと一つだ。  
 身体の全てが、プロデューサーと繋がっている。  
 そう錯覚してしまいそうなほどに、アタシはプロデューサーと一つに溶け合っていた。  
「ぷんぁっ、ぷろでゅッ、さぁッ、んんっ、ひゃんっ」  
「ん、どうした美嘉? そろそろイキそうなのか?」  
「っあんっ、んくっ、えと、ねっ――大好きッ」  
「……ああっ、ああっ。俺だって、美嘉のこと好きだ、大好きだっ」  
「う、んっ。うれ、うれしいっ、よッ。んっ、んちゅ、はげッ、しっ」  
 だからこそ。  
 一つに溶け合っているからこそ、アタシは心を偽ることはしない。  
 好き、大好き、超好き――愛してる。  
 言葉で、口づけで、快感で、甘い疼きで。  
 プロデューサーと気持ちも一つに溶け合って。  
「んんっ、ぁぁんっ、ひんっ、あ、あ、あ、あ……んんああああぁぁぁっ」  
 頭が痺れるほどに甘く快感が背筋を走り抜け。  
 身体が燃えそうなほどに熱い重い塊が身体の中で放たれて。  
 アタシは、意識が途切れそうなほどに白い快感に身を任せて、絶頂を迎えた。  
 
 
「もう合コンとか行くなよ」  
「うん、分かった」  
「……本当に分かってるのか?」  
「当然。お酒が入った男の人はプロデューサーでこりごりだよ」  
 ベッドのシーツを変えて、二人で一緒にお風呂――もう一度致した――に入った後、アタシ達はシーツにくるまって笑いあう。  
 甘い空気と濃厚な男女の空気は抜けることは無かったが、一度ことを終えてしまえば燃え上がるには時間が――多分――かかる。  
 苦虫を潰したような顔のプロデューサーに一つ笑うと、アタシはペットボトルから水を飲む。  
 行為の最中はほったらかしだったので幾分か温くなっていたが、疲れた身体には心地よかった。  
「……飲ませてくれないのか?」  
「……酔っぱらってないじゃん」  
「美嘉に酔ってる、って言えば飲ませてくれる?」  
「…………ばか」  
 耳元に口を寄せて喋るプロデューサーの吐息のくすぐったさに身をよじらせながら、子供のようにねだるその頭を一つ叩く。  
 それならば、と大人のように耳元で囁くプロデューサーの言葉に顔や身体を熱くしながら、ずるいなあ、と思いながら。  
 ――アタシは、口に水を含んでプロデューサーにキスをした。  
 
 
   

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