二人とも遅刻をしそうだった。  
昨日、琴吹さんはぼくの家に泊まった。  
両親が親戚の家に行く用事があり、妹の舞花はまだ幼いということで、両親が連れて行った。  
それを琴吹さんにいったら、泊まりに来ると言い。昨日は二人で過ごした。  
 
そして、起きたらかなりの寝坊だった。  
朝食を作る時間なんてなかった、だけど、お母さんが作ってくれた作り置きのご飯があったので、それを食べた。  
丁度二人分。さすが、ぼくのお母さん。琴吹さんが泊まりに来ることはばれていたらしい。  
急いで、ご飯を食べ、食器を洗面台に置くと、制服を着て、二人とも家を出た。  
 
琴吹さんは、寝癖がなおらないと涙を浮かべながら、走る。  
「ななせも泣き虫だね」  
ぼくが軽口をいうと、真っ赤な顔でぼくをにらむ。  
「あたし、井上と違って、めそめそしないもん」  
「え、でも、いま泣いてるよ。それに」  
ぼくはにこりと笑う。  
「それにって何よ!」  
「だって、昨日の夜だって」  
「!!!」  
琴吹さんは真っ赤な顔になる。  
「い、井上のバカ、知らないんだから」  
そういうと、ぼくを追い抜いて行ってしまう。そんな琴吹さんをみながらぼくは楽しくて仕方なかった。  
一瞬、琴吹さんの服装に違和感を覚える。  
けど、時間がなかったぼくはすぐにそれを忘れ、先に行ってしまった琴吹さんを追いかけた。  
 
結局、ぼくと琴吹さんは学校の昇降口まで追いかけっこをするはめになってしまった。  
息を切らしながら、教室に入ると、芥川君がぼくらを見て。  
「井上、琴吹、おはよー」  
芥川君はいつもの顔でぼくらに挨拶をする。  
「芥川君おはよー」  
「おはよ、芥川」  
二人で挨拶すると、横から、森さんが琴吹さんに話しかける。  
「あれー、どうしたの二人して」  
「え、森ちゃん、なに!?」  
琴吹さんが森さんに答える。  
「もー、朝から息なんか切らしちゃって、二人ともなにしてたの」  
森さん、それ親父発言ですから、ぼくは嘆息する。  
芥川君も一瞬、顔をしかめる。ぼくと目を合わすと同情する。みたいな顔を向けてくれた。  
だけど、琴吹さんは違った。  
「な、なに言ってるよ」  
琴吹さんは顔を真っ赤にしながら、森さんに詰め寄る。  
琴吹さん、それ、森さんの術中にはまっているからさ。  
ぼくは、森さんに詰めよる琴吹さんをおいて、自分の席に着く。  
「あ、そうだ、芥川君数学の」  
「あれ、ななせ、リボンはどうしたの」  
ぼくが芥川君に数学の宿題を見せて貰おうと、話しかけた時、森さんが、琴吹さんの制服をさして言う。確かにいつも制服に付けているリボンが今日はついていない。朝、ぼくが違和感をもったのはそれだったのか。  
琴吹さんも森さんに言われた事に気づく。そして、  
「あ、朝急いで着替えたから、井上の家に忘れてきた!!」  
その瞬間、朝の騒がしいクラスの中は一瞬、ほんの一瞬だけど静寂に包まれた。そして、  
「「「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」」」  
恐らく、芥川君をのぞくすべてのクラスメイトの絶叫が見事にこだます。  
クラスメイトの絶叫が収束すると、自分のいった言葉の重大性に気づいた琴吹さんは  
「あ、あーーーーーーーーー」  
顔を真っ赤にして叫んだ。  
その時、琴吹さんに詰め寄られた森さんは笑みを浮かべていた。  
「あの人策士だ」  
ぼくがポツリと呟くと芥川君が肩を叩いてくれた。  
 

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