「ど、どうかな?心葉、美味しい?」  
「うん、美味しいよ。この玉子焼きなんか絶品だね」  
「そ、そう?だったら嬉しい」  
「あ、そうだ。ななせ」  
「えっ!?」  
「あ〜ん」  
「ちょ、ちょっと!何やってるのよ!バカ!」  
「ちゃんと、美味しく出来てるから。ななせ自身にも味わってほしくて(ニコニコ)」  
「うっ…ホントバカ…(ぱくっ)」  
「どう?美味しいでしょ?」  
「恥ずかしくて味なんか分からないよ…だ、大体こういうのってあたしの方からやるもんじゃないの!?」  
「そうだね、じゃあ今度はななせに食べさせてもらおうかな」  
「えっ!?え、え、その、あのちょっと、、」  
 
 
「なあ、ここ教室だよな」  
「確認するまでもなくここは教室で、今は昼休み中だね。外は雨だから結構人も残ってるみたいだ」  
「…どうにかならないのか、あれ」  
「どうにかしてみたら?僕はゴメンだ命が惜しい」  
「…今年に入ってから井上の黒いウワサ耐えないよな」  
「教頭先生が井上くんを見るなり涙目になりながら逃げてったとか、ボート部が部員一同井上くんには敬語で話すとか、  
写真部が活動停止に追い込まれたとか、なんか凄いよね。当人は肯定も否定もせずに笑ってるけど」  
「けどよ、このままじゃ糖尿病患者が増える一方だぜ」  
「大丈夫でしょ。最近ではみんなインシュリン注射を常備してるし」  
「虚ろな目でスイーツ(笑)読んでる奴いるけど」  
「低血糖症も怖いよね」  
「飴玉代わりか、しかしあんな妊娠とか自殺未遂とかDVとかの話に糖分が含まれるのかね」  
「まあ、確かに現実味がないよね。実際周りに早々そんな人いないし」  
「そもそも本が食えるわけでもねえしな」  
「ほんと、食べられるなら僕も食べてたかもね」  
「独り者は辛いよな…最近じゃ他のカップルまで影響されて甘さ倍増だし」  
「森さんと反町くんなんかもう第二の感染源だよね」  
「もうこのクラスでまともなのは芥川くらいか」  
「本当に彼は凄いね。あの二人の近くにいても淡々としてるし」  
「つうか、アイツなんでこんな日に休んでるんだよ…あれ」  
 
「おはよう」  
「おはようって芥川くん、もう昼休みだよ?珍しいね遅刻なんて」  
「ああ、ちょっとな」  
「なんかあったのか?」  
「朝倉からメールで『今日バイトが午後からになったから午前中つきあいなさい』って呼び出されてな」  
「…は?」  
「一人暮らしで、最近自炊に懲りだしたらしく、挑戦したいレシピがあるらしく、その買い物の付き合いと試食を馳走になった」  
「…ええと」  
「ああ、そろそろ昼休みも終わるな。5時限目は数学だったな(すたすた)」  
 
「…なあ、朝倉って誰か知ってるか」  
「察するに芥川くんの彼女なんだろうね、平日の午前中が暇な人みたいだけど」  
「あいつもしっかり病気になってたんだな…おい、どうした?」  
「ちょっと震えがとまらなくなってきたから、行きがけに買った井上ミウの新刊でも読もうと思って」  
「…俺にも見せてくれ。スイーツ(笑)よりはよさそうだ…」  
 
おわり  
 

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