「っ…ててて」
俺は痛みを感じた頭を撫ぜ回しながら毒づいた。
時の最果て、過去において何千回と往来を繰り返した場所だ。
自らの状態を確認する。
にじや月光の鎧等の装備、極限まで鍛えられた身体とその技、そして多大な時間を過ごした記憶。
何れもあの時、ラヴォスと最初にして最後の対話をした時のままだ。
ふと見上げた先に街灯に照らされながら鼻ちょうちんをたらしながら居眠りをする老人が見える。
相変わらずだな、と思いながら、近づいた。
「何じゃ、お主は?見たところこの次元の者では無さそうじゃが…」
こちらが話しかけるよりも早く鼻ちょうちんを浮かべたまま、居眠りをしていたはずの老人が声を上げた。
「…そうですね。そうですよ。時の賢者ハッシュ」
老人は鼻ちょうちんを割る事で応えた。また嘆息を吐いた。
「それを知っているということは少なくとも時の迷い子ではなさそうじゃな。それもこの時間の」
俺は軽く肯いて、
「えぇ、幾百の世界を一人で救ってきた勇者とでもいいましょうか。今は破滅の王として君臨するつもりですが」
「ほう。それはそれは気の毒に。じゃがわしにそれを止める事も救う事も出来ん。ただ見守るだけじゃ」
老人は何処からとも無く椅子を2つ取り出し、座るように手を動かした。
俺は断る理由もないので荷物を下ろし、腰掛ける。
老人もまた腰掛けた。
「話が分かりますね。俺は一つ前の世界でラヴォスと融合したんだ。そして今の俺がいる」
「ほほう、ラヴォスと融合とな。お主、よほどかの者に評価されたんじゃな」
俺は軽くうなずき、
「まぁ、そのお陰で呪いが解けて万々歳ですけどね」
呪い、それは意思に関係なく喋ることが出来なくなり、かつ己の力を制限するものだった。
幾度か歴史を繰り返すうちに終焉を迎えた時、一度だけ喋ることが出来たが、その後は相変わらず喋ることは出来なかった。
「よほど”呪い”について癪に触れたんじゃな。しかしこのわしに話したということはわしを消すつもりかね?」
「あなたは何千回殺しても殺しつくせない。そうだろう?」
眼で殺すような視線を軽くいなしながら
「その通り。わしは完全にここの住人じゃ。ここは刻は動かず永久に不滅、ならばわしもまた永久に不滅。死ぬことなど有りはしない」
わずかな対話、それだけで意思の対話は完結する。
「お主がしたいまますれば良い。わしはそれを見届けるだけじゃ。時の番人としてな。じゃが…」
何時に無い鋭い視線が俺を貫く。
「お主を見せてくれんかね。何、痒くもないじゃろ。ただわしに見せてくれれば良い」
めんどくさそうに、しかし年老いた体を感じさせぬほどに軽やかに立ち上がり、俺をその胸に抱いた。
「ふむ、ふむふむ。あぁなるほど。…辛かったろうなぁ。悲しかったろうなぁ。いきたかったろうなぁ」
一歩も動けずにいた俺は不意に彼の胸で泣いた。
もうラヴォスとの契約した時、いやするずっと以前から失ったと思っていた感情があふれ出したのだ。
今までありえなかった記憶の共有。
共にした戦友、夜を明かした女たち、分かり合えた魔王、そして最愛の人…。
「ありがとう。俺にこんな感情が眠っていたなんて…」
時の番人は優しく頭を撫で分かち合う。
「お主の好きにするが良い。ここはお主の理想がきっと実現できる場所じゃ。時は不変では在るが変わらぬものでも無い。
お主ならば出来る。そう信じ取るよ」
やがて彼を離し、皺だらけの顔を上げ、そっと扉から覗いている不可思議な生物に話しかけた。
「スペッキオ、この者に部屋を案内してやれ。ワシは少々疲れた休ませて貰うよ」
そう言葉を切ると何時の間にか現れた椅子に腰掛け、再び眠りについた。
スペッキオと呼ばれた生物は楽しげに笑い、彼の部屋から続く回廊を空けた。
「俺・・・人型?おまえ・・・何者?」
スペッキオは対峙した者の力に応じた形になる。
力なきものには非力なカエルの姿を、力あるものには原始から在り続けるヌゥの姿を。
だが、今のスペッキオはそうクロノの分身といってもいい。
「・・・気にするな、そうだ。仮想目標を出せないか?今の力を知りたいんだ」
クロノの分身は首を傾げたが右手を軽く上げ仮想目標を出した。
それは赤いドレイク・・・に己に与えられた最強魔法であるシャイニングを思いのままにぶつけた。
神聖なる光は無謀すぎる力を伴って炸裂した。
その威力はクロノにとっても想定外であり、時の最果てという閉ざされた空間を揺るがすほどで、
時の番人の鼻ちょうちんは弾け飛び、ラヴォスが地上に現れる様を幾度も映し出す水鏡もまた水面を揺らした。
ドレイクは完全に消失しており、スペッキオも感嘆の声を漏らさざる終えなかった。
案内された先は各時代の風景が映し出され、またラヴォスの歴史が描かれていた。
「用があったら、僕にいうんだな。爺ちゃんはお休みだから」
時の番人を思いやる彼に優しく笑むと、目の前に描かれた歴史を見た。
その全てを一巡し、クロノは荷物を投げ出し、腕を組んで考えた。
ラヴォスと融合を果たし、生物としての順位がこの星において最も上位にあるとはいえ、この体は生身でありラヴォスもまた完全に無敵とはいえない。
本当に無敵であればラヴォスは過去。クロノ一人、或いは彼の仲間たちに幾度も敗れ滅ぼされるはずが無いのだから。
映像として映し出されているものの現在開いているゲートはラヴォスに通じる水鏡と現代に続くゲート、それにラヴォス降臨前の原始・・・その3つだ。
「ラヴォスの様子でも見てくるか」
ハッシュに一言出かけてくる旨を告げると、時の最果てに開いているゲートの一つに身を委ねた。
原始、それは人が人になる以前、また恐竜人が跋扈している時代でありラヴォスの到来を待つ時代である。
ゆえにラヴォスの力は微弱にしか感じられない。
何百回と繰り返された歴史では100%地上に到達したが万が一到達しなかった場合、計画そのものが瓦解する。
念の為、ラヴォスに呼びかける。返事こそ無いが相応の手ごたえを感じる。
「半年か…長いな」
俺は時の最果てへと舞い戻った。
「さてっと、爺さん」
「ん、何じゃ」
クロノは爺さんに話しかけ、間髪入れずに爺さんと呼ばれた時の賢者もまた返事を返す。
「現代における歴史の変更点があったら教えてくれ。なんせ俺はこの世界の異分子だからな」
「ほっほっほ。そんなにはかわっとらんぞ。お主の家族は何十年も前に火事にあって全員焼死。
機械を生み出しつつある嬢ちゃんがお主という人間を演じておる。まぁ相変わらずのようだが」
思わず吹き出してしまった。
過去にあるイメージは大の発明好きで、自分の才能に強い自信を持っている。
だがそれは彼女なりのララへの贖罪であった。
「ん。ならルッカの母さんは?足を失っているのか?」
「何を言う取るんじゃ?丈夫な体をもっとるよ。嬢ちゃんが貰ってきた猫の世話を焼いているようじゃな」
(む、既に歴史は変革してるのか。幾度繰り返してもルッカの母さんは足を無くしていたのに…)
「どうした?」
(なるほど、爺さんは俺の仲間の記憶は見取ったが、その家族までは見てなかったのか。)
「いや、なんでもない。他に変化は?」
「無いはずじゃよ。おぅ、現代よりあとおよそ数時間でファーストコンタクト、お主と共に在った時の少女との邂逅が在る。
おそらく、それも嬢ちゃんが代わりを務めると思うがの」
ハッシュに礼を言い、現代へと通じるゲートに踏み込んだ。
ゲートの先は魔族の村、かつてこの世界を君臨した魔王を称えた像が広場の中心を飾り、魔族の子孫たちが住む村。
どいつもこいつも人間を見下したような視線を向けるが、俺が軽く睨むだけで圧倒的な実力差が分かるだけ人間よりも物分りが良い、と言えるだろう。
本当は少しやりたいことがあるのだが、今回は時間が無いのでこのままリーネ広場に向かう。
途中、俺の中のラヴォスが疼いたが培った精神力で抑制する。
「お前もそんなに楽しみか…だがまだお前の出番は無い」
ボッシュの家があったので窓から覗いてみたが、彼の姿は無かった。
過去を思い出すに彼は現代のご時世にとても売れなさそうな武器たちをリーネ広場で売っていた気がする。
なら斬魔刀を買ってやるか。
そんな事を考えながら、渦潮の洞窟出口付近で襲ってきた怪物をニジの一閃で片付け、渦潮に身を任せた。
辺りを見渡すが、そこに彼女の家は無い。
変わりに俺の家が会ったところに彼女の家が建っていた。
「ふむ、本当にルッカが俺を演じてるんだな。
となるとルッカ自身は誰が演じるんだ?まさか一人二役じゃないだろうな」
「まぁファーストコンタクトやらを覗くしかないな」
リーネ広場はお祭りの真っ最中だ。
広場内でのアトラクションを達成することで貰えるポイントというチケットを集め、怪しげな小屋でゲームに挑戦、クリアすると景品が貰える。
過去、俺が溺愛した猫たちもここで手に入れたものだ。
だが今はそれをしている暇は無い。俺はリーネ広場を見渡せる木に登り、マールとルッカの出会いを見ることにした。
すると、
「寝坊したー」
そんな声を発しながらルッカ、お手製のゴーグルを頭につけた少女がリーネの鐘へと続く階段を駆け上がってきた。
同時に何処からとも無く現れたのかマールもまたリーネの鐘の付近を楽しそうに伺っている。
そしてファーストコンタクトは発生した。
ようするに両者の激突だが。
歴史と同じようにルッカはぶつかった少女の手を取って立たせ、失った物を探すことに。
そしてペンダントを探し出し、渡す。
俺は強い衝動を覚えた。
あのペンダントに対する強い欲望が。
だがここでそれを発するわけにはいけない。
あの時代に行くには歴史を辿らなければならないのだから。
ラヴォスとの契約、それは歴史改変を行うなら我(ラヴォス)が目覚めた時以降にしてくれ、だ。
その間に女同士意気投合したのかルッカはマールを連れ、広場の奥ルッカが作り出した物質転送装置へと向かった。
俺はゆっくりと後に続いた。
物質転送装置前は歴史どおりルッカの父―タバン―が装置の内容を説明している。
それなりに入っている観客たちはそれぞれな表情を浮かべており、ルッカは最終調整をしていた。
世紀の瞬間が訪れた。
ルッカが一回物質転送装置の間を移動した後、マールが名乗り出たのだ。
そしてマールは時を渡った。
当然ルッカは困惑するが、それがペンダントによるものだとすぐに分析した。
慌てて観客たちに成果を発表し、帰らせる。
俺も結果は分かっていたが、まさか本当にルッカが俺の代わりをしてくれるとは、と思いながら退場した。
この歴史のタバンは今までのルッカの能力を全て受け継いでいるのだろう。
一人で再調整を施し、ペンダントを手にするルッカを飛ばすことが出来たようだ。
一安心したのか、それともこれからの事を考え始めたタバンに当身を食らわし、捩れた入り口を確認する。
同時に俺の中に眠るラヴォスの力で時空を捻じ曲げる。
見据える先に彼女がいるような気がしながら。
そして歴史は中世に移行する。
俺の長年の研究であのペンダントは歴史改変を許可する小道具になっている。あのペンダントがある時代においては歴史改変が行われても不自由なく実行される。逆にペンダントのない状態で歴史を改変すると改変が行われずに歴史から弾き飛ばされる。
当初の史実―経験した歴史―では魔王が歴史改変を行おうとしても出来ず古代に行くことは無かった。またラヴォスを呼び出すことも失敗している。
だが、ペンダントを持って現れた俺たちと対峙した事でラヴォス召還をなされた。ゆえにペンダントは歴史改変の鍵であろう。
中世・・・魔王と呼ばれる魔物の王がガルディア王国と戦い続ける歴史、同時に歴史改変によって勇者が倒されてしまった時代でもある。
ルッカが帰らずの森へと向かったのを確認して俺は修道院へと足を向けた。
かつての修道院は無人で廃墟と化しているはずだった。
だが、無人のはずの修道院には修道女、廃墟同然になっている建物は丁寧に片付けられており、椅子やスタンドガラスが修復され、そして神像もまた生まれ変わっている。
俺は知っている。
この全てが魔王の手の中にあることを。
また俺は知っている。
魔王の手口も魔王の正体すらも。
「あの、どんな御用ですか?」
扉から堂々と進入した俺に気付いた修道女が素知らぬ素振りでこの修道院への用件を聞いてくる。
「加護が欲しいんだ」
「加護、ですか。ならば祈りましょう、全てを愛し全てを許容する神に・・・」
丁寧に偶像への祈りを進めつつも気配を変えていく修道女に対し、
「魔王の加護が欲しいんだが」
本題を切り出した。
「・・・少々お待ちいただけますか」
「なるべく早くしてくれ、カエルの勇者なんかがやってきたら面倒だしな」
俺の言葉に数瞬悩んだ後、
「こちらへ」
案内されたのは過去、入ったことのない入り口だった。
中は昔の納骨堂らしく壷に収められた人骨が無数に安置されていた。
修道女はその中の一つ、周りが薄汚れた古い壷の中で唯一つ新しめな壷に手をいれると、ふんっと一息入れて中にある鎖を引いた。
途端、俺の背もたれていた壁が横に動き、新たな扉が現れる。
俺は開かれた扉を潜り、その先にある水晶を見やる。
修道女もまた潜り、扉は閉められる。
彼女はようやく変装を解き、その正体ー蛇女ーを現したが、俺は驚きはしない。
蛇女は口から細長い舌を出しながら呪文を唱え始めた。
その呪文自体は遠距離通話を可能とするもので単純なものなのだが、いかんせんその発音は俺の口では発声できそうもないほどに雑であった。
一人では使えんな、と考えているうちに
「どうぞ、繋がりました」
といわれた。
水晶には不細工に崩れた顔―たしかビネガーと呼ばれていたな―が映し出され
「はじめまして、かな。ビネガーさん」
「ゲ、ゲウ、何故私の名前を知っている!?」
「どうでもいいことじゃないか、そんな事より取引といこう。」
ビネガーの慌てた様子を尻目に俺は取引を始めた。
「魔王軍の狙いは世界征服?そんな小さなことじゃないだろ。魔王の欲する物を俺は知っている。―ラヴォス―この一言を魔王に伝えてくれ。
俺の賭けだとすぐに返事があるはずだ。あったら、王妃は解放してもいいだろ?欲する物が手に入るんだから」
「き、貴様。何が目的だ―「いいだろう」―ま、魔王様」
俺は思わず口笛を吹いた。
水晶にはビネガーと他、黒頭巾を被った魔王も映し出されていた。
蛇女は直ちに平伏したが、俺には権威など関係ない。
「話が相変わらず早いな」
「あ、相変わらずとは――」ビネガーの言葉を切って突如ガラスの砕ける音が辺りに響いた。おそらく勇者様が来たのだ。
「もう来たか、じゃあ後で」
返答を待たずニジで真横に両断し、水晶と平伏したままの蛇女も切り殺す。
(さて、王妃を助けましょうか)
オルガンに隠されたスイッチを入れる事で開かれる扉に入ると女、リーネ王妃は、はっとベッドから身を起こした。
後ろ手に縛られた様子は牢囚とも言える。
「…うぅん…」
日の目を見ない牢に入れられて突然明かりが差したので眩しそうに呻いた。
「リーネ様、助けに来ました」ぜいぜい、と今駆けつけたかのように見せ掛けながら牢の鍵を開け返事を待つ。
「あ、ありがとうございます。王は…無事ですか?」
「大丈夫です、城であなたの帰還をお待ちです。さぁ」
安心して牢の入り口に差し掛かったところで鳩尾に一撃。
「ぁくぅぅぅ…くっ」
目を見開き、突然の痛みに苦悶の声を上げ倒れこむ。
「でもこのまま開放するのは面白くない」がらりと変わった口調。
「政治的取引があったまでだ。そうでなければお前など見せしめのために殺しているところだ」
言葉を切り、力を緩め、手枷をはずす。
ようやく自由になった手を掴み持ち上げる。
「その分良い思いをしてもいいだろ?」
怯え、その不自由な体で後ずさる。
俺はニジで肌をなぞる様に着ているドレスを切断していく。
豊満な乳に健康的な体、城住まいでありながら脂肪の付き所がほとんどない。
理想的な肉体だ。
乳を片手で掴み、その弾力を確かめる。
「はっ…くぅぅ」
「でかい乳だ。旦那によく揉まれたようだな」
「そんな・・・はぅっ」
一段と強く揉まれ、言葉が切れた。
「さてと、下はどうかな」
その髪に似て金色に輝く陰毛は丁寧に逆三角形整えられていた。
「ふん、綺麗なもんだな。まぁ躾けるには丁度いいか」
言うなり、金属で出来た下着を取り出す。
「足を開け、痛い目に合いたいなら別だが」
先ほどの鳩尾を思い出したのか瞬く間に足は開かれる。
純白のガーターベルトだけが下半身を覆っている。
木刀の柄の部分だけを切断し、切り目をならす。
ミドルポーションをそれに塗り、秘所に挿入する。
大して濡れてもいない秘所はそれを受け入れたが、
「ひひぃ・・・」
更にそこを金属で出来た下着、貞操帯で覆い、カギを取り付ける。
これでカギを外さない限り、膣に入り込んだ木刀の柄を取り出す手段は無い。
貞操帯には、排泄用の穴だけは前と後ろに開いているが、性器には一切触れることができないように覆われている。
妙な圧迫感を感じながらそれを沈める手段はない、という非常に残酷な状態が出来上がったわけだ。
「もういいぞ、これでも着てろ」
俺は用は終わったとばかりに荷物から麻のドレスを取り出し、渡す。
「着替え終わったら、声を上げろ。途中まで護衛しましょう」
「何よ…」
さしもの王妃も裸で帰るのは嫌なのか放られたドレスを身に着け、いいわよ、と声を上げた。
帰らずの森と呼ばれる不気味な森、城下に広がる森は彼と王妃を以外にも暖かく迎えた。
彼の圧倒的な殺気に森は大人しく、住まうモンスターも住処から顔を出すこともない。
不気味なほど静寂に包まれた修道院、要所要所に配置されたモンスターは穿たれ焼かれ切り捨てられていた。
「王妃、別の助けの者がやってきているようです」
だが、王妃は気が気じゃない。
こつこつと歩くたびに貞操帯と柄がぶつかり合い、その度に声を上げそうになって口を押さえる。
それを繰り返すうちに内股になってもじもじと腿をすり合わせる。
だが、金属製の貞操帯がそれを拒み、どうやっても、それ以上の快楽を得ることは出来ない。
また下着も無いままに着ている麻のドレスに乳首が擦れ、甘い感覚がじれったい。
「ほら、急がないか。魔王にまた捕まるぞ」
そんなこともないのだが、急かして見る。
「は、はい。くっ、がんばり・・・あぁ…まぅ」
とうとう一度も上りきれずに地下教会にたどり着いた。
閉ざされた扉の向こうでは戦闘の音が聞こえる。
「俺はここまでだ。しばらくすればやつらが来るだろう」
王妃を置いて元来た道を戻ろうとする。
「あ、待って。こ、これの鍵を…」
「これってなんだい?示して言ってくれ」
ドレスの裾を持って下着代わりに使われている貞操帯を見せながら
「て、貞操帯です。貞操帯の鍵を…ください」
「あぁ、そうだね。目を閉じて口を空けてくれ」
直ぐにそのとおりにする王妃。
(馬鹿な奴だ)
鍵をガムのようなもので包むと口に放り込み、無理に閉じさせる。
無論、抵抗をするものの俺の力を拒みようなく…
「糞から鍵が出てくるまでそのまま過ごすんだな。それまで王との行為はがんばって拒めよ。じゃあな」
憤慨の声を後ろ目に俺は現代へと帰還する。
(あ、魔王との約束、忘れてた)
俺が現代へと帰還した後、2時間後くらいにはマールとルッカもまた帰還を果たした。
史実通りルッカはマールを連れ立って城へと向かう。
それが彼女を追い詰める事になっていても。
「捕らえよ!」
ルッカが衛兵たちに十重二十重に囲まれ拘束される。
後ろの方ではマールが「無実よ」と叫んでいるが大臣に口を押さえられている。
(あの大臣…殺しといたほうがいいかなぁ。でも史実通りだとまだ殺してはいけないな)
気配を完全に殺し、その様子を遠巻きに俺は眺めていた。
(ルッカ…すまないね。だが援助はしてやるよ)
俺は牢屋へと引き立てられるルッカを後に広場へと舞い戻った。
刻は一転、状況は裁判の真っ最中。
原告ルッカは無罪を主張しているが、何も知らされていない陪審員は有罪と見ている。
そこに次々と証人がやってくる。
「あの人、私に猫をくれたの。かわいいでしょ?この子」「ニャーニャー」
「あぁあの嬢ちゃんか。あの子ならマール姫の事情を聴いた上でペンダントを探してあげてたぜ」
「わしに弁当を恵んでくれた子じゃな。いい子じゃよ」
等々、ルッカ自身が困惑するほどに無罪とも言える印象証言が出てくる。
無論、俺が金をばら撒き、姿を化けテント小屋で猫を貰い、良い証言を出してくれる証人だけを集めたのだから。
よって陪審員は全て無罪となった。
だが史実通り、大臣の独断で有罪、死刑宣告とされた。
ルッカが再び牢へとつれられていく。
ぴちゃん―
水漏れのような滴る音が響く。
ルッカは差し入れとして差し出された中身に驚愕していた。
中身こそミドルポーションを収められた箱であるが、その底には彼女の扱っていた、いやそれ以上にフィーチャーテクノロジーである強力なプラズマガンが内包されていた。
(なんでこんなものが)
物には驚いたものの逃げ出さねば死刑となってしまう。
彼女はこの状況を抜け出すために衛兵がいないことを確認し、その銃で背後の壁を打ち抜いた。
「おっ」
牢がある辺りの壁を眺めているとその一部がぽろっ剥がれる様に穴が開いた。
「動き出したな」
「ルッカ!無事か」
タバンの手には重火器、それも木の扉程度なら軽々吹き飛ばせる程度のものが握られていた。
一撃で衛兵を吹き飛ばすと、ルッカにお手製の銃を渡そうとした。
だがルッカをそれを止め、
「えっ。父さんの差し入れじゃないの?この銃」
とプラズマガンを見せる。
「こりゃ…どうしたんだ?俺のじゃないぞ。それにこの構造…まるで未来の武器じゃないか」
「差し入れ箱に入ってたのよ。じゃ誰が…」
「まぁいい。逃げるぞ、この回廊を渡れば直ぐだ」
タバンとルッカはドラゴン戦車の待つ通路を駆け出した。
「くっ…ご先祖様!!!」
俺はニジの穢れを祓うように刀の血糊を飛ばし鞘に収めた。
場所は裁判所。
やはり地下教会で倒された奴の子孫であり、内部からの占領を考えていたようだ。
大臣は大臣として死、その罪はルッカに擦られる事になるが、気にしてはいけない。どうせ一波乱起こすのだから。
「そろそろ未来へのゲートが開くな、便乗するとするか」
「あぁん、なんてしつこい連中なの!」
「仕方ないさ、この国を守るって連中なんだから」
「私の命令を聞きなさいって!」
掛けながら迷いの森を疾走する3人の男女、その後を何十もの衛兵が追い立てる。
俺はその様子を城の一角から眺めながら、タイミングをうかがっている。
遂に袋小路へと追い込まれ、そしてゲートを発見する。
(忌まわしい事にあのペンダントで開かなければ容易に開くことは出来ないからな)
ゲートが開かれ3人は未来へと飛来する。
同時に衛兵たちも袋小路に現れる。
「何処に言った」
「ここに隠れるところは無いぞ!探――」
口々に唱える言葉は最後まで放てなかった。
「サンダガ」
神の雷が彼らに天罰を与えたからだ。
「さて、先回り先回り」
ラヴォスの力を行使し、未来の、それも死の山と呼ばれる場へと我が身を誘った。
未来―それはラヴォスに滅ぼされながらも細々と機械文明の名残を使い生きる時代―
人間が住むには過酷といえる万年雪が積もる環境。
そして疲労こそ取れるものの絶望的に空腹感を満たすことのないドリームマシン。
この時代全てにおいて生きることは過酷、そのものである。
そんなラヴォスの誕生を裏付ける場所、死の山は異端とも言える場所である。
何故ならばラヴォスが誕生しながらにして死んだ、意味深な場所であるからだ。
その麓にラヴォスの生態系を研究する世界で唯一の研究所があった。
史実では正気を失った科学者。後にヌゥに記憶を移植しラヴォスを倒す切り口を作り出した。
「理の賢者ガッシュ・・は寝てるな」
見事なまでの寝っぷりに俺は呆れるしかない。はたく、叩く、サンダー、万能薬、エリクサー、シャイニング、ラストエリクサー・・・ありとあらゆる手段を試してみたが起きる気配は一向に無い。
「ハッシュよりも良い性格してるんじゃね?史実じゃ気づかなかったが」
封印された扉の向こうにある時の翼を見ておきたかったがこの様子では仕方ない。
―――――――――――
ここから何故か原始
―――――――――――
「現時点の想定で俺の障害になりうるのは原始に住むエイラだけだな。他の連中は俺の意思だけでも蹴散らせるだろうな」
エイラ、かつての仲間であり最強まで鍛え上げたその拳はともに戦っていた時ですら戦慄を覚えるほどであった。
また余りにも魅力的な肉体に俺に施された呪いを恨んだりもした。
だが、今のうちに芽を摘んでおけばそれも杞憂で終わる。
また、彼女が持つドリスストーンはグランドリオンに次ぐいや、圧倒する武器の製作には必須だろう。
ボッシュの買収には何か手土産が必要だろうし。
クロノ=ラヴォスは唯一自分を滅ぼすことが出来る存在に育つだろうエイラを目標にした。
時の最果てで二つ開いているゲートの一つ、ラヴォスが到達する以前の星へといざなうゲートに身を委ねた。
原始、それは人間が完全に人間になる前であり、また恐竜が恐竜人として跋扈している時期であり、そしてラヴォスがこの星に到達する前の時間である。
ゆえにラヴォスの力を使うことは出来ない。
未だ宇宙を飛来するラヴォスがこの星に歴史的にたどり着くには後一年という時間が必要だろう。
まぁかのラヴォスの力で必要なのは圧倒的な存在感と畏怖という力のみだが。
それまでに最低限の状況を作り上げなければならない。
軽く手を握り、魔力の発現を確かめながらそれを放つ。
サンダー!
突如、頭上に暗雲が立ち込められ、飛来した雷が彼の掌の先、巨大な大樹に落ち真っ二つに両断する。
そして左右に横倒れしつつある大樹の幹に対し、にじを抜き放ち、さらに上下に断つ。
動作に疲労の色はない。
「魔力はラヴォスの力で強化されたようだな。力はそう変わらないというのに」
時の最果てで発動したシャイニングの威力は余りにも強すぎた。
普通に使うにはとても無理なほどに。
改めて自分の能力を確認すると、エイラの住む村へと足を向けた。
原始の村は余りにも質素であり、また文明的ではない。
だが、そこに住む人は現代の者に比べ非常に逞しい。
彼女も例外ではなかったはずだった。
「くはっ」
獰猛な肉食獣の毛皮を巻いた体が地に付く。
「どうした?その程度か」
目前の男は余裕を醸し出しながら、挑発している。
周囲には村の男たちが心配そうに総出で身を乗り出している。
ソレなのに・・・。
「がはっ……は」
ふらつきながらも立ち上がり、一抱えほどある巨岩を投げつけた。
それは歪んだ曲線を描きながら男の胸に当た…るはずだった。
だが巨岩は剣によって真っ二つに、いやもはや岩といえぬほどに細かく切り刻まれていた。
「つまらないな。唯一俺に敵うと思ったんだが」
言う終わる前に男の足蹴りはエイラのわき腹を抉り、吹き飛ばされる。
「じゃあ約束どおり赤い石とエイラ、お前を貰っていくぞ」
言うが早いかお互いに掛け合った賞品を置かれた台に安置された赤い石を持ち上げると、ぴくぴくと痙攣しているエイラを片手で持ち上げ肩に乗せた。
だれもが無言であった。
そしてその沈黙は男の姿が見えなくなるまで続くのであった。
時の最果て、クロノ以外誰一人訪れることの未だ無き聖域。
そこに二人目の来訪者が連れて来られた。
口に詰め物をされ、体を厳重に縄で縛られ、四つんばいで歩くことを強制された一人の雌。
衣服代わりの獣の皮こそ剥されてはいないものの、その誘惑的な肉体には誰もが情欲を抱くだろう。
が、この男、クロノは抱いてなかった。
否、過去でこそ抱いていたが、その後一生を捧げるにたる人物が現れて以来、彼の肉体がうずいた事は無い。
ゆえにエイラは遊び道具にすぎないのだ。
それもゲーム盤の一コマに。
エイラはアレから爺さんに預けたが、年に似合わずハードな調教を施した。
初めはフェラをするにも噛み掛けるという酷さだったが、
尻に対するスパンキング、それも赤く腫れ渡るまで続けたのが効いたのか酷く素直にいうことを聞いてくれるようになったようだ。
激しい運動(または戦闘か)で破れていたのか処女ではなかったマンコを貫き、アナルも洗浄した後にいただいた。
フェラに始まりその豊満な乳で喜ばせる事、精液を飲ませる事、
果ては尻の穴を舐めること・・・。
今は両膝に乗せたエイラの胸を乗せ、右手で股座をいじくりながら。
「んん!!」
エイラが軽くイったようだ。
ついでに尿がこぼれ落ち、規則性を持った石畳に流れ落ちた。
「これ、お漏らしをしたらいかんじゃないか。ほれ、お主が舐め取れ。」
そういうとエイラの口枷を取り、老人とは思えぬ力で体を持ち上げ、顔を彼女の漏らした尿に突っ込んだ。
「んあぁ…いやぁ…」
「何がいや、じゃ。それが終わったら、入れてやるぞ。お前の濡れに濡れた所にな。」
数日(ここに時間の概念があったとして)前まで枯れた雰囲気を持った老人は見事なまでに勃起したそれを取り出しエイラの頬を叩いた。
途端、石畳に流れた尿を舐め取り、啜り始めた。
「いい感じだなエイラ。俺は現代に向かうが、歴史的にここに訪れる時には、隠しとけよ、さすがにそれは」
「なぁに。それまでにはもっと純情になっていると思うがの。自分から股を開くくらいには」
爺さんの軽口を聞きながら、現代へのゲートをくぐる。
――――――――――――
さらに時間が飛んで中世
――――――――――――
カエルがグランドリオンを大地に突き刺す。
そして疾走。
大地を切り裂きながら巨岩を目の前にして飛翔。
陽の光を浴びグランドリオンが光り輝く。
風と雷の力を爆発させた剣を持ってカエルは巨岩を両断した。
戦いの序幕に相応しい轟音であった。
俺たちの前に開かれた道は太古の巨竜ティラノが通れるほどに巨大な洞窟の入り口であった。
カエルが感慨深く、マール、ルッカたちが嘆息を漏らす中で俺はやはり微笑していた。
「すまない、俺の出来ることはここまでだ。じゃあな、がんばれよ。」
「そうか、お前とは一対一でやりあいたかったな」
勇者としてカエルは俺を真に認めたようだ。
「ふふ、俺の圧勝になりそうだな」
「どうだか、グランドリオンを取り戻した俺は負けはしない」
軽く腕をぶつけ合い、再会を約束した。
短い間の仲間たちの残念そうな声を尻目に俺はその場を後にし、薄く笑んだ。
「次ぎあう時は敵として、かな」
「おっと、人払いはいいのかい?これは相当に危険な話だと思うんだが」
魔王は額に皺を寄せたが側近たちを眼力だけで立ち退かせた。
「そうだな、これで信じてもらえるかな」
俺はポイっと何かを魔王の近くに捨てた。
軽い音。
何の変哲も無い黒い石。
だがそれはこの時代には存在しないロストテクノロジーの塊。
そしてこれが確かに存在した時代の産物。
とある賢者がお遊びで作り上げた、だが使い方さえ分かれば至高の一品。
―――未完