両親の不仲が原因で、雄一少年は自宅での安息を感じたことがなかった。  
 その穴を埋めるように、ほとんど毎日自宅へ招いてくれていたのが泉兄妹だ。  
 最初は研が率先して雄一少年に声をかけてくれていたが、最近はキャロンからのお誘いも増えてきた。  
 というのも、この雄一少年がキャロンの相手をよくしていたからである。  
 妹のごっこ遊びやお人形遊びに付き合いたくない研の代わりというのが、この雄一少年なのだ。  
 研と違って独りっ子の雄一少年は、キャロンと遊ぶのも苦にならない。  
 それどころか、嬉しくってたまらないのだ。可愛い妹をもらってしまった気分なのである。  
 今日も人形のジェーンを抱くキャロンの傍らに寄り添って、パパを演じていた。  
 ドアや窓を閉め切ったキャロンの部屋が、雄一少年の“家庭”だった。  
 「パパ、今日のご飯は何がいいかしら」  
 雄一少年の肩にちょこんと頭を乗せて、まるで本当に愛し合う仲のように接する。  
 「ママが作ってくれるものなら、何でも好きだよ」  
 「まあ、パパったら! あたしもパパのこと、だーいすきよ!」  
 うふふ、と互いに笑って、どちらからともなくキスをした。  
 ――この二人、ごっこ遊びを繰り返すうちに、すっかり親密な関係になってしまったらしい。  
 こうしてキスをするのはしょっちゅうで、時には体を弄り合うことだってあった。  
 「ねえ、ママ」  
 「どうしたの、パパ」  
 「もう一度キスしてもいい?」  
 「うん!」  
 「ありがと…」  
 怖ず怖ずと唇を近付けて、壊れ物を扱うが如く再び口付けた。  
 柔らかく弾力のあるその部位を口に含むのは、どんな高級品を食すことよりも幸せなことだ。  
 そして何より、気持ちが良い。  
 ん、ん、と声を漏らして、唾液を交換し合っていると、キャロンが苦しげに息を吐くので、やめた。  
 切なくなるのは、このキスが、「パパ」と「ママ」の関係に依るものだということだ。  
 彼女と性的接触を持つ時、雄一少年は雄一少年でなく、架空の家庭の「パパ」なのであった。  
 「キャロンちゃん、あのね」  
 唇を離し、パパではなく雄一として、キャロンに話を始める。  
 「僕のこと、僕が…パパじゃなくても………」  
 ――好きって言ってくれる?  
 意気地が無いせいで、語尾に力が入らなかった。  
 
 弱々しく響いた声は空気にさえ打ち消され、もちろん少女の耳には入らなかったようだ。  
 「えっ?」  
 聞き取れなかったキャロンが首を傾げて、雄一少年の顔を覗き込む。  
 いつもパパとしてキスをして、慣れているはずなのに、改めて見るキャロンの顔はとても綺麗だった。  
 その美しさと可愛らしさにたじろぎ、ううん、その、あの、と言葉を濁す。  
 「そろそろ、ジェーンに妹か弟が欲しいね」  
 やっと出た言葉は、「パパ」としてのこんなものだった。  
 「素敵! ジェーンもきっと喜ぶわ」  
 ねえジェーン、と付け加えて、腕に抱くおさげの人形に語りかける。  
 作りものの碧い眼が、キャロンをじっと見据えていた。  
 「じゃあ、ジェーンを寝かしつけてやんなきゃ…」  
 そう言って、キャロンからジェーンを受け取り、部屋のおもちゃ箱の中に入れる。  
 「パパ、早く来て!」  
 「うん」  
 急かされて、雄一少年は灰色の上着を脱いだ。  
 それからキャロンを優しく抱きしめて、腕を背に回してきたところを床に組み敷く。  
 キャロンの赤いワンピースを脱がせてやって、下着一枚の姿にしてやった。  
 「あっ、あっ…」  
 腰のラインをなぞる手を、そのまま胸へと這わせる。  
 ぷっくりと膨らんでいた突起をつまんで、激しくこねくり回すと嬌声が上がった。  
 「は、あぁぁんっ!」  
 もっと肌を感じたくて、雄一少年もハイネックを脱ぎ捨てる。  
 自分の乳首をキャロンの乳首に宛てがって、何度も体をくねらせた。  
 「あんっ、あ……パパァ」  
 「ん…ハァ……ハァ……」  
 こりこりとした固さが擦れ合い、それが上半身の快感から下半身の疼きへと変貌してゆく。  
 ズボンの中で勃起する己に気付きながらも、まだ早いと心で言い聞かせた。  
 喘ぎながら胸を触れ合わせつつ、ちゅっ、ちゅっ、と音を立てて唇を啄む。  
 キャロンの唇を吸っていたのを、徐々に頬へ、首筋へと移した。  
 「はぁっ、やぁんっ!」  
 声を出したのは、雄一少年の口がついにキャロンの胸元へ到達したからだ。  
 乳首同士の摩擦で大きくなったものを口に含み、その中で引っ張ったり、舌で突いたりする。  
 「あ、んっ、はん、あんっ…」  
 キャロンは夢中で自分の胸にしゃぶりつく雄一少年の頭を撫でながら、目を閉じて可愛い声を上げ続けた。  
 
 ぴちゅ、ぴちゃ、と水音が響くたび、キャロンの秘部が熱くとろけてゆく。  
 「ママ、僕……あぁっ、もう……」  
 乳首への愛撫を止めにして、雄一少年が苦しそうに言った。  
 ズボンの下から存在を主張する雄一少年自身を取り出してやり、キャロンは自らの意思でそれを扱いてやる。  
 「あ、あ、あぁーっ…!」  
 聞いているこっちまで達しそうな声色で、雄一少年はキャロンから与えられる刺激に喜んだ。  
 「パパ、気持ち良い?」  
 「き、気持ち良いよ、ママ……」  
 「うふふっ、よかったぁ」  
 そう言いながら、竿のみでなく袋をも扱いてやる。  
 「ねえ、ママ……くわえて…」  
 「うんっ」  
 雄一少年は体の位置をキャロンよりやや上にずらして、ちょうど陰茎がキャロンの口元に来るようにした。  
 それから、ゆっくりと少女の口の中へ自らを収める。  
 最初はキャロンが舐めたり、吸ってくれるのを楽しんでいた。  
 が、やがて堪えきれなくなり、雄一少年は少々乱暴に腰を振って、口内を犯してみることにした。  
 根本まで突っ込んだり、頬に引っ掛けたり、亀頭で歯をなぞったりして、下の口では楽しめない快感を味わう。  
 「あふっ! んぅっ、ん、は、は!」  
 腰を揺らすたび、キャロンの口から液体の音と悲鳴が聞こえてきた。  
 キャロンを自分のものにしたような征服感で、雄一少年のペニスがどんどん固く、大きくなってゆく。  
 「あ、ハァハァハァ………んぅっ……だ、出すよ……」  
 少年の投げ掛けに、とろんとした青い目の少女が頷いた。  
 勢い良く、キャロンの舌の上へ白濁色が広がってゆく。  
 舌の上で転がしながら、それを少しずつ少しずつ飲み込もうと、キャロンは一生懸命頑張っていた。  
 「あ、ママ…」  
 その愛くるしさに欲情した雄一少年は、再び体をずらす。  
 ちょうどキャロンの顔と自分の顔が向かい合う位置にして、覆いかぶさった。  
 苦闘する口に舌を割り入れ、そこから直接精液を受け取る。  
 どろどろとした飲みにくい自らの分泌液をやっとで喉に通し、雄一少年は恥ずかしそうに言った。  
 「こんなに飲みにくいんだね、僕の……ごめんね」  
 「でもあたし、雄一君のこと好きだから、平気よ」  
 「えっ」  
 雄一少年は耳を疑った。  
 
 今、いつもの「パパ」ではなく、「雄一君」と呼んでくれたからだ。  
 性行為の際はパパとして、ママとして、それに臨むのだが――。  
 先程上手く伝わらなかったことを、雄一少年は勇気を出して言い直した。  
 「キャロンちゃん、その…あのね」  
 「? どうしたの?」  
 「僕のこと、僕が、僕がパパじゃなくっても、好き?」  
 「うん、好き! だあい好き!」  
 赤い顔でそう笑いかけられた雄一少年の中で、ボフン、と音を立てて何かが爆発する。  
 「キャロンちゃん!」  
 感情のままキャロンの体を抱きしめると、キャロンもぎゅうっと抱き返してくれた。  
 「僕…僕、パパだから君にこうしてもらえるだけだって思ってた」  
 「ううん、そんなことないわ」  
 「あぁ…ねえ、もう一回、好きって言ってくれる? 僕のこと…」  
 まるでキャロンよりずっと幼い子のように、甘えた声で紡ぐ。  
 覆いかぶさって抱きしめてくれる雄一少年の肩に顎を乗せて、キャロンは魔法のように唱えた。  
 ――雄一君のこと、好きよ。  
 好きと言ってくれた艶やかな唇を塞ぎつつ、雄一少年はとうとうキャロンの下着を脱がせた。  
 「キャロンちゃん、触って…いい?」  
 「えへへっ…うん! 優しくしてくれる?」  
 「う、うん! 僕、絶対優しくするよ」  
 開かせた足の付け根にキスをして、そのままちゅぱちゅぱと唇を恥丘に向かわせる。  
 「んっ、はぁ…」  
 ぐちゃぐちゃに濡れた割れ目を舌でこじ開けて、さらに液体で塗れた中へと侵入した。  
 愛しい少女の味を確かめながら、どこへの刺激がより快楽をもたらすかを探る。  
 「あ、やぁんっ、雄一くぅん!」  
 びくびくと体を震わせてキャロンが喜んだのは、割れ目のやや上、陰核だった。  
 性感帯と言っても過言でないそこは、赤く大きく膨らみ、雄一少年の愛撫を待っている。  
 舌先でつついて、歯を立てないように口の中へ含んだ。  
 弾力を楽しみながら、わざと嫌らしい音を立てて吸ってやる。  
 「ひ、はぁんっ! や、雄一く、あ、おかしくなっちゃ、う、ああぁんっ、はぁぁんっ!」  
 「おかしくなっちゃっても、いいよ。僕、どんなキャロンちゃんも好きだからね…」  
 「ゆぅ、いち、く、あぁぁーっ!」  
 とどめのように勃起した部位を摘まれて、キャロンは激しく身をよじらせた。  
 
 「あ………は……雄一君っ……」  
 「キャロンちゃん、大丈夫?」  
 「うん…ねえっ、あたし、雄一君と一緒におかしくなりたいの。ダメかしら?」  
 膣口が収縮しているのが、見ているだけでもわかる。雄一少年はつばをごくんと飲み込んだ。  
 「良いよ……」  
 完全に勃ち上がっている己をキャロンの割れ目に宛がい、床に腕をついて、ふぅっと息を吐く。  
 体を触り合い、絶頂を迎え合うことは多々あったが、ここまでに及ぶことは一度もなかった。  
 だから緊張している、と言えば嘘ではない。  
 だが早く、この可愛い少女と一つになりたかった。雄一少年の中で、その気持ちの方が勝ったようだ。  
 「く…あっ!」  
 「あぁぁぁんっ! 雄一君っ!」  
 中へ中へと、肉棒が飲み込まれてゆく。快感でペニスが脈打っていることに、雄一少年は気付いた。  
 まだ知らない甘く熱い空間へ、喘ぎ声を伴って進入してゆく。  
 奥へ入るのが少しきつくなるたび、キャロンが腰を揺らして、結合を手伝ってくれた。  
 「ん…ハァ……ハァ……入ったよ、キャロンちゃん」  
 ほほ全ての肉棒が、中に埋まる。  
 耳元で息を吹き掛けながら言うと、キャロンはびくびくと震えて、下腹部に来る膨張感に悶えた。  
 「あ、あ……おまたに、雄一君のおちんちん、入っちゃったぁ……」  
 だらしなく口から唾液を垂らして、キャロンが喘ぐ。  
 「痛くない?」  
 「うんっ…へぇきよ……あんっ」  
 少し体を揺らしただけで、少女の口から淫らな声が漏れる。  
 その可愛らしさに興奮しながら、雄一少年はつやつやとした彼女の唇を舐めた。  
 「う…動くね」  
 雄一少年はキャロンの目を見つめて、勢い良く自らの前後運動を始めた。  
 「ハッ、ハッ、キャロンちゃぁんっ! ハァッ、ハァッ」  
 「ゆぅ、い、ち、くぅ、あん! はん、あん、あん、あんっ!」  
 ぱちゅん、ぱちゅん、と結合部で液体が弾けるような音がする。  
 ぱん、ぱん、と鳴るのは、互いの肉だった。キャロンの腿と、雄一少年の陰嚢がぶつかり合っている。  
 体感したことのない快楽で、雄一少年の肉棒はとろけそうになっていた。  
 膣という名の肉壁は波打ち、雄一少年をすっぽりと、刺激を与えながら包んでいる。  
 先走りの液体が、キャロンの膣をさらに熱く溶かした。  
 「雄一くんっ、雄一君っ!」  
 
 名前を呼ばれるたび、悦びで陰茎が固く大きくなるのが自分でもわかる。  
 キャロンもそれがわかるらしく、  
 「あ、はぁんっ、ゆぅいちくんっ、また大きくなったぁ…!」  
 と、腰を振りながら、中へ入っていけなかった雄一少年の根本を摩ってやっていた。  
 「ん、あ、あっ…き、気持ち良いよぉ、キャロンちゃん……!」  
 「はあ、あんっ! や、あ、ダメぇっ、激し、いっ、ひゃん!」  
 その間にもどんどん愛液は溢れてきていて、二人の繋がりをより心地良いものにしてくれている。  
 雄一少年が動くたび、その陰茎を激しく締め付けて、膣は射精を促していた。  
 ――もっと、もっとこうしていたい――。  
 達しそうになる自分と、キャロンを見ながら思う。  
 ピストン運動のペースを落として、膣を突くより掻き回してみた。  
 「あぁっ…はんっ、気持ちっ、はんっ…あんっ……」  
 ぬぷぬぷっ、と音を立てて、ゆっくり穴を行き来するペニスが愛液塗れになっている。  
 視覚的な性の快楽に浸る雄一少年はあることに気がついた。  
 「や、あ、はぁ、あん!」  
 ある一点を自らが掠めると、キャロンがひどく声をあげて喜ぶのだ。  
 「あぁっ…キャロンちゃん、ここ好きなんだね……」  
 「んぅっ!」  
 再び勢いをつけてそこを突き上げると、キャロンが気持ち良さそうに鳴く。  
 緩急をつけてぐちゅぐちゅと刺激を与え続けると、キャロンが悲鳴をあげた。  
 「雄一くっ、あたし、やぁ…ダメぇっ……!」  
 「キャロンちゃん、あぁぁっ……一緒に…」  
 「雄一君っ、雄一君………あぁぁあーっ!」  
 「キャロンちゃ…っ、うっ、あぁーっ!」  
 一際強く膣が締まったのと、精が放たれたのとは、ほぼ同じタイミングだった。  
 汗だくになっていたキャロンの体を舐めながら、雄一少年はペニスを引き抜く。  
 「ハァ……雄一君っ……ハァ、好きぃ…チューして…」  
 「ハッ……ハァ………うん…ハァ…」  
 床で呼吸を整えるキャロンに唾液を絡ませ合う激しいキスをして、二人は微笑みあった。  
 近くに置いてあったティッシュでキャロンの秘部を拭き取り、下着を着せてやる。  
 いつもの赤いワンピースを着せ終えた時になって、キャロンはこう言った。  
 「ね、明日もやりましょうよ、雄一君!」  
 「えっ、今の?」  
 すっかり可愛いサイズに戻った自らをズボンにしまい、ハイネックをごそごそ着ながら、目を丸くする。  
 
 「うんっ! …ダメ?」  
 「僕は、嬉しいけど…」  
 つい先までの互いを振り返って、雄一少年の顔が真っ赤になった。  
 キャロンは甘えて、服を着終えた少年の体にもたれかかる。  
 「じゃあ決まりだわ。指切りげんまんしましょっ」  
 そう言って、細い小指を差し出した。  
 雄一少年は照れながらも、迷わずその指に自分の指を絡める。  
 「だけど、研君には内緒だよ」  
 少女が大きく頷いたのは、言うまでもなかった。  
 
 
 
 終  
 

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