パタパタパタ。カチャ。パタン。
「はぁ〜〜っ……。よしっ!髪も洗ったし体も磨き上げた、あと明日の朝にもう一度
シャワーを浴びて髪をセットすればオッケー…っと!!」
クローゼットの扉には明日着ていく予定の服が掛けられている。可愛く見えるだろうか、
かといって子供っぽ過ぎないか、苦心の末にコーディネイトされた服をみて一人で頷いた。
明日の事を考えると胸がキュッと音をたてて疼いた気がした。
「目覚ましも合わせておかなきゃ。えーっと待ち合わせ場所までの移動時間と身支度と…」
ブツブツ言いながらながら部屋の中をぐるぐる回る。
「よしこんなもんかな」
部屋の明かりを消し、目覚まし時計を枕元に置いて布団の中にもぐり込む。目を閉じた
がすぐに布団から這い出す。
「あんまり時計が近すぎるっていうのも不安かな。気付かないうちに止めちゃって寝過ごすなんてお約束もあり得るわよね…」
そんなふうに考え出したら時計の時間が本当に合っているのかが気になった。携帯を開いて時間のずれをチェック。
大丈夫。再び布団へ行きかけて電池が切れないかが心配になってくる。
「カチ、カチ、カチ」
時計の秒針は不穏な音をたてる事も無く動いている。
「今度こそ大丈夫」
一応念の為携帯のアラーム機能をセットして充電器に置く。
三度布団にもぐりこもうとした時、机の上のピンク色に気がついた。
「あ…」
森ちゃんがくれたんだっけ。
「はい、これ。『お守り』だよ。開けるのは土曜日になってからね」
貰ったのは金曜日の帰り。時間指定の理由を聞いても教えてくれなかった。気にはなっていたけどそのまま机の上に置きっぱなしにしてあったんだっけ。
紙袋の封を開けると中にはメモ用紙サイズの紙と何かが入っていた。とりあえずメモを開く。
『ななせへ。
いよいよだね。
井上だってひょろいように見えても男なんだから
いざという時にはこれを使ってね(^^)/』
(……?何のことか判らないけど)
思いつつ袋の中に入っていたモノを取り出してみる。
ピンク色でキャンディーみたいな包装だけどもっと薄っぺらくて丸いわっかのようなモノが入っているのが判る。裏返して見るとマジックでこう書かれていた。
「若さ故の過ちを起こさないようにね」「思いやりだよ」「女の子の方がしっかりしなきゃ駄目だよ」
顔が真っ赤に染まるのを感じる。実物を見るのは初めてでもこれが何かは理解できた。
そして使われる状況も。
(もっ、森ちゃんったら、ちょ………そんないきなり。べ、別に井上とそんな事……えっ…と、その……そりゃまぁその…)
つい、と目を上げると明日着ていく予定の服が目に入った。
「ぬ、脱がせにくいかな。もうちょっと胸元の開いた大人っぽい服の方が…」
ちょっとまだ肌寒いかと思ってトレーナーを着ていくつもりだったけどカーディガンのほうがいいかな。あ…下着もブラとショーツが合ってないし。
「出来るだけ新しいので…可愛いっていうんじゃなく大人っぽいので…あ、これいいかな。でもこれと合ってるのって…」
結果布団の中に入ったのは一時間後だった。
「くしゅっ」
いけない、湯冷めしちゃったかな。早く寝なきゃ。
ベッドの中で目を閉じ必死に眠ろうする。なのに睡魔は一向に訪れずそれどころか胸の鼓動が早まっていくだけだった。
(明日は井上とあってご飯食べて映画観てそれからそれから…)
……この数日間繰り返したシミュレーションを頭の中で描こうとする。
しかし何故か脳内に描かれるのは心葉の顔が浮かぶ。それも見たこともない筈の至近距離で瞳を潤ませて…。
ひゃぁぁぁ〜〜!!思わず枕に顔を埋め激しく振る。
更に激しくなった鼓動に思わず胸を押さえる。
ピクッ。体にジーンとした震えが奔った。
「ふぁん!」
自分以外触れた事の無い胸からの初めての感覚に戸惑いを隠せずも、体の芯を奔り抜けた感覚を忘れる事も出来なかった。
(今迄こんな事無かったのに。…なんで…?)
思わずドアの方を見つめる
(い、今の声…聞こえなかったかな)
家族が近づいてくるのではないかと気配を探るが大丈夫なようだった。
もう一度、今度はゆっくりと胸に手をやる。そっとつつみこむように胸に触れる。
さっきよりも弱いけれどもジワリとした快感が生まれる。何度も何度もブラジャー越し
に揉んでみたが最初に感じた感覚には届かなかった。じれったくなった時だった。
(あ、こんな…に)
胸の中央でピンク色の突起が熱を持っていた。初めて見る体の異変に驚きつつ、じかに指で触れてみた。
ピリッ。
「ひゃぁっ!!」
最初よりも激しい感覚にベッドの上で体が跳ね上がった。
(えっ、なに…今の。なんかすごく……気持ち…よかったかも)
おそるおそる胸を揉み乳首に指を這わせると自然と声がこぼれ出す。
「ふぁっ…はん…んんっ。なんだかこれ…とまんないよぉ」
激しく胸を揉み乳首を指の間で挟みこむ。快感が泉の様に湧きあがる。いつしかショーツの中央に大きな染みが生まれていた。
(あ…ここ、こんなに濡れてる。いつの間にこんな事に)
そう思って指で触れた瞬間に頭が真っ白になった。
「ぁふぅっ!」
既にパジャマは乱れてただ体にまとわりついているだけの状態にとなり布団は体を覆ってはいなかったが気付くことなく快楽だけを求めていた。
「はっ…あっ…んんっ。やぁん…あんあぁん。」
快楽が身を包む。いつしかショーツ越しではなく直に股間へと指を這わせていた。快楽
に身をゆだね更なる段階へと登りつめようとしているのに其処までたどり着けない。そんなもどかしさに気が狂いそうになった。
「ふぁん。なんで…なんで。苦しいよぅっ」
涙が枕を濡らす。あと少しなのに…もう少しなのに。
「なんでなの、はぁっ、いのうえぇっ!!」
心葉の顔が脳裏に浮かぶ。段々と近づいてきて間近に息を感じる。
(…ななせ、好きだよ)
次の瞬間、体に電気が奔った。
「あふっ、いっ、井上、あ、あたしも…くふっあぁぁぁぁぁん」
体が反り返り一瞬後ベッドにくずれ落ちる。そしてそのまま眠りへと落ちていった。