「大星団ゴズマ! 地球乗っ取り作戦!!」
エピソード3「天使に出逢った日」
「これから死んで行くお前に真実を話そう。本当は軍事機密で話しちゃいけないんだが……」
宇宙獣士マーゾの声には真剣な響きがあった。
「なあに?一体……」
マーゾの真剣さにさやかも緊張する。
「お前たちがこれまで阻止してきたゴズマの作戦は全て囮だ。全ては真の侵略作戦を覆い隠すための陽動作戦だったのだ」
「なんですって!?」
凄まじい驚愕がさやかを襲う。
「真の作戦は地球の乗っ取りだ。世界各国の政府首脳は既にゴズマの息がかかった人間に占められつつある。やがては血を流すことなく地球はゴズマの星となるだろう」
「そんな……そんな!!?」
足元がガラガラと崩れていくような、あるいはアリジゴクの巣穴へと落ち込んだような、奇妙な浮遊感と落下感をさやかは味わった。
さやかが電撃戦隊に入隊してから九ヶ月が過ぎた。その間、電撃戦隊は実に四十近くものゴズマの侵略作戦を阻止してきたのだ。マーゾの言葉が本当ならその全てが真の作戦から目をそらすための囮だったということになる。とても信じられるわけがなかった。
「ウソ……ウソよっ!!」
さやかの叫びは絶叫に近い。
「ウソをついてどうなる?これから死ぬお前を騙してなにかオレが得をするか?」
マーゾの言葉には真実の響きがある。さやかは放心したようにペタン、と腰を落とした。
「だから無理なのだ、オレがゴズマを抜けるのは……。お前と共に脱走しても、地球はどの道ゴズマの支配下に置かれる。無意味なのだ」
座り込んださやかをマーゾは哀れむように見下ろした。
「信じない……信じられないわ、そんなこと……。どうして政府の人間がゴズマに、侵略者に協力するの?あり得ないわ!!」
どうしても真実を見ようとしないさやかにマーゾは静かに語りかけた。
「それはな、カネだよ」
「……!?」
「ゴズマの科学力は地球よりも遥かに進んでいる。その優れた技術を各国首脳は欲しがっているのさ。我々の超技術があれば、いくらでもカネが儲かるからな」
さやかの頭脳がフル回転を始めた。
(確かにゴズマの科学力は凄いわ。その技術の一端でも入手すれば、産み出す利益は計り知れない!それに政治にはお金がかかるわ。
民主主義とは言っても選挙に当選するためには一体どれくらいの資金が必要になるか……。政治家たちが、甘い餌をちらつかされてゴズマの誘いに乗ることは十分考えられることだわ。……なんてこと!!)
さやかのコンピューター並みの頭脳は、マーゾの言葉は正しいと結論づけた。
「あなたの言っていることが正しいようね。……信じたくはないけど……」
「ようやく理解したか、やれやれだ」
マーゾは胸を撫で下ろした。
「心情的にはお前について行きたいんだがな。お前、かわいいし…」
「え?いきなりなによ?」
かわいいとマーゾに言われ、頬を染めて戸惑うさやか。
「うん……かわいくて柔らかくて……宇宙獣士になる前だったら絶対ほっとかないな、お前みたいな女に出会ったら……」
マーゾの言葉には真実味がこもっている。
「ちょっとやめてよ、からかってるんでしょ。それとも死んで行くあたしに同情しちゃった?」
さやかはマーゾに背を向けた。恋愛経験のあまり豊富ではないさやかはこういうときどうしていいかわからなかった。
「そうかもしれん。しかし同情が愛に変わることだってある。オレのこの気持ちは……」
背中から抱きしめようとしたマーゾをさやかは押しとどめた。
「ごめんなさい。今はそんな気になれないの」
「渚さやか、オレは……」
「残り少ない時間をどうやったら地球を救えるか、考えたいの。無駄かもしれない。でもあたしは愛してるの、この星を。最後までふるさと地球を救うためになにかしたいのよ。バズーと最後まで戦ったあなたならわかるでしょう、この気持ちが……」
さやかの目に涙が光った。その美しさにマーゾのこころは打たれた。
「仕方がないな……オレも手伝ってやるよ」
頭を掻くようなしぐさをしてマーゾは言った。
「え?」
涙ぐんだ瞳で上目遣いに見上げられ、照れくさそうにマーゾは視線をそらす。
「お前を逃がすことは出来ん。アハメス様を裏切ることになるからな……。しかし異星人の観点から地球のどこに問題があるかをお前と話すくらいならいいだろう。……どうしてゴズマに加担する地球人が出るのか、どうやったらそれを防げるか、いっしょに考えてやるよ」
マーゾの言葉はまるでともだちと話すような親しみがこもっている。
「ほんと?」
さやかのかわいい声がマーゾの耳をくすぐる。
「本当だ」
マーゾが保証するとさやかの顔がパッと輝いた。マーゾの目にそれは天使が微笑んだように映った。
「ありがとうっ!マーゾ!うれしいわっ!!」
素直に喜ぶさやかの姿をマーゾは限りなく愛おしく感じた。
(いかん、オレはこいつを好きになりかけている……。果たして処刑のとき冷静でいられるだろうか……?)
マーゾのこころに大きな変化が訪れようとしていた……。
「あっちへいかない?」
「ン?ああ」
さやかの指差す方向には岩塊がゴロンと転がっており、腰かけにちょうどよかった。
さやかはマーゾの手をとり促す。そのやわらかさ、ぬくもりに思わずこころが踊りだすのを感じたが、表面上はさりげなく装うマーゾだ。
(ウーム、ギラス星で彼女とデートした時を思い出すな……。ヒューマノイドのおんなと手をつなぐなど何年ぶりか!?宇宙獣士になってから、いつも他の獣士と一緒くたにされてたからな)
「はやくぅ、こっちよ!」
さやかがマーゾの手をはなし、駆け出そうとする。
「きゃっ?」
「あっ?バカッ!!」
マーゾの触手が未だ絡み付いているのを忘れて走ったさやかは、触手に脚を引っ掛けいきおいよくすっ転んだ!
「あ、いたあ……くない?」
マーゾの手を借り、身を起こすさやか。
「ン、まだ麻酔が効いてるんだ……おい、バンバ!」
「キュウ〜〜ン?」
マーゾに呼ばれて駆けてくるバンバ。どことなく主人に呼ばれる犬にイメージが重なる。
「ホラ、ここだ、すりむいて血が出てる。バンバ、舐めて消毒してやれ」
「え?いいわよ、そんなことしなくたって……」
「いいからバンバにまかせろ。こいつの舌には殺菌作用とヒーリング効果がある。すぐよくなるからまかせるんだ」
マーゾの勢いに押され、さやかはすりむいた膝を立てて腰を下ろした。いわゆる三角座りにちかい体勢だ。
「!?」
マーゾは目を見張った。マーゾの位置からさやかの純白のショーツが丸見えだった。さやかはそのことに気づいていない。
(なんだ?あんなもの、ただの白い布ではないか?珍しくもない……)
と思えば思うほど目がさやかの股間に釘付けになる。
「じゃ、お願いね、バンバ」
「キュンキュン」
さやかのかわいい声に従い、平べったく長い舌を伸ばすバンバ。
ペロッ ペロペロッ ピチャッ
最初はおずおずと、次第に大胆にさやかの膝を舐めるバンバ。
「うふふ、くすぐった〜〜い」
さやかの笑顔はマーゾにとって天使の笑顔。その天使の笑顔とパンチラを同時に拝める幸福をマーゾは噛み締める。
「ね、マーゾ」
パンチラに夢中のマーゾは一瞬ビクッとした。
(バレたか?)
いたずらを見つかった男の子のような気分のマーゾだ。しかしさやかは屈託がない。
「麻酔が効いてるのにくすぐったいのはどうして?不思議だわ」
「ああ、そりゃ、プラシーボ効果だろ。舐められるとくすぐったいと思い込んでる脳みそのいたずらさ」
のぞきがバレずに内心ほっとするマーゾ。
「フーン、そんなものかしらね?……きゃっ?」
「どうしたっ!」
さやかの悲鳴になにごとか、と駆け寄るマーゾ。見ると、バンバの舌がさやかの膝を通り越してフトモモの方まで伸びている!
「ちょっと、やだぁ、マーゾ、見てないで止めてよぉ」
ペロペロッ ピチッ ピチャピチャ
マーゾは金縛りにあったように固まった。天使のふとももと這い回る赤黒い醜悪なバンバの舌の取り合わせはお互いを引き立て合った。ふとももはより美しく、エロチックに輝いた。
ドッカ――――ン
と、頭が破裂しそうになるのをマーゾは感じた。一気に股間の生殖器が勃起する!幸い、からだじゅうのツタの陰になり、さやかからは見えない。
(ウグッ、ダ、ダメだ、理性がもたん。このままではオレはさやかを……)
「きゃああっ!?そこはだめえっ!?」
「ウオッ?どうしたっ!?」
さやかの悲鳴が暴走しかけたマーゾの頭を冷やした。勃起したモノも一気に萎む。
「こぉら、だめでしょ、おいたしちゃあ」
調子に乗ったバンバがさやかの股間にまで舌を伸ばしていた。
「おいこらっ、それはやりすぎだっ」
ガツン
バンバの上部の松ぼっくりを殴りつけるマーゾ。
「キュウ〜〜〜〜ン」
殴られてシュンとなるバンバ。
(なんといううらやましいことをっ!オレはお前になりたいよ)
マーゾはバンバの松ぼっくりを抱え込み、拳でグリグリする。
「あ、いいのよ、ちょっとじゃれたかっただけなんでしょ、あんまりいじめちゃダメよ!」
さやかの言葉にマーゾはバンバを解放した。
「ありがとね、バンバ。血もとまったわ、さ、いきましょ」
さっ、と立ち上がるさやか。
「ああっ!?」
パンチラタイムの終了に、マーゾは思わず声を上げてしまった。
「え?どうしたの?」
怪訝そうにさやかはマーゾの顔を覗き込む。
「い、いやなんでもない」
「変なマーゾ、さ、いくわよ?」
今度は転ばないように触手に気をつけながら歩き出す。マーゾもそのあとに続いた。
<つづく>