「あう…あ…はう…」  
 智世が予想していた通り、別次元に捕らわれてしまった桜は延々と嬲られ続けていた。  
小狼・雪兎・桃矢・智世と順々に姿を変え、電気あんま攻めを桜に炸裂させていた犯人は、  
その後も佐々木利佳や柳沢奈緒子、三原千春といった友人達にも姿を変え、桜を苛め続けた。  
それだけでなく智世の母であり桜にとっては叔母にあたる大道寺園美や、父親である木之本藤隆、  
更には既に亡くなっている母親、木之本撫子といった桜の親しい大人達にさえ姿を変えることもあった。  
そしてその度に電気あんまの状況は様々に変化していき、桜は振動に慣らされることもなく、  
最後の一線の意識だけは保ったまま、快楽の坩堝でかき回され続けていた。  
 いっそ意識を失うことが出来れば、桜にとってはどれほど楽であったろうか。  
しかしケルベロスが推測していたように、この攻め手は桜の精気…すなわち魔力を完全に吸収し尽くすまで、  
彼女を解放するつもりも気絶させてしまうつもりも無いようであった。  
 そして今、桜を嬲っている攻め手は、再び李小狼の姿に戻っていた。この無慈悲な攻め手は  
長時間に渡る電気あんま地獄の最中で、小狼の姿を模した時に最も桜が悶え喘ぐことを認識したのであろう。  
犠牲者をひたすら悶絶させ、その精気を奪い取る…その目的を一番効率的に果たすため、  
もはや様々に姿を変えるようなことはせず、ただ一人の少年の姿のままで少女を嬲り続けていた。  
 
 だが仰向けに引き倒され、両脚を完璧に固められた桜にとっては、攻め手のこの判断は最悪としか言いようのないものであろう。  
自分の大好きな男の子に、女の子の一番大切な部分を嬲られて悶えさせられる…女の子にとってはあまりに恥ずかしく辛い攻めであるが、  
同時にあまりに甘美な状況であり、そこから逃れる術などある筈も無い。  
「や…だ、駄目…ゆる…して…」  
 レオタードとストッキング、そしてインナーショーツの三枚の生地に守られているとはいえ、そのどれもが決して厚くはない生地である。  
また桜の股間に直接接しているのはナイロン生地で出来たインナーショーツ。そんなナイロン生地を女の子の核に擦り付けられ、  
揉み込まれ、食い込まされるような経験が桜にあったはずも無く…それ故に初めての快感に桜はひたすら翻弄され、悶え、のたうつしか出来ない。  
『ヴヴヴヴヴヴヴヴ…』  
「きゃあああああああああ!!!」  
 再び激しさを増した振動に、更なる絶叫を上げる桜。小狼の右足が蠢くたびに、レオタードの股間はにちゃにちゃと淫らな水音を奏でる。  
元々はピンクと白の組み合わせであったはずのレオタードとタイツは、少女の大切なところから湧き出す淫水のためにすっかりと  
その色合いを濃いものに変えていた。  
 
 もはや桜には抵抗するための体力も精神力も尽きかけようとしていた。完全に封じられた両脚を振り解くだけの力も無く、  
両手で自分の大切なところを守ろうとする気力さえ湧き出てこなかった。小狼に股間を蹂躙される度に、  
桜はその身を跳ね上げるしか出来ない。いや…むしろ、女の子の部分から全身を貫く快感に、  
ただその身を委ねてしまっていると言っても過言では無い状態。  
「はうう…もう…限界…」  
 飛んでしまいそうになる意識の底で、桜は自分の限界が間近に迫っていることを本能的に理解していた。  
それは今回の事件における自分の無力さを意味することであるのだが…同時に大好きな小狼の姿をした何者かに  
よって果てさせられるならば仕方が無い、といった矛盾した満足感をも桜に感じさせていた。  
あるいはそれは少女にとって愛する少年の手で逝かされてしまう悦びとも言い換える事が出来るのかもしれなかったが。  
 
 だが…限界に近づく桜と同じように、実は彼女を嬲る何者かにも限界は近づいていたのであった。  
この何者かが少女達を嬲る目的…それはケルベロスが看破したように、人間の精気を集めることであった。  
そのために多くの少女達を異空間に引き摺り込むと同時に、その犠牲者の心を惑わす存在…多くは好意を持つ少年達の姿を模写し、  
電気あんまという女の子には決して抗えない拷問技によって、精気を奪い尽くして来たのであった。  
今宵も幾人もの少女達から精気を絞り取っていたのであるが、先の標的…大道寺智世からはその精気を  
奪い尽くす事が出来なかった。勿論、桜とケルベロスの邪魔が入ったからであるが、思えば智世を標的に  
選んでしまったことが、この何者かの運命を決定してしまったのかもしれない。  
 
 先の標的こそ逃してしまったものの、現在嬲っている標的…すなわち木ノ本桜はそれにとって極上の標的のはずであった。尽きる事が無いかのように溢れ出てくる精気は  
その質も最上のものであり、その何者かが桜の精気…魔力の全てを奪い尽くそうと判断するのは当然の事であった。しかし…あまりにも膨大な桜の魔力は、それにとっても  
容易に吸い尽くす事の出来ないレベルのものであったのだ。その点でケルベロスの推測は正しかったとも言えるが、既に一時間近くも桜を電気あんまで嬲っているにも関わらず、  
彼女の魔力は果ててはいなかった。それ程の長時間を悶えさせられる事は桜にとって不幸なことには違いなかったが、この犯人にとっても不測の事態。李小狼から始まり、  
月城雪兎・木ノ本桃矢など次々とその姿を変化させていったのも、この何者かにとっては想定外の事であり、焦りの現出でもあった。これまでの犠牲者達の場合…例えば  
佐々木利佳ならば寺田良幸、大道寺智世ならば木ノ本桜といったように、一人の人間の姿を模すだけで問題なく精気を奪い尽くすことが出来ていた。桜にとっては、それが李小狼の  
姿であるはずだったのだが…その少年の姿だけでは少女から全ての精気を奪うことが出来なかったのである。ならばと次々にその姿を変貌させ、桜の股間を震わせ続けたのであったが、  
結局はそれも無駄な努力に終わってしまった。現在、それが再び李小狼の姿を模し、桜に電気あんまを炸裂させているのも、この標的が最も悶えるからという意味が大きいが…  
もはや他に打つ手が無いからという理由も大きかったのである。  
 
 奇しくもケルベロスが予想した様に、桜の魔力が尽きるのが早いか、この何者かの精気吸収の限界が来るのが早いかの我慢比べ。  
そして、その結末は唐突に訪れたのであった。  
『ヴヴヴ…ヴヴ…ヴ…ヴ…ヴ……』  
 それまで桜を嬲り続けていた小狼の右脚の動きが徐々に遅くなって行くと同時に、その体からは煙が噴き出し始める。  
まさに自動車のエンジンがオーバーヒートした状態と例える事が出来るであろうか。先にケルベロスが推測していたように、  
この無慈悲な略奪者も桜の膨大な魔力を吸収しきる事が出来なかったのである。  
 右脚の振動が遅くなっていくと共に、小狼の全身から力が抜けて行き、遂には両脇に拘束していた桜の両脚さえも放してしまう。  
そして遂には地面へと座り込んでしまう小狼。いや、もはやそれを小狼と呼ぶのは正しく無いであろう。なぜなら、  
それは既に小狼の姿を保つ事が出来ず、本来の姿…顔のない無機質な魔法人形の姿に戻ってしまっていたからである。  
 しかし、これが今宵初めて訪れた、そして最期の、桜の反撃のチャンスなのであった。  
「はうう…な、何が…起こったの…」  
 果てる事無く続くと思われた振動地獄から唐突に解放された桜であったが、それまでに受け続けた女の子の部分への  
ダメージからまともに動く事など出来なかい。それでも何とか上半身だけでも僅かに起こし自分の足元に座り込む物の姿を  
見やるのであった。  
 
「こ、これって…」  
 桜がそこに見た物…それは恋する少年の姿とは似ても似つかぬ、異形の魔法人形の姿であった。関節部分からゆっくりと白煙を噴き出す姿は、  
まさに壊れた機械と形容するのが相応しいであろうか。しかし既に壊れてしまった状態であるにも関わらず、それはその使命を全うしようとするのか、  
再び桜の両脚を掴もうと少しずつ動き始めたのである。  
「ま、まだ動くの!」  
 動き出した魔法人形の姿を見た桜は思わず叫び声を上げてしまう。今まで徹底的に女の子の大切な部分を嬲られ続けた桜にとって、  
それは女の子としての本能から出てしまった恐怖の叫び声と言っても良いかもしれない。これまでの電気あんま攻めの恐怖を改めて  
思い出した桜は必死で逃れようとするのだが…未だ股間から全身に広がる甘い脱力感のために立ち上がることも適わず、ただ地面に  
座り込んで後ずさるので精一杯なのであった。そんな哀れな標的の元に、無慈悲に近づいて行く異形の人形。しかし、その哀れな標的は  
絶体絶命のピンチに追い込まれていたとしても、決して無力な標的ではなかったのである。  
「そ、そうだ…せめて次元の扉を開けば…!『影』!!」  
 残り僅かな魔力を振り絞り、『影』のカードを発動させる桜。次の瞬間、桜を中心に広がっていく影によって魔法結界が  
次々と破壊されていくのであった。そして桜のこの選択が正しかった事はすぐに証明される事となる。  
 
「桜ちゃん!」  
「桜!」  
 自分達の10数メートル先に忽然と現れた桜と、彼女ににじり寄る人形の姿を見つけた智世とケルベロスは揃って歓喜の声を上げる。  
それまで自分達の手の出しようの無い結界内で進行していた事態に、漸く介入するチャンスが訪れたのである。  
 そして…それからの出来事は一瞬の事であった。  
 未だ桜に近づこうとする今回の事件の元凶…奇妙な魔法人形の姿を認めたケルベロスは、一瞬にしてその姿を本来の姿…  
勇猛な金色の獣に変えるや否や、一撃でその不埒な犯人を噛み砕き、粉砕してしまったのである。ケルベロスが完全に  
魔法人形を破壊するのを見て、漸く桜は甘く切ない振動地獄から解放されたであろうことに安堵する。  
しかし、それが桜にとっても限界であった。  
「よかった…これで…はうう…」  
「桜ちゃん!桜ちゃん!!しっかりしてくださいませ!!!」  
「桜!」  
 これまで散々嬲られることで魔力を奪われていたことに加え、『影』のカードの発動とケルベロスの真の姿への  
変身によって残り僅かな魔力を消費してしまった桜は、そのまま気を失ってしまう。後には桜を介抱する智世と  
ケルベロスの声が響くだけであった。  
 

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