アイドル:渋谷凜
シチュエーション:移籍
「――さあ、ここだよ」
どきり、と胸が一つなるが、そんなこともお構いなしに隣に立つ脂ぎった男は厭らしい笑みのままに顔を振り向かせる。
プロデューサー――いや、私を売った男が言うには、彼は音楽業界のお偉いさんらしいが、私の身体をなめ回すように視線を送るその姿は、そのような面影は一つもない。
「さあ……少しだけ目を閉じてもらおうか」
「ッ……」
「おや? 初めてのキスは雰囲気が必要かと思ったが、そんなものは必要無かったかね? もっとも、これからキス以上のことをするのだから気にしすぎな気もするが」
「……別に、気にしないで」
「なら、気にしないでおこう。では」
「んッ?! んんっ……」
プロデューサーにアイドル候補生としてスカウトされて、アイドルになれて。
それまで決められたルートしか歩んでいなかった私にとって、それはとても輝いて見えることだった。
雑誌のモデルや、PVのヒロイン役などといった仕事をこなして初めて出したCDは、今でも私の宝物だ。
そうしてアイドルが売れれば、必然的にプロダクションも大きくなる。
プロダクションが大きくなってアイドルも増えて、忙しくても、プロデューサーに会えなくなっても、私はそれが楽しかった。
だが。
会えない時間は彼を変えた――否、変わったのは私を取り巻く環境だった。
才能ある子が増え、幅広い年齢層が増え、多くの子がCDを出し始めた時、私はプロダクションの中でもかなり低ランクとなっていた。
勿論、色々な努力はした。
夜遅くまで残ってレッスンをしたり、歌唱域を増やすために色々な歌を模倣してみたり。
だけど、ついこの間まで女子校生だった私が、才能ある子に勝てる訳が無く。
久しぶりに。
本当に久しぶりにプロデューサーと話をした時、私は自分がクビになったことを――売られたことを知った。
「それにしても、彼も酷い男だねぇ。自分がスカウトしておいて、使えなくなればすぐに売るんだから。まあ、おかげでこうして美味しい思いも出来るわけだが」
「……」
「ふむ、渋谷凜ちゃん、だったかな……少しだけ口を開けてもらおうか?」
「……何をする気?」
「なに、私は順序を気にする質でね。キスの後は舌を絡めるのが順序だろう……こうやって、ね」
「んんッ……ちょ、まっ……んちゅる」
本当に端金に近い金額だったらしい。
後輩アイドルのレッスン費用を捻出すら出来ないほどの金額で売られた私は、こうして、売られた先であるこの男に連れられて、ピンク色の内装をしたホテル――いわゆる、ラブホテルに来ていた。
まるで援助交際をしているみたいだ、なんて思わないでもないが、そこと違うのは一切の金額が私には入ってこないことと、これ一回きりでは無いことだろう。
私は売られたのだ、それに私は女子高生、自分で言うのもなんだがこんなブランドを逃す男はいないのだと思う。
ぬるり、とした気色の悪い生暖かい感触に耐えていると、口の中を蹂躙している男の舌は歯茎や舌の付け根をちろちろと舐めてくる。
気持ちいいなどと思っているのだろうか。
好きでもない、ましてや初めてのキスで感じる女がいると、この男は本当に思っているのだろうか。
そんなことを考えていると、さわり、と制服が触れられるのを感じた。
「ぷはッ……ちょ、ちょっとそこはっ……ん」
「いい加減に大人しくなればいいのにねえ……もっとも、気の強い女子高生など好物以外の何者でも無いわけだが」
「んッ、ンンンンッッ?!」
するりするり、と。
シャツがスカートから脱がされていくのが分かる。
舌を入れられるキスから意識を逸らしてしまえば、否応なしに意識してしまうその感覚に、私の身体はびくりと震えた。
「んちゅ……はっ、ちょっと待って……心の準備がッ」
「心の準備など、とうの昔に出来ていると思ったのだがな。まあ、いいさ」
「ひゃあっ」
「おっと……これはこれは。随分と可愛らしい下着を」
「み、見ないで……ひゃうっ」
あまりの急展開に思考が追いつかない。
そろそろ、と脱がされていたシャツは勢い良くたくし上げられることになり、ブラに覆われた胸が男の視線にさらされる。
派手な色を好まない故に、白いブラが外気にさらされた訳だが、可愛らしいと言われてしまえばさすがの私でも羞恥が勝る。
胸の辺りをじろじろと見ていた男の顔をどかそうとした私であったが、不意に胸に感じた感覚に声が漏れる。
「中々にいい反応だねえ。これは色々と期待出来そうだ」
「いきなり触らなッ……んくっ……」
「じゅるりっ……感じている訳では無さそうだが、色々と戸惑っているのは確かみたいだな。緊張と感覚で乳首が立ち初めてきたぞ?」
「んんっ……っぁ」
不意な気色の悪い感覚に声を漏らせば、開いた口に男が舌をねじ込んで酸素を貪っていく。
男の唾液で口元が濡らされれば、それを潤滑油にして男がさらに奥へ奥へと舌をねじ込んでくる。
鼻で酸素を求め、酸素を奪う男の舌を追い出そうと舌を動かしても、いやらしくぬめりと蠢く男の舌を追い出すことは叶わない。
そうこうしている内に、男が指で弾いたのか、胸の先に痛みをともなく感覚が与えられた。
「感じてきているのか? 段々と硬くなってきているようだが」
「そ……んなことは……ッ」
「強がらなくてもいいだろうに。ほれ、首筋からも雌の匂いが出てきているぞ」
「そん、なとこ……舐め、るなぁ」
「ではここだ」
「ッ?!」
こりこり、と。
そんな音が聞こえるのでは無いかと思えるほどの感触が自身の胸から与えられるが、それを感じていると思ったのか、男が厭らしい笑みのままに私に問いかけてくる。
ぴくり、と身体が動きそうになるのを自制で押しとどめるが、そんな反応も楽しいのか、喉を反ればそこをぺろりと一舐めする男。
ぺろりぺろり、と舐めたかと思うと、ふんすふんす、と匂いを嗅ぐ男に羞恥と気持ち悪さを感じて声を上げれば、待ってましたとばかりに男は胸へと吸い付いた。
「ひゃっ……あ……あ……ッ」
「我慢は身体に毒だろう。ほれ、こうして直ならば凜ちゃんも素直になれるだろう?」
「っくぅぅっ?! っ、ぁぁ……」
「おや、もしかして軽くイったのかい?」
ブラ越しにふにふにと乳首を口で甘噛みしたかと思えば、軽く歯で挟んでこりこりと噛む。
その度に形容しがたい感覚が胸から全身に広がっていき、びくり、と身体が反応したことに気がついたのか、男はブラを少しだけずらして私の乳首を外気へとさらす。
少しだけひんやりと感じたのも束の間、男の口に含まれたそれはべろりとした舌に反応して、形容しがたい感覚――快感を私の全身へと広げていった。
「いやはや、凜ちゃんは中々すけべだねえ。初めてでこれだけ感じる子もそうそういないだろうに」
「だ、れが……」
「すけべじゃないって? でもほら、凜ちゃんのここはこんなになってるよ?」
「ッ、ひゃあぁんッ」
イった。
男の言葉に羞恥で身体が熱くなる。
私とて女子高生、性とかそういうことの知識を耳にしたことはあるし、その……興味があって一人で致したことも、何回か、ある。
その感覚に近いものが迫っていたことは私自身理解していたが、それが快感であるなどと認識したくなかったこともあって、私はイったという事実を否定したかった。
だが、男はそれをさせてはくれないらしい。
じゅくり、と。
わざと音を立てているのでは無いかと思うほどに水気を拭くんだ下着を、男はさも嬉しそうにぐちゃぐちゃと弄る。
「っ……ぁ……」
「ぴくぴく軽く痙攣しているの分かる、凜ちゃん? これ、凜ちゃんが気持ちいいって言ってるんだよ?」
「そ、ん……こと、言って……な、い」
「またまたそんなこと言って。ほら、ここも」
「ひっ……っぅぅぅ」
ぴくり、ぴくり。
内股が軽く震え、足に力が入らなくなっている私は、いつの間にか男に寄りかかる形だった。
男の肩に両手を置いて崩れ落ちないようにしているのだが、そこから来る身体の近さは男に好都合だったらしく、私の身体の力が抜けていく度に、男の手が私の下着を――ソレ越しに、私の女性の部分を責める。
「ほら、もう立てないんじゃないの? こっちこっち」
「は……なし、て……」
「うーん、良い香りだ。処女にしては濡れようも多いけど……まあ、これぐらいなら問題無いかな」
ぬちゅりぬちゅり、くぱぁ。
私にも聞こえるようにか、わざとらしく音を大きくして私の女性の部分を弄る男は、その指についた液をぺろりと舐め取ると、実に厭らしい笑みで私を見やる。
どきり。
その笑みが本当に黒くて、その笑みの先に待つであろうことが、自分にとって取り返しの付かないことなんじゃないかって、今更ながらに思えてくる。
けど、男にはそんなことは関係無い。
ぽろん。
むしろコミカルな擬音をつけられそうなままに、男は醜悪なそれを取り出した。
「ほーら、凜ちゃん。お待ちかねのものですよー」
「い、いや……やめて」
「ぬちゃぬちゃしててらてらして……実に厭らしいねえ。凜ちゃん、本当に処女?」
「ゆ、ゆるして……おねがい、しますから」
「まあ、試しに入れてみれば分かるかな。もっとも、入れてみた時にはどっちにしろ処女じゃなくなるけど……ねッ」
「……ッ……つあああぁッ」
ぬちり、ぬちゃり、ぬぷり。
てらてらと濡れる私の女性の部分に醜悪なそれを楽しげに塗りつける男は、時折わざとのように私の敏感な部分にそれを擦りつける。
びくり。
そう反応して濡れる量が増えるのが楽しいのか、擦りつけたりそれで押しつけたり、様々な快感を私に与えてくる。
だけど、あれが本当に入るのだろうか。
自分の股間にあるスジと男のそれの大きさを考えても、どうやっても入りそうな感じはしないのだが。
そんな恐怖に中止を懇願してみても、それは男のやる気を増させるだけであったらしい。
ちゅぷり。
そうやって自身のスジに男のが宛がわれたと認識した時にはもはやどうしようもなく、男が身体を動かしたと思った時には、私の身体は何かに貫かれていた。
それに伴うは激しい痛み、激しい喪失感――激しい後悔。
こんな所で、こんな男に処女を捧げているという事実に、何でこんなことになったんだろうと今更ながらに思う。
アイドルになったから?
努力が足りなかったから?
プロデューサーを信じたから?
とりあえず、分からない。
どれもが真実みたいで、どれもが虚構みたいで、今こうして脂ぎった男に貫かれているのも真実ならば、それも虚構みたいで。
痛みから来る混乱に、私は思考が定まらない。
「ぁぁぁ……」
「凜ちゃんの膣、きつきつで締め付けてきて……凄い気持ちいいよ。凜ちゃんも、気持ちよくなってね」
こんな痛いのに気持ちよくなる訳がない。
そう言おうにも、痛みから逃れるように肺から息を零す私の胸に、男は軽く、時には強く吸い付きながら腰の運動を開始した。
「あっ…あっ…あっ」
「ぬふふ、凜ちゃんも気持ちよくなって来たのかな? 喘ぎ声が実に色っぽいよ」
「ちがっ……いた、くて……息が」
「でもきゅんきゅん締め付けてきてる」
男の前後運動に合わせて、酸素を求めて呼吸する私の喉から声が漏れる。
肺から息が押し出される度に吐息が喉を通って声が出るのだが、それを勘違いしてか、男の腰がぬるりと円を描く。
ごりごり。
明らかな異物が、自分の中を押し広げていく感覚に、痛みとは別の感覚が頭にひっかかる。
逆回転。
ごりごり、ざら。
確かな異物感は、再び私の中を無理矢理と押し広げるのだが、その途中、不意に感じた感覚に身体が震えた。
「凜ちゃんのGスポット、見ーつけた。ここでしょ、ここが気持ちいいんでしょ?」
「ひぅッ……そ、そこぉはぁ……駄目ぇぇ」
「でもびくんびくんしてるよ、凜ちゃん? 気持ちいいって顔してる」
ざら、ざら。
さっき感じた感覚の部分に、男はそれを勢いよく突き立てていく。
ごり。
削り取られるような感覚に、何か恐怖を感じる。
何か縋り付くものが欲しくて、抱きつくものが欲しくて、でも目の前の男しかそれは無くて。
男に縋り付くのは何だか無性に嫌で、私は後ろ手にベッドのシーツと枕を掴んだ。
「ほら、ほらっ。さっきからずっとびくびくしてるよ、凜ちゃんの膣」
「んっ、あっ、はぁっ、ひゃぁっ」
「奥の方も気持ちよさそうだね。ここかな、それともここかな?」
ざら。
ごり。
びくりと感じる部分を刺激され、最奥のある固い部分を激しく突かれる。
その度に歌をうたうためにあった喉から声が漏れ出て、それが何だか悔しくて悲しくて。
でも、そんなこともお構いなしに快感を与え続けてくる男に、睨むように視線を向ける。
「おやおや、随分と物欲しそうな目をしている。なんだい、もっと欲しいのかい?」
「ちがっ、はっ、あんっ、うのにっ、んんっ、あっ」
「びくびくびくびくと震えているね、凜ちゃん。もう少しでイきそうなのかな?」
「ふぇっ、あっ、はっ、イくなんて、ひゃん、無い、しんッ」
「じゅぶじゅぶと白く泡立つ程に濡れてるのにねえ……まあいい、そろそろ一緒にイこうじゃないか」
ずんずん。
男の運動のペースが速くなる。
ざら、とする部分に押しつけるように入れられたそれは、最奥の部分でごりりと音を立てる。
そして暴れながらに抜かれたそれは再び押しつけるように入れられて。
その度にびくりと身体が震え、思考が白色に染められていく。
プロデューサーに初めてあったローカルなオーディション会場。
初めて足を踏み入れた少しぼろい、少しだけ暖かいプロダクション事務所。
CDの仕事を取ってきたプロデューサーの嬉しそうな笑顔。
後輩の面倒を頼むぞ、って頼ってきたプロデューサーの顔。
私にクビを言い渡した時の、プロデューサーの顔。
その全てが、少しずつ白く染め上げられていく。
「あっ、あっ、あっ、いやっ、しろく、ひゃんっ、したく、あはっ、ないのにっ、んくっ」
「ん? そうかそうか、白くなりたくないのか。なら……膣中に出させてもらおうとするかね」
「ふぇぅ……あっ、あっ、いや、はげし、はっ、ひゃんっ、んんっ」
「そらこれで……一番奥で出してやるぞ!」
「んんああああぁぁぁっ」
そして。
男の言うことなど、最早理解出来ない頭で、男の動きが更に早まったことを感じる。
びくり。
男が一度突く度に震える自身の中が名残惜しそうに男のそれをしごき、男がそれを抜くのを名残惜しそうに咥えるのに、身体が反応してしまう。
一番奥を突かれると気持ちいい、もっと奥に欲しい、もっと突いて欲しい。
思考が、視界が、思い出が。
白く白く染められていく。
そして、それら全てが真っ白に染まった時。
一番奥まで突き入れた男のそれから熱い何かが放たれた時、私は自分でも認めてしまうほどにイった――。
ぬぷり。
情事が済んで、男が注げるだけの精を全て私の中に注いだ後。
抜かれた男のそれに続く形で零れる白い粘液に、私は心の中だけで泣いた。
さよなら、プロデューサー。
あんたとの活動、悪くは無かったよ。