ピピッ。電子体温計が音を立てる。  
「ん〜〜と、三七度七分。何度計っても同じよ。はい、やっぱり風邪ね」  
「え〜〜〜〜っ!!」  
「そんな声出しても駄目。今日は外出禁止です」  
 井上と映画の予定がまたながれちゃった。せっかく昨日は体もピカピカ磨き上げたっていうのに…。  
悲しくなって布団を顔まで引き上げる。  
「起きてきたかと顔を見たらピンク色になってるじゃない。反応鈍いし『こりゃ風邪だな』と思った  
ら案の定でしょ」  
 得々と続くお母さんのお説教に体を縮ませる。  
「この時期に外で風邪の菌ばら撒くなんて世間の受験生の迷惑になるから諦めなさい。まぁ、せっか  
くの『デート』が中止になって残念でしょうけど」  
 思いがけない言葉に飛び起きてしまう。  
「な、何で知ってるのよ!」  
お母さんは得意満面の笑顔。  
「親の勘をなめるんじゃないわよ」  
 がっくりきてきてつい突っ伏してしまった。  
「けど何をやってお風呂でてすぐに布団に入ったんじゃないの?」  
昨夜のことを思い出して耳まで赤くなるのが判る。顔を上げることも出来なかった。  
「後でお薬とか持って来てあげるからおとなしく寝てなさい。半日もあれば熱も下がるでしょ」  
そういって部屋を出て行った。  
はぁ〜〜。  
思わず溜息が出てしまう。何で井上と映画に行こうとすると何故かトラブルが起きるのよ、もう!  
何かの悪意が働いてるとしか思えないわ。  
 まぁ、今回のことは自分が悪いのかも知れないけど。あっ、いけない。井上に連絡しなくちゃ。携  
帯、携帯っと。  
 
『件名:ごめんなさいm(__)m  
本文:風邪引いちゃった。  
   母から外出禁止令が出て今日は行けません。  
   本当にごめんなさい。映画は他の誰かと行ってきて下さい。』  
 
ピッ。送信ボタンを押す。  
 はぁ、行きたかったなぁ。…井上誰と行くんだろう。やっぱり芥川君辺りかな。  
 
 
「はい、お薬飲んで。それから冷えピタ貼ったらさっさと布団の中に入りなさい」  
 お母さんに言われるままにする。冷たさが心地良い。  
携帯から着メロが流れる。  
飛び起きて携帯を掴む。きっと誰かと行って来るって書かれているんだろうな。  
 
『件名:了解です  
本文:映画は琴吹さんの風邪が直ったら一緒に行きましょう。  
   風邪が早く良くなるよう祈っています』  
 
………井上、映画に行かないんだ。待っててくれる。なんだか顔がにやけてしまいそうになる。  
「その顔から察するに、デートのお相手みたいね」  
すっかり存在を忘れていたお母さんが笑いながら話し掛けてくる。  
「あーもぅっ、出てってよ」  
「ハイハイ分かりました。あ、お母さん午後から出掛けて誰もいなくなっちゃうけど大人しくしてる  
のよ」  
 携帯を開いて井上からのメールを眺める。  
『映画は琴吹さんの風邪が直ったら一緒に行きましょう。  
風邪が早く良くなるよう祈っています』  
 ふふっ。何でだろう、こんな短いメールがこんなに嬉しいなんて。映画に行けなかったのに何だか  
幸せだ。  
 薬のせいか眠くなってきた。目蓋が…重い。  
 
 
ピンポーン。  
んぁ。  
「お母さん、誰か来てるよ〜〜」  
声を出してから思い出した。そういえば出掛けるからって言ってたっけ。  
部屋着のカーディガンを羽織って玄関へと向かう。ん、熱下がってるみたい。  
「はーい。どなたですか?」  
鍵を外して扉を開ける。一応チェーンはかけたままにしておく。  
「初めまして。僕、琴吹さんのクラスメートの井上心葉と言います。ななせさんのお見舞いにお邪魔  
したんですが…」  
 そこまで言ってから井上は頭をあげた。  
「ちょ、ちょっと待ってチェーン外すから」  
 な、何で井上がいるのよ?っていうかなんでうちの住所知ってるの?パニクりながら扉を閉め、深  
呼吸。髪の毛大丈夫かな?目ヤニとか出てないかな?涎の跡とか無いよね。  
大急ぎで玄関に掛けてある鏡でチェックをいれてそっと扉を開ける。  
「い、いらっしゃい」  
 今度は井上がパニクっていた。  
「琴吹さん?何で、風邪引いてたんじゃないの?」  
「え、風邪はもういいんだけど」  
「何やってるのさ!風邪引いて寝込んでる人間がそんな薄着で立ってちゃ駄目じゃないか。部屋はど  
こ?はいさっさと戻って布団に入る」  
 そういうとあたしの背中を押して家の中に入ってきた。  
 
「お邪魔しますっ」  
結局勢いに押されたまま布団の中に押し込まれてしまった。  
「ごめん。ついパニクっちゃって」  
「いえ、べつに」  
 落ち着いたらお互いにどぎまぎしてしまって会話に詰まってしまった。  
「あ、これお見舞いに買ってきたんだ」  
 そういって井上はパステルカラーの紙袋を差し出した。中には幾つかのフルーツゼリーが入ってい  
た。  
「風邪だって言うから口当たりの良いものがいいかとおもって。あ、おうちの人は?挨拶もしないで  
あがって来ちゃった」  
立ち上がろうとするのをコートの端を掴んで引き止める。  
「あ、みんな出かけちゃってるの。風邪っていっても熱がちょっとあっただけだし、もう下がってる  
から」  
 疑わしそうに見つめられる。  
「ホントだって!あ、そんなに信じられないなら熱計ってみせるわよ」  
 そういってパジャマのボタンを一つ外し、枕元の体温計を腋に挟み込む。三六度六分。  
体温計を見せた時には何故か井上の顔が赤く染まっていた。  
(あれ、何で井上赤くなってるんだろ)  
 ふと胸元を見たらパジャマの胸元が大きく開いたままだった。慌てて胸のボタンを留める。  
 再び気まずい空気が部屋の中に漂う。  
「あ、あの、そうだこれ食べようよ」  
 取り繕うようにゼリーを取り出す。季節のフルーツが使ってあるらしいイチゴの入ったゼリーを手  
に取る。冷たいゼリーが喉を通っていくのが気持ちいい。  
「でも、急に風邪なんてどうしたのさ」  
 夕べのことを思い出し焦ったらゼリーが気管に入ってしまったらしく咳が出た。  
「ゲホッ…ご、ごめん。ゼリーが気管に入って……ゴホッ」  
「やっぱり横になってたほうがいいよ。僕ももう帰るから」  
 そういって立とうとする井上のコートの裾を掴む。  
「帰っちゃやだ。もう少し一緒にいて」  
 薬を飲み、布団の中で大人しくしていることを条件に井上は腰を下ろした。  
 クラスメートやテレビの話をしているうちに風邪薬のせいかまた眠くなってきた。  
井上帰っちゃわないかな。  
 
………井上が前を歩いてる。追いかけて話しかけようとしたら、あの子、朝倉美羽が立っていた。追  
いかけるのを止めて二人が喋ってるのを見ていた。井上の幸せそうな顔がみえる。  
 いつの間にか井上一人だった。声を掛けようとしたら天野先輩と話していた。二人の間に入ってい  
けずに離れたところで見ている。井上は安心した顔をしている。  
 また井上が歩いてるのが見えた。走りながら声をかける。  
「井上」  
 声を掛けたけど振り向いて困ったような顔をしてまた歩き出す。  
「ちょっと、井上ってば」  
追いかけたいのに足がうまく動いてくれなくて、その間にも井上との距離は広がっていく。  
「井上!ねぇ待ってよ!井上、行かないで!!」  
 
 
「…さん?どうしたの、琴吹さん?」  
 井上の顔が間近に見えた。思わず抱きついた。  
「やだ!行っちゃやだ!やっと近づけたのに、行かないで!!」  
 離されたくなくてしがみつく。  
「ちょ、ちょっと琴吹さん?落ち着いて!?」  
「ひどいよ、待ってっていってるのにどんどん行っちゃって。あたしの事そんなに嫌いなの?そりゃ  
つい睨んじゃったりしたけど、でもそれは緊張してたからで!あの子や天野先輩にはあんな顔見せて  
私の時にあんな顔しなくてもいいじゃない。しょうがないでしょ。好きな人になんて声掛けたらいい  
か分かんなかったんだもん!」  
 はぁ〜〜〜っ。思ってた事全部言ってちょっとすっきりした。  
パジャマを着た自分の腕が目に入る。あれ?あたし制服着てたはずなんだけど。ここ何処?周りを  
みまわすと見慣れた壁紙がある。もしかしてあたし寝惚けてた?そのうえ井上に告っちゃった?  
嫌〜〜〜〜!!  
飛びのいて頭まで布団の中に潜りこむ。  
パニックに陥りかけてるところに井上の声が聞こえた。  
「えーと、その、何だか判んないけど僕悪いことしちゃってた?ごめんね」  
「…こ、こっちこそごめんなさい。寝惚けてたうえに勝手に井上のこと怒っちゃって」  
布団の中から蚊の鳴くような声で謝る。  
「あの、あの。い、井上のこと、その…す」  
 そこまで言ったところで井上が遮った。  
「琴吹さん、顔をみせてくれないかな。ちゃんと顔を見て言いたい事があるんだ」  
 もそもそと布団から這い出してベッドに腰掛ける。でも恥かしくて井上の顔を見ることが出来ない。  
「すぐ終わるからちょっと顔を上げて欲しいんだけど」  
 何とか顔を上げたけどついつい下がってしまい上目遣いになる。  
「じゃぁ言います。…僕も琴吹さんのこと…好きだよ。琴吹ななせさん僕と付き合って下さい」  
 驚いて顔を上げると真面目な顔で頬を真っ赤にした井上がいた。  
「こ、こちらこそ宜しくお願いしますっ!」  
勢い良く頭を下げる。  
 ふふっ。みつめあいどちらともなく笑いがこみ上げてきた。なのに、視界がぼやける。  
「こ、琴吹さん?」  
「え、なに?どうかした?ふっ…あれ、おかしいな。嬉しいのに…なんで、井上が…好きだって言っ  
てくれ…たのに…」  
 嬉し涙って言葉があることは知ってたけど自分が体験するとは思わなかった。ただ涙を流す私の肩  
を井上はぎゅっと抱きしめてくれた。  
 顔を上げ笑いかけると、そっと目元に残った涙をぬぐってくれた。  
 吐息を感じるほどに近づいた顔をみつめると優しい笑顔があった。自然と目を閉じる。  
唇が重なり合う。ほんの数センチの触れ合った場所から想いが湧き上がる。  
 もっとこの人を感じたい。もっと強く。もっと深く。  
 首に手を回し強く押し付け、唇を少し開いて舌を差し出してみる。向こうからも同じように舌が差  
し出され、それを迎え入れるだけでなく相手から差し出されたそれに絡ませながら進める。互いに触  
れる部分をより多く、より深くしようと唇を開ける。  
 愛撫するように舌を絡ませ咥内をまさぐり、唾液をすする。  
「んんっ、ふぁん。んん〜〜ぅふぅん」  
ピチャ、クチュ、ジュプ。  
(あたし何だかすごく大胆なことしちゃってる。…でも止められない)  
 
 時々こぼれる声と湿り気を含んだ音が部屋の中を満たしていく。その音に誘われて動きを激しくす  
る。そしてベッドの上に倒れ込む様に重心を後ろにずらす。  
 あたしの背中がベッドについたところで、井上の動きが止まった。  
首の後ろに回された手をほどき体を離す。  
「…井上…どうかしたの?」  
(大胆すぎたかな。でも井上のこと思ったら止められなくなっちゃったし)  
「あの、これ以上進んじゃうと止める自信が無いんだけど…」  
「あたしは井上のこと好きだよ。だからもっと井上のこと知りたいし、感じたい。だから、その…井  
上が迷惑じゃなければ、つ…続けて欲しい…な」  
「僕じゃ琴吹さんに相応しくないんじゃないかって思えちゃって……僕でいいの?」  
「井上で良いんじゃなくて、井上がいいの。…優しくしてね」  
 井上は微笑んでキスしてくれた。  
唇が首筋へと移る。最初はちょっとくすぐったかったが我慢していたら、何だか体の中が温かくな  
ってきてくすぐったさが消えた。  
「あふっ、あん…あはぁっ」  
自然と口から声がこぼれだす。聞かれてると思うと恥ずかしくなって堪えようとして唇をかみ締め  
ても我慢が出来ない。まるで昨夜のように…。  
舌が軟体動物のように動き体の上を這い回る。気がつくとパジャマのボタンが全部外されブラがず  
らされていた。  
「きゃっ。やだ、見ないで」  
 慌てて隠そうとする手を心葉が止める。  
「駄目だよ。隠さないで」  
「でも、だって恥ずかしいし…それに井上小さい胸の方が好きなんでしょ…」  
(それになんだか乳首が尖がっちゃっていやらしい)  
「…へ、何の事?僕は普通サイズが好みなんだけど。これくらいが一番だよ」  
 ちゅっ、ちゅっ、れろん…こりっ。ちゅ〜〜〜っ。  
「ひゃん、あんっ…きゃっ。そんなぁあふっあぁぁぁぁん」  
 興奮で硬くしこった敏感になった部分を舐められ、吸われ、歯を立てられたりする度に体に電気が  
奔り口から声が漏れる。  
 自分がどんな格好をしているのか次第に分からなくなっていく。身を任せきりされるがままに受け  
入れて声をあげる。  
「はぁぁっ、ふぁぁぁん…井上、いのうえぇっ。いいの、いいのぉもっともっとしてぇ!」  
 うなじに舌を感じたかと思うと胸を揉まれ、お腹をなでられたかと思ったら尻に歯を当てられる。  
 気がついた時には何も身に着けずベッドの上で荒く息を吐いていた。井上が服を脱ぎ捨ててこちら  
に向き直る。視線を下に移すと初めて目にする男のモノが見えた。  
(細身の体だけどやっぱり男の子なんだ。えっ、アレってあんなに大きいの!あんなのが入るのかなぁ)  
一瞬冷静になったところへ手が膝にかかり足を開こうとした。急に羞恥心が戻り体を硬くなる。  
「楽にして、もっと僕を感じて」  
 指がそっと膝の裏を撫でる。恥かしさよりもその先にある快楽の予感が勝り力が抜けていった。  
 ゆっくり開いていく腿の内側へと唇を這わせつけ根へと上っていく。  
(昨日の夜自分でしたときよりも…気持ち…いいかも。もっと…して欲しい)  
腰がもじもじとゆれる。昨夜の経験から得た更に強烈な快感を生み出す箇所への愛撫を求めて体が  
蠢くのを自覚した。  
 舌が淫裂へ触れる。  
くちゅっ。十分に水分を含んだ音がきこえ、顔が赤くなる。  
 ちゅっ。ぴちゃ。じゅるっ。くちゅくちゅ。じゅ〜〜っ。  
 舌が這いまわり敏感な突起をつつくと体に電気が奔り、その度に体が反り返り口から今迄よりも大  
きな喘ぎ声こぼれる。  
「もぅっあはぁこっこんな…のって。ひゃん…あふっ、そん…ふぁっ。やぁ…」  
紡ぎだされる声は既に意味をなさずただ喘ぐ事しか出来なくなっていく。  
 
 あぁんはぁっ、いぃっひっもぅふぁぁぁっ。はぁっはぁっんんん〜〜〜」  
ぬちゅじゅるん。くちっじゅぷっじゅぷっちゅ〜〜じゅくっ。ななせから生まれる声と音で室内が  
満たされていく。その密度が増すにつれ最初は硬く閉じられていた膣口がじわじわとひらいていく。  
それを察した心葉は両手をななせの太ももに廻し固定すると充血して膨れた淫核に鼻をあて、舌を秘  
洞へと挿しいれた。  
「ひっ……そ、そんなとこぉ…に…いれ…ちゃ…だ…あはぁっ」  
 タンポンすら使った事の無い自分にとって、初めての異物の挿入に恐怖の声を上げかけたが快感が  
それを上回った。  
 昨夜と同じ感覚がななせの中で蠢きだした。もうすぐ、もうすぐ何かがくる。  
 一度経験した絶頂へむかって体が疼きだす。恐怖にも似たあの感覚が近づいてくる。  
「はぁっあぁんあんあん。ひっ…い…いの…うえ…井上ぇっ!いやぁ〜〜!!」  
快楽に身を委ね昨夜と同じ感覚を味わいたいという体と、自分が自分でなくなってしまう感覚に怖れにも似た感情が戦っていた。  
 さっきまでと違うななせの声に心葉が動きを止めて顔を上げる。  
「…怖いの。…なんか分かんないんだけど…怖いの。自分が自分でなくなっちゃうみたいで」  
顔を手で覆い終わりの方は泣きじゃくるような声になりながら告げる。  
心葉はそっと髪をなでた。  
「大丈夫だよ、僕がいるから。それにそうなるのは僕の事感じてくれてるからでしょ。嬉しいな。そ  
れから名前で呼んでくれないかな『心葉』って」  
 背中に手をまわし、頭を自分の胸に押し付けるようにしながら髪をなでつつ心葉が言った。  
「……この…は?」  
「うん、ありがとう。ななせ」  
(あ…いま、私のこと呼んでくれた…んだ。…ななせって。なんだかそれだけで…)  
 心葉が愛撫を再開する。唇を重ねたまま右手をななせの秘所へとのばし熱く潤いを帯びた場所の中  
心を指でなぞる。  
「うぅん…ん……ぷぁっ。…あぁっ…こ…のは。このは…気持ちいいよぅ…もっと…もっとしてぇ」  
 ある意味陳腐な台詞かもしれなかったが、心葉のことを信じた。そして初めて名前を呼ばれたこと  
がななせにふんぎりをつけさせた。  
心葉の指が速度をあげる。今度は不安を感じることなくただ快楽に酔いしれた。  
「はぁ…はぁ…心葉、心葉っくるっ…またさっき…みたいのが。心葉…好き、好きなの!心葉、ギュ  
ッと…ギュッとして…」  
 心葉が空いているほうの腕でななせを強く抱きしめる。  
「はぁっはぁっ…んん…うっうぁああっ…んん〜〜〜〜」  
 いきつきそうになって呼吸が止まりかけたとき声が聞こえた。  
「もっと、もっと僕を感じて。愛してるよ、ななせ」  
 心葉の指先から繰り出される快感と求めていた言葉に包まれななせは絶頂をむかえた。  
「ふぁっあっあぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!」  
 体をのけぞらせたまま数秒間固まったかと思うとふぅっと電池が切れたかのようにベッドに沈み込  
んだ。  
 朦朧とした意識の中、荒い息を吐いていると心葉が足を割って体を差し込んできた。  
「ななせ、いいかな?」  
「うん…きて。心葉のこともっと感じたいから」  
 くち。心葉のものが入り口に当たり音をたてる。  
 ずるっ…ずずっ…ずっ…。  
 じわじわと秘肉を割り開いて進んでいくと何かに突き当たる感触が訪れる。ななせが  
こくりと頷き、心葉の首に腕を回し、上半身を密着させると心葉は体を進めた。  
 
 一瞬後『ビッ』といった感じの音が響いたかとおもったら心葉の体がぐっと進んだ。  
「ふぅっ!!」  
 ななせの口から息が漏れる。『コツッ』と何かが突き当たるような感覚とともに心葉の  
動きが止まった。  
「大丈夫?」  
 はっ、はっ、はっ。浅い息を吐きながらコクリと頷く。目元に浮かんだ涙が落ちる。  
「分かる?ななせのが僕のを包んでるんだよ」  
 すこし下半身に力を入れてみる。鈍い痛みとともに何かが自分の中にあることを感じさせる異物感  
があった。  
「うん。心葉の…がびくんびくんいってるのが…分かる。あたし、心葉…とひとつになったんだよね  
…」  
 チュッ。心葉がキスをしてそっと体を覆いかぶさる。その背中に手をまわし体を密着させる。  
「心葉の体…あったか〜〜い」  
 痛みに少しずつ慣れていくにつれ息が整っていく。心葉がゆっくりと腰を揺すり始める。  
「うっ……いっ…くっ…つっ」  
 最初は鈍い痛みに思わず声が漏れた。心葉が腰を回転させると徐々に声の質に変化がみえはじめた。  
「ふぅん…はぁ…んっ…いぃっ…ん…もっと…あぁん」  
 自分の口から漏れ出る声に驚きながらも心葉の動きから生み出される快楽におぼれていった。  
いつしか声だけでなく体の動きにも変化が現れはじめていた。心葉の動きに合わせ腰が動き出す。  
「ななせ。ななせのなかすごく気持ちいいよ。僕のに吸い付いてくるみたいで、それだけじゃなくき  
ゅんきゅんしめつけてくる」  
「んっ…ほんと?嬉しいな。心葉が喜んでくれて…嬉しい。はぁっあん。あたしも気持ちいい。もっ  
と、もっとして」  
 ななせの言葉をうけて心葉がうごきを早めていく。  
「ふぁん、それ…いぃっ。もっと…もっとぉ心葉ぁ」  
ぎしっぎしっぎしっ。ぐちゅっじゅぷっじゅっ。  
「あっあぁんっはぁっふぁっあっあっあぁ〜〜っ」  
 ベッドのきしむ音とななせの嬌声、そして水分に満ちた淫らな音の三つが混じりあい部屋を満たす。  
「ななせ、僕もうそろそろ」  
「…うん、きて…心葉であたしをいっぱいにして!」  
 言って心葉の唇を強く吸い両足を腰に絡ませる。心葉の動きが早まりななせの声が大きくなる。  
「あっ…あたし…また……なにか…」  
「くっ、でるっ」  
「心葉…心葉好きっ…あっあん…ふわぁぁぁ〜〜〜」  
 心葉の肉茎から吹き出した樹液がななせの最奥に叩きつけられる。その瞬間ななせの体が痙攣した。  
びくっびくっびくっびくっ。  
「あ…はぁ…ぁ…ぁ〜〜〜〜〜〜この…はであたしの中が…いっぱいに……なってる」  
 お互い息が整ったところでななせは心葉の顔を正面からみて言った。  
 
「心葉…大好き。…ううん、じゃなくって、その…。心葉…愛してる」  
 
 
 
 

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