「心葉くん。放課後待ってるから、絶対に来てね」  
朝、いつになく真剣な顔をして話しかけてきたと思うと、そう言い残して遠子先輩は、先に行ってしまった。  
放課後になり、とりあえず文芸部へと足を向ける。  
また何か面倒なことをさせるに決まっているんだろうけど…  
部室のドアを開けると、遠子先輩がいつもと同じようにパイプ椅子に座って本を読んで…いるわけではなかった。  
朝あったときと同じような表情で、何か悩んでいるみたいだった。  
僕が入ってきたことに気づいたのか、顔を上げ、笑顔で話しかけてくる  
「こんにちは、心葉くん。遅かったわね」  
「こんにちは。どうしたんですか?本を読んでるわけでもないのに、そんなに真剣な顔をして」  
その言葉を聞いて、少し怒ったらしく、頬を膨らませる  
「ひどいわ心葉くん。まるで私が本を読む以外は適当に生きているみたいじゃない」  
「ちがうんですか?僕は、本を読む以外でそんな顔をしている遠子先輩を見たことありません」  
「うぅ…それはだって、文学少女だもん、本読むことが一番の幸せで…美味しいし…」  
なにかぶつぶつと呟いている遠子先輩を無視して、僕は話を進めた。  
「で、僕に何か用ですか?」  
「そ、そうだったわ。あのね、用というかその…」  
「なんというか………心葉くん」  
「はい?」  
「心葉くんは、ななせちゃんのこと好き?」  
「いきなり何を言い出すんですか…」  
わけも分からず、突然琴吹さんの事を聞かれ、さっきまでそんなことを考えていたのかとあきれてしまう。  
「いいから、大事なことなの!」  
なんでそんなに怒って…  
遠子先輩の勢いに押され、僕は、答えてしまう。  
「はぁ、まぁ好きになりつつはありますけど…」  
「そ、そう。…じゃぁ千愛ちゃんのことは?」  
「嫌いではないですよ、友達だと思ってます」  
「そう」  
先輩は、僕への質問が終わると、少し残念そうに肩を落としていた。  
「やっぱり、心葉くんはそうなのね…」  
「何をがっかりしたのかは知りませんが、人のことを勝手な妄想で変に判断しないでください」  
僕の言葉を聞いていないのか遠子先輩は、俯いて何かを考えている。その様子は、なんだかとても上品で、綺麗だった。  
その姿に見とれていると、ふいに遠子先輩が顔を少しだけ上げ、僕のほうを見つめ返してきた。  
 
「ねぇ…心葉くん」  
「は、はい?」  
目が合い、少し慌てながらも何とか答える。  
「私の胸。どう思う?」  
「………はい?」  
さっき以上に意味不明なことを聞かれた。  
なにを答えろって?  
「だから、その…どう思うって聞いてるのっ」  
「……その何もないかのように平らなもののことですか?」  
「…うぅ、ひどぉい。私だって好きでこんなふうになっているわけじゃないのに……」  
少し言い過ぎてしまったのか、先輩は本気で落ち込んでいるようだった。  
「大丈夫ですよ。そのうち成長しますって…多分」  
慰めようと声をかけるが、先輩にはあまり効果がないようで、体育すわりして顔をひざにうずめている。  
その体勢のまま何かを呟く声が聞こえた。  
「胸って揉むと大きくなるっていうけど、あれってどうなのかな……?」  
「は…?」  
少しだけ元気を取り戻したのか、ぼくのほうへと近づき、問いかけてくる。  
「ねぇどう思う?」  
「し、知りませんよ、そんなこと」  
遠子先輩が自分で揉んでいる姿を想像して、思わず顔が赤くなり、恥ずかしくなる。  
「あぁー心葉くんの顔が赤い…。変な想像するなんて…ふけつー」  
「そんな想像してません。だいいち、揉む以前の問題なんじゃないですか」  
「うっ…そんなこと…ない、もん、ちゃんと膨らんでるもん」  
「ほらっ」  
その言葉と同時に、手が遠子先輩に引っ張られ、その手を自分の胸へと押し付ける。  
手のひらに、少しだけど、やわらかなものを感じる。  
自分以外の鼓動。  
自分以外の体温その暖かさ。  
そんなものを感じた  
………確かに、多少のふくらみはあるみたいだった。  
でも、この状況はあまりいい状況とはいえないわけで…  
状況を少しづつ理解してきた遠子先輩の頬がみるみるうちに赤みを帯びていく。  
しばらくして自分がしたことを完全に理解するとキャッというかわいらしい悲鳴とともに慌てて、手を離す。  
「ご、ごめんなさい。心葉くん」  
「僕のほうこそすみません」  
互いに顔を真っ赤にしながら謝りあう。  
しばらくして、僕はいつもの調子を取り戻したが、遠子先輩はまだ少し気にしているようだ。そんな簡単に忘れられるようなことでもないだろうけど…  
まだ顔は真っ赤だけれど、さっきより落ち着きを取り戻した遠子先輩がもう一度僕に尋ねてきた。  
「ねぇ、私のその…どうだった?」  
はぁ…気にすることが違うんじゃないだろうか…  
そう思いつつも、遠子先輩には素直に感想を答える。その言葉に機嫌を良くしたのか、  
遠子先輩がへんなことを言ってきた  
「そ、その良かったら、心葉くん、揉んでみない?」  
 
「………は?」  
この人は何を言っているんだろうか?  
とうとう本の食べすぎでおかしくなったのか?  
いくらなんでも、自分の胸を後輩に揉んでもらおうなどという考えはおかしいと思う  
遠子先輩はそんなことを考え呆れている僕を気にもせず、恥ずかしそうに頬を赤く染めながらこちらを見つめてくる  
「だから、その…」  
そのまま何も言い出せずに、固まってしまう先輩に一言  
「何か変な本でも食べたんですか?駄目じゃないですか変なものは口にいれちゃいけないってあれほど……」  
そのとき、遠子先輩の小さなコブシがプルプルと震えているのをみた。  
「心葉くんの……バカぁ!」  
その叫びとともに、気づいたときには頭を殴られていた。  
「恥ずかしいの我慢して、一生懸命お願いしたのにっ」  
先輩の目には少しだけ涙が浮かんでいる。  
そんな顔をしている遠子先輩を見ていると、まるで自分が何か悪いことをしたかのように思えてきてしまうから不思議だ。  
でも、ここはひくところじゃない…はず…おかしなことを言っているのは先輩のはずなんだから。  
「どう考えてもおかしいでしょう。何をいきなり…後輩に胸を揉めなんて、おかしいに決まってます」  
「だ、だって…」  
「だっても何でもありません」  
「…うぅ」  
僕にはっきりといわれた先輩は黙り込み、その場でがっくりとうなだれている。  
「だって、男の子はみんな大きなほうが良いっていうし、私だって今のままじゃ…」  
先輩がブツブツと唱えてくるその言葉が僕の耳へと入ってくる。  
「大丈夫ですって、そういう趣味を持った人ならたくさん…」  
遠子先輩に思いっきりにらまれ、言葉がそこで途切れる。  
「じ、冗談です。そんなに睨まないでください」  
「心葉くんだって大きいほうがイイもんね」  
「……僕、そんなこといいましたっけ?」  
確かに僕に特殊な趣味はないけれど、そんなことを言った覚えもないし、思ったこともない。  
 
「だって、さっき言ったもん。千愛ちゃんよりななせちゃんのほうがいいって」  
「なっ、それは、変な意味じゃなくて、純粋に…」  
「本当に?」  
「ほ、本当ですよ!」  
遠子先輩に真正面から覗き込まれ、慌てて答える。  
「怪しい…」  
そのまま見つめられ、つい目を逸らしてしまう。  
「あっ、今目を逸らした。やっぱり心葉くんもそうなんだ」  
「ち、違いますっ」  
まったく、この人は自分の行動がどんな意味をもつのか全く理解していない…。  
貴女みたいな人に見つめられれば誰だって目を逸らします。  
でも、そんなことを正面から言えるはずもなく、そのまま黙ってしまう。  
「やっぱ胸は大きいほうがいいのね」  
呟いて、いつもの調子を取り戻していた遠子先輩が再び黙り込み、頬を真っ赤にしながら、僕のほうへと向き直る  
「だから心葉くん…お願い…」  
「えと、そのぉ」  
さっき以上に真剣に言われ、さっきまでの自分が嘘みたいに、遠子先輩に何も言えなくなる。  
「心葉くんは、そんなに私のことが嫌い?」  
今にも泣き出してしまいそうな声で聞かれる。  
なんて、ずるい人なんだろう。僕がそんなことを聞かれて、はいと言えるわけがない。  
僕にとってもう一度立ち直る機会をくれたのはあなたなんだから。  
「そう…じゃないです。やっぱこういうことって…自分でやるとかじゃ駄目なんですか?」  
「こういうのって誰かに揉んでもらわなきゃ効果がないっていうし…」  
「どうしてもですか?」  
返事の代わりに視線を返される。  
「分かりました」  
「ホント?」  
「どうなっても知りませんから…」  
「ありがとっ!」  
その言葉と同時に遠子先輩が首筋に手を回し、抱きついてくる。  
女の子特有の甘い香りを感じ、どうしたらいいかわからず、そのまま固まってしまう。  
「あの、先輩?」  
「あ、ごめんなさい。これじゃ揉めないよね」  
「今からですか?」  
「そうよ。先輩命令よ」  
「はいはい」  
理不尽な先輩命令を文句いわず聞くのはいつものことだし、特に不服はないけれど、ひとつだけ言いたかった。  
先輩、ここ、学校ですよ?  
 
 
遠子先輩が椅子を僕の隣に持ってきて、そこに座った。  
「さぁ、いつでもいいわ心葉くん」  
ひざに手を置き、目を瞑ってじっとしている。  
一度は承諾したけれど、正直どうすればいいのか全くわからない。  
僕が戸惑っていると遠子先輩が声をかけてきた。  
「どうしたの?心葉くん」  
「やっぱこういうのはまずいんじゃ…」  
「さっき良いって言ったでしょう?男の子なんだから一度言ったことはちゃんと守りなさい」  
その言葉と同時に、僕の手を引っ張り自分の胸へと持っていく。  
「さあ、ちゃんと揉んでね」  
「…分かりました」  
覚悟を決めて、遠子先輩の胸にそっと手を添えて、ゆっくりと少しづつ揉んでいく。  
とそこには大きくは無いけれど確かにふくらみがあって、軽く押す僕の手をしっかりと押し上げてきた。  
そのことが女の子の胸を触っているということをぼくに意識させ、自分の頬が熱くなっていくのを感じる。  
ふと遠子先輩の顔を見ると、その頬は赤みを帯びていて、目を瞑ったまま恥ずかしそうに俯いていた。  
「はぁ…」  
遠子先輩の口から漏れでたその声はなんだかとても色っぽい。  
いつもの遠子先輩とは全く違う雰囲気で、大人の女性を感じさせる。  
「…心葉くん?」  
「な、なんですか?」  
いきなり声をかけられ現実へと連れ戻される。  
「その…もっと効率的にというか…」  
確かに今の状況じゃ横から片方づつ、片手で揉むことしか出来ないけれど…。  
「でも、この体勢じゃ無理ですよ」  
「じゃ、じゃあ心葉くんの上に私が乗るっていうのは…どうかしら?」  
「それは…重いんじゃないですか?」  
遠子先輩が自分の上に乗るということが恥ずかしすぎて、とっさにそんなことをいってしまう。  
「お、重くないもん。軽いもん。女の子はみんな羽のように軽いんだもん。…最近甘いお話ばかり食べ過ぎて少し太ったかもって思うこともあるけど…」  
どうやら、先輩が気にしてることをいってしまったみたいだ。  
「でも、本って太るんですか?」  
「………」  
無言のままじっと見つめられて、何もいえなかった。  
「…分かりました。僕の上に座ってください」  
遠子先輩が僕の上へのってきた。  
先輩の細い体がすぐ近くにあり、さっきとは違って顔は見えないけれど、  
そのぬくもりをじかに感じる。  
さらに遠子先輩の女性らしい香りが鼻腔をくすぐり、頭がボーっとしてする。  
「さぁ、心葉くんお願い」  
突然聞こえたその言葉に、ハッと我に返り、遠子先輩の胸へと手を伸ばす。  
今感じたのは気のせいだ。先輩に色気を感じるなんて…僕はまだ正常な人間だ。  
そう思いながら、遠子先輩の胸を揉み続けた。  
正直馬鹿なことをしているとは思う。でも、遠子先輩の頼みを断りきれなかった自分のせいなのでどうすることも出来ない。  
 
「い、良い感じよ、心葉くん。その調子で私の胸を大きくするのよ」  
やっぱり、遠子先輩は遠子先輩だ。  
「はいはい…」  
「あ〜心葉くんなんだか返事がてきとぉ〜。もしかして、気持ちよすぎて何も考えられなく…ひゃぅっ」  
先輩が喋るのをやめるように少し強めに力をいれる。  
「こ、心葉くん?…ぁ…それはちょっといたっ…」  
「すみません、痛かったですか?気持ちよすぎて、我を忘れてました」  
言いながらも、遠子先輩の胸を乱暴に揉み続ける。  
「ご、ごめんなさ…う…私が…あ、はぁ…悪かっ…ぁぅ…やめ…」  
「わかりました。やめます」  
答えると同時に胸を揉むのをやめ、遠子先輩から手を離す。  
「え、や、違うの。そうじゃなくて…」  
「どうしたんですか?やめましたよ?」  
「うぅ…心葉くんのいじわる…」  
「いじわるって…ぼくは、別に…」  
「いいからっ!」  
遠子先輩は僕の手をとると、そのままさっきと同じように胸へと持っていった。  
その時、指先に何かがあたった。  
「ぁっ…」  
下着と服を通して小さく自己主張するそれに触れた途端、先輩が声を漏らす。  
最初はその意味がわからず、何度かその動作を繰り返してみる。  
「ぅ…ゃぁ…」  
しばらくして、自分のしていることの意味をやっと理解した。  
「す、すみません!」  
慌てて謝る。偶然とはいえ、僕はなんてことをしてたんだろう。  
「ホント、すみません」  
ところが怒っていると思っていた遠子先輩からは意外な返事が帰ってきた  
「…ぅ、うん。気にしないで」  
互いに恥ずかしく、しばらく黙った後遠子先輩が小さな声で話しかけてきた。  
「でも…心葉くんが見たいなら…」  
「え…」  
「心葉くんが見たいなら、脱がせても…良いよ」  
その言葉の意味を理解する前に、遠子先輩は、リボンへと手をかけていた。  
 
 
 

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