HRを終えた後、いつものように文芸部の部室へと向かう。
最初のころは少し抵抗があったけれど、
今では遠子先輩のために三題噺を書くのも悪くないと思えるようにはなってきた。
部室の戸を開けると、そこにはパイプ椅子に行儀良く体育座りして本を読んでいる遠子先輩の姿があった。
いつものように手になにかの本を持ち、そのページを小さくちぎっては口へと運んでいる。
その姿には、少しだけ心が惹かれる。
「遠子先輩。何を読んでいるんですか?」
遠子先輩にしては珍しくその本にはブックカバーがしてあった。
「こ、心葉くん!い、いつ来たの?入るときにノックぐらいしてよ。びっくりしちゃうじゃない」
少し慌てた様子の遠子先輩の頬は、なぜか真っ赤だった。
「いつもノックなんてしてないじゃないですか…。それにどうしたんですか?そんなに顔を真っ赤にして」
「な、何でもないわ…別に」
遠子先輩は、少し顔を俯き恥ずかしそうにしている。
「今日は何の本を読んでいるんですか?」
「こ、これ?これは…えっと……」
(ど、どうしよう。ま、まさかタイトルなんていえるわけないし…)
「これはね。なんというかその心葉くんには分からないような…えっと…難しい本よ」
「教えてください…なんか遠子先輩に馬鹿にされてると思うと人間終わりな気がします」
本を持っている遠子先輩へと近づきその本に手を伸ばそうとする。
「だ、駄目!駄目よ心葉くん。この本だけは」
そういいながら両手でその本を大事そうに抱える。
「分かりました。諦めますよ…で、今日のお題は何ですか」
「そうそう、今日のお題は…きゃっ」
隙を突いて遠子先輩から、本を抜き取る。
その本を見ると・・・少し見覚えが空色の表紙が・・・
と思うのもつかの間そのタイトルは、いかがわしい雰囲気を漂わせるようなものだった。
「部室で何読んでるんですか……」
あきれながら呟く
「うぅ、ごめんなさい」