どうしたのだろう…身体の中心が疼いて眠れない…。  
ヤマネコは独りそっと宿を抜け出した。  
波の音が心を騒がせる…。   
彼は潮の香りにその良く利く鼻をヒクつかせた。  
 
 
足音がした。振り返るとそこにはリデルが立っていた。  
(眩しい……。)ヤマネコは目を細くした。  
以前の自分ならそう思わなかっただろう。  
でも今は…  
 
「…眠れないの?セルジュ……」リデルの問いかけにヤマネコは  
かすかに頷いた。 「うん… 起こしちゃってごめん」  
身体はヤマネコだが中身はセルジュ、そんな異常な状態に  
もう幾日耐えてきただろうか…。  
 
今の自分にはリデルが眩しかった。  
(属性が変わるって… こんなに辛いもんなのか。)  
リデルは闘いの時以外でも身体から白い光を  
発している。 自分が元の身体の時にはわからなかった。  
でも、今、ヤマネコの目を通し見るリデルは本当に  
眩しくて、長く見てはいられない。  
 
「…どうしたの? ここ数日ヘンね…」  
リデルが近寄ってくる。 するとヤマネコ、  
いやセルジュの股間が反応した。  
(……!)「リデル!ちょっと待って…!  
それ以上近付かないで…!」  
「…え…?」リデルは驚いて足をとめた。  
 
セルジュは呼吸を整えようとした。  
股間の昂ぶりを抑えようとして自然と  
前かがみになる。  
リデルはまた前に歩き出した。  
「大丈夫? とても具合が悪そうだけど…」  
 
リデルが近付くと、また股間が熱くなる。  
身体の中心が次第に硬さを持ち始めたのが  
セルジュにはわかった。  
「ご… ごめん! ホントに大丈夫だから…  
だから、それ以上ホントにこっちに来ないで!」  
リデルがピタリ、と足をとめた。  
 
リデルは少し傷ついていた。  
ヤマネコの姿をしたセルジュがこっちに  
来るなと言ったことが、リデルには何故か  
自分自身を否定され拒絶されたように感じていた。  
リデルは他人からそんな風に拒まれたことは  
一度も無かったのだ。  
お嬢様お嬢様と人からかしづかれても、  
自分ではそういう扱いに甘えないようにして  
きたつもりのリデルだった。  
しかし、面と向かって人から避けられる  
ことには慣れてはおらず、リデルは少し  
戸惑った。  
 
ダリオを失ってから、彼女はずっと心が空っぽだった。   
カーシュやグレンの気持ちには何となく気付いていたが、  
とても応えられるような状態ではなかった。  
しかし、セルジュという青年がヤマネコの姿で  
一緒に旅をするようになると、リデルの気持ちは  
何故かざわめいていた。  
 
ヤマネコはリデルにとって心の底から  
恐ろしいと感じる相手だった。  
父と一緒に居るヤマネコを見かけると、  
いつも身体がこわばり、寒くもないのに  
ぞくっとした。 ヤマネコの冷たい目を、  
リデルはなるべく見ないようにして日々を  
送ってきた。  
(あれは… あの目は見てはいけない…。)  
冷たく、人の心を凍らせる目。 残忍で、  
暗黒を思わせる暗い穴の様な…。  
 
その恐ろしいヤマネコの姿をしたセルジュ。  
初めは恐ろしくて時々無意識に後ずさりしそうに  
なった。 だが、目の前のヤマネコが発している  
雰囲気が全く違うものであることに気付くと、  
リデルは恥ずかしそうにまたセルジュに  
近付く―― そんな毎日を繰り返す内、  
リデルは今ではすっかりヤマネコの姿のセルジュに  
慣れてしまった。  
 
慣れたどころか、今はセルジュの姿が見えないと寂しい…。  
リデルは、自分がいつもヤマネコ姿の  
セルジュを目で追うようになっていることに気付いた。  
闘いの場ではヤマネコの姿をしたセルジュは  
頼もしかった。   
一つ一つの攻撃を決めていく姿は冷たく、厳しく、  
まるで元のヤマネコがそこに居るかのようだった。   
しかし、一旦戦闘が終わるとセルジュは屈託の無い  
17歳の青年に戻った。  
 
そのギャップに、リデルは少しずつ惹かれていった。  
張りを失った心に、また感情が溢れ出していた。  
しかし今、セルジュは傍に寄ることさえ許してはくれない――。  
リデルは些細なことと思いながらショックを受けていた。  
「そう… なら私は部屋に帰るわね… でも、本当に  
大丈夫…?」  
「あ、ああ… 大丈夫。 だから早く戻って。  
…ね?」その瞬間、セルジュの中でさっきから  
こらえていたものが暴れ出した。  
「う…!」(駄目だ… もう我慢が……!)  
 
セルジュは砂浜に膝から崩れるように座り込んだ。  
(…あ… で、でちゃった…。 どうしよう…。)  
リデルが駆け寄る。 「どうしたの!?」  
セルジュは恥ずかしさの余りリデルに背中を  
向けた。 リデルはセルジュの肩を抱いて回り込む。   
「どうしたの? セルジュ… どこか痛いの?」  
そう言いながらリデルはセルジュを覗き込んだ。  
セルジュが股間を押さえている。  
「何? ここが痛いの? だめよ、手をどけて!」  
セルジュは必死の力で手をどかされまいとした。  
しかし、リデルは人の怪我や体調のこととなると  
何故かびっくりするくらいの力が出た。  
「だめ! ちゃんと見せなさい!」  
しばらく揉み合う内に、リデルはセルジュの手を  
もぎ取ることに成功した。  
 
「!!」 リデルの動きが止まった。  
「いや… あの… これは… これはさ。  
あの… 何ていうか… その…」  
しどろもどろのセルジュにリデルの顔が  
赤らんだ。   
「い、いや〜 何て言うのかさ、あのー、  
数日前から僕ヘンなんだ… ご、ごめん。  
ヘンなもん見せて…」白いもので濡れた  
着衣はどんどん冷えて冷たくなっていく。  
(うぅっ、気持ちが悪い… 早く着替えたい…。)  
「多分……」 リデルが口を開いた。  
 
「多分、発情期なんだと思うわ…。あなた…」  
「へっ…?」 (は、発情期…?)  
セルジュはリデルの口からそんな言葉が出てきた  
ことに軽い衝撃を覚えた。 リデルの発した  
「発情期」という言葉の響きだけで、既にまた  
下腹がむずむずしてきた。  
「は、発情期って… そんな… 犬とか  
猫ならわかるけど……」 そこまで言って  
セルジュはハッとした。  
「え…? ぼ、僕… そうなの…?」  
「私も亜人のことはよく知らないからわからない  
けど… その可能性はあるんじゃないかしら…?」  
 
「そ、そっか…」  
そうか、それなら説明が付く…。 数日前からの  
この異様な昂ぶり…。 女性を目にしたり、  
軽く衣服が擦れるだけでも自身がびんびんに  
立ってしまう。 いくら中身は17歳の健全な  
男の子って言ったって、一日に何回も何回も  
大きくなったりトイレに駆け込んだりする  
のははっきり言って「……。」な感じだった。  
今だって手も触れずに射精してしまった。  
昼間だって何回か抜いているのにそんなことに  
なったのは正直驚きだった。  
 
「!?」 セルジュは慌てた。  
リデルがセルジュのズボンに手をかけていた。  
「な、なに!?」 咄嗟にセルジュは  
自分のズボンをつかんだ。  
「何…って、このままじゃ気持ち悪いでしょう?  
それに春とは言えまだ夜は冷えるわ。   
このままで居たら風邪引いちゃう」  
そう言いながら、リデルはぐいぐい  
セルジュの穿いている物を脱がしにかかった。  
 
(う、うそだろ―!? ちょ、ちょっと  
待ってくれー!!) セルジュは思わず  
ズボンを押さえて立ち上がった。  
「や、やめてよ! 僕は別にいいよ!」  
しかしリデルの言葉に考え込んで油断していた  
せいで、セルジュのズボンはすでに  
半分脱がされてしまっていたのだ。  
セルジュの抵抗はむなしく、リデルは  
とうとうセルジュのズボンを足首まで下げた。  
 
「――!!」  
「!!」  
二人は固まった。  
リデルの目の前には空に向かって高々と  
存在を主張するセルジュの、いや、  
モノとしてはヤマネコの、怒張した一物が  
そそり立っていた。  
 
セルジュは恥ずかしさに全身から汗が噴き出した。  
するとそれは辺り一面にえも  
言われぬ芳香を放った。  
「――!」 リデルがぴくん、と身体を震わせた。  
 
「…あ… なに…?… これ…」  
リデルの瞳が小刻みに揺れた。  
唇が少し開き、身体の力が抜けていく。  
全身の力はゆるゆると抜けていくのに、  
どこか身体の芯が何かに突き動かされる  
ような、不思議な高揚感がリデルを包んだ。  
 
「う… うぅ…ん…」  
リデルの手がセルジュの股間に伸びた。  
「えっ!? うっ… くぁっ… リ、  
リデルさん…?」  
リデルの右手はしっかりとセルジュのモノを  
握っていた。 「うふ… セルジュの…  
おおきい…」 そう言いながらリデルは  
ゆっくりと右手を動かした。  
 
「――!!」 快感にセルジュは思わず  
声を立てそうになった。 自分の両手を  
リデルの肩に置き、何とかリデルを  
引き離そうとする。 しかし  
リデルの手の動きがセルジュの抵抗を  
次第に弱めていった。  
 
リデルは右手で陰茎をしごきながら  
左手をセルジュの腹へ這わせた。  
右手はゆっくりと竿の根本から亀頭の  
手前までをスライドしている。  
リデルは決して亀頭を触らなかった。  
あくまで陰茎を優しくじっくりと愛撫  
している。  
 
朦朧としてくる頭を振りながら、  
セルジュは力を振り絞って言った。  
「リデル…さん! …こ…こんな  
こと… やめてください…!」  
リデルの右手の動きが速くなる。  
「―あ! やめ…やめてください!!」  
セルジュは快楽が自分を打ち負かそうと  
しているのを感じた。  
どんどん射精感が強まってくる。  
 
リデルは口元にかすかな笑みを浮かべて  
セルジュのそそり立ったモノを一心に  
しごいていた。  
ほんのりと上気した頬が、妖艶に美しい。  
 
突然リデルの左手が胸に伸び、  
セルジュの胸に触った。  
セルジュの左の乳首を親指と人差し指で  
軽くつまみ、くるくると捏ねる。  
「あッ!」 セルジュは身を固くした。  
同時にリデルは右手をセルジュの一番  
過敏になっている部分へと進めた。  
カリをくるりと手で包みながら  
人差し指でちるちるとセルジュの  
亀頭の先っぽを撫でる。  
「う… あ… き…もちいい…」  
セルジュが呻く。  
 
リデルは右手の人差し指を細かく  
動かしながら尿道の割れ目に擦り付ける。  
時々ぬるり、とセルジュの先走りを  
亀頭全体に塗り伸ばす。  
右手を軽く握り、筒状にしたままで  
亀頭全体を擦り上げ、擦り下ろす。  
左手は休まずにセルジュの胸を刺激している。  
 
リデルの両手の動きに、セルジュは  
身体を逃したいような押し付けたいような  
たまらない気持ちになっていた。  
抗いようがない射精感はどんどん  
大きくなる。  
 
きゅっ…!  
リデルが乳首をつねりながらセルジュの  
尿道を深めにえぐった時、セルジュは  
自分の中で堰き止めていた物が限界に達した  
のを知った。  
「あ… 駄目…! 出る…!!」  
 
セルジュは勢い良く白っぽい液を  
ほとばしらせた。  
びくっ、びくっ、と腰が動く。  
 
セルジュが放った精液は、リデルの顎  
から胸元を濡らした。  
 
リデルはとろん、とした目で、嬉しそうに  
セルジュを見上げた。  
そして、おもむろにセルジュのまだ  
ぴくぴくしている竿に唇を寄せ、そのまま  
ちゅるり、とくわえ込んだ。  
 
(―――!!)セルジュは思わずのけぞった。  
(す―すごい…きもち… いい…。)  
リデルはそっと口いっぱいにセルジュの  
モノをくわえ、のどの奥を使うようにして  
残った精を吸い上げた。 決して強すぎず  
優しいその刺激に、セルジュの腰ががくがく  
と揺れた。  
 
セルジュは砂浜に膝からへたり込んだ。  
リデルの口は自然とセルジュのソコから  
外れ、リデルはそっとセルジュの背中を  
抱えるように抱いた。  
そのまま二人はもつれるように身体を  
横たえた。  
 
 
しばらくセルジュがぐったりとしていた後、  
リデルが動き出した。  
着ている物をひとつずつゆっくり  
脱いでゆく。  
(―――!? リ、リデルさん、何を―?)  
セルジュが慌てて身を起こした時、リデルは  
全裸であった。  
流れる髪が素肌にまとわりついている。  
輝く素肌と髪の美しさに、セルジュは息を  
のんだ。 この瞬間セルジュの理性は  
そっと頭にしまい込まれた。  
本当にリデルは自分の中から  
光を放つかのようにまばゆく輝いていた。  
(キレイだ… 月の女神ってこんななのかも  
知れない…。) そう思いながらセルジュは  
頭の芯が痺れてくるような奇妙な感覚に  
喘いでいた。  
 
リデルはそっとセルジュのヤマネコの身体に  
寄り添い、セルジュの唇に自分の唇を重ねた。  
互いのうすく開いた唇から唾液がもれ、  
そっと舌が絡み合う…。  
初めはおずおずと、次第に大胆に…。  
 
うねうねと柔らかいキスの感触で  
またセルジュは自身が硬くなるのを感じた。  
リデルの乳房が自分の胸にふれるか  
ふれないかの所を揺れている。  
思わずセルジュはリデルの豊かな乳房を  
つかんだ。  
「―――!」 リデルの身体が反り、  
自然と二人の唇は離れた。  
 
リデルの胸は細い身体に不似合いなほど  
豊かで、細くくびれた腰の上に  
形良く揺れていた。  
セルジュは思わず両手でやわやわと  
リデルの両の乳房を揉みしだいた。  
「…あ… あ…ふ…」 リデルが喘いだ。  
セルジュの手には、はみ出すくらい  
たっぷりのリデルの乳房が載っている。  
つかもうとすると適度な弾力と  
柔らかさが手に伝わってくる。  
リデルの喘ぐ声と、自分の指が埋まるように  
食い込んでいるリデルの白い乳房の視覚が  
セルジュを興奮させた。  
 
リデルはセルジュを押し倒し、  
セルジュの上にまたがった。  
「ちょ、ちょっと待ってください…!」  
突如セルジュのなけなしの理性が戻ってきた。  
「ぼ、僕… 初めてなんですよ…。」  
リデルは軽く微笑みながら首をかしげた。  
「いや… あの… その… だからですね…」  
リデルは話を聞きながらもせわしなく手を  
動かし、あっと言う間にセルジュの上の服を  
すっかりはだけてしまった。  
リデルがぺたっと身体を添わせた。  
(―! む、胸が…!) お互いが裸で  
身体を重ねることがこんなに気持ちが良いと  
いうことが、セルジュには驚きだった。   
肌を通してざわめく愉悦がこみ上げてくる。  
 
「ね… でも…ね… セルジュ…」  
リデルがくすくす笑いながら言う。  
「さっきの… あれも… 初めてなんじゃ  
ないの…?」 図星をさされてセルジュは  
うろたえた。  
「た… たしかに… で…でも…」  
「でも… なぁに…?」  
そう言いながらリデルはちゅるっと  
セルジュの胸の突起を舐めた。  
「あ…!」 セルジュは思わず声を上げた。  
「だい… じょうぶ… 私に… まかせて…  
…ね…?」 乳首を舐めながら途切れ途切れに  
囁かれ、セルジュは再び理性が薄れていくのを  
感じた。  
 
(―――!)   
白い脚を広げて自分の上にまたがったリデルの姿に  
セルジュの興奮は更に高まった。  
「だって… 私ももうあなたが欲しいの… ほら…  
見て……? もうこんなになってるの…」  
リデルはセルジュの片方の手を取り、自分の  
秘所にあてがった。  
そこは確かにもうリデルから溢れ出した蜜で  
ぐちょぐちょだった。  
 
リデルはセルジュの手を放し、自分の右手を添えながら  
ゆっくりとセルジュの自身の上に腰を下ろしていく。  
セルジュのソレは今ではもう痛いほどに  
硬くなっていた。  
リデルの割れ目に自身が呑み込まれていく。  
その光景を、セルジュは恍惚として眺めていた。  
 
リデルが腰を下ろすにつれ、セルジュの  
竿がずるずるとリデルの秘所に吸い込まれていった。  
リデルの内部は温かくてぬるぬるだった。  
セルジュはリデルの膣が巻き付くようにして  
自分を締め付けてくるのを感じ、呻いた。  
(…う… うわ… なんだ… これ…。  
すごい… もうスグにイッちゃいそうだ…!)  
 
リデルはそんなセルジュにはおかまいなしに  
腰を動かし始めた。  
「…あ… あ… …あン…あン… あ…あ…」  
リデルの顔が愉悦の波に揺らいで  
うっとりと仰のいていく。  
「あ… あ… あ…」 セルジュもリデルの腰の  
動きにつれて思わず声が洩れた。  
 
リデルは浅く深く、セルジュのモノを抜き差し  
しながら自在に動いていく。  
腰を引いて挿入を浅くした時、セルジュの竿はカリで  
引っかかって抜けずに止まる。  
腰を沈めて深く挿入した時、セルジュの竿はリデルの  
充血しせり上がった内部に絡め取られて  
奥に奥にと導かれる。  
それを飽きず繰り返す内、二人はどんどん  
高みに上っていった。  
 
 
「あ―! もう… もうだめ…! もう…  
もうイク……!」 リデルがたまらず呻いた時、  
セルジュは達するのを堰き止めていた堰が  
自分の中で一気に壊れるのを感じた。  
「ぼ… 僕も… 僕も…もうイキたい……!」  
二人はしっかりと互いの手を取り合った。  
 
「あ…あーーーーーーーっ!!!」  
「あッ あッあッあッあッ!!」  
二人は同時に快感の波に身体を任せ、  
一番高い所へと登りつめた…。  
 
 
気が付くとセルジュは独り、浜で  
寝ていた。  
(――? …あれは… 夢…?)  
セルジュはぼんやりする頭を押さえて  
身体を起こした。  
(…でも… 何だか身体がすっきりする…。)  
不思議に思いながら朝焼けの海を見た。  
(それにしても… 生々しいって言うか…  
すっごく気持ちの良い夢だったな…。)  
ウー、ン、と伸びをした次の瞬間、自分が  
ズボンを穿いていないことに気が付いた。  
(――えっ!?)  
 
上の服はなんとか羽織っているけれど、  
下はすっぽんぽんである。  
寝ていた自分の上には自分の衣服  
と薄い毛布がかけてあり、その毛布は  
宿の物だった。  
(え!? 何で…? …まさか…!?)  
セルジュは一人で真っ赤になった。  
(…と、とにかく… 服を着よ…   
こんなとこ人に見られたら大変だ…。)  
 
大人びたヤマネコの顔で、慌てている  
セルジュの様子を物陰からくすくす  
笑いながらリデルは見ていた。  
(…可愛い… あんななりして  
中身は子供ね…。)  
それにしても… とリデルは思った。  
(昨夜のあれは何だったのかしら…。  
彼の身体の匂いをかいだ途端、私の全ての  
理性のタガが…。) 正気に戻ったはずの身体が  
じゅん、と疼いた。  
 
(でも…ひょっとすると、あれが私の  
本当の姿なんじゃないかしら…?  
あれが私の… 本当にしたかったこと…?)  
リデルは美しい眉をひそめ一人物思いにふけりながら  
そっと踵を返し、人に見られぬよう気をつけて  
宿屋へと急いだ……。  
 
 
―おしまい―  
 

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