ぼくと遠子先輩、琴吹さんは文学部へ向かっている。部室の掃除をするためで、琴吹さんは手伝ってくれるという。
「あれ、遠子先輩、胸大きくなりました?」
「ななせちゃん、わかる?うれしい!これも心葉くんのおかげね」
あぁ遠子先輩、誤解を招くような発言は止めてください。
そんな遠子先輩は本当にうれしそうに微笑み、ぼくたち2人を残し先へ行ってしまった。
一方、琴吹さんはわなわなと震え、顔を真っ赤にし、うつむいた。
「えっと琴吹さん、、」
「っ最低!」
そう言うと琴吹さんは帰ってしまった。涙目だったのは僕の気のせいだろうか。
誤解を解くのは大変だ。確かに遠子先輩のぺったんこの胸を若干でも大きくしたのは、ぼくかもしれないからだ。
ある日、僕が文学室に入ると唐突に遠子先輩は立ち上り宣言した。
「心葉くん、わたしの胸が、その、あれなのは牛乳を飲んでないからよ!」
「じゃあ、飲めばいいじゃないですか」
「そうするわ。でもおやつも乳製品にすれば効果は早いと思うの」
遠子先輩は自信たっぷりに僕の方を見て言った。
「だから、今日からの三題噺のお題は乳製品に関するものよ。いや、むしろお題は牛乳だけでもいいわ!」
それから、ぼくの苦悩は始まった。
(乳製品に関する話ってなんだよ、、、)
でもぼくは、時には意地悪もしたけれど遠子先輩の言う通りにしていった。
遠子先輩にも大きくなっている実感があるらしく、うれしそうな遠子先輩を見るのがぼくもうれしかったから。
「けど琴吹さんにはますます嫌われたな」
その頃、天野遠子は部室で1人で笑っていた。
(これで、ななせちゃんは当分心葉くんに近づかないわね。この誤解を解くのは本当のことを言う訳にはいかないから、とっても大変なはず。
その間に、わたしと心葉くんの距離を近づければ、、、。私は文学少女。数学は苦手だけど、こういう計算は得意です)
「ふふふ」