『・・・みんな燃えてく・・』  
 
寒い夜空の下、目の前で一人の少女が涙を流している、  
悲しみにあふれた瞳で、遠方に見える一つの赤く崩れ落ちる民家をみつめながら・・・  
 
 『・・家も・・・ともだちも・・・・おねぇちゃんもみんな消えてなくなる・・・私・・ 
またひとりぼっち・・・』  
おそらく彼女にとってあそこにあったものが全てだったのだろう  
 『どうして?・・・どうしてこんなひどいことが!?』  
その全てが崩れ落ちてゆく、・・・あの亜人のせいで・・・  
 『あなたも・・・いっちゃうの?』   
 「え・・・」  
 『私ひとりだけ置いて・・・』  
 「・・・ど、どこにも行かない!・・・行かないよ、君一人置いてなんて・・・」  
 『ほんと?ほんとに居てくれる?』  
 「・・ああ」  
 ・・・いって屈み、幼い少女を腕に抱く、さっきまで炎の中にいたのに、もうこんなに自分の体が冷 
えてしまっている、彼女の体がこんなに暖かく感じられる。  
 
 『ひんやり・・あなたのほっぺ・・』  
涙でぬれた顔に少し笑顔が戻った、やはりキッドの面影がある、さっきあんな事があったとはいえ、子 
供らしい無邪気な笑顔だ。  
 
(マスター・・・私ももうだめみたい・・・早く・・)  
 「!?」  
 『ありがとう・・・きてくれて・・・』  
自分の体がだんだん透けて・・いや、周りの視界もぼやけてきている! 彼女の姿も・・・  
キッド・・・もう・・  
 『・・・またいつか会える?』  
そこから先は何も見えなかった ・・・何も答えられなかった。 でも・・  
 
「セルジュ・・ここにいるよ、オレは。」  
 
彼女はいまここにいる。 ・・・また彼女の顔がぼやけてきた。  
 
 
ここはAnother隠者の小屋跡、  
 
 「あっはっはっはっはっはw」  
 
燃え朽ちた大木の根の下から、複数の大きな笑い声が聞こえる。  
セルジュ「・・・・・・・・」  
キッド「・・・・・・・・」  
マルチェラ「セル兄ちゃん大丈夫?」  
(大丈夫じゃないです・・・)  
カーシュ「いやーさっきの小僧といったら無かったな、いきなり『キッドー!』とかって泣きながら抱きついて。」  
ファルガ「あぁ、小娘も驚きまくってたな、しばらくうろたえる様にしてて、後ろの俺達に気づくなりセー 
公おもいっきりぶん殴って。」  
キッド「うるせー・・・」  
 セルジュの頬が真っ赤になっている、それは赤面しているからだけではないようだ、  
 よく見ると左の頬が少しはれている、ムスッとした顔で、そこをイタそーに撫でている。  
カーシュ「小僧そのままおれらのほうに飛んできて、犬がクッションになってなぁ!  
    それでも小僧、しばらく伸びてたからな、すさまじい威力だぜ・・」  
 
 「あっはっはっはっはっはw」  
 
犬「ひどいでしゅよキッドしゃん・・・」  
キッド「・・・・・・・ふん」(ムスッ)  
 ・・・なにやらいつもとキッドの様子が違う、いつもなら  
 『抱きついてきたあいつが悪いんだろ!?』  
 みたいにムキになって突っ掛かるものを・・・  
セルジュ(あぁ、早く悪夢よ去れ・・・)  
 もう真っ赤っかだ。  
ゾア「・・・あれは多分、オレたちがいたから殴り飛ばしたんであって、二人っきりだったらそのまま 
────」  
セルジュ「あー────!もういいじゃんかこのことは! キッド帰ってきたんだし!!」  
 ついにセルジュが切れた。 ・・・ゾアって結構そういうこと言うのね。  
犬「あるぇー?セルしゃんたち、顔赤いでしゅよー?ぷしゅしゅしゅ」  
 
 「あっはっはっはっはっはっはw」  
 
リデル「うふふwまぁみなさん、仲がいいのはとても良いことじゃありませんか、・・二人は積もる話も 
あることですし、ね?」  
セルジュ(助かったーリデルさんありがとー ・・・ん? 積もる話?)  
ラディウス「うむ、そうじゃな、お前さんたち今日はここに泊まるとええ、」  
ファルガ「そうだな。 んじゃ、俺達は帰るか、」  
セルジュ(  な ぬ ? )  
カーシュ「そんじゃなこぞー!まぁがんばれよーw」  
マルチェラ「がんばってねセル兄ちゃん!」  
セルジュ「な、なにを・・だ、第一そんなにいっぺんにボートに乗れないだろ!?」  
ファルガ「あぁ、心配すんな、俺様の船がそこまで来てっから。」  
セルジュ(はぁー─────・・・)  
何でそうなるんだよ・・・と、心底気疲れするセルジュ。・・・というかもともと船がなかったらこの 
人数でここまで来れないだろ。  
さすがに今までに出会った仲間全員はいなかったが、カーシュ、ファルガ、マルチェラ、ゾア、リデルにラディウスと、  
別の場所でずーっと踊っていたラッキーダン(現ハッピーダン)、速やかに退場。  
 
キッド「・・・・・・・」  
セルジュ「・・・・・・・」  
 
 ・・・さっきまであんなに騒がしかったのが嘘みたいに静まり返っている。  
お互い聞きたいことは、本当にたくさんあるのだろうけど、なかなかきっかけが掴めない、  
話したいことがありすぎてなにから聞けばいいかわからない。  
 
(キッド・・・元気無いなぁ、どうしたんだろ・・・)  
 顔色は悪くないが、やはりすこし曇った表情だ、大丈夫だろうか。  
 
「・・・・・・・・・」  
「・・・・・・・・・」  
「・・・なぁ、セルジュ・・・」  
「! な、なに?」  
 長い沈黙のあと、キッドが話を始めた。  
「・・さっき、殴ったりしてごめんな・・・」  
「い、いや・・もういいよ、もうほとんど痛みないし・・・」  
 そんなに腫れてる訳ではないのだが、ほんとはまだズキズキと周期的に痛む。  
 何しろ3〜4m吹っ飛んだから・・・  
「・・・セルジュ、そっち行っていいかな・・」  
「え・・・」  
 
 唐突な質問に少し驚く、  
 キッドは奥のベッドに座っており、真ん中のベッドをはさんでその向かい側にセルジュが座っている、  
 少なからず(そりゃもういきなり抱きつくほど)思いを寄せている人に来ていいかと聞かれ嬉しくな 
いはずが無い。  
「うん・・・いいよ」  
 もちろんOK、スッと立ってタッタッと歩いてくる、・・・久しぶりに聞く足音だ、すぐ隣にストンと座る、  
(そういえばキッドがこんな近くまで寄って来ることなんて無かったっけ、・・・でも至近距離すぎて 
顔なんて見れないよ・・・)  
 ていうか、もうほぼ密着してない? 仕方なくうつむいて自分の組んだ手を見つめているセルジュ・・・。  
(あーーせっかく二人きりになったんだからなんか話さなきゃ・・・でも何から話せば・・・)  
 ちらりとキッドのほうを見る、が、視線は顔まで上がらず途中で止まる、すぐ近くに ・・・どこ見 
てんだセルジュ。  
(やせてるのに意外とおおきいんだよなー・・・ナに考えてんだよ僕は・・)  
 ブンブンブンと頭を煩悩を振り払うように振る、が。  
ズキッ・・  (ツっ!?)  
 振動で頬が痛んだ、   
(あいたー・・・ 変なこと考えるんじゃなかった・・・)  
 
 ・・・すると、突然キッドの手があがり、セルジュの頬に触れた・・・  
ビクゥッ!?  「!!?キ、キッド!?」  
 唐突なことに驚き、体を後ろに少し仰け反らせ、キッドの手から離れる。  
 しかし追ってくる彼女の手、ピトリとセルジュの頬に貼りつく。  
 
「あ、あのぉ・・・」  
「腫れてるな・・」  
「え・・あ、いや、もうほんと痛みは無いから・・・」  
なるべく平静を装う、・・・心臓が爆発するかと思った。  
「嘘だ、見ればわかる。」  
 冷く感じる手が熱を持った頬に心地よい、痛みが少し和らいだ・・・  
「温かいな、おまえのほっぺ。」  
「・・・うん、腫れてるからね。」  
と、二人とも少し笑いながらいった、今日はじめて、 いや、あの時別れてからはじめてみせる笑顔だった。  
「でも・・・」  
 右手を左の頬にそえたまま、今度は左手を、右側の頬にピトリと添える・・・  
「こっちはひんやりだ・・・」  
「・・・キッド・・・」  
 あの時と同じだ・・・両頬に添えられた手を、今度は自分の手に持ち、そして・・・  
 
「キッド、・・・僕はどこにも行かないから・・・」  
 あの時と同じように、彼女を胸に抱いた。  
 

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