「心葉くん見てっ!こんなものを発見したわ」
なにか珍しいものでも発見したのか、遠子先輩がはしゃぎながら、僕を呼ぶ。
「はいはい。何を見つけたんですか?」
「これを見なさい!」
言いながら、僕のほうへと本を押し付ける。
そこには、○○文庫と書かれていた。
その出版社は、とある分野で有名な出版社だった。
「え〜っと…これは?」
「部室の棚の奥のほうで発見したの。すっごく美味しそうだと思わない?何の本なのかしら?」
その様子からすると、遠子先輩はその出版社を知らないようだった。
「美味しいかどうかはともかく、とりあえずやめておいたほうがいいと思いますよ…?きっとお腹壊しますって」
「平気よ。私は、文学少女。本を食べて苦しい思いはしても、お腹を壊したことはないわ」
「でも…それは…」
「いいわ、私一人で食べるもん!心葉くんはしっかり三題噺を書いてっ!」
そこまで強く言われてしまっては仕方がないので、しぶしぶ三題噺へと意識を戻す。
しばらくした後、紙をちぎる音と
「ひゃっ…」
という奇妙な声が後ろから聞こえた。